孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  日本商品、日本社会への高評価も 「自分自身の日本観」を持つ人々の増加

2015-02-23 21:35:31 | 中国

(銀座を席巻する中国人観光客 【2月20日 Record China】 そのマナー等への批判はありますが、現実の日本を自分の目で見てもらうことは、今後の日中関係にとって良いことだと思います。)

豊かになり続ける中国人に複雑な感情
日本への中国人観光客の急増、その“爆買い”と形容されるすさまじい消費行動について、特に春節を迎えたこの時期、連日のようにTV、新聞で報じられています。

日本での大きな反響は、中国でも報じられているようです。

****日本人は複雑な心境!?・・・中国人の「消費パワー」炸裂! あちらこちらで「爆買い」の実態=中国メディア****
中国メディアの人民網は20日、円安やビザ発給用件の緩和などを受け、春節(旧正月)期間中に日本を訪れる中国人観光客の数が大幅に増える見込みだと伝え、中国人観光客の消費能力の高さが日本人を驚かせていると論じた。

記事は、東京・銀座では中国人団体観光客を乗せた大型バスがひっきりなしに訪れていたと紹介し、人民網の記者が銀座で確認しただけでも20日午後12時から1時間以内に最低5台の大型バスが停車していたと紹介した。

さらに、免税店ラオックスの銀座本店では19日には中国人客の数が平時の2倍近くに増えたとし、ラオックスの関係者の話として、「中国人観光客にもっとも人気が高い商品は電気炊飯器で、その次が空気清浄機だ」と伝えた。また、洗浄便座や魔法瓶、お菓子なども人気が高いと伝えた。

また、多くの中国人観光客は購入前に製品が日本製かどうかを確認していると紹介し、ラオックス店内で買い物をしていた中国人観光客が「電気炊飯器は持ち帰るには大きいうえに重いのだが、日本メーカーの製品は温度調整といった機能や内釜などの作りが優れているため炊きあがった米がおいしい」と語ったことを紹介した。

さらにラオックスの担当者の話として「一部の中国人観光客は買い物だけで2万元(約38万円)前後の予算を用意しているようだ」と伝えたほか、5-6万元(約95-114万円)もの予算を用意している人もいると紹介。さらには予算など関係なく、欲しいものは値段に関係なく購入するような中国人観光客もいると伝えた。

続けて記事は、「日本人は大量に訪れる中国人観光客の消費能力の高さに驚くと同時に、豊かになり続ける中国人に複雑な感情を抱いている」と伝える一方、日本のインターネット上では「消費が回復しない日本において、中国人観光客は日本経済の刺激の1つであり、日本はますます中国から離れられなくなった」との声があがっていると伝えた。【2月23日 Searchina】
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“豊かになり続ける中国人に複雑な感情”“中国人観光客は日本経済の刺激の1つ”という指摘は、概ねあたっているでしょう。

23日朝の「スッキリ!」(日本テレビ系)でコラムニストの勝谷誠彦氏が中国人観光客とそれをあてにする日本を強く批判したり、20日の「あさチャン!」(TBS系)では井上貴博アナが爆買いを「嫌になるくらい」と形容するなど、スッキリしない者も多いようです。

中国側も微妙なところもあります。

****日本のデパート、押し寄せる中国人観光客をおもてなし=中国ネットの「怒りの矛先」は意外な方向へ****
・・・・中国のネットユーザーは、こうした状況をどのように見ているのか。新浪財経の書き込みには、「なぜ中国に敵対する政府がある国へ消費に行くのか」「日本に行くのは売国奴!」などのコメントが見られるが、最も評価が高いコメントは「『日本に行くのは売国奴だ』とコメントしているやつは本当におかしい。某党の子どもたちはみんな欧米にいる。日本がどうした?彼らは笑顔で迎えてくれる。台湾や香港よりずっといい」というもの。・・・・【2月22日 Record China】
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最近増えた中国側の日本への高評価
中国人観光客の“爆買い”のニュースと同時に、最近とみに増えた感があるのが、中国側が日本人、日本製品を非常に評価し、その水準に改めて驚いている・・・という趣旨のニュースです。

その代表例が温水洗浄便座や炊飯器、ドライヤーです。

****洗浄便座作れる日本を見習え」 中国の共産党機関紙、日本ほめる異例のコラム****
9日付の中国共産党機関紙、人民日報は、日本の温水洗浄便座の人気が中国で高まっている現象を取り上げて「消費者は国内(製品)では満足を得られていない」と指摘し、中国も日本に見習い技術革新を重視すべきだと呼び掛ける異例のコラムを掲載した。

日本を訪れる中国人の間では最近、便座を買って帰る人が増えているとされる。人民日報は、日本の便座は洗浄機能を備え、便座がすぐに暖まるなど高機能だと紹介。

炊飯器やドライヤーなども含め、物まねでなく独自の技術を持った日本製品が中国の中流層に受けていると指摘した。

その上で「中国の製造業は(日本の)便座に痛いところを突かれた」として、中国も研究開発や自前の知的財産権を持つことに力を入れるべきだと主張した。

日中関係が悪化して以降、共産党機関紙が日本製品を持ち上げる記事を載せるのは珍しい。【2月9日 産経ニュース】
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ここ数日だけでもこの種の記事が多数目につきます。

****新幹線の「おいしい弁当」を見習え! 「中国の車内販売は高価でマズくて種類が少ない」・・・競争のない業界だからだ!=中国メディア****
中国国内の鉄道においても車内販売が存在するが、車内で売られている弁当は非常に人気がないという。中国メディアの新京報は16日、「日本の新幹線で販売されているようなおいしい弁当を販売すべきだ」と論じた。(中略)

さらに記事は、中国の鉄道利用者は「中国の車内弁当に文句を言うと同時に、日本の新幹線車内で販売されているおいしい弁当を引き合いに出す」とし、新幹線の車内で販売されている弁当は種類が豊富なうえに新鮮で美味しく、食欲をそそる味だ」と高く評価。

さらに、日本各地の有名駅弁は百貨店などでも販売されるほどの「美食」であることを伝えたうえで、「中国の鉄道運営会社も日本に学ぶべきではないか」と論じた。【2月23日 Searchina】
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日本への高評価は、商品にとどまらず、日本社会全体、日本人そのものにも及んでいます。

****日本の実力・・・「GDPだけでは計れない」=中国メディア****
中国メディアの捜狐は17日、中国の急速な経済成長が今なお続いていることは中国人にとって誇らしいことだとしつつも、「日本と中国の差には関心を持つべきだ」と指摘し、日本は今なお多くの分野で中国をはるかに上回っていると論じる記事を掲載した。

記事は、まず日本の一次エネルギーの消費量は中国に比べて極めて少ないことを指摘したうえで、粗鋼1トンあたりの使用石炭量は中国は約1.5トンだが日本はわずか0.6トンにすぎないと指摘。

また、日本は石油1000グラムに相当するエネルギーで10.5ドル(約1246円)分の付加価値を生み出すことができるとし、これは中国の7-10倍に相当する金額であると指摘した。さらに、日本の鉄鋼生産量は中国に劣るものの、高級鋼の生産量は世界一だと報じた。

さらに、日本の研究開発費の額は米国に次いで世界2位であり、日本の科学技術の競争力も世界2位だと主張。こうした高い科学技術の背景には教育の重視という要素があるとし、日本の初等教育における純就学率は約100%であり、中等教育の純就学率は約99.5%で世界一だと指摘。誰もが平均的に一定の教養を持つ国民は日本経済および社会の発展における貴重な資源だと論じた。

また記事は、日本の「国家イメージ」も世界最高水準にあるとし、2007年に米誌「TIME」が行った調査結果として、日本の国家イメージが世界でもっとも良好だったことを紹介。そのほか、日本の対外純資産総額は世界一であり、日本には経済面においても国内総生産(GDP)だけでは計れない実力が存在することを紹介した。【2月23日 Searchina】
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****車やマンションが買えるだろう金額でも!? 現金を落としても7割超の落とし主に戻ってくる東京・・・中国メディアが仰天****
中国メディアの中国新聞社は、「財布を拾った」などとして東京都内で警察に届けられた現金が2014年には33億4000万元(約636億7000万円)に達したと報じた。74%もの現金が落とし主に戻ると特記し、「住民が誠実であることを示している」との見方を示した。(中略)

記事は、「日本人は日本社会の安全さを誇りとしている」、「日本を訪れた外国人も、(日本社会の安全さについて)よく言及する。酒場やタクシーで財布やパスポートをなくしても、いつも戻ってくるとの声がある」などと紹介した。

記事は、日本社会が安全であることについて、「住民が誠実であることを示している」と論じた。【2月19日 Searchina】
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****日本人の優しさに「感動」・・・道を尋ねれば「荷物まで持って案内」してくれ、記念撮影では「写真撮りましょうか」と声をかけてくれた=中国版ツイッター****
・・・・娘と一緒に京都にやってきた北京在住のユーザーは18日、道を尋ねたときのエピソードを紹介。
ホテルにたどり着けずに道を尋ねたところ「3人の日本人がとても親切にホテルまで送ってくれた。しかも荷物まで持ってくれた」と明かした。

そして「感動して『きっとまた来こよう』としか言えない」とその思いをつづった。このユーザーは、日本にやって来て最も感じたことを「きれいで、人が特に礼儀正しい」ともしている。(後略)【2月23日 Searchina】
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【「日本」への信頼感を積み上げることで生まれる日本の生きる道
いささか面はゆいような、「それほどまでは・・・」と言いたくなるような褒めっぷりです。

もちろん、【Searchina】というサイトが、編集方針でその手のニュースをことさらに集めているのかもしれませんし、日本を非難する記事も現地では相変わらず多々あるのでしょう。

たとえそうであるにしても、こうした日本への高評価が話題になることもあるということは、ひところの日中関係が冷えきっていた時期にはあまりなかったことでしょう。

背景としては、福田元首相の訪中あたりを境に、昨年後半から日中関係の潮目が変わりつつあるような政治的事情もあるでしょうし、冒頭でも取り上げたような日本を訪れる中国人観光客が急増したことで現実の日本に対する認識の変化が生まれていることもあるでしょう。

また、中国社会のある程度の成熟にともなって、相手をありのままに受け入れる余裕ができつつあるという社会的事情もあるように思われます。

****深層中国 ~巨大市場の底流を読む 第66回 「現実」を見始めた「現実的な人々」 ~日本を見る眼が変わり始めた中国の人々 (田中 信彦氏****
・・・・中国人の訪日旅行や買い物ブームが空前の盛り上がりを見せていることはお聞き呼びのことと思う。

その直接的なきっかけは円安で日本の商品やサービスが一気に割安になったことだが、これはいわば外部的な環境の話である。

今回、中国の人々の日本に対する関心が急激に高まっている背景には、こうした外部要因に加え、中国人、中国社会の「心の持ち方」の変化という内部的な要因がある。
実はこちらのほうが本質的な話と言えるかもしれない。今回はこの話をしたい。

新しい消費者の出現
1月下旬、ある著名な中国の経済ジャーナリストが発表した文章が、あっと言う間に全国に拡散、国営テレビや中国共産党機関紙までがその現象を取り上げるという一種の社会現象にまでなった。

「日本に行って温水便座を買う」と題するその文章は、中国では最も著名な経済ジャーナリストの一人、呉暁波氏が書いたものだ。日本のメディアでも一部、伝えられたのでご覧になった方もあるかもしれない。(中略)

その他、作者が例として挙げたのは、髪がサラサラになるナノケアドライヤー、力を入れなくても切れるセラミック製の包丁、朝入れたお湯が昼になっても熱くて飲めない保温ボトル、ドイツ製より軽くて汚れが良く落ちる電動歯ブラシ……。そして極めつけが文章のタイトルにもなっている温水便座である。(中略)

中国国内の便器を研究し、ほぼすべての便器に取り付けられるようになっているという。「中国の団体客が来ると、あっと言う間に売り切れます」という日本の店員の話を伝えている。

「日本企業が追求してきたのはシンプルなことである。米が輝いてベタつかないこと、髪がさわやかに乾くこと、女性が手に持っても簡単に切れること、雪の中でも温かい飲み物が飲めること、あなたのお尻がきれいに、さわやかになること……。本業に徹し、他人に頼らず、技術革新に賭け、量を追わずに質を追求してきた。これこそが中国の製造業が目指すべき道である。」

「中国では中産階級の消費者が増え、技術や性能にお金を払う人々が増えている。彼(女)らは簡単に騙されないし、派手な広告に踊らされたりもしない。このような理性的な消費者が出現してきたことは、中国の製造業が大きな転換点に来ていることを示している。中国の中産階級が海を越えて温水便座を買いに行かなくても済む日は来るのであろうか……。」

あえておこがましい言い方をさせてもらえば、「ようやくわかってくれたか、君たち」と言いたくなるような文章である。この極めてまっとうな、当たり前といえば当たり前の文章が全国的な評判を呼び、中央テレビ局や共産党機関紙までがその話題を取り上げるテーマとなったというあたりに、いまの中国の気分が現れている。

一口でいえば、筆者の呉氏も指摘しているように、成熟した、冷静な人々が増えてきた。自分自身の判断力を持ち、自分自身の基準で「いいものはいい。ダメなものはダメ」という見極めができる。そして「良い」と思ったものは、実際に買う。それだけの経済力を持っている。そういう人が、少なくとも都市部には層となって現れてきた。

そんな基盤あっての「日本旅行ブーム」なのである。

「違い」がわかってきた消費者
こうした冷静な目を持てるようになってきた背景は、当然ながら生活水準の向上にある。

当たり前のことだが、人は経験したことがないことを理解するのは難しい。量を食べることが最大の主眼である時代には、お米の質やご飯の炊き方などにこだわる人はいなかった。

生活に余裕が出て、いろんな産地の米を食べ、さまざまな炊き方のご飯を食べ比べられるようになると、どこの米をどんな炊き方をしたらおいしいか、自然と比べるようになる。商品の質の違いが認識できるようになる。(中略)

中国社会の変化にジャストミート
・・・・現状の日本商品に対する高い評価は、ブームに踊らされたものでもなく、ブランドに依存した憧れによるものでもない。

新しいホワイトカラー層のライフスタイルが大きく変化し、その生活実感に基づいた、最も地に足がついた商品が日本の商品だったということである。

長いこと「値段が高い」「使い方がわからない」などと酷評されながらも地道に品質向上の努力を続けてきた日本企業の取り組みが、ようやくこうした層の志向の変化にジャストミートした。これは本当に価値のあることだと思う。(中略)

「自分自身の視点」で日本を見る
こうした中国の人々の「日本を見る眼」に共通するのは、日本を自分自身の生活との関わりで見るという視点である。

政府は政治の都合でものを言う。自分たちに都合のいい話、都合の悪い話、いずれにしても何らかの理由を探し出してきては「日本はこうだ」と決めつけようとする。

もちろん中国の人々もそれに大きく影響されるが、その一方で、多くの人々が日本製品を使った経験や日本への旅行体験、さらには信頼できる友人や知人の経験談などを通じて「自分自身の日本観」を持ち始めている。

それは先に述べたように、日本製の電気釜で炊いたご飯のおいしさだったり、セラミック包丁の切れ味の鋭さだったり、ひとつひとつは些細なことである。

しかし、全国で数百万、数千万単位の人がこうした自分自身の経験を通じて「日本」への信頼感を積み上げてきた効果は計り知れない。そして今、年間数百万人の中国人、それも世論形成に最も大きな影響力を持つ都市部の中間層の中国人が日本を訪れ、そのほとんどが好意的な、それも驚きに近い感想を持って中国に戻るという現象が起きている。(中略)

こういう流れが5年、10年、20年と続けば、私は――決して大げさでなく――中国社会の日本観は劇的に変わる可能性があると考えている。それは日中の政府間関係にも決定的な影響を与えるだろう。これは日本と日本人にとってこれ以上ない貴重な援軍であり、最大級の安全保障である。(中略)

最近、中国にいると「結局、なんだかんだ言って使えるのは結局、日本のものだよね」という声があちこちから聞こえてくる。

中国と30年以上関わってきた日本人としてこんなに嬉しいことはない。涙が出そうだ。そして、ここに日本の生きる道があると改めて思うのである。【2月20日 田中 信彦氏 WISDOM】
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中国への懸念、日中間の問題を挙げればきりがないところでもありますが、今日はやめましょう。
「自分自身の日本観」を持つ人々が増えていけば、政治的な問題についても、まともな話し合いが可能な環境もつくれます。

人口13億の中国と今さら量的なもので競っても詮無いことです。
戦後、日本がアジアを牽引したように、今後ますます中国の影響力は大きくなるでしょう。
日本が目指す方向は、「でも、やっぱり日本っていいよね」と評価してもらえるような国ではないでしょうか。

今夏に発表が予定されている「安倍談話」なるもので、こうした流れが吹き飛んでしまうことがないように願うのですが・・・・。
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