(スーダンのバシル大統領 写真は07年のものですが、逮捕状が出された最近はますます意気軒昂な姿を国民に見せているようです。内心まではわかりませんが。
“flickr”より By RFT
http://www.flickr.com/photos/rft/351655519/)
【命綱を絶たれるダルフール住民】
「史上最悪の人道危機」と呼ばれるスーダン・西部ダルフール地方におけるアラブ系民兵による黒人住民の虐殺等にスーダン政府が加担しているとして、国際刑事裁判所(ICC)がスーダンのバシル大統領に対する逮捕状を発行した件については、3月6日ブログ「ICC、バシル大統領への逮捕状発行 スーダン、人道支援NGO追放で報復」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090306)でも取り上げました。
逮捕状発行に反発するバシル大統領側は、国境なき医師団、オックスファム、セーブ・ザ・チルドレン、ケア・インターナショナルなど計13団体の人道支援NGOを追放したことも上記で取り上げています。
これらNGOは国連と協力して、避難民ら約470万人に対する食料や水、医療品の援助を担っており、その援助対象者は13団体で計6500人に上り、援助要員全体の約4割を占めることから、支援活動に致命的な影響があると報じられていました。【3月6日 朝日】
今日のTVでそのスーダンの様子が報じられていました。
バシル大統領はICCによる逮捕状を外国勢力による不当な圧力と国民に訴え、国民の大統領支持は高まっているとのことです。
もちろん、マスコミ管理を含め、強権国家ですから国民の本音は知りにくいところはありますが、今回の措置がナショナリズムに火をつけ、大統領支持・欧米批判につながりやすいことは想像できます。
大統領は“中国の支援があるから大丈夫だ”とも語っていました。
中国の対応はともかく、気になるのは、アラブ・アフリカ諸国も今回のICC逮捕状に批判的なことです。
ダルフールの人道的な問題が、「新植民地主義」批判という根深い欧米対アフリカ諸国の図式に転化されてしまうことが懸念されます。
何より問題なのは、これまで援助団体の支援で生活を維持してきた住民の食糧や水などが不足し、その生活が立ち行かなくなっていることです。
バシル大統領の措置を非難するのは容易ですが、今回逮捕状によって結果的に最も弱い立場の住民に負担が負わされているのが現実です。
ICCも、その動きを見守っていた国連・関係国も、まさかバシル大統領が逮捕状に従順に従うなどとは考えていないでしょう。
では、どのような帰結を思い描いているのでしょうか?
命綱を断たれつつある住民をどうするつもりなのでしょうか?
落としどころは想定されているのでしょうか?
【シャリフ元首相を自宅軟禁】
話は全く変わりますが、もうひとつ“どうするつもりなのか?”と訝しく思われるのがパキスタンでの動き。
最大野党指導者シャリフ元首相の被選挙権停止で激化したパキスタン政府と野党側の対立で、シャリフ派とチョードリ元最高裁長官の復職を求める弁護士グループ・市民団体が12日、南部などで大規模な反政府デモを開始し、政府は反政府運動の拡大を阻止しようと野党職員やデモ参加者を拘束している件について、昨日3月14日ブログ「パキスタン 政権を揺さぶるシャリフ派と法曹グループのデモ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090314)で取り上げました。
****シャリフ元首相を自宅軟禁 パキスタン、政権を批判****
パキスタン政府は15日、ザルダリ政権に対する抗議デモへの参加を呼びかけていた野党指導者のナワズ・シャリフ元首相を3日間の自宅軟禁下に置いた。政権の強権姿勢に対する国内外からの批判が一層強まりそうだ。シャリフ氏支持者らは、軍出身のムシャラフ前大統領が解任した判事を復職させないザルダリ政権に対する弁護士らの抗議デモに同調している。【3月15日 共同】
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シャリフ元首相は14日、チョードリ元最高裁長官の復職を求める弁護士グループ・市民団体が首都イスラマバードで行う抗議行動に参加する意向を示していました。
シャリフ派と与党・政府との対立も表向きの理由も、元長官の復職問題にあります。
(もともとライバル関係にありますから、復職問題はシャリフ派にとっては与党・政府を揺さぶる格好の材料というところでしょう。)
前年9月に就任したザルダリ大統領は、大統領選直後は職を追われた判事を1か月以内に復職させるとしていましたが、前日ブログに記したように、元長官はムシャラフ前大統領が人民党のザルダリ氏らの汚職訴追を免除したことも違憲と考えているとされていることがあって、その復職が保留されています。
元クリケット選手のイムラン・カーン氏や、イスラム政党ジャマーティ・イスラーミーのガジ・フセイン・アフマド氏を含む野党政治家にも自宅から出ないよう命じられましたが、両氏は自宅周辺を取り囲んだ警察の警備をかいくぐってイスラマバードに向かったそうです。【3月15日 AFP】
“警察の警備をかいくぐって”というのもよくわからない事態ですが、いずれにしてもシャリフ元首相の自宅軟禁でシャリフ派の行動がエスカレートしそうなことは想像されます。
政府はこうした措置で押さえ込めるとふんでいるのでしょうが、火に油を注いだ結果どうなるのか?
こちらも、“どうするつもりなのか?”と思われます。
そもそも、ザルダリ大統領が、元長官復職を求めるシャリフ元首相と一時的に手を組んだことが “どうするつもりなのか?”という問題でしたが。