孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

社会不安・対立を煽る「原理主義」 コーラン焼却、ホロコースト否定、パレスチナ人否定

2010-09-08 22:54:26 | 世相

(コーラン焼却イベントを9.11に計画しているテリー・ジョーンズ牧師のようです。 “flickr”より By cantankerousbuddha http://www.flickr.com/photos/cantankerousbuddha/4968707463/

【「イスラム教は悪魔」】
まあ、立場によっていろんな考え方もあるだろう・・・といった日和見的な常識人にとって、ひとつの考え方に固執し、自分たち以外の考えを全否定しているように見える所謂「原理主義的」な発想というのは、理解を超えたものがあります。
ただ、その「原理主義的」な発想によって社会に緊張が高まり、実被害が起きかねないとなると、捨て置けない問題となります。

****米教会が9.11にコーラン焼却を計画、米軍司令官らが懸念*****
反イスラム感情の高まる米国で、2001年9月11日の米同時多発テロから9年となる11日にフロリダ州にあるキリスト教福音派の教会がイスラム教の聖典コーランを焼却すると宣言し、米軍司令官や米政府高官が相次いで懸念を表明している。

国際テロ組織アルカイダによる9.11同時多発テロの3000人近くの犠牲者を追悼するため、9月11日にコーランを焼却するとフロリダ州の小さな教会が宣言。テリー・ジョーンズ牧師は、「9.11で残酷に殺害された人びとを追悼する」とともに「イスラム教の過激分子」に警告を発することが目的だと語った。
この計画について、アフガニスタン駐留米軍のデービッド・ペトレアス司令官は、アフガニスタンの武装勢力にプロパガンダを提供することになると警告し、「米軍部隊を危険にさらし、これまでの努力を危うくしかねない」と米紙ウォール・ストリートジャーナルに述べた。

軍司令官らの間で懸念が広がっていることを受けて、ロバート・ギブズホワイトハウス報道官も、米国の福音派による扇動的な行動は、イスラム世界で激しい抗議を巻き起こす危険性があると懸念を表明した。
また、米国務省のフィリップ・クローリー報道官は、信教の自由は米国社会の柱であると述べ、「コーランを焼却するという計画は、われわれの価値観に反する。米国の市民社会の成り立ちにも反する」との考えを示した。

この計画は、米同時多発テロで崩壊した世界貿易センタービル跡地「グラウンド・ゼロ」のそばに、イスラム文化センターを建設する計画が承認されたことに端を発して、米国社会で「イスラム恐怖症(イスラモフォビア)」が駆り立てられている中での出来事となった。国内の反イスラム感情のうねりを抑えようと、エリック・ホルダー米司法長官は7日、宗教指導者たちと会談を行った。
今年の9月11日は、イスラム教の断食月「ラマダン」明けの祭り、「イード・アル・フィトル」とも重なる。【9月8日 AFP】
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コーラン焼却を計画しているのは「反イスラム」を掲げる福音主義派教会「ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター」ですが、イスラム教は「民主主義や人権と合致しない」などの理由を挙げ、今回イベントについては「イスラム教の教えと理念の危険性を警告するため」としています。
また、同センターでは「イスラム教は悪魔」と記したTシャツを販売しているとか。

「イスラム教は悪魔」と断じる考え方が、「民主主義や人権と合致している」とは常識人には思えませんが・・・。
すでにアフガニスタン・カブールやインドネシアなどイスラム社会での抗議行動が報じられています。
アメリカがアフガニスタンやパキスタンで住民の理解・協力を得ようと活動しても、これでは何にもなりません。
イスラム住民の怒りの矢面に立たされる米軍としては、自らの生命・安全にもかかわる問題です。

クリントン国務長官は7日、国務省での夕食会の席で「(イスラム教徒に)失礼で、不名誉な行為」と非難。またクローリー国務次官補(広報担当)も記者会見で「攻撃的」だとして、「行うべきではない」と明言しています。ただ、当事者は聞く耳を持っているのでしょうか?
今回問題となっている行為もまた「信教の自由」の範疇なのでしょうが、明らかに他の宗教的自由を害し、反社会的影響が大きいこうした行為を差し止めることは許されないのでしょうか?

【「ホロコーストは作られた神話」】
一方、イランでは、イスラム宗教指導者によるユダヤ批判発言が報じらています。
****ホロコースト:また否定発言 イランで宗教指導者*****
イランで最高位の宗教指導者の一人、シラージ師は、第二次世界大戦中のホロコースト(ユダヤ人虐殺)について「迷信に過ぎない。シオニスト(ユダヤ民族主義者)たちが、世界中の人々が受け入れるべきだと主張しているだけだ」と語った。「ホロコーストは作られた神話」としたアフマディネジャド大統領の以前の発言を追認した形だ。
イラン国営通信などによると、シラージ師は「ホロコーストの事実は不明確だ。本当かどうか調査しようとした研究者らは、彼ら(イスラエル)に拘束された」と語った。
イスラエルでは8月末、宗教指導者の一人が、パレスチナ人は「地球上から消えるべきだ」と発言し、物議を醸した。シラージ師がこれに反発した可能性もある。【9月8日 毎日】
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【「パレスチナ人は消えるべきだ」】
上記記事にもあるイスラエルの宗教指導者の発言というのは、ユダヤ教超正統派「シャス党」の宗教指導者、オバディア・ヨセフ導師(ラビ)のものです。
****イスラエル:宗教指導者「パレスチナ人は消えるべきだ」*****
イスラエルで連立政権の一角を占めるユダヤ教超正統派「シャス党」の宗教指導者、オバディア・ヨセフ導師(ラビ)が、パレスチナ自治政府のアッバス議長やパレスチナ人が「地球上から消えるべきだ」などと、エルサレムのシナゴーグ(礼拝堂)で説教。中東和平の直接交渉が米ワシントンで2日に再開されるのを前に物議をかもしている。
ヨセフ導師は8月28日、「神は、パレスチナ人たちに疫病をもたらすべきだ」などと発言し、イスラエル・ラジオが翌29日にその抜粋を放送した。自治政府は声明で「民族差別的な扇動だ」などと強く反発。イスラエルのネタニヤフ首相が「(発言は)私または政府の考えを反映するものではない」と釈明する事態に陥った。米政権は当事者に挑発的な行為を控えるよう呼びかけている。
シャス党は、副首相を含む閣僚4人を右派連立政権に送り込み、政策を左右している。ヨセフ導師は宗教法の権威で、超正統派ユダヤ教徒に強い影響力を持っている。【8月31日 毎日】
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キリスト教にしても、イスラムにしても、ユダヤ教にしても、部外者からすると「どうしてこんなに頑ななんだろう・・・」と思われます。
相手を一切認めない考え方から生じるのは、争いだけです。
彼らは「それで構わない、争いで相手を駆逐することこそが本望だ」と思っているのでしょうから困ったものです。

コメント
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