孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  進むインフラ劣化  財政難の要因に“節税の進化”

2013-12-13 22:17:02 | アメリカ

(米ニューヨーク市ブロンクスでメトロノース鉄道の列車が脱線し、多数の死傷者が出た事故現場=2013年12月1日、AP 【12月1日 毎日】)

豊かな頃に築いたインフラが、さびつき、腐朽していく
アメリカでは道路や鉄道などのインフラの劣化がしばしば指摘されています。
基本的にはメインテナンスに必要なインフラ投資が財政難などの理由で十分になされていないことによるものです。

****ロス、道路の傷み深刻 60年間放置のツケ 修復へ負担重く****
往年のモータリゼーション(車社会化)の象徴といえるカリフォルニア州の道路が傷んでいる。
特にロサンゼルス市の状況は悪く、細かい修復を除き、「60年間放置」(同市職員)のツケがまわってきた。修復の必要性を訴える声は強まっているが、財政的負担が重くのしかかる。

ロサンゼルス国際空港付近を南北に走るフリーウエー。場所によっては片側7車線ある道路が、通勤、帰宅のラッシュ時は激しく渋滞する。道路はでこぼこが多く、老朽化してくぼんだり、亀裂が入ったりしている所が多いのが、ゆっくり走るとよく分かる。

米国の交通機関を調べるNPO「TRIP」が10月に発表した全米の道路状況調査によると、ロサンゼルス周辺の都市部地域の道路の64%が「ひどい状況」で全米ワースト1。サンフランシスコ(60%)やサンノゼ(56%)、サンディエゴ(55%)が続き、カリフォルニア州がワースト4位までを独占した。

調査は全米の人口50万人以上の都市が対象で、TRIP経営責任者のウィルキンズ氏は「政府の道路財政向けの支援は来年度にカットされる見通しで、各州や自治体は道路の修復費の捻出に頭を痛めている。道路状況はさらに悪化するかもしれない」と指摘する。

ロサンゼルス市の道路の修復を訴えるブスカリーノ市議の政策秘書、グリーソン氏は「長年放置されてきたのは、ひとえに予算不足だからだ」と話す。

ロサンゼルス市の道路の延長距離は約2万771マイル(約3万3234キロ)とされる。グリーソン氏は「市は今年度予算で道路修復費などに1億3300万ドル(約133億円)を計上しているが、この金額は800マイル分の修復しかできない」と語る。

TRIPの調査によると、ロサンゼルス市の道路に放置された穴や亀裂の影響で、運転者が年間に支払う車の修理費は平均832ドル(約8万3千円)と全米平均の2倍以上になる。

ウィルキンズ氏は「政府が道路状況改善にかじを切れば、運転者の負担は減る」としているが、前方の視界はかすんでいる。【11月4日 産経】
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****脱線事故で発覚した米鉄道のずさんな管理****
ニユーヨークで起きた列車事故を機に鉄道の安全管理を危ぶむ声が上かっている

日曜日だったのは不幸中の幸いだと、誰もが思った。12月1日の朝、ニューヨーク市ブロンクスからマンハッタンヘ入る寸前の列車がカーブを曲がり切れずに脱線し、4人が死亡、60人以上が負傷した。平日ならば通勤の時間帯で、死傷者はもっと増えていただろう。

この路線を運行するメトロノIス鉄道は今年だけで2度の脱線事故を起こしており、保守・安全管理の体制を疑問視する声が上がっている。
メトロノース鉄道の利用者は、平日で平均約28万人。その列車事故で乗客に死者が出たのは、30年の歴史で今回が初めてとされる。

ただし、今年5月にはニューヘイブン線の電車が脱線して対向列車と衝突、70人以上が負傷する事故が起きている。その2日前には連邦鉄道管理局(FRA)による検査で、線路の安全性に問題ありと指摘されていたという(この脱線に伴う線路の復旧・修復には約1800万ドル掛かるとされる)。さらに7月には、今回の事故現場のすぐ近
くで貨物列車が脱線する事故も起きている。

相次ぐ不手際で世間から厳しい目が向けられているのは、メトロノース鉄道だけではない。FRAの監督責任も問われるところだ。しかしFRAは、鉄道線路の保守・管理を確実に行うのは鉄道事業者の責任だと突っぱねている。

メトロノース鉄道の路線距離は約600キロに及ぶ。基本的にはニューヨーク州内を走っているが、その路線の3分のIほどはコネティカット州運輸局(CDOT)の管轄下にある。5月の事故はCDOTの管轄地域で起きた。

一方、7月と今回の脱線事故はいずれもニューヨーク市の地下鉄なども監督するMTA(大都市圏交通公社)の管轄下で起きている。CDOTもMTAも、本稿執筆の時点では何ら見解を示していない。

オンボロ車両が人を運ぶ
先にMTAが発表した試算によれば、メトロノース鉄道の線路を一定の水準で維持するには15~19年に34億ドル以上の資金が必要で、34年までには総計90億ドル弱に上るという。

また09年4月にFRAが議会に提出した「鉄道近代化研究」と題する報告書によれば、アメリカの主要公共交通機関7社の鉄道車両の3分の1以上は耐用年数が近づいているか、既に過ぎている。 

現在、アメリカの都市部では27本の通勤路線が走っているが、その車両の大半は73~00年に製造された。そんな老朽車両で1日に150万人以上の乗客を運び、毎日7200キロ以上も走っているのだ。

ロサンゼルスにはアメリカ最大級の鉄道網があり、年間1億7000万ドル超の予算がつぎ込まれている。ただし1日の乗客数は4万2000人と少なく、大半は貨物専用線だ。
それでも08年には市内北部で普通列車と貨物列車が衝突し、死者25人・負傷者135人を出す事故があり、急きよ新型車両を導入する事態になった。

1日30万人以上が利用するシカゴ圏の鉄道でも事故が頻発しており、01年から10年の間に156人が犠牲となっている。

米上木学会の試算によれば、アメリカの貨物鉄道を35年まで使い続けるための保守・管理には、少なくとも1200億ドルの投資が必要だ。では旅客鉄道の保守や近代化にはいくらかかるのか。具体的な試算はないが、FRAによれば数千億ドル単位だろうという。

本気で鉄道刷新に取り組まなければ、いずれ危なくて乗れなくなる。【12月17日号 Newsweek日本版】
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財政難からくるインフラ投資の落ち込みにより、“豊かな頃に築いた高速道・一般道網や上下水道が文字通り、さびつき、腐朽していく”状況にあるようです。

****国力の源泉を損ない続ける****
パススルー企業(説明は後述)の増殖と節税の進化は、米経済に深刻な影響を与えている。国庫に入るべきカネが、企業や個人の懐に消えているのだ。
インフラ投資の不足は特に深刻で、一一年にはGDP比で二・四%程度と、一九六〇年代の半分の水準まで落ち込んだ。

マッキンゼー・グローバル研究所によると、本来必要な投資額から見ると、米国の水準は「GDP一%分が不足している」状態という。豊かな頃に築いた高速道・一般道網や上下水道が文字通り、さびつき、腐朽していくのである。

「オバマ大統領の就任前の公約は『教育、インフラ、科学技術に投資して、強い米国を作る』というもの。過去五年間でそのための原資がないことを思い知った」と在ワシントン政治記者は言う。
オバマ政権は、キャピタル・ゲイン課税や高額所得者への税率引き上げを試み、企業の税逃れを阻む措置も検討したものの、すべて共和党にはね返された。

メガリッチや金融機関は、多額の政治献金で共和党を橋頭堡にした。「小さな政府・減税」という同党の看板は目下、少数の高額スポンサーのためのものに堕している。

共和党内にも危機感を持つ政治家は少なくない。トム・コバーン上院議員は今夏、「企業を優遇して、一般家庭からカネを吸い上げるのは、本質的に間違っている」と喝破し、オバマ大統領に「包括的税制改革」を強く求めた。税制改革こそ何事にも優先する「改革本丸」であるという認識を示した。

ところが、オバマ大統領は、税制改革に本腰を入れる前に、政府機関閉鎖騒動のドタバタでエネルギーを空費し、看板の医療保険制度改革でも大失態を演じた。

米国の将来のために、超党派で税制改革をする素地は完全に失われた。米企業とメガリッチの強欲は、民主党政権の未熟と共和党の腐敗にも助けられ、米国の国力の源泉を損ない続けている。【12月号 選択】
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【「パススルー(通過)企業」「無責任資本主義」】
アメリカ財政の泥沼状態は周知のところです。
先日、ようやく“一歩前進”的な民主・共和両党の合意が成立したことが報じられています。
ティーパーティー勢力に引きずり回されていた共和党の路線変更がうががえて興味深いところですが、その話は今回はパス。

いずれにしても、財政をめぐる対立が激化する背景には、当然ながら厳しい財政事情があります。
アメリカの財政事情を厳しくしている要因は、調べたわけでも何でもありませんが、おそらく支出面では巨額の軍事関連の経費ではないでしょうか。

ベトナムから、イラク・アフガニスタンと、膨大な資金を費やしています。いくらお金があっても足りないであろうことは容易に推察されます。

収入の面でアメリカ財政をむしばんでいる要因として指摘されるのが、前出記事にある“パススルー企業”による節税の進化だそうです。
本来税金を負担すべき法人が、税制を利用して法人税を納めなくなっている現実があるようです。

****税逃れ天国」アメリカの深刻****
超大国を弱らせる「無責任資本主義」

米国で、法人税を課されない特殊な資本形態の企業が増殖している。税逃れの巧みさから「パススルー(通過)企業」と通称され、今では大企業の六割を占めている。

従来型の大企業も、節税技術に磨きをかけており、連邦政府は国内総生産(GDP)の一%しか、法人税を集められない。米国は一部の企業や個人が栄えて、国がやせ細るという無責任経済に陥っている。(中略)

最少の納税を追求する狡知
パススルー企業とは何者なのか。
比較的有名な企業では、シェールガス部門の勇「キンダー・モルガン」、投資ファンド「ブラックストーン・グループ」や「カーライル・グループ」がある。

米国の連邦税法上、法人税の非課税対象になるよう、株主またはパートナーを少数に絞った企業だ。米国の法人税率は三五%で、株配当にはキャピタル・ゲイン税(一五%)が課される。一方、パススルー企業は、パートナーや株主に対する所得税(連邦税の最高は三五%)が課されるだけで、法人としてはほとんど納税しない。

この仕組みには、起業を促す目的があった。
私財を投じて会社を作り、自身も大株主という場合、法人としても、個人としても課税される不利を被る。そこで株主百人以下なら、法人税でなく個人税の納税でよしとされた。

だが、個人で数百億~数兆円を動かせるメガリッチの時代になって、制度は合法的な税逃れ手段になった。「抜け穴」として使われる形態は、「Sコーポレーション(連邦税法S節規定の『小規模特別会社』)」から、「リミテッド・パートナーシップ(有限責任組合)」、「REIT(不動産投資信託)」まで幅広い。

抜け穴企業は目下、投資の半分以上をエネルギー部門に注ぐ。内国歳入庁(IRS)が最後にまとめた二〇〇八年の調査では、パススルーは全米企業総数の二三%を占め、収益総額の六三%をたたき出した。
ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、収益百万ドル以上の企業の六割以上、新しい企業の三分の二がこの形態という。

総額は不明だが、本来支払うべき連邦、州税の七分の一程度しか納税していない例もあった。

パートナーや大株主である、富裕な資産家が最高税率を納めるわけがない。有名な例では、昨年の大統領選のミット・ロムニー共和党候補。二千万ドル以上あった彼の年収(メガリッチの水準ではない)の税率は約一四%で、普通の勤労者の税率(二〇%台)より低かった。

こんな企業が跋扈したのでは、従来型の大企業は一段と税逃れに手段を尽くす。
内外のタックスヘイブン(租税回避地)をフル活用し、収益や経費を帳簿上で世界中に動かして、最少の納税を追求する。

納税額で見れば、米企業の狡知は明白だ。経済協力開発機構(OECD)が二〇〇〇~〇五年で、加盟二十七カ国の法人実効税率を調べたところ、米国はOECD平均(一六・一%)を下回る一三・四%だった(日本は一六・四%)。
米会計検査院の一〇年の納税実績調査では、実効税率は一二・六%まで下がっていた。

米国では一九五〇年代に法人税収が連邦歳入の四分の一を占めていた。一〇年にはわずか九%。この年の歳入は四一%が個人所得税、四〇%が源泉徴収税だった。

税逃れできない一般市民が、税の大半を担わされる。GDP比では、五二年に六%だった法人の納税が、今では一%超である。この間、企業収益は過去最高を次々と更新した。企業収益のGDP比は昨年、史上最高の一一%を突破した。

多国籍企業の税逃れぶりは今や信じがたい水準で、アップル社は〇九~一二年の四年間で、世界中で総額七百四十億ドルの税逃れをしたと推計される。産油国オマーンやリビアのGDPに匹敵する数字である。(以下、前出記事に続く)【12月号 選択】
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巨大企業・一部富裕層がますます豊かになり、一般国民は窮乏するという構図で、産業革命初期でもあるまいし・・・という印象があります。

節税対策などで税収が落ち込む分を、取りやすい消費税でカバーする・・・というのは日本の話でした。
その日本でも、1年ほど前の笹子トンネル天井板落下事故にみるように、インフラ劣化が指摘されています。
コメント (1)
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