(シロクマたちはオバマ支持のようです。オバマ大統領は施政方針演説で、国内の二酸化炭素排出量の上限を設け、再生可能エネルギーの生産を促進する法案を可決するよう議会に求めています。
また、予算案では、風力・太陽光発電、バイオ燃料やクリーン・コール(環境調和型の石炭利用)および低燃費の国産車の普及に年間150億ドル拠出することが盛り込まれることを明らかにしました。
ただ、米世論調査企業ギャラップが今月12日に発表した調査結果によると、地球温暖化の深刻さは誇張されていると考える米国人の割合は、ここ10年でもっとも高くなっていることが明らかになっています。
“flickr”より By Mike Licht, NotionsCapital.com
http://www.flickr.com/photos/notionscapital/2809862420/)
【14%の削減】
温室効果ガスの話。
現在、京都議定書に定める第一約束期間(2008年~2012年)に入っています。
この期間にける日本の温室効果ガス削減目標は、1990年(代替フロンについては1995年)を基準として6%ですが、2007年度の国内の排出量は逆に基準年に対して8.7%上回っており現状から約14%の削減が必要となっています。
仮に達成できなかった場合、2013年以降の削減目標にペナルティが上乗せされるなどの罰則の適用を受けることになります。
約束期間に入っても対策は進んでおらず、約束を満たすために7000億円以上、場合によっては数兆円分の排出権の購入を迫られることが危惧されています。【ウィキペディア】
この排出権購入については、日本は国内対策に最大限努力しても約束達成に不足する差分(基準年総排出量比1.6%)について、補足性の原則を踏まえつつ京都メカニズム(クリーン開発メカニズム(CDM)やグリーン投資スキーム(GIS)など 仕組みの説明は後述)を活用することとなっています。
****日本がチェコの排出量枠を500億円程度で購入=関係筋****
日本政府が、京都議定書に基づく温室効果ガスの排出量取引について、現在交渉中のチェコと来週にも最終合意に達する見通しが明らかになった。政府関係者がロイターの取材に答えた。
日本政府は、2009年度と2010年度にチェコの排出枠4000万トンを500億円程度で購入する方針だ。
関係者によると、日本政府は、2009年度と2010年度にチェコから排出枠2000万トンずつ、計4000万トンを購入する。来週にも正式合意する見通し。価格については「市場価格に比べてそん色のないレベルで、(1トン当たりの価格は)ウクライナとほぼ同じ」(関係者)と明らかにしていないが、500億円程度とみられている。日本が外国政府から排出枠を調達するのは先のウクライナに続き2例目。
日本政府が交渉を進めてきた排出量取引は、具体的な環境対策と関連付けられた排出量取引の仕組みである「グリーン投資スキーム」(GIS)。東欧諸国は旧ソ連邦を中心に排出余剰枠を抱えている。交渉してきたポーランドとは、ポーランド側の国内制度の整備が遅れているため、今回の合意は見送られたもよう。
京都議定書では、日本の温暖化ガスの排出削減目標は1990年比で6%。ただ、排出量は増大する傾向にあり、国内の努力だけでは達成が困難とされる。このため、日本の削減分として算入できる排出権獲得に向け、他国に排出権として売却できる余剰が生じている東欧諸国との間で交渉を進めてきた。
日本政府は2008年から2012年までの5年間で排出権を計1億トン取得する方針。これまでは、途上国で温暖化ガス排出を減らすプロジェクトに投資し、見返りに排出権を得る「クリーン開発メカニズム」(CDM)での契約規模が2008年度までに2300万トン以上あり、ウクライナの3000万トン、チェコの4000万トンと合わせ、日本政府の排出権取得はほぼクリアしたとみられる。【3月25日 ロイター】
******************
【ホットエアとグリーン投資スキーム】
「グリーン投資スキーム」(GIS)とか「クリーン開発メカニズム」(CDM)など、馴染みがない言葉が並んでいます。
そこで、基本的なところだけ少し勉強してみました。
先ず、「グリーン投資スキーム」(GIS)については、「ECOマネジメント」のサイトにわかりやすい解説がありました。(http://premium.nikkeibp.co.jp/em/keyword/20/)
ソ連崩壊後の経済破綻により、ロシアや東欧諸国の温室効果ガス(GHG)排出量が激減し、1990年の半分以下まで落ち込んだために、こうした国では京都議定書が定める達成目標に対する“余剰分”が発生しています。
この“余剰分”を“ホットエア”とも呼んでいますが、ホットエアの量は、二酸化炭素(CO2)換算でロシアが約12億t、ウクライナが約4億t、中東欧諸国が約5億t程度と見られています。
日本の第一約束期間に向けた必要削減量は2.25億t程度と試算されていますから、ホットアエアの大きさがわかります。
ホットエアを有する国々は、削減努力をしなくても京都議定書の目標数値を達成しているためGHG排出量削減へのインセンティブが働きません。
また、日本など先進国がロシアからホットエアを排出権取引で購入してGHG排出削減の目標数値を達成しても、地球全体で見るとGHGの排出量を削減できたことにはなりません。
こうしたなかで、ロシアから提案された仕組みが、排出権取引で得た資金を供給国内の環境対策に充当する「グリーン投資スキーム(GIS:Green Investment Scheme )」というものです。
GISは余剰枠に過ぎないホットエアの取引を“環境投資”と捉え直す仕組みであり、市場経済移行国が環境改善の機会とその資金を得る大きな可能性を秘めているとされています。
先進国にすれば、単に余剰枠を金で買ったという批判を受けることなく、地球全体のGHGを減らす方向で余剰枠を入手できます。
例えば今回のチェコからのGISによる排出権購入の場合、その資金によるチェコにおける具体的な環境対策活動の実施に向けた協議をこれから日本・チェコの間でしていくことになります。
なんだか言いくるめられたような気もしますが、経済危機が深刻化し政情が不安定化している東欧諸国(チェコなどは、24日、議会がトポラーネク内閣の不信任案を可決しています。)において、“濡れ手に粟”のような“ホットエア”取引による資金が本当にきちんと環境対策に使用されるのか・・・若干の危惧も感じます。
また、こうした資金が動くところには、恐らく利権絡みの問題も発生するのではないでしょうか。
排出権を購入する日本側も、チェコでの環境対策事業に日本企業が参画して、その利益を還流させる・・・といったODAと似たような問題もおきそうな気がしますが、どうでしょうか。
【クリーン開発メカニズム】
クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism)の方は、先進国が開発途上国において技術・資金等の支援を行い、温室効果ガス排出量の削減または吸収量を増加する事業を実施した結果、削減できた排出量の一定量を支援元の国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当することができる制度で、京都議定書の第12条に規定されています。
“技術的に温室効果ガスの削減がすでに進んでいる先進国では、更なる技術革新による温室効果ガス削減は多くの労力と費用がかかり、思うように進まないことが考えられていた。京都メカニズムが「柔軟性措置」と呼ばれるように、この問題を柔軟な措置によって解決するため、途上国での削減を認め、国内で行うよりも少ない労力や費用で排出量の削減をできるようにするものである。
途上国への削減技術の普及、途上国への投資の増加、先進国と途上国との格差(南北問題)の軽減といった副次的な効果もある。
一方で、このメカニズムによって、先進国の温室効果ガス削減技術の向上が停滞するといった影響を懸念する声もあり、一部の環境保護団体やEUは、クリーン開発メカニズムの濫用を避けるよう求めている。”【ウィキペディア】
【削減の負担】
「グリーン投資スキーム」(GIS)にしても、「クリーン開発メカニズム」(CDM)しても、適正に行われれば、それなりの意義のあることのようには思えますが、日本など先進国にすれば、やはり自国における生産・生活スタイルの変更、技術開発による排出量削減が先ずは第一義的なものでしょう。
冒頭の日本の排出権購入に対する取組みとして“補足性の原則を踏まえつつ”とあるのは、そういう自戒を示したものです。
しかし、国内におけるこれ以上の排出量削減は大きな負担を伴うという声もあります。
日本経団連や日本商工会議所などが連名で17日新聞各紙に「(90年比)3%削減でも1世帯あたり約105万円の負担」「裏付けのない過大な削減には国民全体に大変な痛みが伴う」といった意見広告を掲載しています。
この意見広告に、斉藤環境相は19日の閣議後の記者会見で「大変悲しい。産業界の本気度が疑われる」と批判しています。
なお、政府の中期目標検討委員会も厳しい見方を明らかにしています。
2020年までの温室効果ガスの削減目標(中期目標)を最も厳しい25%減とした場合、実質国内総生産(GDP)が20年までの累積で最大6%押し下げられ、失業率も最大年平均1.9%の増加要因になるという試算を示しています。
しかも、この試算は現在の経済危機の影響を考慮しておらず、GDPが年1.3%ずつ増加する成長モデルを前提としているとか。【3月27日 毎日】
最終的には温暖化の影響をどれだけ深刻に考えるかによる訳ですが、その温暖化の実態がなかなかよくわからないところもあって難しい問題です。
素人としては、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」などの考えを信用するしかありません。