(瓦礫の中で暮らすガザ住民 “flickr”より By freegazaorg
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パレスチナ・ガザ地区は依然イスラエルによる封鎖が続いており、住民は厳しい生活を強いられています。
そのガザ復興を支援する国際会議が2日開催されました。
【当事者抜きの復興支援会議】
****ガザ復興会議:30億ドル超拠出へ…80以上の国、機関*****
イスラエル軍の攻撃で甚大な被害を受けたパレスチナ自治区ガザ地区の復興支援を協議する国際会議が2日、エジプトのシャルムエルシェイクで始まった。80以上の国・機関は、パレスチナ自治政府の求める約28億ドル(約2720億円)を上回る30億ドル以上の分担金拠出を表明し、同日夕に閉幕する。
パレスチナ自治政府の集計によると、ガザ地区の全壊家屋は4000軒以上、損壊家屋も1万1500軒以上に上り、社会資本も含め被害回復だけでも約13億ドルが必要とされる。会議参加国は、湾岸アラブ諸国計約16億ドル▽米国9億ドル▽欧州連合(EU)約5億ドル▽日本2億ドル--の拠出を表明する見込みだ。
ただ、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルは会議に招かれず、イスラエルによるガザ地区封鎖が続く中、いかに復興を促進するかという根本的な課題は残ったままだ。
米国は国務長官として中東を初訪問したクリントン氏が拠出を表明。「我々の拠出金は間違った相手(ハマス)には渡らない。(パレスチナ自治政府の)アッバス議長と協力していく」と述べ、テロ組織と位置付けるハマスへの強硬姿勢を改めて強調した。
一方、国連の潘基文(バンギムン)事務総長は「救援活動の従事者が現地に入れず、必要物資が届かない」と述べ、イスラエルのガザ封鎖に不満を表明した。 【3月2日 毎日】
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現地を実効支配するハマスと、軍事侵攻で被害を与え今も封鎖を続けるイスラエル・・・両当事者が参加しない復興支援会議というのも奇妙ですが、これが現実でもあります。
【続くガザ封鎖 イスラエルの国内事情】
封鎖が続く状況では、住民は生活物資にも困窮しますし、国際支援も困難です。
復興のための建設資材も入りません。
当然ハマスは封鎖解除を求めていますが、イスラエル側は、06年夏からガザに拉致・拘束されているイスラエル兵が解放されない限り、ハマスが本格的な停戦のための条件に挙げるガザ境界の検問所再開には応じないことを決定しています。
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ガザ情勢は1月18日、イスラエルとハマスがそれぞれ一方的に攻撃停止を宣言し「停戦」に入った。調停役のエジプトは、停戦の本格化を目指して仲介を開始。イスラエル、ハマスとも前向きな姿勢を示してきたが、イスラエルは「拉致問題の解決が先決。その後でのみ(ハマスが求める)ガザ境界再開などの協議に応じる」(オルメルト首相)とハードルを高めた。
総選挙を終えたイスラエルにとって、情勢が一応落ち着いている現状で、ハマスとの本格停戦を急ぐ必要はない。政権交代を控えて、むしろ懸案の拉致問題の進展を迫られている状況だ。一方、ハマスは、兵士が解放されても「総選挙で右派勢力が台頭したイスラエルが『約束』を守る保証はない」と警戒を強めている。【2月18日 毎日】
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イスラエルでは、組閣を要請されている右派リクードのネタニヤフ党首は、中道右派のカディマ側が連立入りの条件とした「パレスチナとの2国家共存路線の堅持」を約束せず、両党の大連立は実現しませんでした。
これにより、イスラエルの次期政権は、リクードと極右、宗教政党による中東和平に消極的な右派だけの連立となる公算が大きくなっています。
【復興で主導権を握り、住民の支持を広げたいハマス】
一方のハマスは、今回の復興支援会議の成り行きもにらんで、先月末に宿敵ファタハと“統一政府樹立”で合意したことが報じられています。
*****パレスチナ:統一政府樹立へ協議 ファタハ、ハマスが合意*****
アッバス自治政府議長の支持基盤ファタハと、イスラム原理主義組織ハマスなどパレスチナ各派は26日、統一政府樹立に向けて具体的な協議を進めることで合意した。五つの委員会を設置して統一政府の形態など重要課題について話し合い、3月下旬にカタールで開かれるアラブ連盟首脳会議までの結論を目指すという。
各派はヨルダン川西岸とガザ地区に分かれたパレスチナの分断解消のため、エジプトの仲介で和解協議を再開していた。協議は今後曲折も予想されるが、イスラエル軍の攻撃で1300人以上が死亡したガザ地区の復興を前に、各派が足並みをそろえた形だ。(中略)
パレスチナ各派は実務者型の統一政府を実現するなどして国際社会の理解を得て、復興を加速させたい意向だ。
一方、イスラエルのリブニ外相は26日、同国中部テルアビブでミッチェル米中東特使との会談後、ガザの復興について「支援は、ハマスの正当性を認めることなく行うことが必要だ」と指摘。ハマス孤立化への包囲網を崩さないよう、国際社会に求めた。 【2月27日 毎日】
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ハマスはガザ地区内では、社会福祉活動によってその支持を拡大しています。
貧困層を格安・無料で診察する診療所のほか、幼稚園から大学までの独自の教育機関、ラジオ局やテレビ局まで持っています。
先のイスラエル軍の攻撃で破壊された現場では真っ先に炊き出しをして、被災者に支援物資を配っています。
こうした活動で、「特に女性の間でハマスへの評価が高い」とも言われます。【3月2日 毎日】
ハマスには、統一政府に参画することで今後始まる国際支援を主導し、パレスチナ住民の支持を更に拡大したい思惑もあると思われます。
【イスラエルを代弁するアメリカ】
これに対し、イスラエルの“ハマス孤立化への包囲網を崩さないよう”との意向は、クリントン国務長官の「「我々の拠出金は間違った相手(ハマス)には渡らない。(パレスチナ自治政府の)アッバス議長と協力していく」という発言によって代弁されています。
クリントン長官は、ハマスがイスラエルの承認や暴力の放棄を表明しない限り、パレスチナ和平の当事者として認めない方針を改めて強調しています。
それはそうと、先月20日には、米国務省関係者が、ハマスからオバマ大統領に宛てた書簡を受け取り、その取り扱いを検討中であることを明らかにしていましたが、あの件はその後どうなったのでしょうか?
【ロケット弾と入植拡大】
ハマス、イスラエルそれぞれの思惑。
ハマスとは対照的に住民の支持を弱めているファタハ・アッバス議長の動向。
イスラエルとパレスチナ独立国家の「2国共存」を目指すアメリカと今後成立するイスラエル右派政権の関係。
不確定要素ばかりで中東和平の先行きは全く不透明ですが、“厳しい”ことは間違いありません。
ガザの復興国際会議を前にした2月27日からの3日間に、ガザ北部からロケット弾計17発がイスラエル南部に撃ち込まれたと、イスラエル軍は発表しています。
一方、イスラエルの平和団体「ピースナウ」は2日、イスラエル政府が今後、パレスチナ自治政府が将来の国家の版図と位置付けているヨルダン川西岸と東エルサレムのユダヤ人入植地に少なくとも7万3300戸の建設を計画しているとする報告書を公表しています。