(9月3日、ハバナ大学で学生ら約1万人を前に熱弁をふるうカストロ前議長 “flickr”より By lauro.campos http://www.flickr.com/photos/laurocampos/4954355026/)
【蘇った兄カストロ前議長】
06年7月に腸の手術で療養入りしたフィデル・カストロ前国家評議会議長(83)の弟ラウル・カストロ現国家評議会議長(79)のもとで従来の社会主義体制の改革が進むキューバで、煙草の配給制度が停止されるとのことです。
****キューバ、たばこ配給停止「必需品ではない」*****
経済の低迷が続くキューバは9月から、たばこの配給制度を停止する。
同国政府が28日までに、「優先度の高い必需品ではない」として決定した。ラウル・カストロ国家評議会議長はかねて、財政難克服のため、生活用品の配給制度を段階的に見直す方針を打ち出していた。
AP通信などによると、現行では、55歳以上のキューバ国民は月4箱(計80本)のたばこを6・5ペソ(約24円)で購入できる。配給手帳なしで買う場合は1箱でも7ペソ。このため、配給たばこを転売して利ざやを稼ぎ生活費に充てる人も少なくない。キューバでは最近、ジャガイモなども配給品目から除外されたとされ、国民生活は一層厳しくなりそうだ。【8月29日 読売】
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ソ連など多くの旧社会主義国が体制を代え、中国やベトナムなどの現行社会主義国も経済的には市場経済に大きく舵を切っているなかで、今日まで煙草の配給制度が続けられていたこと自体が驚異的です。
そのキューバでは、病気療養で権力も弟ラウルに移譲した、兄の「カストロ」がこのところ元気になって表舞台に再登場しています。
7月以降、各政府機関の視察やテレビ出演などを活発化させていましたが、8月7日には4年ぶりに人民権力全国会議(国会)の特別会合で、持論の核戦争の危機などについて演説して注目を集めました。
また、9月3日には、ハバナ大学で学生ら約1万人を前に軍服姿で登場し、持論の核戦争の脅威について約40分間の演説を行っています。
カストロ前議長は、一時は死の淵にあったと闘病生活を語っています。
****カストロ前議長が闘病を語る、「死の淵からよみがえった」*****
キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(84)が自らの闘病生活について、一時は死の淵にあったなどと語った。メキシコ紙ホルナダが30日、同前議長とのインタビューを掲載した。
病名は公表されていないものの、2006年7月に緊急手術を受けたカストロ前議長は、一時はあまりの体調悪化からもう「生きたくない」と考えるほどだったと明かした。「この苦痛がどのくらい続くのか分からず、ただ世界が終わってほしいと望んでいた」という。
その上で、カストロ氏は「しかし、私は復活した」と強調。一時66キロにまで減少した体重も今では86キロまで戻ったほか、介助なしに600歩ほど歩けたと述べた。「まだしなければならないことがある」として、今では核戦争を回避するために力を注いでいると語っている。【8月31日 ロイター】
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【過去の施策の非を認める】
病を克服したことは喜ばしいことですが、そうなると弟ラウルに移譲した権力はどうなるのか?
ラウルが進めるカストロ体制の改革を、カストロ前議長は支持するのか?ということが気がかりになります。
そのあたり、部外者に窺い知れぬものがありますが、ただ、死の淵から蘇ったカストロはこれまでとは違って、だいぶ「まるくなった」ような印象もあります。
過去の自分が行った施策についても、素直にその非を認めるような発言もしています。
****カストロ前議長、60年代の同性愛者迫害で「責任はわたしに」*****
キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(84)が、31日付のメキシコ紙ホルナダでのインタビューで、1960年代に同国政府が進めた同性愛者への迫害政策について、「ひどい不正だった」と自らの責任を認めた。
キューバでは1960年代、同性愛者が「反革命的」とみなされて強制労働キャンプに送られるなどし、1979年に同性愛が法的に認められるまで当局による差別が続いた。
カストロ氏は、こうした政策が「ひどい不正だった」と発言。自身は同性愛者に対する偏見はないとしながらも、「責めを問われるとすれば、それはわたしだ」と責任を認めた。(中略)
キューバでは同性愛者を取り巻く状況が大きく変化し、今では性転換手術も無料で受けることができる。【9月1日 ロイター】
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****キューバ危機を後悔=イラン大統領はホロコースト認識を―カストロ氏****
キューバのカストロ前国家評議会議長(84)は、米誌アトランティック(電子版)とのインタビューで、米ソが核戦争の危機に直面した1962年のキューバ危機当時の自らの行動について、後悔の念を示した。同誌が8日に公表した。
カストロ氏は、米国がキューバを攻撃した場合、米国への核攻撃を検討するよう求める書簡を当時のフルシチョフ・ソ連首相に送付。これについて「現在でも論理的と思えるか」との質問に対し「結果的には全く価値のないことだった」と述べた。
同氏はまた、イランのアハマディネジャド大統領がナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定していることを批判。イラン政府は、反ユダヤ主義の歴史を認識すべきだと主張した。【9月9日 時事】
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****カストロ前議長、社会主義経済の限界認める発言*****
米月刊誌「アトランティック」は8日、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(84)と行ったインタビューの内容を公表。
前議長はその中で、国家が経済活動を統制するキューバ・モデルは「もううまくいかない」と発言した。
社会主義経済の限界を認めたのは、実弟のラウル・カストロ国家評議会議長が進める資本主義的経済路線を是認する意図もあった可能性があり、注目される。(後略)【9月9日 読売】
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特に最後のキューバ・モデルを「もううまくいかない」と評した発言は注目されます。
これが真意であれば、弟ラウルの進める改革路線を兄カストロ前議長も支援していく・・・ということにもなります。今でも国民的人気は絶大のカストロ前議長の支援を受けて、キューバ改革は今後も更に進行することにもなります。
それにしても随分とまるくなった「ニューカストロ」ではあります。
9月11日 追記
****米誌の会見記事は誤訳、カストロ前議長が指摘*****
スペイン通信などによると、キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長は10日、米誌「アトランティック」(電子版)が8日公表した前議長へのインタビュー記事の一部を誤訳だと指摘した。
同誌は、前議長が、国家が経済活動を統制するキューバ・モデルは「もううまくいかない」と述べたと報じたが、前議長は10日のハバナ大学での講演で、「(私の意図は)まったく逆だ」と語った。
同誌に掲載された前議長の「発言」は、実弟のラウル・カストロ国家評議会議長が進める経済開放路線を後押しする狙いと受け止められていた。【9月11日 読売】
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