孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シリア内戦を契機として動き出したクルド人情勢

2013-12-11 23:31:20 | 中東情勢

(トルコ領内ディヤルバクルを訪問したイラクのクルド自治政府のマスード・バルザーニー大統領を歓迎する人々 “flickr”より By jan Sefti http://www.flickr.com/photos/8605011@N02/10905668625/in/photolist-hBGpkp-hBHgXL-hrkYdF-hrjkPD-hri2z6-hri4ak-hHiowj-hHiK7X-hHiGAp-hHiK8P-hHhUQj-hHhqYg-hHhsbB-hHhYi1-hsQwaJ)

【“国を持たぬ最大の民族”にかつてない追い風
“国を持たぬ最大の民族”と呼ばれるクルド人は、トルコ、イラク、シリア、イランにまたがる地域“クルディスタン”を中心に推計2500~3000万人が居住していると言われています。

【ウィキペディア】によれば、その内訳はトルコ:1140万人、イラク:約400~600万人、シリア:約90~280万人、イラン: 約480~660万人とされています。

クルド人の話題を取り上げるたびに言及しているように、この国境をまたいで居住するクルド人に分離独立、あるいは各国クルド人間の関係強化の動きが強まると、現在の中東の地図が根底から書き換えられる“激動”にも発展します。

“「クルド人にかつてない追い風が吹いている。歴史的な『クルディスタン』が実現する可能性がある」トルコ在住のクルド人男性はうれしそうにこう語る。・・・・クルド人はこれまで、それぞれが居住する国で分断されてきたが、二年半にも及ぶシリア内戦を契機として一体となり、中東の重要な「プレーヤー」になりつつある。”【選択 12月号】

シリア北部でクルド人勢力が暫定統治宣言
先ず、シリア北部に居住するクルド人について見ると、内戦によってアサド政権の支配・統制が緩むなかで、この地域に進出しようとする反政権・アルカイダ系勢力とも衝突しながら自治に向けた独自の立場を強めています。

****シリア:クルド人の実効支配拡大、内戦構図が複雑化****
内戦が続くシリアの少数民族クルド人が北東部で実効支配地域を拡大し、内戦の構図はさらに複雑化している。

クルド人の多くはアサド政権、反体制派の双方から距離を置いてきたが、反体制派の一角である国際テロ組織アルカイダとの衝突を契機に武力活動を活発化させ11月には暫定統治の開始を宣言した。
暫定統治の宣言を「独立に向けた動きだ」と警戒する反体制派との緊張も高まっている。

クルド人はシリアの人口の1割強を占める。
最大勢力「クルド民主統一党(PYD)」など35組織は11月12日、クルド人が多い北東部ハサカ県を中心に暫定統治を始めると発表した。

クルド民主統一党の協力政党のメンバー、アザド・ブラジ氏(37)は「権力の空白を埋め、行政機能や治安を維持するのが目的だ」として、独立に向けた動きだとの見方を否定した。

暫定統治を宣言した背景には、北東部で伸長するアルカイダ系組織の存在がある。アサド政権はダマスカスやアレッポなど主要都市周辺の攻防に重点を置いており、人口が少ない北東部は手薄だ。そのため2012年夏ごろからクルド人の実効支配が強まった。

しかし、今年春ごろからイラク拠点のアルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国」やシリア人中心のヌスラ戦線が進出し、クルド人住民への攻撃も強めた。

その結果、8月には隣国イラクのクルド人自治区に2週間で4万人以上が避難した。クルド人武装組織はアルカイダに反撃し、10月には一時占拠されていたイラクとの国境検問所を制圧した。

クルド民主統一党は暫定統治について「自衛のためだ」と説明する。だが、反体制派の間では「アサド政権と敵対しない見返りに自治権を与えられた」との見方が広がっている。暫定統治宣言後に政権側から目立った反応がなかったことも疑念を深めた。

反体制派主要組織「シリア国民連合」傘下の「自由シリア軍」のスポークスマンは「混乱に乗じて、シリアの統一性を損なう動きだ」と批判。
国民連合に参加するクルド人の別組織「クルド国民評議会」も「対話に基づかない一方的な分離は支持できない」などと反対。自由シリア軍とクルド人組織の衝突も散発している。

ただ父子2代にわたって40年以上続くアサド政権下で、クルド人は母語での教育を認められないなど抑圧されてきた。民主統一党側は「政権と裏取引などするはずがない」と疑惑を否定している。

 ◇トルコなど周辺国も警戒強める
クルド人の暫定統治の動きに、クルド人住民を抱える周辺国も警戒を強めている。
暫定統治を主導するクルド民主統一党は、隣国トルコで長年分離独立運動を行ってきたクルド労働者党(PKK)と関係が深い。

AFP通信によると、トルコのギュル大統領は「シリアでの分離の動きは受け入れられない」と非難。トルコは10月から国境沿いに密入国を防ぐためのフェンスの設置を始めた。

一方、イラクのバルザニ・クルド自治政府議長も「暫定統治はシリアのクルド人の総意ではなく、民主統一党の独裁的な判断だ」と批判した。バルザニ議長は民主統一党と対立する同じクルド人組織のクルド国民評議会を支援している。【12月11日 毎日】
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非常に分かりづらい関係ですが、上記記事に出てきた各組織・国家の関係を簡単に整理すると以下のようになります。

シリア内のクルド人については、政権側・反体制派双方から距離を起き、自治に向けた動きを強める「クルド民主統一党(PYD)」に対し、反体制派主要組織「シリア国民連合」に参加する「クルド国民評議会」が存在しています。

シリア北部で暫定統治を宣言した「クルド民主統一党(PYD)」は、トルコにおいて反政府武装闘争を行ってきた「クルド労働者党(PKK)」の関連組織とされています。

トルコ・エルドアン政権としては、シリアで「クルド民主統一党(PYD)」が分離独立的な動きを強めると、トルコ国内のクルド人がこれに刺激されて反政権活動を強め、PKKとの間でようやく合意された歴史的停戦もご破算になることを懸念しています。

一方、一足先に自治権を獲得しているイラクのクルド人勢力は、シリア北部で暫定統治を宣言した「クルド民主統一党(PYD)」とは必ずしも良好な関係にはなく、むしろ反体制派主要組織「シリア国民連合」に参加する「クルド国民評議会」を支援しています。

なお、シリア・アサド政権は単に内戦によって北部のクルド人居住地域の支配に手が及ばなくなった・・・というだけでなく、「アサド政権は、クルド人が“反体制”という形で自らに刃向かわないように、反体制派とも距離を保つ「クルド民主統一党(PYD)」に武器を与えて、その動きを支援していた」とも指摘されています。

ただ、上記の関係はあくまでも“これまで”あるいは“現在”の話であり、その時々の事情・思惑で、また、“敵の敵は味方”ということで、流動的に変化します。

イラクのクルド自治政府は“我が世の春”】
イラク北部のクルド自治政府の現況は、一言でいえば宗派対立が再燃する兆しを見せているイラクにあって“我が世の春を謳歌している”という状況です。

そのクルド自治政府が、これまで疎遠だったシリア北部の「クルド民主統一党(PYD)」との関係を修復している・・・との報道があります。

一方、こうしたクルド人の動きに、トルコ・エルドアン政権は自国内への波及を懸念して苦悩を深めているとのことです。

****クルドはいつ独立するか****
・・・・
シリア紛争契機に一体化前述した四つの居住エリアのうち中心となるのは、六百万人が居住するイラクだ。
人口だけで比較すると、トルコ領内に最大の一千百万人以上のクルド人がいる。しかし、国内でも分散して居住しており、「クルド労働者党(PKK)」とトルコ政府は激しい戦闘を繰り返し、クルド語を使うことを禁止されるなど民族の自主性とは程遠い現状だ。

一方のイラク北部のクルド人自治区はわが世の春を謳歌している。
イラク国内でのテロが収まらぬ中、クルド人自治区は嘘のように平穏だ。爆弾の音の代わりに響くのは開発の槌音である。

自治政府のある中心都市アルビールでは現在、ホテルの建設ラッシュだ。ヒルトンやシェラトンといった欧米系の高級ホテルの建設が同時並行で行われており、市内は建設車両が走り回っている。その合間を縫って欧州製高級車が走る街には、この二年間で立て続けに巨大ショッピングモールができた。

夏に現地を訪れた日本人ビジネスマンは「まともなホテルは一泊三百ドル以上。街の勢いを間近でみて自治区が『第二のドバイ』と呼ばれる理由がよくわかった」と語る。この繁栄を支えているのは言うまでもなく自治区内キルクークの巨大油田だ。
イラクは今年、原油生産が日量三百万バレルを突破してロシアを抜き、サウジアラビアに次ぐ世界二位の輸出国になった。

国際エネルギー機関(IEA)の試算では、二〇二〇年には現在の倍、日量六百万バレルに達するとみられている。自治区はこのうち三分の一を算出しており、イラク政府が輸出した際に、売り上げの二〇%ほどが自治区に入る。これ以外に「隣国トルコに密輸してきた収入もある」(イラク政府関係者)。外国からの投資も増加しており、昨年一年間に百億ドル程度が流入したとみられている。「自治区は石油を産出するだけでなく、そのカネで独自の軍隊を所有しているため治安を維持し『独立』を保てる」イラク軍関係者はこう指摘する。

クルド人自治区の軍隊「ペシュメルガ」は歴史的経緯から「ゲリラ軍」と称されることもある。しかし実際には訓練を受け規律のとれた正規軍だ。二十万人以上の兵力や戦車まで保有するとされる。

クルド自治政府は、イラク政府との対抗上、トルコとの関係を重視してきた。今年五月には、トルコのエルドアン政権と独自のパイプライン建設に向けたエネルギー協定に合意している。
つまり、トルコのPKKなど他国のクルド人とは一定の距離を置いてきた。

しかし今年の夏に状況が変化した。シリアの内戦で、同国北部に拠点を置くクルド人組織「民主統一党(PYD)」が、支配地域を拡大してきた。彼らはアサド政権側が撤退した地域を支配下に収めている。
また、アサド政権と戦わないPYDに対して、自由シリア軍など反政府武装勢力やアルカーイダ系武装組織が攻撃を加え戦闘が続いていた。八月にはこの戦闘が激化し、シリア領内からイラクへと大量のクルド人難民が流入する事態になったのだ。

事態を静観していたクルド自治政府のバルザニ議長はこの状況を非難し、「シリアのPYD支援の姿勢を固めた」(自治政府関係者)。クルド自治軍の戦闘員をシリア領内に送り込むとともに、物資援助を行ったという。

結果としてシリアPYDは、アルカーイダ系組織との戦闘に勝利して、十月下旬にはイラクとの国境にあるアルビア検問所という要衝を押さえた。十一月に入りPYDが支配地域での暫定自治政権樹立を発表している。

この事態に頭を抱えているのがトルコ政府だ。シリアのPYDは歴史的にPKKとの?がりが深い。PKK構成員の「三割がシリア出身」(英誌『エコノミスト』)とも言われている。
「トルコ国内のクルド人はシリアでの自治政権樹立に勇気づけられている」トルコ人ジャーナリストはこう語る。

イラクに続いて自治区を獲得したことで、一千百万人以上いる最大勢力であるトルコ領内のクルド人も再び分離独立にむけた機運が高まっているのだ。今年三月、エルドアン政権はPKKとの歴史的停戦合意に至った。これは「PKKのカリスマであるオジャラン師の影響力を使って、シリアPYDの独立を阻止するためだった」(前出ジャーナリスト)という。

しかしこの目論みは脆くも崩れ去ってしまった。
十月に、トルコ政府は同国南部ヌサイビンと、シリア領カミシリの間に壁を構築し始めた。クルド人同士の連携を恐れている証左だ。(後略)【選択 12月号】
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トルコ:自国内クルド人の活発化を懸念して融和策
トルコ・エルドアン首相も、こうしたクルド人の動きをただ眺めている訳ではありません。
10月9日ブログ「トルコ・エルドアン首相の「民主化政策」 進むイスラム化 変わらぬ強権姿勢」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20131009)でも取り上げたように、国内に居住するクルド人を取り込むべく“民主化政策”を打ち出しています。

****トルコ:首相「民主化政策」発表 クルド語教育も****
トルコのエルドアン首相が、少数民族クルドの使うクルド語の私立校での教育や、イスラム教徒の一部女性公務員にスカーフ着用などを認める「民主化政策」を発表した。

9月30日に記者会見したエルドアン首相は「過去最大の民主化パッケージだ」とアピール。クルド民族の人権拡大は右派の反発を招くと見られるが、スカーフ着用などを認め、支持基盤のイスラム保守派に配慮した格好だ。

トルコでは来年3月に統一地方選が予定されるが、シリア内戦の影響で南部国境付近の治安が悪化する中でクルドとの衝突を回避すると同時に、イスラム保守派の支持を固める狙いもありそうだ。

クルド人(推計2000万〜3000万人)はトルコのほかイラン、イラク、シリアなど広範囲に居住。「国家を持たない最大の民族」とも呼ばれる。少数派として各地で弾圧を受け、トルコでは公共の場でのクルド語使用などが禁じられていた。

今回、私立校でのクルド語教育を認可するほか、クルド系の小規模政党が、より議席を確保しやすい方向で選挙制度を見直す方針を盛り込んだ。

トルコからの分離・独立を訴え武装闘争を続けてきたクルドの非合法組織「クルド労働者党(PKK)」は5月以降、トルコ南東部から最大拠点のイラク北部クルド自治区へ段階的に撤収中。しかし、AP通信などによると、エルドアン政権による人権拡大政策が不十分だとして先月、撤収を一時中断し、武装闘争の再開もありうると警告した。

シリア情勢が混迷を深めるなか、首相としてはこれ以上の摩擦を回避したい思惑が働いた可能性もある。

また、憲法に政教分離を掲げ、国是とするトルコは、女性職員に公共の場でのスカーフ着用を禁止してきたが、今回、女性公務員の着用を認める。ただ、裁判官や検察官、軍人や治安当局員は除外した。【10月1日 毎日】
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【前出 選択】では“事態を静観していたクルド自治政府のバルザニ議長はこの状況を非難し、「シリアのPYD支援の姿勢を固めた」”とされていますが、イラクのクルド自治政府とシリアで自治を強める「クルド民主統一党(PYD)」の関係は微妙です。

そうした軋轢・微妙な関係を反映して、最初に延期された後、11月24日・25日に北イラクで行われると言われていた、各国クルド人代表を集めた史上初の「クルド民族会議」は再度、 そしてさらには日程未定で延期されています。


一方、11月16日、17日にはエルドアン首相の招待を受けてイラクのクルド自治区のマスード・バルザーニー大統領がトルコ領内ディヤルバクルを訪問して、PKK(トルコ)及びPYD(シリア)と対抗関係にあるトルコ・エルドアン首相と極めて友好的な会談を行っています。

****エルドアンの歴史的ディヤルバクル演説―「クルディスタン」明言*****
レジェプ・タイイプ・エルドアン首相は、バルザーニー北イラク大統領と(歌手でクルド活動家の)シヴァン・ペルヴェルとともにディヤルバクルを訪れ、市民に語りかけた。

マスード・バルザーニー大統領の演説の後、エルドアン首相が壇上に登った。今日は多くの初めてのことが起こったが、最も注目を浴びたのは首相が演説で「クルディスタン」と発言したことだった。【2013年11月16日付 Milliyet紙】
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“エルドアン首相の演説の際、(クルド系の歌手)イブラヒム・タトゥルセスをはじめ、ビュレント・アルンチ副首相やエミネ・エルドアン夫人が涙を流しているのが見られた。”【同上】とのことですが、そのエルドアン首相の演説の一部を以下に抜粋します。

“こうしてそのバルザーニー(バルザーニー自治区大統領の父親)は81年前に兄弟の国であるトルコの客となった。今日もモッラー・ムスタファ・バルザーニーの息子、大切なわが友マスード・バルザーニー(大統領)をディヤルバクルに迎えている。あなたの父、叔父、そして兄弟たちと同様に、この地ディヤルバクルにようこそいらっしゃいました。あなたのクルディスタン地域のわれらが兄弟にも挨拶を。”

“我々の共通の歴史に、対話に国境線を引くことは出来ない。我々の心を、兄弟よ、いかなる時も互いを切り離すことはできない。これを信じて未来に向かって歩もう。トルコ人をクルド人から、クルド人をトルコ人から切り離すことはできない。”

“ディヤルバクルの兄弟よ、トルコ人の兄弟、クルド人の兄弟、ザザ人の兄弟、アラブ人の兄弟よ、
この共和国はあなたの共和国だ。この共和国はイズミルやアンカラの人々の共和国であるのと同様に、あなたの共和国でもある。この国旗はあなたの国旗でもある。あなたはこの国旗の、この国家の持ち主だ。
もはやだれもだれかを侮辱してはいけない。だれもだれかを二級市民として扱ってはならない。いかなる文化もいかなるアイデンティティも、もはや否定されてはならない。新たなトルコには、差別も排除も誰かの感情を傷つけることもあってはならない。”

エルドアン首相が“クルディスタン”という言葉を使用したと言って、それはもちろん現実世界におけるクルディスタンの独立を意味している訳ではなく、あくまでもトルコ人とクルド人の精神世界における融和を表現したものです。

エルドアン首相の狙いは“ディヤルバクルでの会談により、トルコではPKK-BDP(PKKと関係があるとされるトルコのクルド系野党)のラインに属さないすべてのクルド人は、「クルド政治舞台」では「バルザーニーを汎クルド指導者」として支持し、トルコの選挙ではBDPに対しAKP(エルドアン首相率いるトルコの与党)を支援することに向かうであろう。”【2013年11月13日付 Radikal紙】

急がない姿勢のイラク・クルド自治政府
バルザーニー自治区大統領は、優先事項はクルド人の統一だとしながらも、エルドアン首相の和平プロセスを支持し、あくまでも平和的に、忍耐強く行動することをクルド人に呼びかけています。

すでに自治を獲得し、経済的にも“我が世の春”を謳歌するイラクのクルド自治政府としては、混乱を伴うような急変は求めていない・・・ということでしょう。
ただ、今後は着実に「クルディスタン」国家建設の動きが進むのでは・・・との見方もあります。

****無視できぬ存在に****・・・・イラクのクルド人自治区の活況と、シリアでの自治政権樹立。それに刺激されるトルコ領内のクルド人に強力な武装が加われば、明日にでも「クルディスタン」の独立が可能にも見えるが、当のクルド人は自制的だ。

シリアのクルド人組織の幹部は新聞のインタビューに「分離独立を望んでいるわけではない」と語る。

これについて、前出クルド自治政府関係者はこう語る。「イラクの自治区もまだ発展途上にある。シーア派やスンニ派といたずらに衝突をするのではなく、クルド人はしっかりと実力を溜める時だ」

また、この関係者は「米国がどう判断するかが気になる」と漏らす。自治区の独自の石油ビジネスについて、イラク政府の後見人である米国は懸念を示している。また、シリアでの自治政権樹立や支援についても静観しているに過ぎない。

しかし、キルクークの石油権益をバックにした「クルディスタン」国家建設は、既成事実を積み重ねる形で着実に進んでおり、もはや後戻りはできない。今後の中東を占う上で無視できない存在だ。【選択 12月号】
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