孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア 穀物輸出規制延長  モザンビークではパン値上げで暴動

2010-09-04 22:24:38 | 国際情勢

(モザンビークでの暴動 まだ炎も消えない路上を行く子供を抱えた女性 “flickr”より
By Pan-African News Wire File Photos http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/4956408944/)

【「輸出規制の解除は、来年分が収穫された時点ではじめて検討される」】
記録的な干ばつ被害のロシアが穀物輸出を年内規制し、更に、10年超ぶりにロシアが穀物輸入を検討しているとの情報もあって、世界の穀物相場は大きく変動しています。
穀物輸入に関しては、ロシアの報道官がその後、「ロシアは2010年に穀物を輸入しない。国内に十分な穀物がある」、「(輸入をめぐる)うわさは市場を過熱させるために、一部の不正な穀物トレーダーが利益を上げる目的で流している」と、これを否定しています。【8月21日 ロイターより】

ロシアの動向以外にも、大規模洪水被害に見舞われたパキスタンも、小麦200万トンの輸出を中止する公算が大きいとされ、世界的に供給不安が高まっています。
ここにきてロシア・プーチン首相の穀物輸出規制延長発言で、市場には困惑もみられます

****ロシア首相、穀物輸出規制を延長する可能性を示唆*****
ロシアのプーチン首相は2日、穀物輸出規制を2011年後半まで延長する可能性を示唆した。
首相は閣議で「輸出規制の解除は、来年分が収穫された時点ではじめて検討される」と述べた。来年分は2011年11月までに収穫されることから、実際にそうなれば輸出規制の解除はかなり先になるとみられている。
ロシアは記録的な干ばつによる被害を受けて、今年の穀物収穫量が、昨年の9700万トンの約3分の2となる6000万─6500万トンに減少すると見込まれており、ロシア政府は当初、8月15日から12月31日まで穀物輸出を規制する方針を示していた。

一方で、メドベージェフ大統領は前月、収穫量次第では輸出規制が前倒しで解除される可能性もあるとの考えを示しており、当局が示す方針も錯そうしている。そのため首相の発言は、アナリストの間で2011年ではなく2010年の収穫分の誤りではなかったのかとの憶測も出たが、首相報道官はロイターに対し、プーチン首相の発言内容を確認した。 
ロシア当局指導部は、2012年の大統領選を控え、小麦やそば粉、肉類など一般食料品の価格上昇が政治基盤の弱体化につながる恐れがあると懸念している。
メドベージェフ大統領は閣僚および地方当局者との会合で、投機筋が食料価格の上昇を引き起こしていると指摘。投機筋に対する規制を強化し、食料価格の安定に尽力する考えを主張した。【9月3日 ロイター】
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まさか、権力者プーチン首相の言い間違いを訂正したくないので、そのまま方針とする・・・なんてことはないでしょう・・・。
国連食糧農業機関(FAO)のエコノミストは3日、ロシアの穀物輸出規制の延長計画は市場の不安定要素にはなるが、2007―08年の食糧危機の再来を招くことはない、との見解を示しています。【9月3日 ロイターより】

【ゴム弾がなくなり、実弾を使用】
しかし、08年の食糧危機再現を思わせるような暴動がアフリカ・モザンビークで起きています。
****モザンビーク:パン値上げ抗議 暴徒化で子供ら10人死亡*****
アフリカ南部モザンビークで3日までに、パンなどの値上げに抗議する市民デモが暴徒化して警官隊がゴム弾などを発砲、子供を含む10人が死亡したほか、400人以上が負傷した。ロイター通信が伝えた。
デモは1日に首都マプトで発生。いったんは沈静化したが、郊外地域で再燃した。値上げは、ロシアなどでの記録的猛暑による干ばつの影響で小麦の生産量が落ち込み、穀物価格が高騰したためという。モザンビークは小麦の国内消費の大半を輸入に頼っており、政府は1日、パンの価格を3割値上げすると発表していた。
水や電気料金の上昇が重なったこともあり、抗議デモをした市民の一部が商店から物品を略奪したり、主要道路を封鎖したりしたため、警官が発砲した。【9月4日 毎日】
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1日の暴動を伝える記事によれば、“デモ隊の投石や道路封鎖に対して、警察は当初はゴム弾を使って対応したが、ゴム弾がなくなり、実弾を使い始めた”とも。【9月2日 朝日】
同記事によれば、暴動の原因・背景は“モザンビークでは1日、パンの値段が政府によって30%上げられた。国内消費量の7割を輸入に頼る小麦粉の世界的な値上がりや、輸入元である南アフリカ通貨の値上がりが原因だという。電気代や水道代も高くなった。”とのことです。

【経済成長するも、国民の7割が貧困層】
アフリカ南東部のモザンビークでは内戦が92年に終結した後、「シサノ大統領の下で比較的安定した政治とGDP8%~10%の経済成長も実現した。2005年よりゲブーザ大統領に代わるが、2007年7.4%、2008年6.8%、2009年6.3%のGDP成長率、但し、最貧国であり、食料などは南アフリカからの輸入に頼っている。」
(唸声の気になるニュース http://datefile.iza.ne.jp/blog/entry/1778613/)ということで、国民の7割が貧困層とされ、1人当たりの国民総所得は370ドル(2008年)と発表されています。

08年にも燃料費などで暴動が発生、警察による抗議行動鎮圧で6人が死亡しています。
この時は、世界的にもトウモロコシ価格上昇とバイオ燃料の関係が議論を呼びました。
“2月中旬、モザンビークの地方都市チョクエで始まった暴動は、首都マプトにも広がり、少なくとも4人が死亡した。暴動は地元メディアによって「これは『食料暴動』である」と報道された。バイオ燃料を擁護する人々はこれは実際は軽油の価格抑制を求める『燃料暴動』であるのにメディアが反バイオ燃料の感情を煽るために偏向報道をしていると主張している。”【ウィキペディア】

今回は、輸入先の南アフリカ通過の値上がりが影響しているようで、必ずしも小麦価格上昇の結果だけではないようです。
ここ10年高い経済成長を実現しているにもかかわらず、こうした暴動が頻発するのは、成長の成果の国内配分を行うべき政治機能に何か問題があるのでは・・・とも思われます。
コメント
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