(【10月5日 AFP】)
【子供たちに重くのしかかる内戦の負担 栄養失調、更にはコレラも】
日本国内はもちろん、世界的にもあまり関心が高いとは言えない中東最貧国イエメンの「反政府勢力フーシ派及びサレハ前大統領派」と「ハディ暫定大統領派及び軍事支援するサウジアラビア」との内戦。
フーシ派は宗教的にはシーア派の一派ということで、イランが後押ししていると言われ、地域大国であるサウジアラビア対イランの代理戦争とも見られています。
国連特使による和平交渉も結局「中断」に至ったことは、8月14日ブログ“イエメン 国連を脅して「ブラックリスト」から外れたサウジアラビアの空爆で再び子供の犠牲者”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160814で紹介しました。
その後の戦闘状況に関するニュースはあまり多くあちませんが(誰も気にしていないイエメン内戦などはニュース価値がないということでしょう)、戦闘が続いていること、そして犠牲者が増え続けていることは間違いありません。
****空爆で民間人20人死亡=イエメン****
AFP通信によると、イエメンの港湾都市ホデイダで21日、サウジアラビア主導の連合軍による空爆があり、民間人20人が死亡した。犠牲者には子供も含まれており、誤爆とみられるという。
サウジは内戦状態にあるイエメンで昨年3月以降、イスラム教シーア派系武装組織「フーシ派」に対する空爆を続けている。民間人が巻き添えになる事態も繰り返され、空爆が始まってからの死者数は、地上での交戦を含め6600人を超えた。【9月22日 時事】
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サウジアラビアは相変わらず正確さを欠く空爆を続けているようです。“誤爆”などは、はなから気にしていないということでしょうか。
戦闘状態が続けば、当然のごとく住民生活は破壊され、内戦以前から“最貧国”であった人々の暮らしは、いよいよ悲惨なものともなります。
イエメンに限ったことではありませんが、こうした紛争地域での生活の困難さは、特に弱い立場の子供に大きな犠牲を強いることになります。
****イエメン、子どもの栄養失調「極めて衝撃的」 国連事務次長****
国連のスティーブン・オブライアン緊急援助調整官(人道問題担当国連事務次長)は4日、昨年8月以来となるイエメン訪問を終えて記者会見し、1年半に及ぶ紛争で子どもたちが栄養失調に苦しんでいる様子は「極めて衝撃的」だと述べた。
2日間の訪問日程を終えたオブライアン氏は首都サヌアで記者会見し、紅海沿岸の都市ホデイダの病院で「栄養失調の、非常に体の小さな子どもたち」の姿を目にしたと述べた。
「あれほど重度の栄養失調を目にするのは、当然ながら極めて衝撃的だ」と述べたオブライアン氏は、イエメンの「非常に深刻な」食糧不足に対処している各援助機関の活動を高く評価しつつ、「さらなる行動が必要だ。イエメンにおける大規模な食糧不足を解決するためにできることはすべてしなくてはいけない」と述べた。
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、イエメンでは300万人近くが緊急の食糧支援を必要としており、栄養失調の子ども150万人のうち37万人が免疫系の機能低下につながる非常に深刻な状態だという。【10月5日 AFP】
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食糧不足による栄養失調、栄養不足で母乳が出ない母親、免疫低下で容易に感染する子供たち、閉鎖された病院、活動している病院でも深刻な薬品不足、薬がないため単なる熱と下痢でも死んでしまう子供・・・・なんともやりきれない現実ですが、“イエメン内戦で飢える子供たち 熱と下痢で死に至る子も”【9月22日 BBC】http://www.bbc.com/japanese/video-37437024に動画が紹介されています。
更に、追い打ちをかけるように、コレラの発生も報じられています。
劣悪な衛生環境にありますので、当然の結果ではありますが・・・・。
****内戦下のイエメンでコレラ発生、子供たちに命の危機 ユニセフ警鐘****
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は7日、内戦下にあるイエメンでコレラが発生し、貧困にあえぐ同国で子どもたちの命がいっそうの危険にさらされていると警鐘を鳴らした。
ユニセフ・イエメン支部のジュリアン・ハルネ代表は声明で、「(コレラの)発生は、イエメンで悲惨な状況にある数百万人の子どもたちに追い打ちをかけている。イエメンの医療システムは内戦の継続により崩壊しつつあり、コレラが即刻封じ込められなければ、特に子どもたちが大きな危険に直面することになる」と述べた。
ユニセフによると、反政府勢力の支配下にある首都サヌアと、同国第3の都市タイズで、それぞれ数人のコレラ感染者が確認された。ユニセフは現在、同国内の医師と協力して発生源の特定を急いでおり、国際社会に向けて同国の衛生状態改善のための資金提供を呼びかけた。(後略)【10月8日 AFP】
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こうした犠牲を住民に強いながら戦う大義がどこにあるのか・・・わかりません。
【反政府勢力は独自政府を立ち上げ 二つの政府が並立】
サウジアラビアの軍事介入によって2015年3月以降イエメン南部の大部分から撤退したものの、依然として紅海沿岸のほぼ全域と首都サヌア周辺の広い範囲を支配下に置いている反政府勢力フーシ派は、ハディ暫定大統領の政権に対抗して、独自の「救国政府」を立ち上げたそうです。
リビアのように二つの政府が併存する形で、ますます解決が遠のいた感もあります。
****イエメン反政府勢力が「救国政府」、政治的解決いっそう困難に****
イエメンのイスラム教シーア派系反政府武装勢力フーシ派は4日、アブドラボ・マンスール・ハディ暫定大統領が率いる国際的に認知された政権と対立する「救国政府」を樹立した。
フーシ派とアリ・アブドラ・サレハ前大統領の政党が今年7月に設置した「最高政治評議会」は声明で、新政府はアブドルアジズ・ベンハブトゥール氏が率い、27人の閣僚を擁すると発表した。
女性閣僚は5人でイエメンでは前例のない人数となった。閣僚には無党派とされている人物や、南部の独立主義者も含まれている。
ベンハブトゥール氏はサレハ前大統領率いる国民全体会議(GPC)の政治局員で、同国南部のアデン州の知事を務めた経験もある。最高政治評議会の声明によると同氏は首都サヌアで組閣するよう、今月2日に指名されていた。
反政府勢力が救国政府発足を発表したことにより、イエメン情勢の政治的解決はいっそう困難になるとみられる。
国連(UN)によると、イエメンではハディ暫定大統領を支援するサウジアラビア主導の連合軍が軍事作戦を開始した2015年3月以降の死者は6600人を超え、少なくとも300万人が移住を余儀なくされた。【10月5日 AFP】
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首相は元アデン知事の南部出身のようです。
「救国政府」の中身と影響はともかく、5人の女性閣僚や南部の独立主義者を含むこと、また、北部を地盤とするフーシ派が南部出身の首相を擁したことなどは、“なかなかの政治的センス”【10月03日 「中東の窓」】とも言えますが、いかんせん、混乱が拡大することになっては困ります。
【停戦云々の話が出ても、一向に止まない戦闘】
もっとも、国連筋からは随分楽観的な情報も流れているようです。
****イエメン情勢****
・・・・他方国連のエメン特別代表は、数日以内に72時間の停戦合意を発表できるだろうと語った由。
同代表はさらに、政府と合わせてhothy連合代表とも鋭意協議を続けていて、数週間以内で、イエメン問題解決の総合的国連案を示せると考えている述べた由。(後略)【10月8日 野口雅昭氏 「中東の窓」】
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もっとも、上記サイトにおいて野口雅昭氏も“イエメンも特にそうですが、いつも同じことを書いているような気がします。何度もぐるぐるまわりをしているという感じでしょうか。・・・・・イエメン各地の戦闘と言い、停戦と言い、国連の解決案と言い、これまで何度か聞かされた話のような気がして、あまり真面目にフォローする気もしませんが・・・”と書かれているように、停戦だ何だと言いつつ、一向に戦闘が止まないのがイエメン内戦のこれまでです。
残念ながら、あまり期待もできません。何も話がないよりはましですが。