孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

増え続ける難民・避難民 その数は6530万人 “世界人口のうち、113人に1人”に

2016-06-22 20:47:58 | 難民・移民

(欧州連合(EU)離脱を呼びかけるポスターを指す英国独立党のファラージ党首=ロンドンで16日、ロイター【6月21日 毎日】)

UNHCR「これほどの危機は前例がない」】
6月20日は「世界難民の日」ということで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、世界の難民らの動向に関する年次報告書を公表しました。

それによれば、“世界人口のうち、113人に1人が難民か避難民”という状況にあるようです。
悪化するばかりの現況に、「世界難民の日」というのもむなしい響きがあります。

****世界の難民・避難民6530万人に、戦後最多を更新****
国連(UN)は20日、紛争などが原因で居住地を追われて国外に逃れた難民や国内で避難民となった人たちの総数が2015年末時点で6530万人に達し、第2次世界大戦(World War II)後の最多記録を更新したと発表した。

「世界難民の日(World Refugee Day)」に合わせて公表されたもので、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると「6000万人を超えたのは初めて」だという。紛争と迫害が前例のない世界規模の難民・避難民危機に拍車をかけていることが浮き彫りとなった。
 
2014年末から2015年末の1年間で、580万人が新たに難民・避難民となった。今や約73億4900万人の世界人口のうち、113人に1人が難民か避難民という計算になる。
 
UNHCRは、難民・避難民の総数が英国やフランスの総人口を超えている事実を指摘し、「これほどの危機は前例がない」との認識を示した。【6月20日 AFP】
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****難民・避難民・亡命申請、世界で6530万人****
・・・・2015年末現在で、難民や国内避難民、亡命申請者からなる「避難を余儀なくされた人々」は6530万人に達し、過去最多を記録した。

内訳は難民が2130万人、国内避難民4080万人、亡命申請者320万人。全体で前年と比べて580万人増えた。

1996年は3730万人だったのが、20年間で1・75倍になった。近年では、11年に4250万人を記録して以降、増加が続いている。
 
難民を生んでいる国や地域はパレスチナ520万人のほか、シリア(490万人)、アフガニスタン(270万人)、ソマリア(110万人)など。シリアの難民は250万人を受け入れているトルコや、レバノン、ヨルダンなどへ流入している。

アフガンからはパキスタンとイランなどへ、ソマリアはエチオピアやケニア、イエメンなど、行く先は周辺国が中心となっている。
 
一方、国内避難民が多いのは、コロンビアの690万人、シリア(660万人)、イラク(440万人)、スーダン(320万人)、イエメン(250万人)、ナイジェリア(220万人)などとなっている。
 
グランディ難民高等弁務官は「避難した人々の声が(政治)指導者たちに届くように望む。(主要原因の)紛争を止める政治的な行動が必要だ」と訴えた。【6月20日 朝日】
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食い物にされ、嫌悪され、銃で追われる難民
“6530万人”という数字の裏には、同数の悲劇があります。

国内避難民が220万人の西アフリカ・ナイジェリアでは、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の襲撃を逃れて隣国ニジェールへ移動する国外難民も多数発生していますが、ニジェールからは更に北アフリカを経て欧州を目指す人々も。

****砂漠に子どもら34人の遺体、密入国業者が置き去りか ニジェール****
西アフリカ・ニジェールの政府は15日、同国の砂漠地帯で先週、子ども20人を含む移民34人の遺体が見つかったと発表した。隣国アルジェリアを目指す途中で密入国業者に置き去りにされたとみられる。
 
ニジェール内務省の発表によると死者の内訳は男性5人、女性9人、子ども20人。治安当局筋はAFPに対し、移民らは飲み水がなかったことにより死亡したとみられると語った。
 
アルジェリアには近年、隣国のマリやニジェールなどから数千人単位の不法移民が流入。その多くは欧州を目指している。【6月16日 AFP】
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欧州を目指すシリア難民などは各国の“厄介者”になっていること、そうした“厄介者”への反発・拒絶が欧州各国の政治・社会体制、価値観を揺さぶっていることは再三取り上げてきているところです。

****英国民投票 「ナチス連想」離脱派の独立党ポスターに批判****
英国で23日実施される欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票で、離脱派を主導する英国独立党(UKIP)のポスターへの批判が相次いでいる。

難民や移民問題に不安を持つ有権者の取り込みを図る内容だが、民族間の憎悪をあおり「ナチスを連想させる」などとして、離脱派からの非難も招いている。
 
ポスターはスロバキア国境前で行列を作る難民を写したもので、「限界点だ」「我々の国境を取り戻そう」と呼びかけている。残留派のオズボーン財務相は「不快で恥ずべきだ。(ナチスによる)1930年代のやり方だ」と指摘。離脱派のゴーブ司法相も「ぞっとした」と不快感を示した。
 
ポスター公表当日の16日、難民支援に取り組んできた残留派のジョー・コックス下院議員が殺害される事件が発生したことも、離脱派には逆風となっている

。離脱派だった与党・保守党のサイーダ・ワルシ元幹事長は同日、「(離脱派の運動は)外国人嫌いばかりで、私にとって限界点だ」として、残留派への転向を表明した。
 
こうした動きに対し、UKIPのファラージ党首は「これは(難民)政策の失敗に光を当てたものであり、創作でなく現実だ」と反論した。【6月21日 毎日】
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現在のイギリスなど欧州の豊かさと、シリアやアフリカなどの惨状は、世界規模の「格差」です。
こうした「格差」が存在することにどのように向き合うのかという問題になります。

歴史的に言えば、こうした「格差」を作り上げてきた遠因には、イギリスなど欧州列強の植民地政策があり、また、イギリスなど欧州各国の現在の豊かさはそうした地域からの収奪のうえに形成されたものではないでしょうか。

そうしたことも考えれば、「ここはお前たちの来るところじゃない!」という主張は不寛容であるばかりでなく、あまりに身勝手なもののようにも思えます。

トルコなど中東諸国に滞留する難民の生活も困窮を極めています。

****シリア難民に発砲、子どもら死亡か トルコ国境警備兵****
在英のシリア内戦の反体制派NGO「シリア人権監視団」は19日、シリアから同日朝、トルコへ越境しようとしたシリア人の一団にトルコ国境警備兵が発砲し、子ども3人を含む8人が死亡、8人が負傷したと発表した。

主要反体制派「シリア国民連合」も11人が射殺されたと発表。一方、トルコ外務省は「真実を反映していない」と否定する声明を出した。
 
人権監視団によると、シリア人の一団は、過激派組織「イスラム国」(IS)が掌握するシリア北部マンビジュ近郊に住んでいた民間人らで、戦闘を逃れて北西部イドリブ県からトルコへ越境避難しようとした際、発砲されたという。
 
シリア国民連合も声明で「恐ろしい悲劇」と述べ、トルコ側を批判。国民連合はトルコ政府から資金援助を受けてイスタンブールを拠点に活動しており、トルコを批判するのは珍しい。
 
トルコは難民流入が続く欧州などの要請で、昨年から国境警備を厳重化。監視団によると、シリアからトルコへ越境避難しようとした際、トルコ国境警備兵に射殺されたシリア人の民間人は今年、60人近くに上るという。
 
一方、トルコ外務省のビルギチ報道官は19日夕、「不法にトルコ入りしようとしたシリア人の民間人に対し、トルコの治安当局が意図的に発砲し、殺害したという報道は真実を反映していない」「治安当局は不法越境に対し、完全に合法的に対処している」とする声明を出した。【6月20日 朝日】
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トルコで起きていることに関する責任の半分は、目的地であり、受け入れを拒んでいる欧州各国にもあります。

ファルージャ奪還に伴い、新たな難民が発生 “難民キャンプ”という名の荒れ地へ
イラク・シリアでは、IS支配地域の奪還作戦が進行していますが、それに伴って新たな難民が多数発生しています。

****イラク軍奪還のファルージャ、避難民数万人 「人道危機」に警鐘****
イラク軍が中部ファルージャの大半をイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」から奪還した後、大量の市民が市外への避難を余儀なくされている。

ノルウェー難民委員会(NRC)は避難民が過去3日間だけで推定3万人に達していると指摘し、イラク政府に「人道危機」への対応を急ぐよう求めている。
 
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、イラク軍が1か月近く前にファルージャ奪還作戦を開始して以来、最多で8万4000人が自宅からの退避を強いられた。今後数日間でさらに多数の避難民が生まれると予想している。
 
こうした状況を前に、NRCのイラク責任者ナスル・マフラヒ氏は「イラク政府にこの人道危機への対応を要請する」と述べた。
 
NRCは配給する水が急速に枯渇しており、必要な援助をこれ以上提供できないと説明。ファルージャ南部のアムリヤット・ファルージャで新たに開設した避難民キャンプでは1800人の収容できるが、女性用のトイレは1か所しかないという。
 
同キャンプの関係者は、施設と資源がこの規模の危機に対処するには不十分だと指摘。「過去4日間に400世帯を受け入れたが、彼らは無一物だ。一部にはテントを確保したものの、それ以外の世帯は女性と子どもを含め、全員が炎天下で地べたに寝ている」と窮状を訴えた。
 
バグダッドの気温は40度前後で推移しており、ファルージャのあるアンバル県はもっと暑くなることも多い。
 
ハイダル・アバディ首相は避難民への支援を約束している。【6月20日 AFP】
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ファルージャ奪還でイラク首都・バグダッドでは祝勝ムードにあるようですが、僅か数十キロしか離れていないファルージャ郊外の荒れ地では10万人前後の人々が水も食糧もない状況に置かれています。

「イラク政府にこの人道危機への対応を要請する」“アバディ首相は避難民への支援を約束している”とは言うものの、どれだけの支援が実際に行われるのか・・・・。
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