(ニュースサイト「バズフィード」で12日に公開された、オバマ米大統領のちょっとふざけてみたりもする姿を捉えた「みんなやってるけど話題にしないこと」と題された動画 【Buzzfeed】http://www.buzzfeed.com/andrewgauthier/the-president-uses-a-selfie-stick#.gdLAoKARv
激務・周囲の批判の中でも本人はそれほど気にしていないのか、それとも敢えてそのような姿を演出しているのか?)
【地上部隊派遣の余地を残した曖昧表現】
これまで「イスラム国」対応でのアメリカ地上部隊派遣を否定してきたアメリカ・オバマ大統領は、2月11日、「長期にわたる派遣は認めない」としながらも、地上部隊派遣に余地を残す考えを議会に示しました。
****地上戦、玉虫色のオバマ氏 長期の派兵否定、投入余地は残す 対「イスラム国」決議案****
オバマ米大統領が、「イスラム国」への軍事力行使の承認を求める決議案を米議会に提出した。
米軍の地上部隊については「長期にわたる派遣は認めない」とのあやふやな表現を使い、派遣の場合も制限を加える姿勢を示した。米議会を握る共和党は米国の関与拡大を求めており、決議案が今後、修正される可能性もある。
「我々が提出した決議案は、イラクやシリアへの地上戦闘部隊派遣を要請するものではない」
11日、議会に決議案を提示した後にホワイトハウスで演説したオバマ氏は、対「イスラム国」戦略に、従来との大きな変化はないと強調した。
「米国は中東での長期の地上戦に引きずり込まれるべきではない」とも語り、「イスラム国」と戦うイラク治安部隊やシリア反体制派を訓練や武器供与によって側面支援し、米軍は関係国と連携して空爆中心の作戦を続ける、との考えも示した。
攻撃期間を「3年」と限定したのも、歯止めを印象づける狙いがあるようだ。
歴代の政権は軍事力行使には必ずしも議会承認は必要ないとの立場をとりつつ、議会のお墨付きを得ることも多かった。オバマ政権はこれまで対「イスラム国」空爆について、ブッシュ政権下の2001年にアルカイダを標的としたアフガニスタン攻撃の議会承認を援用してきた。
だが、昨年11月の中間選挙で野党共和党が上下両院で過半数を獲得。同党は軍事力行使には議会の承認が必要と訴え、これにオバマ氏も応える形で今回の決議案を示すことになった。
オバマ氏は演説で「(決議案には)不測の事態に対応できる柔軟性も備えている」とし、将来の情勢変化に応じられるよう、戦闘任務ができる地上部隊派遣に余地を残す考えを示した。具体的には、「イスラム国」幹部を狙った強襲作戦での特殊部隊投入や、人質救出作戦のための地上部隊派遣を想定している。
地上部隊派遣の可能性を否定しないことで、米軍の関与拡大を求める共和党から歩み寄りを引き出す狙いもあるとみられる。【2月13日 朝日】
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しかし、この“曖昧”ともとれる方針に、民主党からは地上戦闘部隊派遣に道を開くのではないかとの懸念が、一方、共和党からは「なぜ自らの権限を制限しようとするのか」(ソーンベリー下院軍事委員長)といった批判が出されています。
「一つの中国」のように、政治にあっては現実的観点から敢えて曖昧にすることも多々ありますが、原理原則を重視する左右両方からは「はっきりしろ!」との批判を浴びます。
【第二次大戦後の安全保障は、アメリカの積極関与を前提に構築されている】
オバマ大統領については、シリア・アサド政権の化学兵器使用に関する“レッドライン”対応など、外交問題に関して“優柔不断で、一貫した戦略がない”という評価が一般的になっています。
****世界の脅威に策を持たないオバマの危険なミニマリズム****
・・・・オバマは外交問題に関心がない、あるいは無能で優柔不断だという評価はワシントンの内外に根付いている。
スンニ派テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の台頭から、中国がけし掛ける南シナ海での領有権争い、ウクライナをめぐるロシアと欧米の対立といった複雑な外交問題に、オバマは一貫した姿勢を示していない。
先頃オバマは、シリアでISISに対抗する「戦略はまだない」と発言して批判された。ISISの台頭は、昨日や今日始まったものではない。NBCニューズのリチャード・エンゲル記者は、米軍指導部はこの言葉に激怒したと伝えた。
ISISがアメリカ人ジャーナリストを殺害し、2人目の殺害予告をして(そのとおり実行した)、地域の同盟国の脅威となっているときに大統領が「戦略はない」と公言するのは広報のミスか、外交政策の失敗か、あるいはその両方だろう。
自由世界の将来を左右
(中略)しかし親オバマ派は、彼の外交政策を擁護するために奇抜な論理を考えついた。政治評論家のピーター・バイナートはオバマの政策を「果敢なミニマリズム」と呼ぶ。
オバマが本当に反撃するのは、米本土に直接の脅威がもたらされた場合だけだという。「シリアで多大な犠牲が出ても、タリバンがアフガニスタンを動揺させても、イランが核兵器を持っても構わない。オバマはアメリカ国民に危害を加えるであろう相手にだけ剣を抜く」
アメリカの国益以外には冷淡なことで知られるリアリスト陣営の論客スティーブン・ウォルトは、オバマは武力行使を「毅然と」自制していると絶賛する。
この考え方が危険なのは、アメリカが世界から手を引けば、悪の勢力がその空白を埋め、アメリカの同盟国が脅威にさらされる点だ。結局アメリカは問題解決に乗り出す羽目になり、代償はさらに大きくなる。
第二次大戦後の安全保障は、アメリカの積極関与を前提に構築されている。アメリカが世界の平和を保てば、アメリカの繁栄につながるという考え方だ。
政治評論家のロバート・ケーガンは、オバマは国民が望んだミニマリズムの外交政策を取ったが、結局誰も喜ばなかったと指摘した。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ロジャー・コーエンはこう書いた。「国民が求める大統領は、彼らの思いをただ受け取るのではなく、国を引っ張る人物だ」
激動の時代である。いま必要なのは、第二次大戦後に現れたような実行力と先見性のある指導者だ。安全保障の構造や同盟関係を再構築することも重要だ。世界もアメリカも、自ら時代を形作る大統領を求めている。(後略)【2014年9月11日 Newsweek】
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上記記事が書かれた2014年9月というのは、オバマ大統領が国民向け演説で、「イスラム国」に対し「場所を問わず、米空軍力を使う」と述べ、アメリカが幅広い有志連合を主導し、シリア領内を含めて「イスラム国」との戦いで反転攻勢に出ると強調したときです。
オバマ大統領は、その1年前の2013年9月、“レッドライン”を超えたシリア攻撃に踏み切るかどうかを議会に諮るという異例の対応を行い、10日のテレビ演説で、「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と述べ、アメリカの歴代政権が担ってきた世界の安全保障に責任を負う役割は担わない考えを明確にしました。
2014年9月の“有志連合を主導し、シリア領内を含めて「イスラム国」との戦いで反転攻勢に出る”という方針は、「世界の警察官」としての役割を避けてきたオバマ大統領にとり、戦略転換だとも解釈されました。
そして、ここにきての“地上部隊派遣に余地を残す考え”ということで、情勢の変化に引きずられてズルズルと・・・・ともとれますし、情勢の変化に適切に対応しているいう考えもあるでしょう。
もちろん、オバマ大統領の「世界の警察官」としての役割を避けたい思い、戦争拡大への優柔不断さというのは、基本的にはイラク・アフガニスタンを経験したアメリカ国民の厭戦気分に根差すものでもあります。
「国民が求める大統領は、彼らの思いをただ受け取るのではなく、国を引っ張る人物だ」・・・民主主義のシステムにあっては、いささか“ないものねだり”にも思えますし、場合によっては民意を否定したエリート主義にもなりかねないところもあります。
ただ、“第二次大戦後の安全保障は、アメリカの積極関与を前提に構築されている”というのも現実政治の実態でもあります。
やりたくもない「世界の警察官」を引き受けるかどうか・・・アメリカ大統領というのは実に悩ましいポストです。
しかも、どのような選択をしても批判は避けられません。
【「なぜナイジェリアには来てくれないのだ」】
アメリカに「世界の警察官」を求める声は、各地で上がっています。
****軍が敗退の危機、「数時間で崩壊」の警告も イラク西部****
イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の攻撃が続くイラク西部アンバル州の戦況について、イスラム教スンニ派の部族指導者は14日、イラク軍部隊が敗退の危機に直面しているとの見方を示した。
米当局者らは最近、イラクやシリアでISISが劣勢に転じたと主張している。しかし、イラク軍とともにISISと戦うスンニ派部族、アルブニムル族のナイム・ガウード氏は「アンバル州ではこちらが不利な形勢にある」と指摘。部族勢力が撤退すれば、イラク軍部隊は「数時間で崩壊するだろう」と述べた。
ガウード氏はそのうえで、米国に地上部隊の派遣や部族勢力への武器供与を要請。あるいはせめてイラク政府に対して武器供与を働き掛けてほしいと訴えた。(中略)
同州では2000年代半ば、アルブニムル族などの部族勢力が米軍の支援を得て国際テロ組織アルカイダの掃討に当たった。
ガウード氏は、アルブニムル族の住民らがISISに連れ去られる事件が相次いだ昨年11月、CNNとのインタビューで「われわれの仲間は米国との友好関係のために殺されている。米国は友人を見捨てるというのか」と語り、米国の介入を強く要請していた。【2月15日 CNN】
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****ボコ・ハラム掃討に米国の協力拡大を期待、ナイジェリア大統領****
ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン大統領は14日、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、イスラム過激派組織ボコ・ハラムと戦う上で米国に一層の協力を求める姿勢を示した。
このインタビューでジョナサン大統領は初めてナイジェリアで過去6年間反乱を続けているイスラム教スンニ派のボコ・ハラムと、シリアとイラクの一部地域を占領するイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に直接的な結びつきがあると主張した。
ジョナサン大統領は、「米国はISIS(イスラム国の別称)と戦っているのに、なぜナイジェリアには来てくれないのだ」と主張し、「米国はナイジェリアの友人だ。ナイジェリアに問題があれば、米国が来て助けてくれることを期待している」と話した。
しかし、米国防総省のジョン・カービー報道官は記者会見で、現在のところ米軍はナイジェリア国内で活動しておらず、ナイジェリアに米軍を派遣する計画もないと述べた。
カービー報道官はまた、米国はナイジェリア政府によるボコ・ハラム掃討作戦を支援するためアフリカ各国が作る多国籍部隊の編制を支援する初期段階にあると述べた。(後略)【2月15日 AFP】
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かつてイラクでアメリカ軍はスンニ派部族勢力の協力を得てアルカイダ勢力を抑え込んだのは事実であり、「われわれの仲間は米国との友好関係のために殺されている。米国は友人を見捨てるというのか」という訴えには重みもあります。
ただ、基本的にはイラク政府・イラク軍がもっと当事者としての自覚をもって、責任ある対応をしてくれないと・・・という感もあります。
ナイジェリア・ジョナサン大統領の「米国はISIS(イスラム国の別称)と戦っているのに、なぜナイジェリアには来てくれないのだ」に至っては、更に違和感も大きくなります。
現在の混乱を招いているのは自らの無策・無能の結果でもあり、アメリカにとやかく言う前に自分で何とかしろよ!・・・とも言いたくなります。何とかできななら大統領選挙延期といった姑息な対応などせず、すみやかに政権を明け渡すべきでしょう。(欧州でのイスラム過激派によるテロ事件などに比べて、ナイジェリアでのボコ・ハラムによる犠牲者に関して世界が無関心だ・・・とは思いますが)
「世界の警察官」として頼られるアメリカも大変です。すべてに対応していたらきりがありませんし、対応したらしたで、現地住民から「アメリカの侵略行為だ!」との恨みを買う恐れも多分にあります。
国際的にも、「警察官でもないのに・・・」との批判もあちこちから出ます。
“石油利権”といった“国益”(あるいは“私益”)にかなう場合に限り、「警察官」として出動する・・・と割り切れるなら、話は簡単でもありますが。
ウクライナ東部では「停戦合意」が微妙な情勢です。
もし、事実上の合意破棄となれば、ウクライナ政府への武器供与をカードとしてロシアを牽制してきたアメリカとしては、その履行に踏み切ることにもなります。
それは「世界の警察官」云々を超えて、米ロ代理戦争という深刻な事態にもなりかねない状況です。
もし、武器供与を履行しなければ、また“優柔不断で、一貫した戦略がない”との国内批判を浴びます。
凡夫の頭では判断しかねることばかりではありますが、つくづくアメリカ大統領という職務は大変だと同情します。