孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  8%成長目標を掲げる中国経済

2009-03-18 20:31:24 | 世相

(膨大な農民工が故郷に帰る春節が近づく広州駅 列をなす人ごみのなかで疲れ、母親に抱かれて眠る子供 “flickr”より By dongdawei
http://www.flickr.com/photos/dongdawei/3177001774/in/set-72157609966819884/)

今更ながらのことではありますが、世界銀行は9日までに発表した調査報告で、国際的な金融・経済危機により、09年の世界経済が戦後初めてマイナス成長に陥るとの、また、世界の貿易量は過去80年で最大の落ち込みになるとの予想を明らかにしています。
米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長も10日、「世界は1930年代以降では最悪の金融危機に直面している」と危機感を表明しています。

日本のように輸出のウェイトが高い経済の場合、長期的な経済構造変革の問題はさておき、とりあえずの景気動向については、日本の主たる貿易相手国であるという意味でも、また、世界経済に及ぼす影響という意味でも、世界最大の最終消費市場であるアメリカと世界の工場としての中国の経済動向が大きく影響してきます。

前出のFRB・バーナンキ議長は15日のテレビインタビューで、アメリカの経済危機について、不良資産買い取りや大手金融機関への追加資本注入などの早期実行により「恐らく今年中に景気後退は終わるだろう」と述べ、年内の米景気後退脱却は可能だとの認識を示したそうです。【3月16日 毎日】
ただ、これは予測というより期待あるいは意図的なアナウンスメントのようにも思えます。
なお、住宅市場については、2月の米住宅着工および建築許可件数(季節調整済み)が、前月の50年ぶりの低水準から一転して大幅なプラスとなっています。

アメリカ経済が不透明な先行きを示すなか、中国経済に対する期待が一部にあります。

****世界経済危機、中国が脱出に導く可能性=国連アドバイザー****
国連の潘基文事務総長の特別顧問を務めるジェフリー・サックス氏は、中国が潤沢な外貨準備と堅調な貿易黒字、世界中での巨額の投資を生かし、世界的な経済危機からの脱出を先導する可能性があると述べた。
中国は、欧米の経済不振を受けて輸出セクターに工場閉鎖や人員削減といった影響が出ているが、欧米各国と比較するとまだ景気悪化の影響をしのいでいる。
11日発表された中国の経済指標では、世界的な金融危機の影響で2月の輸出が大幅に減ったものの、1─2月の都市部固定資産投資は政府の景気刺激策が奏功し力強い伸びを見せた。
同国の外貨準備高は総額約2兆ドル。また当局によると、2008年末時点での経常黒字は前年比20%増の4400億ドルだった。

サックス氏は「中国には米国や欧州ほど大きなバブルがなかった。また、中国には潤沢な外貨準備や貿易黒字、多くの投資があり、いち早い経済回復に必要なものがそろっている」と指摘。その上で「中国が年内に(経済危機からの脱出に)成功すれば、それが他国の経済にも波及するだろう」と述べた。【3月12日 ロイター】
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中国経済の先行きについては、強気の見方、悲観的な見方、様々のようです。
一番強気なのが中国当局。
中国は全国人民代表大会(全人代=国会)で13日、経済成長率の目標「8%程度」を承認しました。

“先進国が軒並みマイナス成長となる中、突出したプラス成長を維持することで、国際社会における自らの発言力を強めたいとの思惑が透けて見える。8%成長の実現は容易でないにせよ、数%でも成長できれば、「金融危機から抜け出せずにいる米国など先進国に中国の存在を強く印象付ける好機になる」(中国の学識経験者)というのだ。”【3月14日 産経】といった見方もあります。

ただ、そうした思惑以上に、経済成長減速により深刻な雇用問題がこれ以上拡大すると社会不安を増長し、体制の危機に直結するという危機感が“8%成長目標”に現れているように思えます。
そうした中国経済の問題点・不安定さを指摘するのは下記のような見方です。

****中国「8%成長」目標承認 足元揺るがす「雇用」 失業率9・6%、消費も低調****
中国は全国人民代表大会(全人代=国会)で13日、経済成長率の目標「8%程度」を承認したが、その実現に欠かせない雇用の安定化や民間消費が足元で揺れている。なかでも雇用問題は深刻で、同日記者会見した温家宝首相は「直面する重大な問題だ」と危機感をあらわにした。
雇用問題に温首相が力を入れるのは、1989年の天安門事件から20年を迎えるなど治的に敏感な問題が相次ぐ今年、民衆の不満が募れば社会不安が一気に高まるとの強い懸念からだ。

温首相は今回の全人代で最優先課題として、高成長維持とともに「社会の調和と安定の維持」を指摘している。農民工(出稼ぎ労働者)だけで約2500万人が職を失った。都市部の実質的な失業率は昨年「9・6%」(中国社会科学院)とされ、今年は2けた台に乗る可能性が大きい。
これに加え、610万人の新規大卒者と、2007年、08年に卒業したものの就職できなかった250万人の計860万人のうち、「500万人が就職困難に陥っている」(政治協商会議委員)という衝撃的な実態も明らかになっている。
これら雇用問題を「(これまでよりも)百倍重視する」と温首相は会見で強調したが、裏を返せば、安定維持のために思想や反体制言動への統制を強める方針だ。「社会安定維持(に向けた)早期警報メカニズムを完全なものにする」と全人代で温首相は明言した。

8%成長の行方を左右する消費関連の経済指標も心もとない。国家統計局が13日までに発表した社会消費品小売り総額(小売り売上高)が今年1~2月累計で15・2%増と、前年実績21・6%を6・4ポイントも下回った。
2月の中国の消費者物価指数(CPI)も前年同月比で1・6%減と、6年2カ月ぶりにマイナスに転落。消費拡大への足かせとなる「デフレ懸念」が急浮上している。
中国のCPIは、豚肉など食品価格の高騰を背景に昨年2月に8・7%とピークをつけてインフレ過熱が社会問題になった。その後は原油価格の下落で下降し1月は1・0%だった。

全人代で確認された総額4兆元(約58兆円)の景気対策や中国人民銀行(中央銀行)による昨年9月からの5回の利下げなど金融措置も講じられたが、雇用や消費で効果は表れていない。【3月14日 産経】
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世界銀行は18日、中国経済に関する四半期見通し報告を発表し、09年の中国の国内総生産(GDP)伸び率を前年比6.5%と予想、昨年11月時点(7.5%)から1ポイント下方修正しています。
このなかで、輸出の低迷、雇用の伸び鈍化、デフレリスクなどをあげています。
ついこの間までは、インフレで中国経済は危機的な状況にあるという論調が多くありましたが、今度はデフレリスクとのことです。

上記産経記事のような中国経済の問題点を指摘するものは多数ありますが、明るい見通しが全くない日本経済に比べると、中国経済については若干明るい話題・政策の効果を指摘するものもあります。

****中国都市部の固定資産投資、1-2月は26.5%増****
中国国家統計局が11日発表した今年1-2月の都市部の固定資産投資(設備投資と建設投資の合計)は前年同期に比べ26.5%増となった。増加率は前年同期の24.3%増をやや上回った。
中国政府は昨年11月、世界的な金融危機を受けて2010年までの総投資額が4兆元(約57兆円)に上る大規模な景気刺激策を発表している。1-2月の固定資産投資の増加は、この巨額投資の効果が表れ始めていることを示している。国家統計局では、この2カ月間に中央政府の出資による投資が40.3%増加したとしている。【3月11日 時事】
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****中国:新車販売、80万台を回復 2カ月連続、米超え最大市場*****
中国工業・情報化省は10日、2月の国内の新車販売台数が80万台を超えたと発表した。中国は米国の2月の販売台数(68万9000台)を2カ月連続で上回り、世界最大の自動車市場となった。
2月は自動車の生産台数も85万台を上回り、販売、生産とも昨年6月以来、8カ月ぶりに80万台の水準を回復した。李毅中工業・情報化相は10日、政府が自動車産業支援策として、1月から排気量1600CC以下の小型車の取得税を引き下げた効果が表れたとの見方を示した。【3月11日 毎日】
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****中国:1人当たりGDP3千ドル超 発展の節目に到達 *****
中国国家統計局の李徳水元局長は6日記者会見し、中国の昨年の1人当たり国内総生産(GDP)が3000ドルを超えたことを明らかにした。3000ドルは経済発展の一つの節目で、突破すると消費の活発化が起こりやすいとされる。(中略)
新華社電によると、中国の1人当たりGDPは、03年に1000ドルを超え、06年に2000ドルを突破した。経済が発達した上海市や広東省深セン市では、すでに1人当たりGDPが1万ドルを超えている一方で、農村部を中心に低所得者も多く、貧富縮小が課題だ。【3月6日 毎日】
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12日発表された日本の昨年10~12月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、率換算で前期比12.1%減の大幅減でした。
大幅なマイナス成長となった先進国のなかでも、日本の落ち込みが突出しています。
中国経済の底が割れると、日本経済は更に困難な状況に陥ります。


コメント
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