孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

米国債保有、日本が中国抜き首位に復帰 経済記事に見る日本・アメリカ・中国の関係

2010-02-17 16:19:08 | 国際情勢

(07年5月当時のエコノミスト誌 “”より By gaojun1020a
http://www.flickr.com/photos/65964354@N00/516062428/)

【ジャパン アズ ナンバー?】
09年の名目GDP比較で、日本は中国の追い上げをかろうじてかわして“世界第2位の経済大国”の座を守ったそうです。
****10~12月期GDP、1.1%増 国際比較では米国に次ぐ第2位を維持****
内閣府が15日に発表した2009年10~12月期の国内総生産(GDP)の速報値は、実質GDP(季節調整済み)が前期比1.1%増、年率換算で4.6%増となった。
09年の名目GDPの国際比較によると、日本は約5.1兆ドル(約460兆円)でかろうじて世界2位の座を維持した。中国は約4.9兆ドル(約440兆円)だったが、2010年も強力な経済成長が見込まれるため、出口の見えないデフレや少子化に苦慮する日本が中国に抜かれるのは時間の問題とみられる。【2月15日 AFP】
***************************

もちろん、今年10年の日本・中国の順位入れ替わりは誰の目にも明らかなところです。
非常に素朴な思いとして、日本の経済的位置づけが次第に低下することには残念な思いはあります。
ただ、考えてみれば、中国の人口は日本の10倍ですから、もし中国を含めて世界の人々の経済状況が等しくなれば、中国の経済規模も人口に比例した日本の10倍規模のものであってなんら不思議はない話です。
いたずらに、日本経済が世界第何位というものにこだわる発想は、現在の世界の格差・不均衡を前提にした考えの裏返しにもなりかねません。

個人的には、アジア各国を旅行することが好きですが、その魅力のひとつは物価の安さにあります。
宿泊費、交通費、食費など、日本に比べれば数分の一の価格です。
その低価格は、現地の経済水準の反映でもあります。(もちろん“暮らしやすさ”というものは、そうした数値的な経済水準に必ずしも比例するものではありませんが)
その状況を享受するとき、日本の経済力を実感しますが、ときに「ここは○○(国名)なのに、どうしてこんなに高いの?これじゃ、日本とそんなに変わらないじゃない」なんて不満に思ったりすることも。
そこには日本との経済格差を当然のものとして受け入れている自分がいますが、やはり“本来は”そうした発想はどこか歪んでいるのでしょう。

【中国 米国債保有高削減を加速】
さて、中国経済のほうは、いろいろなバブル・限界とか崩壊の可能性が昔から指摘されながらも、今のところは世界不況からの立ち直りに苦しむ日本を含めた先進国をしり目に、それなりのペースを維持しています。
****中国、ドイツ抜いて世界一の輸出国に*****
2010年02月09日 22:43 発信地:フランクフルト/ドイツ
ドイツ連邦統計庁が9日発表した統計によると、中国がドイツを抜いて世界一の輸出国になった。
ドイツ連邦統計庁の2009年貿易統計(速報値)によると、同国の輸出額は1950年以降最大の下落率となる前年比18.4%減の8032億ユーロ(1兆1213億ドル、約99兆円)、輸入額は前年比17.2%減の6671億ユーロ(約82兆円)となった。
また、同庁は声明で、「中国商務省によれば、2009年の中国の輸出額は1兆2017億ドル(約108兆円)となった」と述べた。【2月9日 AFP】
**************************

中国経済もいつまでも輸出依存型ではなく、内需主導の経済に変わっていかなければならない・・・云々の話はありますが、いっこうに内需が拡大しない日本に言われる話ではないかも。
ただ、こうした中国経済の突出は、かつての日本がそうであったように、いわゆる貿易摩擦問題を惹起します。
現実にアメリカとの間で問題になっていますが、そんななかで「フーン・・・」と思ったのが次の記事。

****米国債保有、日本が中国抜き首位=1年4カ月ぶり****
米財務省が16日発表した国際資本収支統計によると、昨年12月末時点の各国別の米国債保有高は、日本が7688億ドル(11月末は7573億ドル)となり、2008年8月以来、1年4カ月ぶりに首位となった。中国は7554億ドル(同7896億ドル)で2位。最大保有国の地位逆転は、貿易などで摩擦が強まっている米中関係にも影響を及ぼしそうだ。
日本は2カ月連続で米国債保有高を増やした一方で、中国は保有高を削減してきており、首位が逆転した。中国による保有高削減は、外貨準備の運用先多様化の一環とみられる。ただ、対中ダンピング(不当廉売)調査など通商政策をめぐり米側の厳しい対応が目立ち始めた昨秋以降、米国債の保有高削減が一段と加速している。【2月17日 時事ドットコム】
*************************

米国債保有については、日本を抑えて中国が最大の債権国になっているとばかり思っていました。
日本が増えたというより、中国が外貨準備の運用先多様化を進めて、米国債保有を減らしたということです。

【米中関係への影響】
現在、アメリカと中国の間には、貿易摩擦、元の為替管理の問題、台湾への武器売却問題、チベットのダライラマ14世との大統領会談の問題、グーグル問題、その他イラン・北朝鮮などの国家への対応、温暖化対策・・・等々多くの問題があります。
それでも“米中新時代”とか“G2”とかいう言葉に示されるように、多少の不協和音、あるいは国内向けに“怒ってみせる”ようなパフォーマンスはあっても、両国の協調関係は大枠としては続くのでは・・・という思いがあります。

そうした考えの根底には、米中間の一蓮托生・運命共同体的な関係、中国がアメリカ市場に依存し、そこで得た貿易黒字によってたまる外貨準備で米国債を購入し、最終的にアメリカの財政赤字を引き受ける・・・という関係があります。
決定的な関係破綻は、アメリカは資金調達ができなくなり、中国は市場を失い外貨準備の経済価値を損なうことになりますので、両者ともそうした事態は避けるのが賢明だろう・・・という考えです。

このまま中国が米国債購入を減らしていくようだと、アメリカは大量国債発行が難しくなり、国内問題への対処も滞る懸念も出てきます。
そうなると、米中間の基本的な関係も見なおしが必要になってくるかもしれません。
それは日本丸にとっても舵取りの難しい大波になりますが。

常識的には“ひとつのバスケットに全部の卵を入れない”というのが当たり前ですが、経済的に考えると、こんなに大量の米国債を抱え込んでいる中国も日本も、異常な状況です。
米国債価格の状況如何で多大なリスクを負う形になっています。
今は、日本は米国債からの利払いを数兆円規模で受けているようですが。

米国債の大量売却は、ドル安円高、米国債価格低下・金利上昇、アメリカの資金調達の困難を招きますので、なかなか手をつけられないところでもあります。
ここに手をつけるような事態になれば、それこそ日米同盟の見直しと言ってもいいような大きな問題になるでしょう。

【巨額の外貨準備高はどうして?】
米国債購入の原資は外貨準備高にありますが、現在、中国が2兆ドル超、日本が1兆ドル超の準備高を有しており、世界的に突出しています。
日本ですら欧州全体の2倍ほどです。

外貨準備は中央銀行の円売りドル買いという円安誘導・円高防止の施策で増加しますが、素人的に不思議に感じるのは、日本は変動為替相場であるにも関わらずどうしてこんなに巨額の外貨準備があるのか?ということです。ウィキペディアなどによれば、03年、04年当時の為替介入の影響が大きいようです。
なお、現在も日本の外貨準備高は増加傾向で推移していますが、最近の増加は介入によるものではなく、運用利息の元加によるものだそうです。

一方の中国は。
近年の急速な外貨準備増加の原因は、やはり言われているように通貨“元”に対する為替介入が、輸出に有利な元安の方向で行われている結果でしょう。
こうした数字を見ると、中国経済のゆがみもまた見えてきます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする