孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

“理想論に終わらない現実主義的な核軍縮論”“戦略論としての核軍縮”

2009-03-16 20:36:40 | 国際情勢

(長崎に投下された原爆 “flickr”より By schriste
http://www.flickr.com/photos/schriste/2048054498/)

川口順子元外相らが共同議長を務める「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」が、核廃絶へ向けた勧告を行っています。

****国際委、米に「先制不使用」勧告 核廃絶へ3段階*****
ペリー元米国防長官など日米欧豪の政治家らでつくる「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(共同議長・川口順子元外相ら)が核兵器の廃絶への道筋を示すために策定している報告書案の概要が15日、分かった。オバマ米大統領が核の「先制不使用」政策の採用を検討すると宣言し核軍縮を先導するよう勧告、3段階で核を全廃する。諮問委員の阿部信泰元国連事務次長ら関係者が明らかにした。【3月15日 共同】
***********************

唯一の被爆国として核廃絶を国是とする日本国民としては大いに関心を払うべき問題ですが、その現実性を考えると、正直なところどうしても「そうは言ってもね・・・」といった反応になってしまいます。
しかし、最近世の中の流れがやや変わってきつつあるとも言われています。

****From:ジュネーブ 核軍縮へ高まる機運*****
6日にジュネーブで行われたオバマ米政権発足後初の米露外相会談で、クリントン米国務長官は、小さな箱に入った「リセットボタン」をラブロフ露外相に贈った。(中略)
今回の外相会談では、今年末に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約を年内にまとめるという目標が合意された。米露関係改善へ向けた一里塚となる合意であり、ジュネーブ駐在の各国の軍縮担当官たちは「前向きな動きだ」と歓迎している。

米露合意がとりわけ歓迎されるのは、ここ数年、核軍縮が現実的課題として認識されるようになってきたからだ。ジュネーブの国連軍縮室当局者は「核廃絶はこれまで『平和ボケ』の主張と考えられてきたが、流れが変わってきた。安全保障分野の専門家が、真剣に核軍縮や核廃絶の必要性を語り出した」と話す。軍縮担当の外交官や赤十字国際委員会(ICRC)関係者も「戦略論としての核軍縮が語られるようになってきた。これから大きな動きがあるかもしれない」と口をそろえる。

だが、期待の背景にあるのは、オバマ米大統領が「核兵器のない世界」を究極的目標に掲げたというような明るい話だけではない。むしろ、インドやパキスタンだけでなく、北朝鮮までもが核実験に踏み切り、イランも核開発が疑われるというように核兵器が拡散していることへの懸念と、テロ組織が核兵器を手にしてしまうことへの恐怖の方が、大きな要因だ。
核戦略論の専門家である軍縮・不拡散促進センター(東京)の戸崎洋史主任研究員は「核拡散や核テロは、米国にとって現実的な脅威だ。だから米国は、やる気になっている」と指摘する。
もちろん、簡単な話ではない。クリントン長官が用意した「リセットボタン」は、表面に刻んだロシア語が誤訳で「過積載」という意味の単語になってしまっていた。会談では長官が「私の間違い」と謝罪して笑い飛ばしたが、笑い話には終わらないかもしれない。米露の核軍縮交渉も、実際には課題山積で難航必至なのだ。

それでも、核テロの脅威を封じ込め、イランや北朝鮮に核開発の口実を与えないためには、米露をはじめとする核保有国による核軍縮交渉の進展が必要だ。そうした考えが、理想論に終わらない現実主義的な核軍縮論として説得力を持ち始めている。【3月16日 毎日】
*******************************

第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約については、クリントン米国務長官から両国関係の「リセット」を提案されたロシアのラブロフ外相も7日、「ロシアにもその用意がある」、「法的拘束力のある2国間の新しい条約締結が最優先のステップとなる」と表明しています。

“ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の08年1月現在の推計では、核弾頭の実戦配備数は米国が約4100発、ロシアは約5200発とみられる。6日の会談では、具体的な削減目標数は明らかにされなかったが、クリントン長官はこの分野で「世界をリードする」と言明しており、核弾頭の大幅な削減も現実味を帯びてきた。
4月にロンドンで予定されるオバマ大統領とメドベージェフ露大統領による会談では、一気に1000発レベルまで削減を目指すことで合意するとの観測も出ている。”【3月7日 読売】

核軍縮自体には米ロとも乗り気ですので、東欧へのミサイル防衛(MD)配備や、ウクライナとグルジアの北大西洋条約機構(NATO)加盟などで米ロ関係がこじれない限り、何らかの新しい枠組みが作られるのではないかと推測されます。

4000~5000発が1000発レベルに大幅削減されれば、核軍縮の大きな進展でしょう。
「核の脅威という点において、5000発と1000発にどれだけの差があるのか?」と水を差したい気持ちもなくはないですが、まあ、素直に評価すべきものでしょう。

“核テロの脅威を封じ込め、イランや北朝鮮に核開発の口実を与えないための、米露をはじめとする核保有国による核軍縮交渉の進展”というのも、要は現在の核保有国クラブの既得権益を維持しようとするものですが、まあ、これも核拡散がなし崩しに進む状況よりはましでしょう・・・多分。
核拡散が進めば、米ロが今のような大きなパワーを行使することは難しくなりますので、そのような方向を望む考えもあるでしょうが(日本国内の核武装論を含め)、同時に核テロや核戦争のリスクが今より現実性を帯びてきます。

「戦略論としての核軍縮」「現実主義的な核軍縮論」・・・実際どのように機能するのでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする