
(野外実習で動物園を訪れたカブールの女学生 彼女達が再び家の中に閉じ込められる社会であってはならないと思います。 “flickr”より By thechildrenofwar
http://www.flickr.com/photos/tcow/490203731/)
【「身の安全を保証するという申し出は必要ない」】
アフガニスタンのカルザイ大統領はこれまでもタリバンに対し和解交渉を訴えてきていますが、アメリカが主導する戦いが泥沼化し出口が見通せない情況で、「戦闘だけでは永久に勝てない」という声がアメリカを含めてたかまるにつれ、カルザイ大統領のタリバン和解交渉にも期待が高まっています。
カルザイ大統領は16日、タリバン最高指導者オマル師ら幹部4人の名前を挙げて「政府の和解案を受け入れて政府に参加してほしい」、「オマル師がアフガニスタン訪問や和解交渉を望むのであれば、わたしは大統領として(師の)保護に全力を尽くす」と述べた上で「国際社会が同意しない場合、彼らには2つの選択肢がある。わたしを排除するか、この国を去るかだ」と、アメリカなどの反対には屈しないという交渉への不退転の強い決意を明確にしています。
一方のタリバンは、アフガニスタン政府を支援している多国籍軍が撤退した場合のみ、交渉に応じるというこれまでの姿勢を今のところ崩していません。
米国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官は「われわれはオマル師が暴力を放棄し、国際テロ組織アルカイダとのすべての関係を絶ち、アフガニスタンの政府と憲法を支持する用意があるという兆候をまったく確認できていない」と語っています。【11月18日 AFP】
また、タリバン最高幹部の一人は17日、ロイター通信の電話取材に「身の安全を保証するというカルザイ(大統領)の申し出は必要ない」と語ったとも報じられています。【11月18日 毎日】
東南部だけでなく全国に勢力が浸透してきているタリバンにとって、今更政府に身の安全を守ってもらう必要などない・・・という自信・優位性の表れと解されています。
別の報道では、タリバン幹部のひとりが「われわれは外国軍隊とそのアフガン人奴隷に対する聖戦を続ける」と交渉を拒絶したとも伝えています。【11月17日 共同】
タリバン組織もそんなに整理されている訳ではないでしょうから、各々がそれぞれに発言しているものと思われますが、少なくとも交渉に肯定的なものは今のところ出てきていないようです。
【「殺されたとしても学校には通う。」】
そんなアフガニスタンで、痛ましい事件が報じられています。
****女子学生が「酸」攻撃で顔を焼かれる、アフガニスタン南部****
アフガニスタン南部カンダハルで12日、登校中の女子学生がバイクに乗った男たちから水鉄砲で顔に酸をかけられ、15人が負傷した。うち3人が重傷で、特に姉妹2人の容態は深刻だという。同国の教育省が明らかにした。
女子学生らは全身を覆うイスラム女性用の衣服ブルカを着用していた。
ハミド・カルザイ大統領や閣僚らは「アフガニスタンの敵」の仕業と強く非難し、旧支配勢力のイスラム原理主義組織タリバンが襲撃の背後にいると示唆したが、タリバン側は否定している。
酸が目に入るなどの重傷で軍病院に移送されたShamsiaさん(17)は15日、病床で取材に応じ、「殺されたとしても学校には通う。100回襲撃を受けたって勉強を続けるわ」と語った。
1996-2000年のタリバン政権下では、女性の就学は禁止されていた。政権崩壊後も、学校や教育施設への襲撃が繰り返されており、2008年だけでこれまでに115校が放火や爆弾、ブルドーザーなどによる攻撃を受け、教師や生徒など約120人が死亡している。【11月17日 AFP】
************************
冒頭で取り上げたカルザイ大統領の16日のタリバンへの交渉呼びかけにおいても、大統領は「女子学校を燃やしたり、市民の殺害を即時停止すべきだ」と強い口調で訴えていたそうです。
“2008年だけでこれまでに115校が放火や爆弾、ブルドーザーなどによる攻撃を受け、教師や生徒など約120人が死亡”というのも許しがたい数字です。
タリバン支配時は、女性は一人での外出すら認められていませんでした。
学校教育など女性には不要だとのデモンストレーションでしょうか?
それにしても痛ましいとしか言い様がありません。
タリバンとの和解交渉が今後進展することを望みますが、カルザイ大統領も言っているように「女子学校を燃やしたり、市民の殺害を即時停止する」最低限の人権保障がタリバン側からなされることがその条件であると考えます。