孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ギリシャ債務問題 決断を迫られるギリシャ・EU 11日にEU臨時財務相会合

2015-02-10 22:04:14 | 欧州情勢

(1月25日、ギリシャの首都アテネで、急進左派連合(SYRIZA)の総選挙勝利を喜ぶ人々【1月26日 AFP】
チプラス首相も、メルケル首相も国内事情を抱えて容易には譲歩できません。)

増幅し合う欧州が直面する3つの危機
欧州は今、中東での暴力に起因するテロの脅威と移民排斥の動き、ウクライナ問題を巡るロシアとの緊張、ギリシャ債務問題を巡る経済混乱の懸念・・・という三つの問題に直面しています。
(いずれの問題も、日本を含めた世界全体に影響が及ぶという意味では、欧州に限定されない世界的な問題ですが)

その三つの問題は、国内における反EUの路線をとる極右・極左などの急進的政治勢力の台頭を通じて連動・増幅しています。

経済的な苦境を背景に、急進的政治勢力はイスラム移民によるテロの脅威を強調することで国内での支持を拡大しており、こうした勢力の多くはEUと対峙するロシアに対しては融和的姿勢をとっています。
ギリシャの左翼新政権もEUのロシア制裁を批判する形でEUに揺さぶりをかけています。

また、ギリシャ債務問題でギリシャの主張を認めれば、スペインで躍進する左派新党「ポデモス」などの同様主張を行っている勢力を拡大させることになり、一方で、ドイツ・フランス・オランダなどにおいては、自国税金をギリシャに投入することに批判的な国民の極右勢力への支持を強めることにもなります。
(1月30日ブログ“ギリシャ 「反緊縮」チプラス新首相とEUの両者とも譲れない「チキンレース」”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150130

****欧州の真ん中を走る危険な亀裂経済恐慌と不安定な政治、1930年代の再来はあるか****
欧州を苦しめている危機は3つある。そのうちの2つは欧州連合(EU)の境界の近く、すなわち好戦的なロシアと、内側から崩れつつある中東で生じている。残りの1つは政治、経済、外交の緊張が高まっているEU内部で生じている。

この1カ月、3つの危機はいずれも激しさを増している。パリで起こったテロリストによる襲撃事件は、中東での暴力や宗教的緊張の影響が欧州にも及ぶかもしれないとの不安を高めた。

ロシアの支援を受けている分離主義者は、ウクライナで攻撃を再開している。

そして、ギリシャの総選挙での急進左派連合(SYRIZA)の勝利は、ユーロ危機勃発後では初めて、EU域内で急進的な左派政党が国政選挙に勝利したことを意味する。

互いに増幅し合う3つの危機
ロシアの問題と中東の問題、そしてユーロ圏の問題は、それぞれ大きく異なる要因から発生しているものの、悪化するにつれてお互いを助長し始めている。

EU加盟国の大半は景気が悪く、左派と右派の両方でポピュリスト政党が台頭しやすくなっている。そして、ポピュリストがエネルギー源とする人々の不安感は、中東の紛争の影響――テロの発生や不法移民の大量流入など――によってさらに強められている。

ギリシャやイタリアといった国々では、中東からの(あるいは中東経由の)移民の流入によって社会の危機だという雰囲気が強まっており、移民問題が緊縮財政に負けないほどの論争を引き起こすようになっている。

一方、ロシアによるウクライナへの軍事介入は、EUの外交政策にとって冷戦以来最大の試練となっている。対応を誤れば、この一件は軍事紛争に発展しかねない。EUはドイツの主導によってなんとか団結し、まずまず厳しい内容のロシア制裁パッケージを打ち出した。

しかし、欧州内部での急進的な政治勢力の台頭は、対ロシア政策でのEUの団結を脅かしている。そのため、ロシア政府が自信を深めて危機がエスカレートする可能性も高まっている。

ギリシャやドイツ、フランスといった国々の極左と極右は、ウラジーミル・プーチン氏率いるロシアへの好感によって結びついているように見える。

極右勢力はプーチン氏の社会保守主義、国民国家というものを強調する姿勢、専制政治、米国とEUに対する敵意などを好ましいと思っている。

また、極左勢力は、モスクワに対する昔からの親近感をまだ持ち続けているようだ。

ロシアがEU域内の極右・極左勢力に接近することは、完全に理にかなっている。EUの団結が崩れれば、ロシアの孤立に貢献してきた制裁の体制も崩れ始めるからだ。

プーチン氏はすでに、フランスの極右政党である国民戦線(FN)や、ギリシャのSYRIZAと交流している。ギリシャのアレクシス・チプラス新首相が最初に面会に応じた外国政府高官は、ギリシャ駐在のロシア大使だった。

ギリシャ政府は時をおかずに、EUの対ロシア追加制裁に反対を表明している。(後略)【2月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】
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厳しさをますギリシャを取り巻く環境
三つの問題のうち、ウクライナ問題については、親ロシア派がロシアの支援で攻勢を強める一方で、アメリカはウクライナ政府への武器供与もありうるとの姿勢を見せています。

米ロ代理戦争の危機が高まるなかで、11日に独仏とロシア、ウクライナがベラルーシの首都ミンスクで首脳会談を行い、ギリギリの調整を行う予定になっています。

アメリカの武器供与、EUの対ロシア追加制裁発動も、11日の会議待ちとなっています。
(この件については、11日の会議の結果を踏まえて、後日に扱うことにします)

ギリシャ債務問題についても、EUは同じく11日に臨時財務相会合を、12日に首脳会議を開いて協議する予定となっています。(EUを牽引するドイツ・メルケル首相も、ウクライナにギリシャと大変です)

ギリシャのチプラス首相は4日、ブリュッセルでEUのユンケル欧州委員長、トゥスク大統領らと相次いで会談しました。チプラス首相は一連の会談後、「債務問題で共通の解決策を見いだすことは可能」と述べ、EUとの協議に自信を示しています。

しかし、情勢は厳しさを増しています。

****ギリシャ国債担保停止=反緊縮の新政権に圧力―欧州中銀****
欧州中央銀行(ECB)は4日、ギリシャ国債の担保受け入れを11日に停止すると発表した。同国債を担保とした銀行への資金供給をストップする。

市場での自力資金調達が困難なギリシャの銀行にとっては、ECBの低利融資は資金繰りの生命線。この状態が長期化すれば、銀行の資金繰りが逼迫(ひっぱく)する恐れがある。

1月の総選挙を受け発足したギリシャ新政権は、欧州連合(EU)ユーロ圏諸国や国際通貨基金(IMF)から受けた支援融資の返済条件緩和や、融資の条件となってきた緊縮財政策の見直しを主張している。こうしたギリシャの動きにECBは厳しい現実を突き付け、拒否の圧力を加えた形だ。

ギリシャへのEUなどの金融支援は、月内で期限が切れる。支援延長など何らかの対策がまとまらなければ同国は期限切れ後に資金不足に陥る恐れもあるが、EUとギリシャの主張の隔たりは大きく、状況は切迫感を増してきた。【2月5日 時事】
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****ギリシャ国債格下げ、Bマイナスに…S&P****
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は6日、ギリシャ国債の格付けを投機的水準である「B」からさらに1段階引き下げ、「Bマイナス」とした。

これにより、S&Pの格付けでギリシャよりも低い国は、アルゼンチン、ウクライナなど、財政状況が極めて悪い数か国だけとなった。(後略)【2月7日 読売】
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****ギリシャ債、利回り11%台=債務問題懸念で売り****
週明け9日の欧州金融市場では、ギリシャ債務問題への懸念から引き続き同国国債が売られた。指標となる10年物国債利回りはロンドン時間午後0時30分時点で11.346%と前週末取引終盤比0.890%上昇した。11%台に乗せたのは先週5日以来。

また、主要株価指数のアテネ総合株式指数は前週末比で一時6%超下落。この動きを眺め、英独仏など欧州各国の株式市場でも朝から売りが優勢の展開となった。【2月9日 時事】 
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チプラス首相 ギリシャ支援は「失敗だった」】
チプラス首相は強気の姿勢を崩しておらず、EUなどによるギリシャ支援は「失敗だった」と、財政緊縮策を前提とした支援策を拒否する発言をしており、EUとの交渉は難航しそうです。

****<ギリシャ>緊縮策伴う支援拒否 EUとの交渉は難航か****
欧州でギリシャの先行きを巡る不透明感が強まっている。

先月の総選挙で政権に就いたチプラス首相は8日行った施政方針演説で、2月末に期限を迎える欧州連合(EU)の支援延長を求めない方針を表明。
ユーロ圏諸国に公的債務の削減と、緊縮策の抜本的な見直しを求める考えを改めて表明した。

EUは11日に臨時財務相会合、12日に首脳会議を開いてギリシャ問題を協議する予定。ただ、最大の支援国・ドイツが支援枠組みの変更に難色を示すなど、交渉は難航が予想される。

「(現在の支援枠組みの)延長は、過ちと災厄を延長することだ」。チプラス首相は8日の演説で、前政権が決めた緊縮策などを批判し、新たな支援の枠組みの構築を改めて訴えた。

新政権の最大の狙いは、国内総生産(GDP)の175%に膨らんだ公的債務の削減だ。

ギリシャは、(1)ユーロ圏各国が保有するギリシャ国債を、新たに発行する債務返済額が名目GDP成長率に連動する「GDP連動国債」と交換する(2)欧州中央銀行(ECB)が持つギリシャ国債を、元本を償還しない代わりに利子を永久に支払い続ける「永久債」に切り替える--という案を提示。

当面の政府の資金繰りは、政府短期証券を発行して銀行から資金を調達する案や、ECBに融資を求める方針を示している。

だが、ドイツのショイブレ財務相は「正しい方向と思えない」と債務削減を否定。永久債への債務交換は、EUの基本法が禁じるECBによる加盟国への財政支援にあたる可能性があるため、ECBが応じる可能性は低い。

資金繰りも綱渡りだ。ギリシャがあてにする政府短期証券は、ECBが定めた範囲でしか発行できず、すでに発行額は上限に達している。

しかもECBは先週、ギリシャ国債を融資の担保として認める特例を打ち切っており、銀行が政府の資金調達に応じるかは見通せない情勢だ。

ギリシャ政府は、11日のEU財務相会合で債務削減やつなぎ資金の詳細案を示す方針だが、各国の反発を受けて、3月末にも資金不足に陥る懸念もある。

ギリシャの債務問題をきっかけに2009年に始まった欧州債務危機が再発しないか、金融市場は警戒を強めている。【2月9日 毎日】
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差し当たり、短期の資金調達をどうするのか?】
差し当たっては、短期の資金繰りが問題となります。
それによっては、“グリグジット”(ギリシャのユーロ離脱)も現実味を帯びたものになりかねません。

****このまま行けば数週間で「グリグジット」も 今後4カ月をどう乗り切るか、決断まであと数日しかない****
悲惨な経済外交が繰り広げられた1週間
政治的には、今の状況はギリシャの債務危機が始まった2010年と同じくらい悪い。先週は全くもって悲惨な経済外交の1週間だった。同じような状況が数週間も続けば、グリグジット(ギリシャのユーロ離脱)が現実となる。

ギリシャと欧州の債権国・機関が、どうすればギリシャが今後4カ月間を乗り切れるかを決めるのに、あと数日の時間しか残されていない。

ギリシャ政府の支出計画を賄う資金が3月までに用意されるためには、欧州各国の財務相は11日の会合で妥協案に合意しなければならない。

そして、この合意に達して初めて、ギリシャ政府と債権者は本当に重要な問題――例えばギリシャ経済の将来など――について話し合いを始めることができる。

緊急流動性支援枠(ELA)の上限引き上げを決めた先週の欧州中央銀行(ECB)の決断のおかげで、ギリシャの銀行システムは当面保護される。ただし、あまり長くは保護されない。このため、短期の資金調達が主要な優先事項となる。

バロファキス財務相には、本質的に4つの選択肢、あるいは、その組み合わせがある。それぞれの選択肢に対し、このドラマの主要な役者の少なくとも1人が反対している。

4つの選択肢
第1の選択肢は、既存の救済プログラムの延長だ。これは手続き上最も容易で、ギリシャ政府を除くすべての人にとって許容できる措置だ。

バロファキス財務相はすでに、この選択肢を排除している。SYRIZAはまさにそれをやらないと約束して選挙に勝ったばかりだからだ。(中略)

第2の選択肢は、バロファキス財務相にとって、より魅力的だ。
同氏はそれほど理不尽でない要求として、ECBに対し、危機時のギリシャ国債購入で得た利息と利益を分配するよう求められるだろう。こうした資金は現在、保留されている。仮に分配が実現しても、それだけでは十分ではない。

バロファキス財務相は欧州諸国の財務相に、ギリシャ政府が発行できる国債の上限の撤廃に同意するよう求める必要もある。

発行上限は、ギリシャ政府が救済期間中に過度に国債を発行しないよう課されたものだ。ギリシャが新しいプログラムを受け入れなければ、上限撤廃は確信できない。

3番目の選択肢は、単によそで資金を見つけることだ。
利用できる資金源は多くはない。ロシア政府は原則として、支援の用意があることを示唆している。明らかに、これは人道的な同情心からではない。ロシアマネーはギリシャにとって、重い政治的なコストを伴う。

これはSYRIZA政権にとっても、少なくとも現状では、好ましい選択ではない。

4番目の選択肢は、政府支出を賄うために、国内だけで通用する並行通貨を発行することだ。これは基本的に「借用書(IOU)」に当たる。

並行通貨の発行が最も極端な選択肢となるが、資金調達の問題は片付く。これは容易に、グリグジットに向けた予備段階として、あるいはグリグジットそのものとして解釈できる。通貨が2つあったら、単一通貨に一体どんな意味があるのか?

ユーロ圏危機の決定的瞬間が目前に迫っている
短期的な資金を確保するのは難しいかもしれないが、行く手に待ち受ける重大な債務交渉と比べたら何でもない。筆者は債務削減が行われると思わないし、どんな種類であれ、財政緩和の余地はごくわずかだと見ている。

最大の反対は、ドイツはなく、トロイカに反乱を起こさなかったポルトガルなどの他の周縁国から来るだろう。

ユーロ圏の危機の決定的瞬間が近づいている。ただし、それは、まだ今週ではない。【2月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙】
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今は、ギリシャ、EUの双方が強気の姿勢を見せる「チキンレース」の最中ですが、いよいよ決断・妥協を迫られれば、それなりの判断をくだすのでしょう・・・おそらく。

いすれにしても、11,12日の会合で、どのような方向性が示されるのか、非常に注目されるところです。
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