【6月25日 WEDGE】
今日から1週間ほど北海道・道東を旅行するということで、先ほど鹿児島から釧路に到着しました。
久しぶりの国内旅行と言うか、1週間程度の国内旅行となると、40年以上前にやはり道東を旅行して以来です。
当時はまだユースホステルが健在で、往復はがきで申し込んで、シーツを持参して旅行した記憶があります。
釧路の気温は、雨が日中降っていたということもあって、11℃。
北海道がまだ寒いというのは情報としては知ってはいましたが・・・・。
鹿児島なら2月、3月の真冬の気温です。島国日本も結構広いことを実感します。
【プーチン大統領「英政府は考えが甘く、思慮が足りなかった」】
国際ニュース関連では、なんといってもイギリスのEU離脱について、山ほどの記事があふれています。
残留派の敗因分析、世代間の違い、キャメロン首相辞任、スコットランド独立運動への影響、国外極右の反EU活動の加速、EUを襲うドミノ倒しの危険、各国の反応、世界経済への影響、日本の株価・為替の動揺等々。
一言で言えば、キャメロン首相が賭けに負けた・・・といったところですが、キャメロン首相はスコットランド独立の住民投票でも危ない橋を渡っています。
スコットランドの件では、事前には「独立なんてありえない」というのがキャメロン首相を含めた一般的な見方で、時間を稼ぎたい独立派よりも、楽勝のつもりのキャメロン首相の方が「住民投票?上等じゃないか。早いとこやって白黒つけようじゃないか」と、住民投票実施に積極的でした。
しかし、いざやってみると、思っていなかったような独立気運の高まりに、キャメロン首相や主要政党幹部も大慌てで説得に走り回るところとなりました。
最終的には、独立に伴うリスクを回避して現状維持を選択する動き(「常識のばね」とも言うべきものでしょうか)が働いて、なんとか独立要求をしのぐ形になりました。
そのとき、キャメロン首相も住民投票・国民投票の怖さは身に染みたところでしょうが、すでにEU離脱に関する国民投票は自身の公約として政治スケジュールとなっていましたので、突き進むしかありませんでした。
楽勝と思われていたスコットランド独立でもあれほどきわどいものになったのですから、国民の反EU感情が強く、リスクも「独立」ほどは大きくないEU離脱問題は更に厳しい投票となりました。
今回も最後はリスクを回避する「常識のばね」でなんとか・・・とも最終盤では見られていましたが、今回は「常識のばね」は結果を覆すほどには大きくなかったようです。
イギリスの将来を危うい「賭け」にゆだねたキャメロン首相の失策を指摘する声があります。
****国民投票、危険性浮き彫りに=甘かった首相の読み―英****
英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票は予期せぬEU離脱という結果になり、経済悪化の懸念から、欧州のみならず世界的な危機を招く深刻な事態となった。政治手法として国民投票や住民投票(レファレンダム)を使うことへの危険性が改めて浮き彫りになっている。
英紙サンデー・タイムズは、今回の国民投票をめぐって「キャメロン首相の七つのミス」を挙げ、その第1の過ちとして「そもそも最初から実施を公約すべきではなかった」と指摘した。
英国にレファレンダム実施要件を規定した法律はなく、その都度政権が法律をつくって行う。従って、今回のように政権が望まない結果が出かねない投票をこれほど大きなリスクを冒してわざわざやる必要はない。
それでも首相が今回の国民投票を2013年に公約した理由として、(1)与党・保守党内の反EU勢力をなだめる(2)EU離脱を唱える英独立党(UKIP)へ保守党支持層が流れるのを防ぐ(3)EUに英国に有利な改革を迫る材料になる―など、首相にとっての政治的利益が挙げられる。
だが、経済面での残留メリットを理詰めで説明すれば容易に勝てると見込んだ首相の読みは甘かった。
マックシェーン元欧州担当相は「ロンドンのビジネスエリートは英国を代表しない。庶民は頭(理屈)でなく腹(感情)で判断する」と語り、国民投票の結果は一筋縄では予測できない危険性を早くから警告していた。
首相は14年のスコットランドの独立を問う住民投票も、独立は簡単に阻止できると高をくくって実施、あわや首相自身が望まない独立が実現しかねない危機的状況に陥った。今回はその二の舞いだ。
英国でのレファレンダム実施に今後の政権は一層慎重になるだろう。【6月24日 時事】
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そもそも「民意を問う」ことより、政権・指導部の意向が重視されるロシア・中国も同様の見方です。
EUを弱体化させるイギリスのEU離脱を一番喜んでいるのは、ロシア・プーチン大統領ダ・・・とも言われていますが、経済的にはロシアもEU経済混乱の影響を受ける立場にあります。
そうした政治的・経済的損得以前の認識として、国家の方針を国民にゆだねるなんてありえない・・・というのがプーチン大統領や中国指導部の正直な感想でしょう。
****「英政府の考え甘かった」国民投票でプーチン大統領が批判****
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は24日、英国で行われた欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票について、英政府の「考えが甘く、思慮が足りなかった」と批判する一方で、英国のEU離脱に向けてロシア政府が水面下で動いたとの見方を否定した。
ロシアの国営放送で放送された発言の中でプーチン大統領は、今回の国民投票について「一国、そして欧州全体にとっての重大な決定に決着を付けるやり方としては、英国首脳部の考えが甘く、思慮が足りなかった」と述べた。
EU加盟諸国の関係にくさびを打ち込もうとしていると非難されてきたプーチン大統領にとって、英国のEU離脱は「思うつぼ」だとする見方も多い。
しかしプーチン大統領は同日、英国をEUから離脱させるためにロシア政府が英国の国民投票に働き掛けたとの見方を一蹴。「当然、情勢はしっかり見守っていたが、わが国がその過程に影響を及ぼしたことはなく、影響を及ぼそうと試みたことさえない」と述べた。
プーチン大統領はさらに、ロシア政府としては英国のEU離脱のロシア経済への影響を最小限に抑える努力をすると明言した。ロシア経済は原油安と通貨ルーブルの下落によって既に打撃を受けている。
一方、ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相は、英国のEU離脱が各国市場に及ぼす影響によって「世界経済、ひいてはロシア経済にもさらなるリスク」が生じていると警鐘を鳴らした。【6月25日 AFP】
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****新華社「大ばくちに失敗」=英国民投票****
欧州連合(EU)離脱を決めた英国民投票の結果について、中国国営新華社通信は24日の評論記事で「キャメロン首相の大ばくちの失敗」と酷評した。国民投票自体についても「西側が誇りにする民主的形式が、まったく民族主義や極右主義などの影響に抗し切れないことを検証した」と批判的に伝えている。
別の記事では、専門家の話として「英国の積極的な対中姿勢がEUに与えた影響は小さくない」として、中国に対するマイナス面を指摘。
一方で「英国、EU双方が自らの利益の必要性から、さらに中国との関係発展を重視するようになり、協力の新たなチャンスが生まれる」との見方も紹介した。【6月24日 時事】
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【国家主権を超えた共同体としてのEU】
欧州各国も国民投票要求が連鎖的にひろまり、結果としてドミノ倒しのようにEUが崩壊の危機に立たされることを強く懸念しています。
すでにフランスの極右「国民戦線」やイタリアの新興勢力「五つ星」などは、EU離脱を問う国民投票実施を求めています。
国民投票にゆだねるとイギリスと同様の結果になりかねないと心配するのはわかりますが、ただ、考えてみると(「考えるまでもなく」と言うべきでしょうか)「国民に問うと反対されそうなので、民意を問うことはしない」という考えは「西側が誇りにする民主的形式」からすると本末転倒の考えです。
そもそも、どうしてEUはそんなに国民投票もできないほどに各国国民の支持が低いのか?という根本的問題があります。
EU成立の思想的背景としては「不戦の誓い」があったはずです。
欧州の歴史は各国間の対立・戦争の歴史であり、その行きついたところが2度の大戦でした。
そうした経験を踏まえて、国家間の対立を止揚した共同体を構築しようという思想があったはずです。
そうした立場で言えば、国家の主権が共同体によって制約を受けるのは「当然」のこと、そのための共同体であるという話にもなります。
また、国家内で所得移転・再分配が行われるように、共同体内部である国は負担が大きく、ある国は利益が大きいということも当然のこととなります。それによって共同体全体の利益がはかられ、共同体全体の平和と長期的発展が保証されることになります。
しかし、そうした共同体の理念が支持されず、EUを単に会費を払ってなにがしかの利益を受けるクラブととらえると、国家主権が制約されることは許しがたいことであり、会費に見合った利益がないことへの不満が高まります。
そうした意味で、仏独を中心とした「不戦の誓い」とは距離をおき、ユーロやシェンゲン協定のような共同体の根幹に背を向けてきたイギリスが「EUは制約ばかり多くて、メリットがない」と判断したのも当然のことでしょう。
イギリスだけでなく、他の欧州各国においてもEUへの関心はイギリスと大同小異であり、そうしたことから「国民投票を行えばイギリスと同じような結果になりかねない」との不安にもなります。
まあ、そのように共同体のとしての意識が育っていない、これからも深まらないということであれば、「統合深化」などはあきらめて、緩やかな関税同盟レベルに戻すしかない・・・とも思われます。個人的には残念なことだとは思いますが。