孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「女性に対する暴力撤廃のための国際デー」 コンゴ、アフガニスタン、そして日本

2008-11-27 15:59:11 | 世相

(コンゴ東部 ゴマ郊外の難民キャンプ 昨年10月頃の様子 今はもっと緊迫している状況かと推察されます。 “flickr”より By cyclopsr
http://www.flickr.com/photos/endrevestvik/2373359213/)

【コンゴ 勝った側が付近の村で略奪や殺人、強姦】
世の中ではソマリアの海賊、タイの反政府活動、そしてインドのテロリストと次から次に人々の注目を集める事件が起きています。
そんななか、私を含め殆ど誰も知らなかったと思いますが、先日25日は「女性に対する暴力撤廃のための国際デー(International Day for the Elimination of Violence Against Women)」だったそうです。

****「女性への暴力」は無視され続けている、国連人権高等弁務官*****
国連のナビ・ピレー人権高等弁務官は、「女性に対する暴力撤廃のための国際デー」の25日、コンゴ民主共和国(旧ザイール)東部などの紛争地域で女性への暴力がまん延しているとの懸念を表明した。
ピレー氏は声明で、「女性への暴力はいまだに世界中にはびこり、そのうえ無視され続けている問題だ」とした上で、紛争地域、特にコンゴ東部での惨状は目を覆うばかりだと強調した。
同氏によると、この10年間に同地域においてレイプ、虐待、殺害、奴隷化された女性は数十万人にものぼる一方で、法の裁きを受けた加害者は数えるほどしかいないという。

世界保健機関(WHO)は今年初め、女性が男性のパートナーから暴力を受けることによる身体的・心理的ダメージは長期に及ぶとの報告書を発表している。
報告書によると、暴力や性的暴行を受けたことがある女性が自殺を考える確率は通常の人より3倍高く、1回でも自殺を試みた率では4倍高いという。【11月26日 AFP】
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コンゴ東部で活動するユニセフの教育専門家、青木佐代子さんが、東京都内で行った報告会の話が次のように報じられています。

*****「一晩中、略奪の声」=コンゴの現状報告-ユニセフ専門家*****
交戦の後は勝った側が付近の村で略奪や殺人、強姦を繰り広げるため、住民はわずかな家財道具を背負って逃げ出す。こうした避難民は東部にある北キブ州の人口の3分の1に当たる約110万人に上り、大半は他人の家の庭先に枯れ草の小屋を作って過ごしている。衛生状態が悪く、コレラが流行。特に子供がこうした病気や栄養不良で死亡する率が高く、強制的な徴兵や強姦の被害にも遭うという。

10月29日には青木さんのいる州都ゴマの近くで衝突が起き、ゴマが略奪に遭った。青木さんら国際機関職員や現地スタッフは国連コンゴ監視団が警備する施設に身を隠した。
青木さんは「一晩中、略奪している声が聞こえた。中に入ってくるのではないか、レイプされるのではないかと思った」と振り返る。この時はゴマ全体で数百人が殺害されたとみられ、青木さんと働く現地スタッフの兄も殺されたという。【11月22日 時事】
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“勝った側が付近の村で略奪や殺人、強姦を繰り広げる”・・・ジャングルのルールそのものです。
特に政府軍は規律が乱れており、酒に酔って何をするかわからないと住民から恐れられているとも聞きます。
国連人権理事会はフランスなどの要請で、コンゴ東部の人権状況に関する特別会合を明日28日に開くことを決めました。
少しでも進展があればいいのですが、あまり期待できない情勢です。

【アフガニスタン 登校中の女子学生に硫酸水鉄砲】
女性に過酷な試練を課すのは、コンゴのような紛争のほかに、社会に根強い(ときに宗教的背景を伴った)女性差別の習慣があります。

先日も取り上げたように、アフガニスタン・カンダハルで今月12日、登校中の女子学生がバイクに乗った男たちから水鉄砲で顔に酸をかけられ、15人が負傷する事件がありました。
カルザイ大統領らは事件の背後にタリバンがいることを示唆していました。
旧タリバン政権下では、女性の就学は禁止されており、政権崩壊後も、学校や教育施設への襲撃が繰り返されており、2008年だけでこれまでに115校が放火や爆弾・ブルドーザーなどによる攻撃を受け、教師や生徒など約120人が死亡していると言われています。

この痛ましい事件の犯人が逮捕されたとのことです。

****女学生に硫酸水鉄砲、タリバーン系10人逮捕 アフガン*****
アフガニスタンからの報道によると、同国南部カンダハル州警察は25日、女子生徒らが酸性の液体をかけられた事件に関与した疑いで反政府武装勢力タリバーンと関係する男10人を逮捕したと発表した。
女子教育に反発するタリバーンは学校襲撃を繰り返しており、今回の事件も学校に通う少女たちを脅す目的があったとみられる。
地元通信社などによると、カンダハルで今月12日、11人の女子生徒と教師4人が登校途中、バイクに乗った男たちに水鉄砲のようなもので硫酸とみられる液体をかけられた。数人が顔にやけどをして病院で手当てを受けた。カンダハル州当局によると、逮捕された10人はパキスタンでタリバーン幹部の1人から計2000ドル(約19万円)を受け取り、事件を起こしたらしい。【11月26日 朝日】
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この逮捕によって、アフガニスタンの情勢、アフガニスタン女性の置かれている環境は微塵も変わるものでもありません。
たとえそうであるにしても、犯人が野放しになったままよりは、逮捕された方がまだましでしょう。

【日本 世界98位】
これも先日取り上げた話題ですが、スイスの民間研究機関・世界経済フォーラム発表の男女格差指数で、日本は世界98位という立場にあります。
“教育や保健分野では格差が比較的少なかったが、経済や政治での女性の進出度がいずれも100位を下回った。アジアではフィリピンが6位で最高。中国は57位、韓国は108位だった。”【11月12日 毎日】

こうした差別・格差は、その社会に暮らす者、特に、差別する側にいる者(つまり私を含めた男性ですが)にはあまり自覚がないことが多いのではと思われます。

韓国が108位ですので、儒教社会の文化的影響があるのかもしれませんが、日本の若い女性を見ていると、女性本人達の意識のなかに、“社会の中心に男性がいて、それを女性がけなげに支える”といった状況を肯定的に、“女性らしさの発露”として受け入れるような意識があるのでは・・・と思うこともあります。
男性医師を支える女性看護師、男性部員を支える女子マネージャー、夫を支える良き妻・・・それら自体はもちろん何ら問題のないものではありますが、そうした“支える存在”を望む心理が現実の格差に重なるとき、男性に伍して社会で活動したいと望む女性の進出を阻む“ガラスの天井”がより強固なものになるようにも懸念されます。
コメント
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