孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  アメリカが関係改善へ向けての動き、関係国にも波紋

2009-03-12 22:20:30 | 国際情勢

(昨年4月25日に行われたイラン国会選挙の決選投票の投票場で、アフマディネジャド大統領(写真右)と会った後気絶した女性(写真左) 石油収入を背景にしたバラマキ政策もあって、アフマディネジャド大統領の貧困層での人気は絶大だとも言われています。
“flickr”より By Amir Farshad Ebrahimi
http://www.flickr.com/photos/farshadebrahimi/2908926138/)

【アフガン問題の国際会議にイランを招聘】
「敵との対話」路線を掲げるアメリカ・オバマ政権ですが、5日開かれた北大西洋条約機構(NATO)外相理事会で、クリントン米国務長官はアフガン問題に特化した国際会議にイランを招く考えを示しました。
この会議は国連が主体となり潘基文事務総長が議長を務める閣僚級会議で、31日オランダ・ハーグで開催されます。
会議には、国際機関代表やアフガン政府のほか、パキスタンなど近隣国、国際治安支援部隊(ISAF)に参加する約40カ国、日本などの財政支援国に出席が呼びかけられるそうです。

イスラム教シーア派国家イランは、スンニ派で敵対関係にあったタリバンの復興を望んでおらず、さらに、アフガニスタンからの麻薬や難民の流入にも苦慮していると言われます。
イランは7日、参加を前向きに検討すると表明しました。
アフガニスタン安定はイランの国益でもあり、「共通の利益」に向けて米国と連携することで、断交中の米国との関係修復の足がかりを得たいとの思惑があると報じられています。

当事国のひとつパキスタンも、「イランは地域の重要な存在である」(パキスタン・クレシ外相)として、隣国のイランに対し、反政府勢力のテロ活動が活発化しているアフガニスタンを安定させるため、アメリカなどの主要国に協力するよう促しています。【3月9日 時事】

もっとも、パキスタンはインドと繋がりが深いアフガニスタン現政権が安定することを望んではおらず、アメリカ撤退後もにらんでタリバンとの関係も持続しているとも言われていますので、このあたりの本音はよくわかりません。

当のイランは日本に対し、アフガニスタンの復興支援で「日本が準備する事業があれば、その枠内で協力する用意がある」(10日来日のイラン外務省東アジア・大洋州局のイザディ局長)と、橋や幹線道路などインフラ整備と麻薬撲滅活動などへの財政・人的支援を具体的に例示しています。【3月10日 毎日】

アメリカはイランに先立って、かねてから対立していたシリアとの関係改善に向けて動き出しています。
こうしたアメリカ外交は、パレスチナ和平、イランやシリアとの関係改善、アフガニスタンやイラクの安定化について、互いに関係する問題として三位一体で推進していく「中東・南西アジア包括外交」の新機軸ととらえられていますが、シリアとの関係改善について、“イランとの同盟関係にあるシリアと対話し両国の間にくさびを打ち込むことで、イランの中東での影響力低下を図るねらいもあるとみられる。”【3月12日 産経】という見方もあるようです。

【親米アラブ諸国の警戒】
非常に興味深いのは、とにもかくにもアメリカがイラン接近の動きを見せていることに対し、いわゆる親米アラブ諸国が警戒を強めているということです。

****イラン:周辺国と摩擦 対米巡り対立顕在化*****
中東の非アラブ国家イランが、親米アラブ諸国との間で摩擦を深めている。イラン要人が隣国バーレーンを領土だったかのような発言をしてアラブ諸国の反発を受け、今月6日には北アフリカのアラブ国家モロッコとの外交関係が断絶した。背景には、イスラム教シーア派国家イランと、スンニ派主導のアラブ諸国の歴史的対立が、イランの覇権拡大とともに顕在化してきたことに加え、イランが米国との関係修復の動きを進めていることへの親米アラブ諸国の警戒感もある。

イラン最高指導者ハメネイ師の顧問、ナーテクヌーリ元国会議長は先月10日、ペルシャ湾岸のバーレーンを「イランの14番目の州だった」と発言。バーレーンは「歴史的事実のわい曲だ」と反発、イランと交渉中の天然ガス輸入計画の停止を発表した。
バーレーンなどアラブ6カ国が加盟する湾岸協力会議(GCC)も「イランは領土拡張という夢想が頭から離れないのだ」(アティーヤ事務局長)と非難した。GCCは元来、イランが79年のイスラム革命後に推し進めたシーア派「革命輸出」に対抗する形で結成された地域機構だ。
バーレーンは、王家をはじめ指導部はスンニ派だが、国民の8割はシーア派で、イランの影響力浸透を警戒している。

アラブの盟主サウジアラビアは今月3日、アラブ諸国に「我々はイランの挑戦に対し共通の戦略を取る必要がある」(ファイサル外相)と呼び掛けた。6日にはイスラム教国でスンニ派主体のモロッコがイランとの関係を断絶、「イランがモロッコでシーア派を広げ、我々の宗教的土台を覆そうとしている」(外務省)との談話を出した。
イランは先のイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ攻撃を巡り、サウジやエジプトなどを「シオニスト政権(イスラエル)に対し沈黙するな」と非難、関係が険悪化した。 【3月10日 毎日】
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アメリカとしては、単にイランとの関係を深めればいいというものではなく、イランに反発する親米・周辺アラブ諸国をどのように納得させるかという問題もあるようです。

【イラン大統領選挙】
今後の展開については、当然ながらイラン自身の国際社会への対応にかかってきますが、そのあたりは6月に予定されているイラン大統領選挙の結果によっても大きく変わってきます。
いまのところ、保守強硬派のアフマディネジャド大統領が優位との情勢が報じられています。
先日のブログで、アフマディネジャド大統領と改革派のハタミ前大統領の一騎打ちか・・・といった内容を書いたこともありますが、改革派の重鎮、ムサビ元首相が10日に立候補を表明するなど、どういう形になるのかはまだこれからのようです。


コメント
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