孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  進まない復興 瓦礫のなかで“次なる戦闘”の芽も

2015-02-28 21:23:38 | パレスチナ

(イスラエルとの紛争で瓦礫と化したパレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスの住宅跡で、体一つで障害物を乗り越えて移動を続けるスポーツの一種「パルクール」の練習を行う若者たち。【2014年11月18日 View point】http://vpoint.jp/photonews/31008.html 閉塞空間ガザで「自由感」を感じることができるのも魅力とか。
一方で、ハマスの軍事キャンプに押し寄せる大勢の若者も)

ガザに搬入された建設資材は必要量の0.25%以下 鋼材の価格は10倍
昨年8月26日にイスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが停戦に合意してから半年が経過しました。

昨年7,8月に起きた50日間の戦闘では、ガザ側で市民ら2100人以上、イスラエル側で兵士ら約70人が死亡。
また、ガザ地区では9万6千戸の住宅が被害を受けましたが、建築資材も不足し復興は進んでいません。

****進まぬ復興、絶望のガザ市民=停戦から半年、次なる戦闘も****
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルが停戦で合意してから半年が経過した。

イスラエルによる境界封鎖で建設資材の搬入は極度に制限され、「現在のペースでは復興に100年以上かかる可能性がある」(国際援助団体オックスファム)。また、ハマスは、ガザ市民の絶望が次なる戦闘へと向かわせる可能性を示唆している。

50日間に及んだイスラエルのガザへの軍事作戦は、ガザ市民ら2100人以上、イスラエル側でも兵士ら約70人の死者を出し、昨年8月26日に終結。

10月には、エジプトでガザ復興に関する国際会議が開かれ、参加各国・機関が計約54億ドル(約6400億円)の支援を表明した。だが、その大半が支払われておらず、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は支援の一時中断を余儀なくされた。

ガザの人口約180万人のうち、いまだ避難所などに身を寄せる市民は約10万人に上る。イスラエルは、セメントなどの建設資材がハマスの武器製造に転用されることを強く警戒。オックスファムによれば、過去3カ月でガザに搬入された建設資材は必要量の0.25%以下だった。

心の回復も進んでいない。国連児童基金(ユニセフ)ガザ事務所のパニル・アイアンサイド代表は「子供たちは人生で前向きな指標が見いだせず、希望を失っている」と懸念を表明。

こうした子供たちは、イスラエル側に侵入しようとしたり、欧州行きの移民船に乗り込んだりしようとするほか、地元の武装勢力に加わる危険性もあると指摘している。【2月27日 時事】 
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被害を受けた9万6千戸のうち、2万~2万5千戸が完全に破壊され、住民10万人超の生活再建が大きな課題となっています。

イスラエル側が建設資材の搬入を制限しているのは、ハマスによる武器製造のほか、侵入用のトンネル掘削に使われることを警戒しているためとされています。

わずかな搬入された資材についても、鋼材の価格は3年前の10倍以上に高騰するなど、貧しい被害者には手が届かないのが実情です。

国際支援についても、世界各国から示された54億ドル(約6400億円)のうち、実際に支払われたのは、国連によると総額の1割程度にとどまるとの推計もあります。

復興が進まないため経済的にも苦しく、ガザ地区人口約180万人のうち半数以上が食料支援を受け、失業率は約45%(若者は65%、女性は80%超)とのことです。【2月28日 朝日より】

なお、ISによる日本人殺害でも注目された安倍総理の中東歴訪・支援表明ですが、日本はガザ復興に向けて新たに1億ドルの支援を表明しています。

****首相、ガザ復興へ新たに1億ドル支援表明へ****
安倍首相は20日昼(日本時間20日夜)、パレスチナ自治区のラマッラで、パレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した。

首相は、イスラエルとパレスチナによる中東和平交渉について、「独立したパレスチナ国家とイスラエルが平和で安全に共存する二国家解決を支持する」と述べ、和平交渉への早期復帰を促した。

昨夏の軍事衝突で破壊された同自治区ガザの復興を支援するため、今年度補正予算の成立後に約1億ドル(現在の為替レートで約118億円)の支援を新たに行うことも表明した。【1月20日 読売】
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憎しみが育てる“次なる戦闘”】
イスラエル軍による厳しい警戒も続いています。
ヨルダン川西岸地区では、約8割ほどの区域についてイスラエル軍が警察権を行使しており、下記のような事件も日常的に起きています。

****石を拾って」有罪のパレスチナ14歳少女、イスラエルが早期釈放****
イスラエルは13日、イスラエル人への攻撃を企てたとして6週間にわたって収監していたパレスチナ自治区の14歳の少女を釈放した。自治区の子どもを有罪とし、収監したことについて、イスラエルに対する怒りの声が上がっている。

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のトルカレムで活動するAFPカメラマンによると、同地で釈放されたマラク・アルハティブさんは両親や親族、自治体の首長らの出迎えを受けた後、約40キロ離れた自宅のあるベイティン村に戻った。

マラクさんは昨年12月31日に学校から帰宅する途中で身柄を拘束され、軍事裁判で禁錮2か月の刑が言い渡されたが、イスラエルで拘束されているパレスチナ人の代理人を務める非政府組織「パレスティニアン・プリズナーズ・クラブによると、年齢を考慮して2週間ほど減刑され、13日に釈放されたという。

起訴状によると、マラクさんは自宅のある村の近くでイスラエル人の入植者たちが運転していた複数の車に向かって投げ付けるため「石をひとつ拾った」ほか、身柄を拘束された場合に備え、保安要員を傷つけるための刃物を所持していたという。

釈放後、マラクさんはAFPの取材に対し、すべての罪を否定した。

イスラエルは西岸地区で毎年、およそ1000人の子どもの身柄を拘束している。人権団体「ディフェンス・フォー・チルドレン・インターナショナル・パレスタインによると、理由は投石である場合が多い。

また、前出のプリズナーズ・クラブによれば、イスラエルで収監されているパレスチナ人の未成年者は推定200人。そのうち女子はわずか4人で、マラクさんは最年少だった。

イスラエル軍の報道官はマラクさんが収監された当時、有罪判決の確定前、マラクさんには司法取引の機会が与えられたと述べていた。だが、マラクさんの父親は、自白した内容にはほとんど意味がないと話している。

父親は苦々しく、「14歳の子どもがイスラエル兵に取り囲まれれば、何の罪でも認めてしまう」、「核兵器の保有だって認めさせることができるだろう」と語った。【2月15日 AFP】
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憎しみの連鎖は“次なる戦闘”の温床となります。

****ハマスの軍事訓練に押し寄せるガザの若者たち****
パレスチナ自治区ガザ地区に住むハテムくんは若干14歳ながら、すでに3度も戦争を体験した。自身もこの次は必ず戦闘に参加すると決めている。

「ぼくのめいは去年の夏、イスラエル人に殺された。今度はぼくが奴らを殺すんだ」イスラム原理主義組織ハマスの軍事部門、イザディン・アルカッサムによる1週間の若者向け軍事訓練キャンプを終えたハテムくんは、AFPにそう語った。

ハテムくんは、ガザ地区を実効支配するハマスが実施している2つの軍事訓練キャンプを先月末に修了した1万7000人の若者たちのうちの1人だ。キャンプについて、ハマスはイスラエルと戦う次世代を育成するものだと説明している。

昨年夏、イスラエルとハマスは50日間におよぶ戦闘を続け、パレスチナ側は約2200人、イスラエル側は73人の死者を出し、ガザ地区の多くの地域ががれきと化した。

イスラエルとパレスチナとの衝突は、2008年末から09年初頭にかけての22日間に及ぶ戦闘、12年の8日間の空爆に続き、5年間で3回目だ。

ガザ市街地が戦場となった昨年の戦闘では多くの子どもたちが犠牲になっており、国連(UN)はガザでの子供の死者数を約500人としている。

停戦からわずか5か月間で、ハマスの軍事訓練キャンプには生き残ったパレスチナの若者たち数千人からの参加申し込みが殺到している。

軍事キャンプに参加した15歳のムハンマドくんは、将来はアルカッサムに参加したいという。その理由をムハンマドくんは「(アルカッサムは)ガザで一番強いから」だと語った。【2月10日 AFP】
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軍事訓練キャンプに若者が押し寄せる背景には、“憎しみの連鎖”のほか、仕事もなくほかにやることもない経済的な現実もあるのではないでしょうか。

復興を加速することができれば、こうした“次なる戦闘”の芽を少しでも抑制することにもなるでしょう。

最近ガザで流行る「パルクール」・・・自由感
深刻な話から離れると、瓦礫が放置されたガザ地区では、障害物を乗り越えて移動するスポーツ「パルクール」が流行っているとか。

「パルクール」とは、特別な道具を使うことなく、人工物または自然の障害によって動きが途切れることなく、効率的に目的地へ移動することが目的のスポーツで、アクション映画のように建物の屋上の間をジャンプしたり、壁をよじ登ったり、更には、宙返りなどアクロバティックなパフォーマンスも取り入れて行われることが多いようです。

****紛争のガザ地区で人気のスポーツ 環境も合ってる****
長年紛争状態にあり国境が閉ざされたガザで、障害物を乗り越えて移動するスポーツ「パルクール」の人気が高まっている。若者たちは、過激な動きを通して、限界への挑戦と自由を求めている。

瓦礫の中をパレスチナ人のティーンエージャーたちが駆け抜けていく。障害物に手を軽くあてただけで、すり抜けるように飛び跳ねていく。

ここは、パレスチナのガザ地区南部のハンユニス。2014年のイスラエルとイスラム組織ハマスの50日戦争で徹底的に破壊された地区である。その戦火の傷痕の中で、若者たちが演じているのは、パルクールと呼ばれる曲芸的なスポーツだ。

華麗だ。瓦礫の中のランニングや、俗にヴォルトと呼ばれる、手をついて障害物を飛び越える運動だけではない。後方宙返り、側方宙返り、小高い建物の残骸から残骸へのジャンプを混ぜ合わせていく。その中で、贅肉のまったくない彼らの身体が風のように流れていくのだ。

極めて危険でもある。彼らがパルクールを行う場所は、しばしば10メートル近い高さのビルの屋上であったり残骸であったりする。その端で倒立運動も行う。ジャンプ後の着地点では、尖ったコンクリートの破片やコイル状の鉄心の切れ端がひしめいている。

ガザでパルクールが人気を呼んだ理由はいろいろある。少し前までは、ガザでティーンエージャーに人気があるスポーツといえば、サッカーぐらいしかなかった。

他に空手や陸上競技などもあったとはいえ、長年の紛争状態が続く中、参加できるスポーツは、非常に限られていたのである。そこに、パルクールが紹介され、多くの若者たちを魅了した。

パルクールは、環境的にもガザに適しているかもしれない。近年、スポーツとして都会の中で発展してきたが、実は、大半の国ではそのパフォーマンス空間はかなり制限されている。ビルの屋上を使ったりビルからビルへジャンプしたりするパフォーマンスは、法的な問題などもあって簡単には行えない。

それがガザでは、紛争が作り出した環境とはいえ、はるかに自由にパフォーマンスを行える。その中で身体の限界への挑戦ができるのである。

だが、もう一つ大きな理由がある。今回、ハンユニスで出会ったティーンたちの言葉を借りれば、「自由感」だ。パルクールの大きなコンセプトは、境界と障害物を乗り越えて自由に突き進むこと。

多くのパレスチナ人、とりわけ大半の若者がガザから自由に出たり戻ったりできない状況の中で、それは、自由を求め続ける彼らの存在自体のメタフォール(隠喩)になっているのである。※AERA  2015年2月2日号より抜粋【2月7日 dot】
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「自由感」・・・・単に瓦礫がそこらじゅうにあるから、ほかにできるスポーツがないから、という訳でもないようです。

復興による環境整備で“次なる戦闘”を防止
復興に向けて、力強く立ち向かう方もおられます。

****何度でもやり直す」=ガザ最大の製菓工場再建****
「何回破壊されようとも、また一からやり直す」。パレスチナ自治区ガザ最大の製菓会社「アルアウダ」の経営者、ムハンマド・アルテルバニ氏(62)は、昨年7~8月の戦闘でイスラエル軍に破壊された工場を再建し、再び軌道に乗せようと奮闘している。資金や材料、電力の不足にも屈せず、従業員約300人の生活を支える。

同社は1977年創立。ガザ中部デイル・アルバラにある建築面積約1万5000平方メートルの3階建て工場は、砲撃で壁や天井が崩壊し、世界各地から輸入した製菓機械も大半が破損した。「約40年間の蓄積が一夜で消えた」と語る。

停戦後の半年間に友人や親戚から借金し、新たに機械10台を導入。建設資材の搬入が制限されているため、セメントは「闇市場」で通常の4倍、鉄材は約25倍の価格で調達した。

工場の一部再開にこぎ着けたのは2カ月前。あまりの惨状に「従業員は工場を再開すると言っても信じなかった。彼らを目覚めさせるのが私の責務」と振り返る。再開に当たって従業員を削減せざるを得なかった。

計画停電のため、電気を使えるのは1日6時間だけ。ガスが供給されず、クッキーを焼く機械を動かすこともできない。それでも自称「仕事中毒」のアルテルバニ氏は「人が一度築いたものは再建できる」と、従業員を鼓舞する日々だ。【2月27日 時事】 
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みなにアルテルバニ氏のような強い心を求めるのも無理があります。

瓦礫のなかで暮らしていれば心もすさみ、苦しい経済状況では憎しみも増幅されます。
普通の人でも復興に立ち上がれるような環境を整えることが、“次なる戦闘”を防ぐためにも重要です。
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