孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ、産油国へ財政支援要請 世界の機関車“中国”は・・・

2008-11-21 13:37:14 | 国際情勢

(Palmer, Alfred T.,, photographer 1942年、カリフォルニアの航空機工場でモーター製造に取り組む女性 “ものづくり”を忘れたアメリカ経済に明日はあるのか・・・との声も聞きます。 日本も同じような途を歩んでいるようにも見えます。
“flickr”より By The Library of Congress
http://www.flickr.com/photos/library_of_congress/2179069381/)

【相次ぐ“記録”】
アメリカ経済の状況を伝える記事は、どれもこれも記録ラッシュの様相です。
ここ数日のものをピックアップするだけでも・・・

米新車販売台数・・・1983年以来25年ぶりの低水準
“10月の米新車販売台数は、前年同月比31・9%減の83万8156台と大幅な落ち込みとなった。米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻を契機とした金融危機の影響で消費が低迷し、自動車ローンも縮小したためで、米メディアによると、1983年以来25年ぶりの低水準となった。”

住宅着工件数・・・1959年1月の統計開始以来、最低の水準
“10月の住宅着工件数によると、季節調整後の年換算で前月比4.5%減の79万1000戸と落ち込み、1959年1月の統計開始以来、最低の水準となった。金融危機の深刻化で住宅市況の落ち込みに拍車がかかっていることが浮き彫りになった。”

卸売物価指数・・・過去最大の落ち込み
“10月の卸売物価指数(季節調整済み)は、ガソリンなどエネルギー製品が大幅に値下がりしたため、前月比2・8%下落した。過去最大の落ち込み。”

消費者物価指数・・・下落率は、47年2月の統計開始以来最大
“10月の米消費者物価指数(1982~84年の平均=100)は216.573となり、季節調整後で前月比1.0%下落した。下落率は、47年2月の統計開始以来最大。ガソリンなどエネルギー価格の急落が物価全体を押し下げた形だが、変動の大きいエネルギーと食料品を除いた指数でも0.1%下落し、82年12月以来約26年ぶりの大幅下落となった。”

新規失業保険申請件数・・・16年ぶりの高水準
“週間の新規失業保険申請件数は16年ぶりの高水準となり、世界的な景気後退で各国企業が人員削減を発表するなか高まる警戒感に追い打ちとなった”

ダウ工業株30種平均・・・5年半ぶりの低水準
“20日の米国株式市場は、経済指標の悪化と米自動車大手3社救済案が頓挫したことでパニック売りが進み、大幅続落した。投資家が損失回避のため債券市場に流れたため、利回りは過去最低水準にまで低下。指標となる米10年債利回りも数十年ぶりの水準まで低下した。
ダウ工業株30種平均は5年半ぶりの低水準となる前日比444.99ドル(5.56%)安の7552.29ドルで取引を終えた。ダウは前日も427ドル下げている。”

このアメリカ経済の絶不調の影響は、いずれ日本にも及んでくるかと思うと気が沈みます。
ビッグ3救済策については、税金による救済を求める各社トップが自家用ジェット機で乗りつける・・・といった、納税者感情を逆撫でするようなこともあって難航しているようです。

【奉加帳】
そうしたなかで、金融安定化法による7000億ドルの資金調達のためでしょうか、アメリカ政府から産油国への金融支援要請が報じられています。
“支援要請”というのはなんでしょうか?
一種の奉加帳でしょうか。
ゆすり・たかりではないでしょが・・・。

****米政府、産油国に金融支援要請か クウェート紙*****
米国が世界規模での金融危機の救済対策として湾岸産油国4か国に、総額3000億ドル(約28兆6000億円)の財政支援を要請したことが明らかになった。クウェート日刊紙「アッシヤーサ」が20日、「信頼度の高い筋からの情報」として報じた。
支援の内訳は、サウジアラビア1200億ドル(約11兆4000億円)、アラブ首長国連邦(UAE)700億ドル(約6兆7000億円)、カタール600億ドル(約5兆7000億円)、クウェート400億ドル(約3兆8000億円)となっている。

4か国の原油産出量の合計は日量計1400万バレルに上り、4か国で石油輸出国機構(OPEC)加盟国全体の半分、世界需要の17%を占める計算だ。
今夏の原油価格高騰の恩恵で、過去6か月で4か国は1兆5000億ドル(約143兆円)近い黒字を計上したとみられている。

アッシヤーサ紙によると、米政府は経営危機に陥っている自動車業界や金融機関などの救済に支援金を充てる考えとみられる。
さらに米国は、イラクのクウェートに対する負債160億ドル(約1兆5000億円)を放棄するよう、クウェートに要請したという。【11月20日 AFP】
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アメリカが一声かければたちどころに30兆円弱の金額が集まるとは、アメリカの威信もまだまだ捨てたものではないようです。
この奉加帳は日本にも回ってくるのでは。

1兆5000億円の債権放棄を要請・・・というのも、なかなかのものです。
恐らく最初から返してもらえるとは思っていないのでしょうが。

【将来への積極投資か、油上の楼閣か】
需要減少予測と投機マネー撤退による原油価格の最近の急落はすさまじいものがあります。
20日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、5営業日続落、指標となる米国産標準油種(WTI)12月渡しは前日比4.00ドル安の1バレル=49.62ドルで取引を終え、50ドルの抵抗線をあっさり割り込みました。
史上最高値の1バレル=147.27ドルをつけた7月からわずか4カ月で、ほぼ3分の1に急落したかたちです。
(年末の旅行で、相変わらず馬鹿高い燃料サーチャージを取られるのが腹立たしいところですが・・・)

こうした原油価格の動き、そして世界的な金融危機・景気後退の動きのなかで、産油国も影響が出てくるのでは、世界一の超高層ビル競争なんかしている場合ではないのでは・・・とも思ったのですが。
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで20日夜、超大型複合リゾート施設「アトランティス・ザ・パーム」の正式オープンセレモニーが行われました。

****ドバイの超豪華ホテル開業祝い、夜空彩る大規模花火****
世界を吹き荒れる不況の嵐をよそに、ヤシの形をした人工島「パームジュメイラ(Palm Jumeirah)」では同リゾート施設のオープニングを祝い、数百億ドルを投じた超豪華パーティーが開催された。主催者側の発表によると、パーティーには2000人を超す世界各地のセレブが招待され、打ち上げ花火は、北京五輪式典の7倍の規模だという。【11月21日 AFP】
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まだまだ、元気なようです。
それとも、国家の命運・将来を担う事業ですから、ことさらに空元気を出してでも・・・といったところでしょうか。

【一蓮托生】
産油国と並び、もうひとつアメリカの必要資金を支えるのが、いまや世界最大の外貨準備、米国債を保有する中国。
世界的な景気の低迷にもかかわらず、中国の10月の貿易黒字が前年同期比29.9%増の352億ドル(約3兆4000億円)となり過去最高を記録したそうです。
ただ、膨れ上がる外貨準備高は、確かにそうした貿易黒字の結果でもあるでしょうが、一方で、人民元を低く“管理”するためのドル買いの結果とも見られています。

日本以上に外需依存の中国は、輸出産業を抑制しないように人民元は安く設定したいというところですが、そのことは市中への過剰流動性供給となり消費者物価高騰を招いています。
昔スミソニアン体制があっけなく投機マネーに潰されましたが、為替管理なんて長続きするものなのでしょうか?

9%とか二桁で走らないと労働人口供給を吸収できず社会不安が高まる、しかし、消費者物価高騰も社会不安を高める、金融政策は為替レート維持に縛られて国内調整に使えない・・・と、中国もつらいところでは。

日本・西ドイツが機関車として期待されたのはもう30年ほど前でしょうか。
いまや“中国機関車論”の様相で、中国自身も総額4兆元(約57兆円)の景気刺激策を挙げて、「中国経済の発展は世界経済の発展を促す」とその存在を誇示していますが、世界景気後退の影響は確実に中国経済にも及び、尹蔚民(人事相は、「現在、雇用状況は危機的で(金融危機の)影響は広がり続けている」、「あらゆる行政レベルで雇用の安定を最優先するよう呼び掛けている」と危機感を示しています。【11月20日 AFP】

日本を抜いて最大の米国債保有国となった中国が保有米国債を手放すとアメリカ経済は崩壊し・・・といった話よりは、いまやアメリカも中国も、そして日本も、一蓮托生の運命にあるということのように見えます。
日本経済のためにも、世界経済のためにも、機関車中国には頑張ってもらう必要があります。

コメント
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