(クラスター爆弾・・・とは言ってもベトナム戦争当時のものですから、現在のそれとは全く別物でしょう。後々まで被害を残す点では同じでしょうが。
“flickr”より By bertie's world
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【今後の方向を決めたオスロ条約】
不発弾が市民を殺傷するクラスター爆弾の規制について交渉する特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の政府専門家会合は2月20日、結論を出せないまま閉会しました。
CCWでの交渉は、4月に予定されている次回の専門家会合が最後。中露やインドなどが規制に消極姿勢を崩しておらず、各国間の溝はまったく埋まっていない状態で、妥結の見通しは立っていません。【2月20日 毎日】
クラスター爆弾をめぐっては、議論が停滞するCCWを見限り、ノルウェーと非政府組織(NGO)の主導で昨年12月に実質的な禁止条約(オスロ条約)が締結されました。
有志国が主導して軍縮条約を作ったのは対人地雷禁止条約(99年発効)に続き2例目となります。
条約の署名国は現在、日英独仏などを含む95カ国で、30カ国が批准した半年後に発効することになっています。
オスロ条約には米中ロやイスラエルなどのクラスター爆弾を大量に保有する国が参加しておらず、その実効性を危ぶむ声もありましたが、こういう形で時代の“趨勢”が明示されると、未参加国もなかなか無視しづらい環境が出来ていくようにも見えます。
【名誉挽回、「異例の速さ」】
昨年5月のオスロ条約をめぐるダブリン会議では、日本は積極的にこれに賛成するというより、当初同じような立場にあった欧州各国が積極姿勢に転じるなかで、アメリカの意向に配慮しつつ、しかし、孤立は避けたい・・・といういつものパターンでした。
ただ、賛成の方向を決定してからは、ある程度“腹をくくった”ような感じです。
日本は、子爆弾を数百個まき散らし、不発率が極めて高い「旧型」や「改良型」のクラスター爆弾を4種類保有しています。
禁止条約案では、子爆弾が数個と少なく不発率が極めて低い「最新型」は例外として保有が認められ、このタイプは独仏などが生産しており、欧州諸国が導入するとみられています。
日本政府は人道上、不発弾による「副次的被害を避ける」ことを重視。
最新型でも不発弾による被害が完全になくなる保証がなく、コストもかさむため、導入を見送り、子爆弾による被害の根絶を目指す方針を決めました。
代替兵器としては、精密誘導弾導入が政府決定されています。
また、中曽根外相は12月の署名式での演説で、被害者支援を含む不発弾対策に今後1年間で600万ドル(約6億円)を拠出し、国際協力に積極的な姿勢をアピールしました。
更に、条約批准の取り組みにも、いつになく素早い対応を見せています。
****クラスター:禁止法案を閣議決定…先進国では最も早く****
政府は10日、不発弾による市民への被害が問題となっているクラスター爆弾について、製造や保有を禁じる「クラスター爆弾禁止法案」を閣議決定した。08年12月に署名した禁止条約を具体化するもので、今国会中に条約批准とともに法案成立を目指す。先進国では最も取り組みが早く、非人道兵器の規制に向けた強い意思を国際社会に示した。
条約案は有志国や非政府組織が進めた軍縮交渉「オスロ・プロセス」で採択されたが、政府は当初、消極的だった。名誉挽回(ばんかい)し軍縮分野での存在感をアピールするため「異例の速さ」(外務省幹部)で取り組みを進めた。条約批准案と禁止法案は衆参の委員会で別々に審議される見通し。
外務省によると、同条約を批准した国はノルウェー、アイルランド、バチカン、シエラレオネの4カ国。非政府組織などによると、署名した英独仏伊などでは金融危機の対応に追われ、批准に向けた作業が停滞している。【3月10日 毎日】
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【クラスター爆弾使用状況】
オスロ条約が締結されてからは、“クラスター爆弾は使ってはならない兵器”という認識がひろがりつつあります。
昨年8月のグルジアでの紛争では、ロシア・グルジア双方(ともに条約未参加)が相手を批判しあっています。
グルジアは、ロシア軍が8月12日にグルジア中部ゴリなどへの空爆で使用したクラスター爆弾によって民間人11人が死亡したとロシアを非難。空爆後も、現場に残された不発弾によって複数の民間人が死亡していると主張しました。
ロシアは、自国軍によるクラスター爆弾使用を否定する一方で、グルジアの使用したクラスター爆弾で南オセチアの民間人に犠牲が出ていると主張。
昨年末から今年1月のイスラエル(条約未参加)によるガザ侵攻において、イスラエル軍はクラスター爆弾を使用しなかったようです。イスラエル政府はクラスター爆弾の使用については言及していませんが、国連に対しては「(国際的に)禁止されている兵器は使っていない」と説明しています。
なお、06年の第2次レバノン戦争では、イスラエル軍が大量のクラスター爆弾を使用し、子爆弾で推定100万発の不発弾が残されました。
もっとも、イスラエルは白リン弾はガザで使っていますので、クラスター爆弾を使わなかったのは人道的問題・国際的批判とは別に、空爆後の地上侵攻を想定すれば、市街地に不発弾が残りイスラエル兵が死傷する可能性があるという事情もあってのことだったのかも。
武装組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」との戦闘が激化したスリランカでは、政府軍によってクラスター爆弾が使用されました。
国際的評価を気にしないような小国への歯止めにはならない場合がある、という条約の限界を露呈した形となり、関係団体へ衝撃を与えました。
【米ロにも変化の動き】
アメリカでは国防総省が国際世論に押される形で昨年7月、「新方針」を発表。
2018年以降は不発率1%超の爆弾の使用を禁じる方針を定めました。
しかしこれは事実上今後10年間の使用を認める内容だととの批判があります。
米議会では、クラスター爆弾使用禁止を求める法案が提出されています。
****クラスター爆弾:使用禁止案を米議会議員団が両院に提出****
不発弾が市民を殺傷しているクラスター爆弾について、米議会の上下両院の議員団がこのほど、米軍による同爆弾の使用禁止を定める法案を両院に提出した。昨年12月のクラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)締結後、米国で同爆弾の使用を規制する法案が提出されるのは初めて。米国防総省は禁止に反対しているがオバマ大統領は積極的で、議会でどこまで支持が集まるかが焦点となる。(中略)
法案は不発率が1%超のクラスター爆弾の使用を即時全面禁止。さらに使用が認められる対象も「軍事的目標に限り、一般市民が存在するか、もしくは通常居住するとされる地域では使わない」と厳しく限定し、事実上の全面禁止に近い内容となっている。(後略)【2月23日 毎日】
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もうひとつの大量保有国ロシアにも姿勢の変化がみられます。
****露外相:クラスター爆弾禁止条約を評価****
ラブロフ露外相は7日、ジュネーブ軍縮会議での講演で、同会議が10年以上も空転を続ける中、「(軍縮問題に積極的な)有志国グループによる努力が、一部の軍縮問題を解決できた」と述べ、有志国方式の軍縮を評価した。
直接の言及はなかったが、有志国方式の軍縮交渉「オスロ・プロセス」が昨年末に調印したクラスター爆弾禁止条約や、同条約のモデルとなった対人地雷禁止条約(99年発効)を念頭においたものとみられる。
ロシアは、どちらの条約にも参加していない。だが、オスロ・プロセス進展を受けて、「クラスター爆弾の人道被害などない」という従来の主張を撤回して、なんらかの対策が必要だという立場に転換するなど、議論の進展を注視する姿勢を示していた。【3月7日 毎日】
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全体的な流れとしては、使用禁止に向けてかなり早いスピードで流れているように見えます。