(パナマで開催された国連気候変動枠組み条約の特別作業部会 土砂降りに濡れまいとして会議場に駆け込む関係者 彼らに傘が必要なように、地球には新たな枠組みが必要? “flickr”より By ~MVI~ (recharging in LA) http://www.flickr.com/photos/bigberto/6214216515/ )
【日本は13年以降「空白期間」に突入】
現在の国際的温暖化対策である京都議定書の期限切れが2012年末に迫っていますが、13年以降の新たな枠組み(ポスト京都議定書)などを話し合う国連作業部会が7日に閉幕しましたが、従来からの先進国と途上国の意見が対立する構図は解消されず、年末に南アフリカで開かれる国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)に議論を先送りした形となりました。
これにより、COP17におけるポスト京都の新たな枠組みの採択は絶望的になったと見られています。
****COP17:ポスト京都議定書の枠組み採択絶望的に****
12年末に先進国の温室効果ガス削減義務の期限が切れる京都議定書後の枠組みを協議してきた国連気候変動枠組み条約の特別作業部会が7日午後(日本時間8日)、パナマ市で閉幕した。主要議題で各国の主張は対立し目立った進展はないまま1週間の協議を終えた。
今回は11月末から南アフリカで開かれる同条約第17回締約国会議(COP17)に向けた最後の事前交渉で、COP17でポスト京都の新たな枠組みを採択することは絶望的になった。
閉会後会見したクリスティアナ・フィゲレス条約事務局長は「政治レベルで解決が必要だ」と述べ、交渉が行き詰まっていることを認めた。
◇事前交渉、対立のまま終了
作業部会では終始、途上国にも対策を求める先進国と、先進国が率先して取り組むべきだとする途上国が対立した。途上国の取り組みを支援する資金援助の議論でも難航を極めた。このため、COP17では、新たな枠組みを採択する期限を定めた文書の採択も視野に交渉する予定だ。
また、締約国は交渉の途中から議定書を暫定的に延長することで調整に入った。延長案は、温暖化対策の法的枠組みが国際的に途切れることを回避する「つなぎ」の狙いがある。欧州連合(EU)や豪州、ノルウェー、ニュージーランドなどは近い将来、ポスト京都の確実な実現を条件に暫定延長に賛成する可能性が高い。ただし、暫定延長を反映した改正議定書を12年末までに各国が批准する時間がないため、「締約国決定(COP決定)」という形で運用上、13年以降も削減義務期間を設けるという方法も検討している。
◇13年以降、日本「空白期間」に
一方、日本は2大排出国の中国と米国に削減義務がないのは問題として反対。カナダとロシアも同様の立場で、日本を含めた3カ国は13年以降、削減義務がない「空白期間」に突入することが確実になった。削減義務のある国の排出量は世界全体の10%台になり、国際的な温暖化対策が一層形骸化しそうだ。
EU代表団は「日本、カナダ、ロシア、米国が第2約束期間(13年以降)に排出削減義務を課せられることを受けると予想していない。しかし、(日本の25%削減など)各国が掲げた目標は実行すべきではないか」と訴えた。
◇京都議定書
97年に開かれた国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3、地球温暖化防止京都会議)で採択された。先進国に二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減を義務付け、08~12年(第1約束期間)に日本は1990年比6%、欧州連合(EU)は同8%の削減義務を負う。同7%削減の義務を負った米国は経済影響などを理由に離脱。世界最大の排出国になった中国など途上国に削減義務がなく、現在では削減義務がある国の二酸化炭素排出量は世界の3割に満たない。【10月8日 毎日】
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【そう簡単な話ではない「ダーバン・マンデート」】
ポスト京都議定書が絶望的となるなかで、応急措置として出てきている議論が、「ダーバン・マンデート」と呼ばれる「一定の期限内に新枠組みの採択を求める」というものです。
****COP17:宣言案は「一定期限内に新枠組み採択」****
11月末に南アフリカ・ダーバンで開かれる国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)で協議される新たな宣言案が明らかになった。7日までパナマ市で開かれた同条約の特別作業部会で、12年末に期限が切れる京都議定書後の新たな地球温暖化対策の枠組みの採択が絶望的になったことを受け、「一定の期限内に新枠組みの採択を求める」としている。
宣言案は「ダーバン・マンデート」と呼ばれる。文書によると、COP17で「行程表と内容を明確にしたうえで、結論を出すことを宣言する」としている。先進国と途上国が温室効果ガス排出削減をめぐって対立、期限を区切って交渉を仕切り直す狙いがある。
温暖化交渉をめぐっては、95年にベルリンで開催された同条約第1回締約国会議(COP1)で、「先進国の削減量を定めた議定書を、97年のCOP3で採択する」と宣言した「ベルリン・マンデート」を決議し、京都議定書誕生につながった経緯がある。
このため「ダーバン・マンデート」がCOP17で決議されれば、新枠組み実現に向けた交渉継続の後押しになる可能性がある。
ただし、米国や中国などは「具体的な温暖化対策の実施が先だ」などと消極的だ。日本政府代表団も「マンデートが決議されればベストだが、そう簡単な話ではない」とみており、決議されるかどうかは不透明だ。【10月8日 毎日】
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中身の合意ができないなら、期限だけでも決めようという「ダーバン・マンデート」ですが、制約を課せられることを嫌う国が多いなかでは、それもなかなか困難な状況です。
【EU:条件付きで、京都議定書延長受け入れ合意】
途上国側は先進国のみを制約する京都議定書の延長を求めていますが、EUとしては、現在枠外にいるアメリカや中国、インドなど主要排出国が削減目標の枠組みに参加することなどの条件付きで、新枠組み合意までのつなぎとして、京都議定書の延長を認める方針を決めています。
****EU、京都議定書延長受け入れ 米中印の参加など条件に*****
欧州連合(EU)は10日開いた環境相理事会で、温室効果ガス削減を求める「京都議定書」の期限が切れる2013年以降について、条件付きで同議定書の延長を受け入れることで合意した。延長は、新しく法的拘束力のある枠組みを作るまでの移行期間として位置づけた。
米国や中国、インドなど主要排出国が削減目標の枠組みに参加することや、同議定書で決めた排出量取引などの主な取り組みを維持・発展させることなどを延長の条件に挙げた。
EUは、今月の首脳会議で方針を正式に決め、11月下旬の南アフリカでの国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)に臨む。【10月11日 朝日】
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かねてより温暖化対策に積極的なEUの動きの背景には、排出量取引や新たなエネルギー対策を梃子に国際的な影響力を高めていこうとする国家戦略があると考えられていますが、そうした戦略が可能なのは、やはり市民ひとりひとりの温暖化対策への関心が高いことがあります。
****EU市民、地球温暖化問題への関心強まる****
NNA 10月11日(火)9時0分配信
欧州連合(EU)加盟国市民の地球温暖化問題への関心が高まっている。EUの世論調査「ユーロバロメーター」で明らかになった。
6月に実施された最新アンケートによると、EU市民の68%が気候変動を「きわめて深刻な問題」と認識。「深刻な問題」と考える人を合わせると全体の89%に上った。深刻度を10段階評価すると7.4となり、2009年の7.1から上昇している。また5人に1人が温暖化を世界で最も深刻な問題と捉えている。
一方、気候変動対策やエネルギー効率改善の取り組みが経済や雇用にとってプラスとなると考える市民は78%に上り、68%がエネルギー消費量に応じた課税を支持していることも分かった。【10月11日 NNA】
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【日本:化石賞受賞】
日本は、これまでのところ、カナダやロシアとともに京都議定書延長にあくまでも反対の方針ですが、国民の間の関心もそれほど高まっているようにはみえません。鳩山元首相はかなり思い切った国際公約をしていますが。
もちろん、温暖化に関心があるか?と問われれば多くのひとがYesと答えるでしょうが、自分のライフスタイルを変えてまでの覚悟というのは、疑問のように思えます。私自身を含めての話ですが。
日本政府の反応も、そういう国民の関心の低さ、あるいは慎重さを反映したものでしょう。
そのあたりは、原発政策についても同様です。
こうした温暖化、脱原発への対策に関する慎重な対応は、変化を求める側からすると“化石”のようにもみえることになります。
****温暖化交渉 日本に化石賞 NGO、原発輸出の姿勢批判****
温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約のパナマ作業部会で、国際環境NGOでつくる「気候行動ネットワーク」は3日(日本時間4日)、交渉で最も後ろ向きだった国に皮肉を込めて贈る「化石賞」に日本を選んだ。東京電力福島第一原発事故の収束ができていないのに、途上国への原発輸出を温暖化対策の一つとして認めるよう主張した、という理由だ。
NGOなどによると、2日の非公開会議で、先進国が途上国に技術や資金を援助した事業で温室効果ガスを減らすと、自国の削減量の一部として計上できる「クリーン開発メカニズム(CDM)」の見直し案について議論があった。そこで日本代表団が、原発輸出をCDMの検討対象として残すべきだ、という趣旨の主張をしたという。
NGO側は「事故を起こした原発を途上国に輸出するのは倫理的におかしい」などと批判した。会議では、京都議定書の延長を求める途上国側の発言が相次ぎ、反対の立場の日本への風当たりが強まっている。(パナマ=小林哲) 【10月4日 朝日】
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