孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  保守系草の根運動「ティーパーティー」とサラ・ペイリン

2010-09-26 21:15:59 | 世相

(サラ・ペイリンの写真を掲げてワシントンに押し寄せる「ティーパーティー」参加者 “flickr”より By mar is sea Y http://www.flickr.com/photos/marisseay/3913493564/ )

【反オバマ急先鋒の「ティーパーティー」】
大きな期待をされて就任したアメリカ・オバマ大統領の国内支持が下がり続けており、11月の中間選挙での与党・民主党の劣勢が予想されているのは周知のところです。
****オバマ大統領支持率42%、就任以来最低*****
米CNNテレビは24日、オバマ大統領の仕事ぶりへの支持率が42%となり、2009年1月の就任以来最低になったと報じた。
大統領として「期待外れ」との回答も56%で、これまでで最高となった。
好転しない経済情勢や、アフガニスタンでの戦争の長期化などが影響したとみられる。大統領の支持率低下は、11月の中間選挙での与党・民主党の苦戦と、共和党の議席増につながりそうだ。
CNNなどの世論調査によると、大統領の仕事ぶりを「支持しない」という人は54%に達した。また、中間選挙が今日行われたとして、どの党に投票するかという質問では、「共和党」と答えた人が「民主党」を9ポイント上回る53%だった。【9月25日 読売】
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景気刺激対策、医療保険制度改革、金融規制改革などを実現してきたにもかかわらず、現在の苦境に追いやられている事態ついてはいろいろあるところでしょうが、オバマ批判の急先鋒となって、中間選挙においても台風の目になってきているのが保守系草の根運動「ティーパーティー」です。
なお、「ティーパーティー」の名称は、植民地時代の1773年、英国が茶に課税した重税に人々が反発し、茶箱を海に投げ捨てた「ボストン茶会事件」に由来しています。

****予備選終了、16候補指名獲得 ティーパーティー勢い 2010米中間選挙*****
「小さな政府」などを旗印に旋風を巻き起こした米保守系草の根運動「ティーパーティー」は、11月の米中間選挙に向けた予備選でどの程度の影響力を発揮したのか-。予備選が9月18日のハワイ州ですべて終了したのを受け、ティーパーティー系とされる候補者の本選挙での展望を探った。

明確な指導者と独自候補を持たないティーパーティーにとって、最大の広告塔ともいえる存在は、前回の大統領選で共和党の副大統領候補となったサラ・ペイリン前アラスカ州知事だ。
「米国を(建国以来の)米国らしい姿に戻したいと思う人が私を支持してくれるなら、挑戦してみるわ」
ペイリン氏は17日、アイオワ州の集会で2012年の大統領選への意欲を示し、出席者の歓声に応えた。
予備選では応援演説に引っ張りだこで、米紙ワシントン・ポストによると、14日にデラウェア州の共和党上院予備選で大逆転勝利を収めたオドネル氏など、ペイリン氏がテコ入れした候補は上院で7勝2敗、下院11勝6敗、州知事選6勝3敗と、大きく勝ち越した。

一方、AP通信によると、ティーパーティーが推す候補者のうち、オドネル氏やネバダ州でハリー・リード民主党院内総務に挑むシャロン・アングル氏など8候補が上院の指名を獲得。下院では5候補、州知事選ではサウスカロライナ州のニッキー・ヘイリー氏など3候補だ。
ペイリン氏がテコ入れする候補とティーパーティーが推す候補は必ずしも一致しない。だが、一致したときの爆発力は、知名度の高い元州知事のキャッスル下院議員を土壇場で下したオドネル氏の勝利が示した通りだ。ペイリン氏は投票直前になってオドネル氏の支持を表明、形勢を逆転させた。

では、穏健派と呼ばれる共和党主流候補とともに、ティーパーティーが推す候補が中間選挙で民主党候補を相手にどのような戦いを見せるのか。リード氏に挑むアングル氏のように、「反ティーパーティーのバネが働いて、不利だったリード氏が逆に有利になった」との報道もあり、州によってはフタを開けるまで結果が分からないのが実情だ。ただ米メディアなどによると、上院で共和党が民主党に肉薄、下院では共和党が多数派になる可能性が高まっている。反現職ムードに加え、財政赤字や医療保険改革に象徴される「オバマノミクス」への批判が選挙戦全体を包み込んでいる。

全米ティーパーティー連盟(NTPF)事務局のクリスティナ・ボッテーリ氏は産経新聞に対し、「私たちの多くは保守だが、民主党だけでなく共和党にも失望している」とし、同じ共和党でも穏健な主流派ではなく、主張がより保守的な新人など“第3の候補”を支持してきた、と語る。
16日付の政治専門誌「ポリティコ」はティーパーティーの今後の影響力について、「12年の大統領選への出馬を狙う共和党候補は、ティーパーティーに頭を下げて支持を獲得しなければ勝ち抜けないだろう」と指摘している。【9月20日 産経】
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【ポピュリズムを動かすのは「自分たちの地位が失われるという不安」】
共和党予備選挙で大物候補を相次ぎ蹴落とす勢いの「ティーパーティー」の実態については、過去へのノスタルジーと「怒り」を特徴とするアナーキーな性格が指摘されています。

****ティーパーティーの正体*****
11月2日の中間選挙に向けて全米各州で民主・共和両党の候補者を決める予備選が相次いで行われるなか、もはや無視できない存在がある。草の根保守派連合「ティーパーティー」だ。
9月14日に行われたデラウェア州とニューヨーク州の予備選では、ティーパーティーが推す候補が共和党候補の座を勝ち取った。これに先立ち予備選が行われたケンタッキー州やネバダ州タアラスカ州でも、ティーパーティーが共和党主流派の大物候補を破った。

いったいティーパーティーとは何者で、何を求めているのか。
さまざまな調査や集会の参加者を見る限り、この運動の中心となっているのは「大きな政府」を嫌い、社会の変化に敵意を抱く中流層で中年の白人男性だ。その横顔は実のところ、過去の右派運動(78年の「カリフォルニア納税者の反乱」など)の参加者や、ティーパーティー自身が敵意を向ける共和党支配層とぴったり重なる。

ティーパーティーの特徴は、そのアナーキーな性格だ。彼らはあらゆる権威に敵意を示し、いつもけんか腰の言動を取り、自分たちが非難する政策に対して建設的な代替案を示すことはない。
ある意味で、60年代のニューレフト(新左翼)の右派版という見方もできる。ただしニューレフトが若者中心で未来志向だったのに対して、ティーパーティーは年齢屑が高くて考え方も後ろ向きだ。
彼らは資本主義と憲法が絶対的だった時代を懐かしむ(言うまでもないが、そんな時代があったことはない)。そしてやたらと「名誉を回復する」とか「アメリカのルーツに立ち返る」とか「われわれの国を取り戻す」と叫ぶ。
問題は、いつの時代まで立ち返るかだ。極端な憲法原理主義を唱えるグループは、独立戦争時代の軍服を着てパレードに繰り出す。彼らの主張は、連邦政府の役割を憲法の文面どおりに制限して、それを超える法律は州政府が無効にせよということだ(この考えは19世紀初めに連邦最高裁判決で否定されたが、それは無視らしい)。

現実に対する拒否反応 
過去へのノスタルジーを別にすれば、ティーパーティーに最も特徴的なのは怒りだ。
自分たちが苦労しているのは、自分たちよりも社会階層が上か下の誰かのせいだ。リベラルなメディアに職業政治家、それに「いわゆる専門家」やウォール街の金融機関などのエリート。彼らは中流納税者を犠牲にして、貧困者やマイノリティー、移民(または金持ち)の便宜を図っている・・・。
エリートに対する反感自体は、決して新しいものではない。だがティーパーティーはそれをレベルアップさせている。彼らの唱える個人主義が最も極端に表れるのは、自分に都合のいい現実を選び、専門家が言ったというだけで嘘だと決め付ける態度だ。
例えばメディアが、バラク・オバマ大統領はアメリカで生まれ、イスラム教徒ではなくキリスト教徒だと報じれば、彼らはそれは嘘だという確信を一層強める。彼らによれば、オバマはアメリカ人から統を取り上げようとしており、地球温暖化は極左のでっち上げだ。14日の予備選でデラウェア州の共和党上院議員候補に決まったクリスティン・オドネルは、進化論より天地創造のほうが証拠は多いと言う。

ノスタルジーと怒り、そして現実に対する拒否反応は、自分の居場所を失うことや、国の指導権を誰かに譲ることに対する不安の表れにほかならない。調査を見れば、ティーパーティー支持者は不況の最大の被害者ではないが、社会の変革で自分たちの立場が脅かされていると感じている。(中略)
歴史家のリチャード・ホフスタッターはかつて、ポピュリズム(大衆迎合主義)を動かすのは「自分たちの地位が失われるという不安」だと述べたが、それがこれほどぴったりくる運動はない。
共和党はティーパーティーの台頭を、祝福と戸惑いの入り交じった感情で受け止めている。この運動の支離滅裂ぶりにのみ込まれることなく、また過激過ぎる見解に染まることなく、どうやってそのエネルギーと怒りを吸収するかを必死に考えているようだ。
民主党は60年代にこれをニューレフトに対して試みて失敗したが、共和党もてこずっている。それを一番痛感しているのは、毎週の予備選でティーパーティーと直接対決してきた共和党議員らだろう。(後略)【9月29日号 Newsweek日本版】
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その「ティーパーティー」の広告塔となっているサラ・ペイリン元アラスカ州知事は、今回中間選挙というよりは、自身の2012年米大統領選を視野にいれて活動しているとも言われています。

****ペイリン氏が次期米大統領選に関心、「手ごわい」とホワイトハウス *****
米ホワイトハウス報道官は17日、2012年米大統領選の共和党候補として出馬に関心を示しているサラ・ペイリン元アラスカ州知事について、共和党内で「手ごわい勢力」になっていると発言した。(中略)
一方、ペイリン氏本人も米FOXニュースに対し、「やってみる」気はあるが、それにはいくつか条件があり「もしも米国民が、大改革をやってやるという人物を望んでいるのなら、時の試練を経た真実に立ち返りたいと思っているのなら、そして、わたしこそがその人物であると人びとが思っているのなら、それがわたしの家族やわが国にとって最善なのであれば、もちろん、わたしはやってみるつもり」だと語った。
さらにペイリン氏は「しかし、その人物がわたしだと言うつもりはない。わたしは肩書きなんてなくても間違いなく変化をもたらせる。それをまさに今やっているところだし、良い日々を過ごしているわ」と付け加えた。【9月18日 AFP】
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前回の副大統領候補としては、登場時は人気を集めたものの、「アフリカを大陸ではなく国名だと思っていた」といった国際事情常識の欠如や、国政に関する基本的な知識不足などが揶揄の対象になって、結局マケイン候補の足を引っ張った感もある同氏ですが、本当に大統領選挙に出てくるのでしょうか?民主党側が「手ごわい」と思っているかは疑問ですが。
ポピュリズムの波に乗るペイリン氏の活躍・・・アメリカの将来も不安です。

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