孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス EU離脱の結果への若者たちの怒り ただ、政治への不参加という問題も

2016-06-27 23:23:14 | 欧州情勢

(欧州連合(EU)離脱派の指導者ボリス・ジョンソン前ロンドン市長の車が自宅を離れる際、取り囲む市民やマスコミ関係者たち=ロンドンで24日、AP【6月25日 毎日】)

北海道・道東を旅行中です。
今日は、厚岸からあやめケ原、琵琶瀬湿原、霧多布岬などをまわり、標津で宿泊です。

昨日と打って変わって気持ちがいい晴天、気分も軽くなります。
旅行前の鹿児島もぐずついた日ばかりでしたので。

北海道も同様のようで、みなが「やっと晴れたね」と喜んでいました。やはり2週間ほど雨ばかりだったようで、TVのニュースでは、北海道各地で6月の降水量が記録的な量になったとも報じていました。

昨日、こんな天気だったら釧路湿原の雄大な夕日が見られたのですが・・・。もっとも、これもTVでやっていましたが、釧路できれいな夕日が見られたのは16日ぶりだとか。

大変な時期に来てしまったようですが、今週はお天気の方も大きく崩れることはさそうな予報ですので、「大変な時期」を運よくかすめて避けることができたと言うべきでしょうか。

【「高齢者がEU離脱を決めた」「若者の将来を考えたことがあるのか」】
イギリスのEU離脱を決めた国民投票は「余震」が国内外で続いています。
今回投票については、世代間、所得階層で意見が分かれていることは、事前の世論調査でも指摘されていました。

****<英国民投票>経済か移民問題か 世代や所得階層で意見割れ****
英国で23日に実施される欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票は、英国民を二分する接戦となる公算が大きい。

世論調査では、経済を最重要視する残留派に対し、離脱派は移民問題や国の独立性を重視し、世代や所得階層別でも明確に意見が分かれている。1割程度と見られる態度未定者をどちらが取り込めるかが結果を左右しそうだ。

 ◇世代間の差鮮明
世論調査会社「YouGov」が17〜19日に実施した最新調査によると、「残留に投票する」と答えた回答者のうち、「経済を重視する」とした有権者が57%に達したのに対し、離脱の回答者では8%にとどまった。一方、離脱派の37%が「移民問題」を重視するとしたの対し、残留派はわずか2%だった。
 
年代別では18〜24歳で「残留」が64%に達したが、世代が上がるにつれて離脱派が盛り返し、65歳以上では「離脱」が58%に達した。(中略)

 ◇高所得者はEU支持
社会階層別では、経営者や事務職、専門職といった「中・上流層」で残留が53%、離脱が38%なのに対し、低賃金職や無職といった「労働者層」は離脱支持が52%、残留支持が29%と結果が逆転する。【6月22日 毎日】
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EUの一員として貿易や移動の自由を確保する方が、英国は強くなる。移民は重要な労働力で、経済を前進させてくれる存在・・・・というのが若者層の考えですが、高齢者は移民増加によって「古き良き時代」が失われた、かつてのようにイギリスの主権を取り戻すべき・・・という考えが多いようです。

離脱を決めた結果に怒りが収まらないのが、残留を希望していた若者です。

****<英EU離脱>残留望んだ若者、怒りのデモ行進****
国民投票を23日に行って欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国。一夜明けた24日のロンドン中心部を歩くと、20代の若者たちがデモ行進をするなど、怒りの声を上げていた。

「一日でこの国は大きく変わってしまった。高齢者がEU離脱を決めた」。残留を望んでいた多くの若者は将来を憂え、やり場のない思いを抱えている。
 
「ノー・ボリス! ノー・ボリス!」。ロンドンの国会議事堂付近では、約30人の若者がEU離脱に反対するデモを行った。離脱派のリーダー、ボリス・ジョンソン氏の顔写真に×印をつけたプラカードもある。
 
「離脱に投票した人は高齢者が多いと聞くが、若者の将来を考えたことがあるのか」。大学生のアリス・パーカーさん(23)は憤る。

離脱で移民の入国は制限されるが、英国民もEU内を自由に移動する権利が妨げられる。「この小さな島国では若者の活動や将来を保証してこそ、活力が上がる。昨日と今日は違う日だ。離脱に何らかの歯止めをかけたい」
 
洋服販売員のルイザ・マジャロフさん(22)にとっても、投票結果は「怒りしか覚えなかった」。メディアが離脱と残留で二分されたため、国民の意見も分裂したと感じる。「一度EUを離脱したらしばらくは戻れないし、国が孤立する。まだ(人生の)先は長いのにどうなってしまうのか」とため息をついた。(後略)【6月25日 毎日】
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こうした若者の怒りを背景に、投票のやり直しを求める署名も320万人を超えたようです。
ロンドン独立要求といった“やけくそ”的な反応も。

****英国民は早くも大混乱…ついには“ロンドン独立論” トランプ氏にも余波直撃****
英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利したことが波紋を広げている。残留派が多数を占めたロンドンでは、英国からの独立を求める動きが加速し、投票のやり直しを求める署名も320万人を超えた。英国民は早くも不安に襲われている。
 
国民投票で投票者の6割が残留に投じたロンドンでは、離脱反対デモも行われた。さらにインターネット上では首都ロンドンの独立を求める署名活動が展開され、25日夜までに約15万の署名が集まった。署名ではロンドンのカーン市長に独立を宣言させて、ロンドンのEU加盟を求めている。
 
カーン氏は残留派の一員として活動し、投票結果が明らかになった後もEUの単一市場から離れるべきではないとの立場を示し、「私は今もEUに残留したほうがいいと信じている」と声明を出している。
 
英下院の請願サイトに殺到している投票のやり直しを求める署名は26日午後までに320万人を超えた。請願は投票前から出され、投票率が75%未満で、多数だった方の得票率が60%未満だった場合、やり直しを求めるとの内容。実際の投票率は約72%、離脱支持は約52%だった。
 
いずれも実現可能性はほとんどないが、僅差の結果だったことで、EU残留派の反発が強まっている。(後略)【6月27日 夕刊フジ】
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【「一人一人が等しい1票」・・・・とは言うものの
若者の怒りはもっともです。
将来のことなど念頭になく、過ぎ去った昔を懐かしむ高齢者の意向に引きずれて、自分たちの将来が危うくなるのは納得できないでしょう。

EUを離脱したところで、過ぎ去った「古き良き時代」は戻ってきません。

私自身も高齢者の域に近づきつつありますが、遠い先のことなどどうでもいい・・・と言うか、あまり真剣に考える気にならないところがあります。年金支給さえ維持されれば・・・。

「一人一人が等しい1票を投じて政治を決めるのは素晴らしいことだ」というのは正論であり、反論の余地はないところですが、今回のように遠い将来を拘束するような投票に関し、老い先短い(失礼)高齢者と、この先何十年も働かなければならない若者の1票が同じ価値でいいのか?・・・・という疑問は感じます。

政治を冷笑して、関わろうとしないことの結果でもある
もっとも、その貴重な1票を若者たちがきちんと行使したのか?という問題もあります。
残留派にとって、支持基盤の若者層の投票率が低いことがネックと指摘され続けてきました。

投票もせずに、決まったあとで怒っても、愚かなだけです。

****英EU離脱に憤る若者たち: でも実は若年層は投票しなかった世代****
<英EU離脱の結果に、75%は残留層を投じたという若年層は怒りをあらわにしている。しかし、若年層が投票の鍵を握ると言われていたが、今回も若者の投票率は低かった...>

若年層は怒りを露わにしていてる

ワーキングクラスの怒りがまさかの英国EU離脱を生んだ。栗原康さんの著書「村に火をつけ、白痴になれ」が日本で大評判だそうだが、英国の労働者たちはEU村に火をつけてしまったのである。

が、75%は残留層を投じたという若年層は怒りを露わにしていて、6月24日もBBC2の「ニュース・ナイト」という番組を見ていると、若いライターでEU残留派のパリス・リーズが、初老の歴史学者で離脱派のデヴィッド・スターキーに向かって憎悪をむきだしにしていた。

「はっきり言ってお年寄りの世代は、私たちのように長く生きない。若い世代はもう飽き飽きしているんですよ。私たちの世代は授業料を払わなければいけません。あなたたちは払う必要なかったですよね。私たちはすべてを取り上げられている」

ツイッターにはこんなつぶやきも投稿されていた。
「無料の教育や潤沢な年金、社会流動性、そのすべてを与えられていた世代。その彼らが私たちの世代から未来を取り上げてしまった」

また、チャンネル4の名物ニュースキャスターだったジョン・スノウが、「今朝、パン屋で高校生2人が僕に泣きながら『離脱に投票した年寄りたちは自分たちに何ということをしてくれたんだ』と言った」とつぶやき、「17歳やそこらの『エキスパート』に何がわかるの」「心から共感する」「私の父は80代ですが残留に入れました。高齢者が全員バカでわがままじゃないですよ」など、多くのツイートが殺到して大騒ぎになった。

責任は私たち、若年層自身にある
こうした若者たちの怒りを記事にしているのがガーディアンの若手コラムニスト、リアナン・ルーシー・コスレットだ。が、彼女は、今回の大きな失望から若年層が学まねばならないことがあったと結論する。

遅すぎたとは言え、私の世代が学んだ教訓がある。政治を冷笑して、関わろうとせず、自分たちのために何もしてくれないシステムに参加しても意味がないと感じているとどうなるかということだ。
 
私たちの多くは投票に行かないし、有権者登録さえしない。そうすると政治家は私たちのことなど考えもせず政策を作る。(中略)落ち込むことには、あれだけ若年層が投票の鍵を握ると言われてたのに、今回も若者の投票率は低かったと予測されていることだ。まだ数字は正式に発表されていないが、このことについては、責任は私たち自身にある。(出典:Guardian:"If you're young and angry about the EU referendum, you're right to be" by Rhiannon Lucy Cosslett)

BBCが発表した投票結果の各種分析チャートのページでも、18歳から24歳までの人口が多い地域では投票率が低かったことが指摘されている。

昨年、ジェレミー・コービンが若者たちを熱狂させて労働党党首に選ばれ、若者たちが再び政治的になったと言われていたが、それはロンドンなど大都市の大学生や大卒の若者たち中心の動きで、全国的に見れば今回のような重要な投票でさえ行ってない若者たちがけっこういたということになる。

有権者登録締め切り前の6月初めの時点で、18歳から24歳の層の30%が有権者登録していないことが明らかになっていたが、65歳以上で登録していないのはわずか5%だった。オーウェン・ジョーンズはこう書いている。

英国の約半数である残留に投じた人々は、怖れや怒りを他の市民にぶつけたくなるだろう。だが、それはことを悪化させるだけだ。

離脱派の多くは、すでにのけ者にされ、無視され、嫌われてきたと感じている。現在ソーシャルメディアに現れているような離脱派の人々への侮蔑、いや、上から目線のスノッブな言葉を彼らのコミュニティーが感じたからこそ、今回の結果がある。(中略)もし英国の左派に未来があるとすれば、それはワーキングクラスの人々の生活やコミュニティーとの文化的・政治的な乖離を直視しなければならない。(出典:Guardian: "Grieve now if you must - but prepare for the great challenges ahead" by Owen Jones)

中高年の労働者層の多くは離脱票を投じた
そして若年の労働者層の多くが投票に行かず、そのことが残留派の敗北の理由の一つだったとすれば、英国の左派は全年齢層でワーキングクラスとの親和性が薄いものになったのかもしれない。

 
オーウェン・ジョーンズは「Chavs」という著書で、英国の労働者階級が「チャヴ」という言葉でシステマティックに悪魔化され、侮蔑と差別の対象となってきた事実を「ソーシャル・レイシズム」と呼んで批判していた。

EU離脱投票で爆発した労働者階級の怒りを左派やリベラルは「醜い」と一蹴して嘆くが、その醜さを生み出した背景には「Chavs」で描かれた英国の社会状況が横たわっている。【6月27日 ブレイディみかこ氏 Newsweek】
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旅行先・北海道の地元紙によれば、現地の大学1年生(ほとんどが18歳及び19歳)を対象に、今回参議院選挙に関して調査を行ったところ、「投票に行く」が17%、「行かない」が40%、「わからない」が43%。

「投票に行かない」者の理由としては、62%が住民票を親元に残しており、生活地で投票ができないというものだったそうです。

住民票については、親元の役所から郵送で関係書類を取り寄せて、生活地で不在者投票もできるようですが、面倒ですし、ほとんどがそうした制度を知らないということのようです。

ただ、「面倒」とか「知らない」とか言っていても、投票の結果を何十年にもわたって負わなければならないのは自分たちです。

扇動のための無責任な言動も
それにしても、離脱を煽った指導者にも無責任な言動があります。

****<英EU離脱>公約「うそ」認める幹部 「投票後悔」の声****
 ◇直後の訂正、国民の怒りは爆発
欧州連合(EU)離脱を決めた英国の国民投票を巡り、離脱派の主要人物が訴えてきた公約の「うそ」を認め、国民から強い批判が出ている。

ツイッターでは「離脱への投票を後悔している」という書き込みがあふれ、英政府に2度目の国民投票を求める署名は350万人を突破した。
 
「離脱派のキャンペーンで起きた間違いの一つだ」。離脱派を引っ張ってきた一人、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首が24日のテレビ番組であっさりと間違いを認めたのは、英国がEU加盟国として支払っている拠出金の額だ。
 
投票前、離脱派は拠出金が週3億5000万ポンド(約480億円)に達すると主張していた。与党・保守党のボリス・ジョンソン前ロンドン市長らが全国を遊説したバスの側面にも、巨額の拠出金を「国民医療サービス(NHS)の財源にしよう」と書かれていた。
 
一方で残留派は、EUから英国に分配される補助金などを差し引くと、拠出金は「週1億数千万ポンドだ」と反論。ファラージ氏は番組で残留派の主張が正しいことを事実上、認めた。
 
また、離脱派はEU加盟国からの移民制限を主張していたが、離脱派のダニエル・ハナン欧州議会議員は24日のテレビ番組で、「移民がゼロになるわけではなく、少しだけ管理できるようになる」と、「下方修正」した。

離脱した英国が今後、EUと貿易協定を結ぶためには「人の移動の自由」が条件になる可能性があり、こうした交渉を見据えた発言とみられる。
 
だが、国民投票で離脱が決まった直後の訂正だけに、国民の怒りは爆発。ツイッターでも「うそを信じてしまった」と離脱に投票したことを後悔する書き込みが増加した。

離脱派が主張していた「BREXIT(ブレグジット)」(英国<BRITAIN>と離脱<EXIT>の造語)に絡め、REGRET(後悔)とEXITを組み合わせた「REGREXIT」(リグレジット)や、BRITAINとREGRETを足した「BREGRET」(ブリグレット)という造語も生まれ、ツイッターなどで使われている。
 
再投票を求める請願の署名は23日の投票前から始まり、26日夜時点で350万人を超えた。「残留または離脱の得票率が60%未満」で、「投票率が75%未満」だった場合、2度目の投票を実施するという内容だ。投票結果はこうした条件に合致するが、請願が認められる前に国民投票は終了しており、さかのぼって適用するのは難しいとみられる。
 
ただ、英下院で議論する対象になるかを決める要件の署名数の10万人を大きく上回っている。近く下院の委員会が議題として取り上げるかを協議する。【6月27日 毎日】
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上記のような「ウソ」については、投票前から指摘されていたものでもあり、そうした「ウソ」を信じたたとしたら、信じた方にも問題がありそうです。
コメント (2)
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