
(催涙ガスに煙るギリシャの街角 08年12月に起きた若者達の暴動のときの様子です。
深刻な経済危機にあるギリシャでは、特に若者の失業率が暴動当時で21%に達していました。
“flickr”より By agelakis
http://www.flickr.com/photos/agelakis/3100622522/)
タイ北部チェンライ周辺を旅行中です。
昨日(2月4日)チェンライからボートでタートーンへ移動、今日はタートーンから旧国民党軍の村メーサローンへやってきました。
最近のインターネットの普及はタイでも目覚しく、ガイドブックにも載るか載らないかぐらいの小さな街タートーンでもネットカフェがあり、メーサローンの安宿もワイアレスのネットが部屋で使えます・・・本来は。
ただ、理由はよくわかりませんが今日はネットは使えないとのこと。
そんな訳で4日に書いていますが、更新できるのはいつになるか・・・。
更新できた日には状況が変化しているこもしれませんが、ご容赦を。
【「市場の狙い撃ち」】
欧州経済においては、世界的な金融危機によってアイスランドやウクライナ・ハンガリーなど中東欧諸国の経済危機が注目されていましたが、昨年暮れからよく目にするようになったのはギリシャ経済の問題です。
(アイスランドや中東欧諸国の経済が好転した訳でもないでしょうが)
単にギリシャ1国にとどまらず、他の財政問題を抱えるEU内の国々にも影響が及びかねない情勢です。
EUでは財政赤字について国内総生産(GDP)の3%以内に抑えるように基準を設けていますが、09年のギリシャの財政赤字はこの財政基準の4倍超の12.7%に達し、債務残高は国内総生産(GDP)比124.9%に膨れ上がる見通しで、この比率はユーロ圏16カ国の中で最大となります。
昨年11月の総選挙で勝利した与党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)社会党は、財政赤字をGDP比12.7%から9.1%に削減することなどを盛り込んだ改革案を昨年12月初旬のユーロ圏財務相会合で説明。
ユーロ圏の財務相は一段の削減が必要になる可能性があると指摘、ユーログループのユンケル議長は「われわれは一段の措置が依然として必要であると認識している」と、また、ギリシャに関する限り、破たんの兆しはまったくない」としながらも、「ギリシャの状況はかなり懸念される」とも語っていました。
こうした状況を受け、主要格付け会社は昨年12月、ギリシャの格付けを相次いで引き下げました。
今年1月には、欧州委員会が12日、ギリシャ政府の経済統計は「信頼できない」と批判する異例の報告書を発表、また、米格付け会社のムーディーズが13日、抜本的な財政改革を実施しなければ「ギリシャとポルトガルは緩慢な死に向かう」と指摘したことで、市場の混乱が拡大。市場では、「市場の狙い撃ち」(パパンドレウ・ギリシャ首相)にあう形でギリシャ国債が売り込まれる事態となっていました。
この混乱は、ギリシャが1月25日に市場から総額80億ユーロ(約1兆円)の資金調達に成功、危機はいったん遠のいたと見られていましたが、27日にポルトガルが「09年の財政赤字が、当初予想のGDP比8%から9.3%に悪化した」と発表したことなどを機に、信用不安が再び拡大。
ギリシャが債務不履行(デフォルト)に追い込まれれば、ユーロの国際的な信認にも影響するとの懸念が高まり、EU首脳は28日、相次いで巨額の財政赤字に陥ったギリシャの救済を検討する意向を表明しました。
“EUの執行機関、欧州委員会のバローゾ委員長が同日、ギリシャ問題について「EUの問題だ」と指摘。スイスで開かれている世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席したEU議長国スペインのパテロ首相も「ユーロ圏諸国は強いきずなを持っている」と述べ、ギリシャ支援の可能性を示唆した。”“ダボス会議に出席したパパンドレウ首相は28日、「ギリシャは支援を受ける考えはない」と従来の方針を改めて強調したが、「EUが早く市場を落ち着かせるためのメッセージを出さないと、暴走して混乱が拡大する」(国際金融筋)との懸念が高まっている。”【1月29日 毎日】
【欧州委員会 一層の改善措置を勧告】
最近の情勢としては、EU側の対応で、
****EUがギリシャに財政改善勧告 歳出削減や税収増など****
欧州連合(EU)の欧州委員会は3日、深刻な財政危機に陥ったギリシャ政府がまとめた経済安定化計画をおおむね了承、同時に歳出削減や税収増など一層の改善措置を勧告した。EUは今後、ギリシャに計画の実施状況を報告させ、財政再建を厳しく監視する。勧告を実施しなければ、ギリシャは制裁金を科せられる。【2月3日 共同】
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ギリシャ側の対応としては、
****ギリシャは財政危機脱却に向け全ての策を講じる=首相*****
ギリシャのパパンドレウ首相は2日、財政危機から脱するために、公共部門の賃金凍結の対象拡大や、燃料および海外企業に対する増税など、全ての策を講じる考えを示した。
テレビでの演説で首相は「政府は断固として、必要な策全てを講じる」と述べ、公共部門職員の賃金凍結について、年功に基づいた賃上げを除き、月給が2000ユーロ以下の職員にも今年適用することを明らかにした。月給2000ユーロ以下の職員の賃金は当初、インフレ率を上回る賃上げが約束されていた。
今回の措置が財政状況に与える影響は現時点で明らかではない。
首相は、今後数日以内に公共部門の全般的な賃金に関する計画を発表するとともに、新たな税制改正法案を来週明らかにすると述べた。
その上で「2010年に、早急で実質的な歳入の増加を確実にすることが欠かせない。そのため、税制法案に燃料税引き上げが含まれている」と語った。
さらに、海外企業や富裕層に対してより厳しい税制を導入する方針を示した。
また、問題を抱える社会保障システムが機能するように、定年年齢の引き上げについて示唆した。【2月3日 ロイター】
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【飛び火】
一方、ギリシャのパパコンスタンティヌー経済・財務相は今月2日、「ギリシャの後にはスペインやポルトガルのような国がある」と述べ、同様に財政悪化に苦しむ両国に危機が波及する可能性を警告しました。
経財相の発言は、危機が他国に飛び火すると警告することで、将来的なEUによる救済の必要性を示唆したと受け止められています。【2月3日 共同】
ただ、名前があがった国では、逆にこうした発言で火の粉が自国にも降りかかってくるのを懸念する動きも出ています。
****ポルトガルの財政状況は、ギリシャとはまったく異なる=財務相****
ポルトガルのサントス財務相は2日、ギリシャの財政問題をめぐる金融市場の混乱は他国に拡大する可能性があるが、ポルトガルの財政状況はまったく異なっていると述べた。
同相は経済会合で「(ギリシャとポルトガルの)状況を同一視しようとするのは公平でない。ポルトガルの状況はギリシャとはまったく異なっている」と語った。【2月3日 ロイター】
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コンスタンシオ・ポルトガル中銀総裁は2日、同国はかなりの経済調整が必要との認識を示し、短期的見通しには相対的に悲観的だと述べ、間接税引き上げに踏み切る公算が大きいとの見方を示しています。
これに対し、ポルトガルのダシルバ経済・開発相は2日、「短・中期的な予算案にも政府の戦略にも増税は盛り込まれていない。これはコンスタンシオ総裁の意見であり、政府はこの考えを共有していない」と、政府は中期的に増税を計画していないとの認識をあらためて示し、国内での意見の食い違いも表面化しています。
【国家主権とEU】こうした事態に、EU側からは、「連鎖反応」を起こさないように、ギリシャへの一層の努力を求める声も出ています。
****ギリシャ、欧州全体への連鎖反応防ぐ必要=オランダ財務相*****
オランダのボス財務相は2日、ギリシャは欧州全体に「連鎖反応」を引き起こさないために、公的債務問題の解決策を策定する必要があるとの考えを示した。
同財務相はオランダのRTL─Zテレビとのインタビューで「ギリシャが問題を解決しなければ、市場は次に(財務状態が)弱い国に注目する。すでにこうした動きは出ている。ポルトガル、次はアイルランド、その次はスペインだ。こうして連鎖反応が広まってゆく」と述べた。
その上で、ギリシャは自力で解決策を策定すると確信していると述べた。【2月3日 ロイター】
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公共部門の賃金凍結とか増税といった国家主権の範疇とされてきた問題に、EUとしての共同体の意思がどこまで反映されるのか、あるいは、国家主権はどこまで共同体によって拘束・制約されるのか、そうした視点からも興味深い展開です。
なお、ギリシャはユーロのほか、ドルや円建てで国債の発行を計画しているそうで、パパコンスタンティヌー経済・財務相が2月下旬にも、日本を含むアジア各国と米国を訪れ、国債の売り込みを図るとも報じられていました。
国債を海外に頼っているか国内で消化しているかという違いはありますが、数字だけで見れば、財政赤字のGDP比にしても、国債残高にしても日本のほうが遥かに高い数字を示しています。
それでも財政危機がギリシャほど深刻化しないうえに、国債引き受けまであてにされるというのは、日本もたいしたものだと変なところで感心してしまいます。
それとも、単に危険な状況を見過ごしているだけでしょうか。