
エリコ(旧約聖書にもその名前が繰り返し登場する世界最古の町とも言われる、ヨルダン川西岸地区の死海北西部の町)の少女 07年9月撮影 “flickr”より By Ucodep
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【停滞する和平交渉】
パレスチナをめぐる中東和平については、ヨルダン川西岸での新規の入植住宅に限って、その建設を10カ月凍結するという、イスラエル側の“一時的・部分的”凍結提案に、“完全凍結”を求めるパレスチナ側が反発、仲介するアメリカのイスラエル案容認とも思われる方針変更などもあって、交渉が全く動いていません。
****パレスチナ:アッバス議長 交渉拒否方針、米特使に強調****
ミッチェル米中東特使は22日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラで、アッバス自治政府議長と会談した。特使はイスラエルとの和平交渉の再開を促したが、議長は改めて、イスラエルが占領地での入植活動を「完全凍結」しない限り、再開に応じない方針を強調した。
入植地問題を巡っては、イスラエルは昨年11月、西岸での新規の入植住宅建設を10カ月凍結すると発表。交渉再開のため「既に十分譲歩した」(外交筋)との認識を示している。
これに対し、パレスチナは、入植の完全凍結こそ和平交渉の土台「新中東和平案」(ロードマップ)に基づくイスラエル側の義務だと主張し、その履行を迫っている。
イスラエル首相府は特使と議長の会談を受けて声明を発表、「前提条件を付けて交渉再開を阻害しているのはパレスチナ側だ」と非難した。【1月24日 毎日】
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【「99%、モサドの仕業だ」】
更に、最近話題となっているのは、イスラエルの諜報機関モサドがハマス幹部暗殺を実行したのではないかという問題での、イギリスなど欧州諸国やドバイを巻き込んだ事件です。
****ドバイのハマス幹部殺害 欧州と外交摩擦に モサドが関与か*****
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス幹部が今年1月にペルシャ湾岸のアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで殺害された事件は、イスラエルの対外諜報(ちょうほう)機関モサドが実行したとの見方が強まり、波紋を広げている。ドバイ当局が特定した実行犯11人は英国など欧州諸国の旅券を所持していたことが判明、英外務省が18日、駐英イスラエル大使を呼び説明を求めるなど外交問題にも発展しそうな気配だ。ハマスはイスラエルへの報復を叫んでいる。
殺害されたのは、ハマス軍事部門のマフムード・マブフーフ司令官。先月20日、ドバイ市内の高級ホテルの一室で、感電させられた上に、首を絞められて殺害された。
同司令官はハマス軍事部門創設者の一人で、1988年にパレスチナ自治区ガザ地区でイスラエル兵2人を誘拐・殺害した作戦を指揮し、89年からはシリアを拠点に活動。最近は、ガザへの武器密輸で中心的な役割を果たしていた。今回のドバイ訪問も武器買い付けが目的だったとみられている。
ドバイ警察のタミーム長官は今月15日、空港やホテルの監視カメラなどから実行犯を特定したとした上で、11人のうち英国の旅券保持者が6人、アイルランドが3人、フランスとドイツが各1人だったと発表。18日付のドバイ紙によると、同長官は「99%、モサドの仕業だ」との見方を示した。
英国やアイルランドによる調査の結果、犯行に使われたパスポートには、自国の国籍を保持したままイスラエルに移住し、イスラエル国籍も取得した人たちの情報が使われていることが判明。名前が挙げられた人たちは写真などから実行犯とは別人と判明したものの、一気にイスラエル関与への“疑惑”が強まった。
イスラエルのリーベルマン外相は「イスラエルがやったとする証拠はない」と述べ、“関与”について否定も肯定もしていない。しかし、自国の旅券をこうした形で“悪用”されたことがわかった英国では、「イスラエルから明確な説明を求めたい」(政府報道官)といった声が出ている。
イスラエル国内では、すでにモサドが実行したかのような前提で議論が展開。マブフーフ司令官の暗殺行為そのものを否定する論調はないものの、対外工作のあり方について、「欧州との摩擦は残ったとしても、マブフーフ殺害は重要な成果」(有力紙イディオト・アハロノト)、「戦術的な成果よりも、長期的な戦略を考えると外交問題に発展するようなやり方を続けることが賢明だろうか」(ハアレツ紙)といった議論が出ている。
一方、ガザ地区では17日、多数のハマス支持者が集会を開き、イスラエルへの報復を叫んだ。【2月19日 産経】
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国際刑事警察機構(ICPO)は、容疑者とされる「暗殺部隊」11人の国際逮捕手配書を出していますが、ドバイ警察幹部は地元テレビのインタビューで、イスラエルの対外情報機関モサドの関与が証明されれば、ダガン長官を逮捕すべきだと語っています。
【古タイヤと泥で建てた小学校ですら・・・】
すでに、ハマスは抗議集会などでイスラエルへの姿勢を硬化させていますので、イスラエル・パレスチナ間の交渉はますます難しくなった情勢です。
そうした政治的対立に置き去りにされた、パレスチナ住民の暮らしを伝える記事が印象に残りました。
****パレスチナ:泥固めて建てた念願の小学校 壁には古タイヤ*****
古タイヤと泥で建てた小学校が、エルサレム近郊のパレスチナ人集落にある。暖房器具も、電話さえもない学びやだが、地元の人々には念願の「母校」だ。中東和平交渉が停滞する中、イスラエル占領下のヨルダン川西岸にあるこの集落は、イスラエルとパレスチナ自治政府の「はざま」に陥り、社会基盤整備から取り残されてきた。
エルサレムから死海方面へ向かう幹線道路沿い。砂漠が広がるこの一帯に、パレスチナ人のベドウィン(遊牧民)、ジャハリン部族の集落が散在する。そのうちの1カ所に昨年9月、小学校が開校した。イタリアの非政府組織(NGO)の支援・指導で、地元の人々がゴミ集積場などから集めた約2000本の古タイヤを積み上げ、泥で塗り固めた校舎だ。
全児童は6~11歳の54人。この学校ができる以前は、約20キロ離れたパレスチナ自治区エリコの学校までヒッチハイクして通っていた。保護者の一人、イド・ジャハリンさん(40)は「登校中に事故で命を落とした子供もいる。地元に学校ができて本当にうれしい」と喜んだ。
しかし、今年に入ってようやく、太陽光発電装置で電気が使えるようになるなど、施設整備は進んでいない。パレスチナ自治政府に電力供給などを求めたが、集落のある一帯がイスラエル軍の完全占領地域であることを理由に、イスラエルに要請するよう言われた。一方、イスラエルは「パレスチナ人なのだから自治政府に頼むのが筋」と取りつく島もない。付近のユダヤ人入植地の団体は、学校を無許可の「違法建築」と問題視し、イスラエルの裁判所に取り壊しを求めて訴えた。
ハナン・アワド校長は「もっと学校を充実させたいが、課題が多過ぎる」と頭を抱える。取材中、子供を入学させたいと母親が訪ねてきた。校長は「受け入れる余裕がない」と断らざるを得なかった。「それなら子供を学校には通わせない」。母親はそう言い残して帰っていった。【2月18日 毎日】
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やっとの思いでできた古タイヤと泥で建てた小学校、それすら、パレスチナ自治政府からもイスラエルからも支援が得られず、イスラエル入植者からは取り壊しの訴訟を起こされ、入学を希望する母親を断らざるを得ない状況・・・なんとも切ない、やりきれない現実です。
それぞれの大義を掲げて対立に明け暮れる政治から見捨てられた住民の生活・・・パレスチナだけではない、世界中で見られる現実です。