孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラク戦争開戦から6周年、アフガニスタンでは?

2009-03-21 11:51:04 | 国際情勢

(バグダッドの治安は確かに改善しましたが、そのひとつの要因はシーア派とスンニ派の居住区を壁で分離して争いが起きないようにしたことにあります。
写真の子供達が遊ぶコンクリート壁がそうした壁でしょうか。
街を隔て、人々の心を隔てる壁が取り除かれてはじめて本当に平和が戻ったと言えるのですが、そのような日はまだ遠いようです。Bagdad 2009. Photo's: Chalaan Charif / RNW. “flickr”より By Radio Nederland Wereldomroep
http://www.flickr.com/photos/rnw/3349234588/in/set-72157608500246270/)

【イラク 開戦から6年で得た“平穏”】
治安情勢の改善が伝えられるイラクで“観光旅行”が復活したそうです。

****イラクで観光旅行が実現=開戦6年、「初めて」と当局者*****
イラク観光省当局者は19日、米軍による2003年のイラク開戦後初めてとされる公式の西側諸国からの観光旅行グループが同国を周遊していることを明らかにした。同当局者は「(観光旅行の実現は)治安状況の改善を示すものだ」と述べた。AFP通信が伝えた。
この旅行は英国の業者が企画したもので、英国人5人と米国人2人、カナダ人1人の計8人が参加しており、今月8日にバグダッド国際空港からイラク入りした。治安情勢は改善に向かっているものの、なお散発的なテロが起きており、グループには私服の武装警備要員が同行しているという。【3月20日 時事】 
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人目につきやすい外国人集団ですから、これに参加するのは相当の覚悟が必要です。

イラク戦争開戦から6周年を迎え、1日当たりの攻撃件数は190件から10件以下に減少したとのこと。【3月25日号 Newswek】
06~07年のシーア派対スンニ派の宗教対立によって泥沼化したときは全く出口が見えない状況でしたが、米軍の大規模増派、スンニ派の対アルカイダ戦への取り込み、シーア派の停戦などもあって、何事につけても変化はあるもののようです。
駐留米軍は戦闘部隊が6月末までに都市部から、10年8月までには3万5千人~5万人規模の訓練部隊を残してイラク全域から撤退の予定です。

6周年の20日は、イスラム教の休日で「金曜礼拝」が行われる金曜日に当たり、反米指導者サドル師の支持者らが駐留米軍の即時撤退を求める数千人規模のデモを行ったそうです。
デモはサドル師派の拠点であるバグダッドのサドルシティーや、南部バスラ、中部クートなどで行われています。【3月21日 共同】
しかし、そうしたサドル派のデモ以外は目立った抗議行動もなかったようです。
米軍側も特別の式典などは行っていません。
日常的な平穏さを取り戻しつつあるというところでしょうか。

もちろん未だテロは散発しています。
8日、バグダッドの警察学校で自爆テロがあり、28人が死亡、57人が負傷しています。
二日後の10日には、バグダッド西部の市場で、市場を視察していた部族指導者や治安当局者など要人を狙った自爆テロがあり、少なくとも33人が死亡、46人が負傷しています。
日本であれば年間のトップニュースになるような事件が、日常的に起きている状態には変わりないようです。

また、復興は進まず、生活に苦しむ多くの人々が存在しています。
仮に、復興が軌道に乗ったにしても、イラク全土・全国民に残した傷は計り知れないものがあります。
クルド自治区の問題も今後の火種になりそうです。
問題は山積していますが、それでもひと頃に比べれば出口が見えてきたように思えます。

【アフガニスタン “オバマのベトナム”の懸念】
一方で、オバマ政権がイラクから軸足を移しつつあるアフガニスタンは“オバマのベトナム”が懸念される状況です。

****米国:アフガニスタンの安定重視…対テロ新戦略*****
オバマ米政権はイラクから軍事的な軸足をアフガニスタンに移すが、その戦略見直しが大詰めを迎えている。既に1万7000人の米軍増派方針を示し、今月中に発表される新戦略には、アフガンの国力強化やパキスタン対策なども盛り込まれる見通しだ。「軍事力だけでは勝利できない」(大統領)との信念で、困難なテロとの戦いを進める。
新戦略は今後3~5年の中期計画になりそうだ。「(旧支配勢力)タリバンによる政権奪取と(国際テロ組織)アルカイダの聖域化を防ぐこと」(ゲーツ国防長官)が目標となる。

柱の一つがアフガン軍・警察の強化。米紙ニューヨーク・タイムズによると、現在の倍以上の40万人とする計画で、年間費用は、アフガン政府予算の約11億ドルの倍以上となる見込みだ。
アフガン政府主導でのタリバン穏健派との融和作戦も模索中。「タリバンの約7割は金のために戦闘に参加している」(バイデン副大統領)との分析を基に強硬派との分断も可能と踏んでいる。
だが、タリバン幹部の一人は「米国の対話とは、1人当たり数百ドル程度の現金をばらまいてタリバンを分断していこうというものだ」と語り、その試みは失敗するだろうと一笑に付す。

タリバン最高指導者オマル師は先月、パキスタン側の三つの武装勢力と「新同盟」関係を築き、対米共闘態勢に入ったとされる。タリバン側にはオバマ政権に対する強い警戒感がある。
タリバンやアルカイダの拠点は、アフガン国境沿いのパキスタン北西部の部族地域や南西部クエッタにある。このため米国は、パキスタン対策をも重視、同国に対し軍事支援のほか、非軍事支援を今後5年間で75億ドルと現在の3倍に増額し、テロ対策への協力を要請する見通しだ。

一方、オバマ大統領が20日、ビデオメッセージでイランに対話を呼びかけたのも、アフガン安定化を視野に入れ、隣国で影響力の強いイランを包括的対策に取り込もうとする思惑の一環とみられる。
31日のアフガン安定化国際会議(オランダ)に加え、米国務省は19日、上海協力機構(SCO)が27日にモスクワで開く同種の会議への高官派遣を発表。イランはSCO準加盟国で、ここでも対話の糸口を探るとみられる。 【3月20日 毎日】
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米軍増派・アフガン軍・警察の強化、タリバン穏健派との融和、パキスタン対策、イランの取り込み、記事にはありませんが経済復興支援も重要な柱です。
どの程度効果をあげうるものかは、なんともわかりません。

米軍増派ひとつとっても、イラクの14万人に対し、アフガニスタンは今回増派後も6万人。
今日も“南部カンダハル近郊で20日、爆発物による攻撃が2件連続して発生し、国際治安支援部隊(ISAF)の一員として同国に駐留するカナダ部隊の兵士4人とアフガン人通訳1人が死亡、少なくとも8人が負傷した。”【3月21日 時事】といったニュースが入っている状況で、欧州各国も増派には慎重姿勢です。

パキスタン情勢についても、北西辺境州部族支配地域でのパキスタン政府と武装勢力の停戦は、アフガニスタン情勢を悪化させることも懸念されています。
また、パキスタン国内での政情不安、反米感情の高まり、シャリフ氏の影響増大も不安材料です。

上記の包括的アフガニスタン戦略の柱のひとつとされる“警察の強化”については、日本もこれを財政支援する方針です。

****アフガン警察給与に120億円拠出=緒方特使、米代表に説明*****
アフガニスタン・パキスタン政策を調整する首相特使に任命された緒方貞子国際協力機構(JICA)理事長は9日、米国務省でアフガン・パキスタン担当のホルブルック特別代表らと会談した。緒方特使は席上、アフガン警察官の給与支給のため、日本政府が1億2400万ドル(約122億円)の拠出を決めたことを伝えた。
 記者会見した緒方特使によると、同特使は会談で、アフガンにおける日本の支援の実績や今後の方針を説明。今回の拠出が警察官8万人の半年分の給与に当たることなどを報告した。これに対しホルブルック特別代表は「素晴らしい支援だ」と高く評価したという。【3月10日 時事】
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06~07年当時、イラク情勢について、私を含め多くの人が悲観的でした。
イラクで起きたような治安改善がアフガニスタンでも可能なのか、それとも“ベトナム化”するのか。
私にはわかりませんが、前者の方向で進んでもらいたいものです。



コメント
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