(ウーバーの描く「空飛ぶタクシー」【10月28日 Newsweek】
【動き始めた変化は、案外早く現実のものとなるのかも】
人工知能(AI)を駆使した新技術の研究・開発が急速に進んでいることは今更言うまでもない話で、いろんな場面でのロボット技術や、完全自動運転車などが私たちの生活の中に登場するのも、そう遠くない将来と思われます。
産業イノベーションの起爆剤という点もありますが、先ほどもTVニュースで高齢者ドライバーが運転する車に起因する事故を報じていましたが、今後急速に高齢化が進む日本にあっては、高齢者ドライバー問題をクリアする点でも、完全自動運転車は必要不可欠で、早期の実現が望まれる技術でしょう。
ただ、そうは言うものの、現実世界に暮らす身からすると、そんなに大きな変化がすぐに始まる・・・・という実感も湧かないのが正直なところです。
しかし、動き始めた変化は、私たちが感じているよりも案外早く現実のものとなるのかも。
自動運転車については、自動運転中だったテスラ車がアメリカ・フロリダ州で死亡事故を起こした事例など、今後もこうした事故が不可避で、どの程度現実性があるのだろうか?とも思ってしまいますが、テスラは強気のようです。
****早くも2017年が「完全自動運転」元年に?****
今後登場するすべてのテスラ車が完全自動運転に対応 アプリ1つで車が迎えに来てくれる時代に
テスラモーターズは先週、移動中のクルマの操作に人間がまったく関与しない「完全自動運転車」の実現に近づきつつあることを明らかにした。今後生産するすべての車に、完全自動運転が将来的に可能となるカメラやセンサーなどの装備を搭載するという。
ソフトウエアを段階的に更新することで自動運転が可能な範囲を広げていき、最終的に完全自動運転を実現する予定だとしている。そうなれば専用のスマートフォンアプリを操作するだけで、車が迎えに来てくれる時代が到来する。
これでテスラは、自動運転車開発競争の先頭へと一気に躍り出たようだ。「来年末までに、ロサンゼルスからニューヨークまで完全な自動運転で走破できるようにする」と、イーロンーマスクCEOの鼻息も荒い。(後略)【11月1日号 Newsweek日本版】
*******************
2017年が「完全自動運転」元年となるのは、あくまでもハード面の話で、“必要なハードウエアを前もって車に搭載し、実際の自動運転機能はソフトウェアの更新で提供する方法だ。”ということですが、“テスラがソフトウェア更新のボタンを押せば、あっという間に何十万台もの車が自動運転を始めるだろう。まるでハリウッド映画のボットの反乱のように。”という話にもなります。
地上の「完全自動運転車」どころか、空を見上げると、全自動ドローンを使った「空飛ぶタクシー」がビュンビュン飛び回る・・・という日も。
****都会の空を「空飛ぶタクシー」でいっぱいにするウーバーの未来構想****
<タクシー配車サービスのウーバーが、全自動ドローンを使った「空中交通システム」構想を発表。機体メーカーや関係当局を巻き込む野心的な構想だが、その現実味は?>
2030年までには、道路や建物を飛び越えて、客を乗せて目的地まで運ぶ全自動ドローンが都市部の空を飛び回ることになる――もしもウーバーの思い通りになれば、の話だが。
米配車サービス「ウーバー」の製品担当主任ジェフ・ホールデンは今週、垂直離着陸(VTOL)飛行機を使った「空中ネットワーク」の将来構想を、99ページの詳細な白書にまとめて公表した。
最近ウーバーは、タクシーに自動運転車を投入することを発表したが、それすらたいした話ではないように見えてしまう白書だ。
しかしウーバーがVTOL機を製造するわけではない。むしろ、「空中」交通システムがどのようなものになるか、機体メーカーがどうVTOL機の製造に取り組んだら良いかを提示した白書だ。もちろん最終的には、ウーバーが空中ネットワークを商業化して収益を上げるのが目標だ。
十数社が機体を開発中
白書が示した未来構想では、自動車で2時間かかる移動が15分に短縮され、道路や橋、トンネルといった既存の交通インフラは、地上を走る自動車による混雑から解放される。
「最新の技術進歩によって新しいタイプのVTOL飛行機の製造が現実的になった。十数社の企業が、多くの異なった機体デザインをベースに、VTOL機の実用化に熱心に取り組んでいる」と、白書は記している。
今日使われている技術で最もVTOL機に近いのはヘリコプターだが、ホールデンは、ヘリコプターは騒音がひどく、効率性が低く、大気汚染も引き起こすし、費用がかさむと指摘している。
VTOL機を実用化するうえで最大の障害となるのは、法規制やバッテリー技術、信頼性、費用、安全性だ。しかしホールデンは、こうしたすべての障害を克服する解決策が、近い将来見つかるだろうと記している。
「今回の白書は実現に向けた行程のスタートを意味する。ウーバーはこれから、関連企業やインフラ・規制関係当局をはじめ、都市自治体、自動車メーカー、サービス利用を見込める顧客代表、地域コミュニティなどにアプローチして、この都市型空中交通システムの意義を認識し、導入を検討するように働きかけていく」【10月28日 Newsweek】
********************
「完全自動運転車」よりもはるかに“絵空事”のようにも思えますが、空中には障害物があまりないことを考えると、技術的には地上の「完全自動運転車」よりは簡単かも・・・・。
もっともVTOL機の実用化は、オスプレイで大騒ぎする日本では当分無理そうですが。
【アフリカでも進む自然エネルギー活用】
こうした‟絵空事”や“夢物語”とは違って、自然エネルギーの活用は地道に進んでいます。
電力事情が悪いアフリカなどは、太陽エネルギーの面では、むしろ他の地域よりも有利な条件下にあります。
****モスクから始まる「エコ」=再生エネ普及の手本に―モロッコ****
北アフリカのモロッコで11月に開かれる国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)を前に、同国は再生可能エネルギー導入などを通じたモスク(イスラム礼拝所)の「エコ化」を進める方針を決めた。
AFP通信によると、まず主要6都市の64モスクで着手する。イスラム社会で大きな影響力を持つモスクでの取り組みは、専門家からも「再生可能エネルギー普及の手本になるのでは」と注目を集めている。
人口の99%がイスラム教徒のモロッコには、約1万5000のモスクがある。省エネルギーは発光ダイオード(LED)照明への切り替えや、太陽光発電、太陽熱を活用した温水システムの整備によって実施。神聖な祈りの場でもあるモスクの外観には影響を及ぼさない。
再生可能エネルギー導入を推進するため政府が設立したモロッコ・エネルギー投資会社によると、目標は全モスクのエネルギー費用の4割削減。首都ラバトにあるモスクでは、消費エネルギーを68%も減らせると試算された。
礼拝前に手足を清める際、太陽熱で温めた湯を使えるようになったり、余裕のできた電力を活用して空調を整備したりし、利用者にも恩恵がある。(中略)
エコ化に必要な技術は、いずれも地元で調達可能で、雇用拡大にもつながると期待されている。取り組みにはドイツ国際開発公社(GIZ)も参加しており、(北アフリカの都市計画史に詳しい筑波大の)松原准教授は「COP22に際し、先進国が途上国を支援する流れに乗っているのではないか」と話した。【10月11日 時事】
**********************
****アフリカ大陸初の太陽光発電空港、環境や経費に貢献 南ア****
南アフリカ南岸の都市ジョージ(George)には、太陽光発電を利用したアフリカ大陸初の「環境に優しい」空港がある。
管制塔やエスカレーター、チェックインカウンター、荷物運搬用コンベヤー、レストラン、ATMなど、ここでのサービスすべてに利用されているのは、数百メートル離れた滑走路に隣接した土地に設置された、小規模な太陽光発電所の電力だ。
2000枚の太陽光パネルが作り出す電力は、1日当たり750キロワットで、空港の運営に必要な400キロワットを上回る。(中略)この空港の年間利用者数は約70万人。太陽光を利用して運営される空港としては、インド南部コチン(Cochin)の空港に次いで世界で2例目。
こうした意欲的なプロジェクトは、早くも環境面で良い結果をもたらしている。太陽光が主要電力となって以降、この空港の二酸化炭素の排出量は1229トン減少。これは、燃料10万3934リットル分に相当する。
また電気料金は年間40%削減されたため、初期費用の1600万ランド(約1億1500万円)分はあと5~10年で採算が取れる見通しだと空港当局者は語っている。【10月14日 AFP】
*********************
****セネガル、太陽光発電施設の運転開始****
再生可能エネルギー事業への参入を目指すセネガルで22日、サハラ以南のアフリカ地域で最大規模の太陽光発電施設が運転を開始した。
モーリタニア国境に近いセネガル北部のボクルに建設された太陽光発電施設「Senergy 2」は出力20メガワットで、16万人分の電力を供給する。セネガルは2017年までに電力需要の20%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げており、その達成にも貢献する見込みだ。
同国では現在、全世帯の45%で電力が不足している。
総工費2800万ドル(約29億円)のこの施設はセネガル政府の支援を受け、フランスの再生可能エネルギー企業グリーンウィッシュ(GreenWish)によって開発された。また英国とノルウェーから共同開発投資グリーン・アフリカ・パワー(Green Africa Power)を通じて資金援助を受けた。
グリーンウィッシュによれば、この施設により毎年、二酸化炭素(CO2)2万3000トンの排出を削減できるという。
また、来年1月末までにはさらに2つの太陽光発電施設が運転を開始し、新たに50メガワットが増加される予定だ。国営電力企業セネレックによると、同国の現在の総発電容量850メガワット。
ボクルの太陽光発電施設はモロッコや南アフリカに比べるとその規模は小さく見えるが、セネガルは再生可能エネルギーにおいて、アフリカのほかの地域よりも太陽光発電技術の活用で遅れをとっている西アフリカで手本となることを目指している。
アフリカ大陸には一年を通して太陽が降り注ぎ、未開発の土地が多いにもかかわらず、サハラ以南のアフリカ地域の電力需要に対する太陽光発電の割合はわずかにとどまっており、同地域の人口、約10億人のうち約6億人に電力が行き届いていない。【10月28日 AFP】
*******************
****ドバイ、1000メガワットの太陽光発電所を建設へ****
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ電力水道公社(DEWA)は今月初め、2030年までに1000メガワット級の太陽光発電所を建設する計画を発表した。DEWAは2030年までに電力需要の25%を再生可能エネルギーで賄うことを目標に掲げている。
2021年4月までに、第1段階として集光型太陽光発電(CSP)施設で200メガワットの発電を目指すという。DEWAのサイード・テイヤー(Saeed al-Tayer)最高経営責任者(CEO)は「このプロジェクトは世界最大のCSP施設になる」と述べた。DEWAは現在、発電所を建設・運用し、送電公社に電力を販売する民間企業を探している。
バイ首長国は2013年10月に13メガワットの発電所を建設しており、2017年4月からは別の200メガワット級の発電所が操業可能になる見通しとなっている。
原油が豊富な隣のアブダビ首長国と異なり、ドバイ首長国の原油埋蔵量は減少しており、ドバイは貿易や運輸、観光へと経済の多様化を目指している。【6月24日 AFP】
*******************
【中国のエネルギー事情】
お隣・中国の事情を見ると、“買い取り価格を高額に設定するなど再生可能エネルギーへの優遇策を背景に、中国では過去5年で風力と太陽光の発電能力が予想を超える伸びを見せている。”【10月22日 ロイター】ということで、2016年の再生可能エネルギー事業者に交付する補助金が、600億元(90億ドル)不足する可能性があると明らかにされています。
また、深刻な環境汚染に配慮して、火力発電所30基の建設を中止することを発表し、「世界的にも前例がない規模の措置だ」とも評されています。【10月25日 Record chinaより】
もっとも、“10月25日、世界原子力協会(WNA)は、中国が今後10─15年に、米国を抜き世界最大の原子力発電所保有国となる見通しだと明らかにした。大気汚染対策として、原子力発電所の建設を急いでいることがその理由という。”【10月26日 ロイター】と、原子力発電への転換を急いでいるようです。
【現在は問題も大きい再生可能エネルギーではあるが・・・・】
再生可能エネルギーの問題点としては、その不安定性が挙げられ、そこが原子力発電を重視する立場の根拠ともなっています。
****オーストラリア南部の州全土が停電、再生エネルギーに過度の依存へ疑問符****
激しい嵐に見舞われ、州全土で大規模な停電が発生した豪サウスオーストラリア州で29日、電気がほぼ復旧した。停電の影響で、資源大手BHPビリトンは操業を停止し、公共交通機関は運休した。
当局によると、29日朝までに州の90%で電気は復旧したが、強風や豪雨が予想されるため、さらなる混乱が起きる可能性があるという。
この停電を受け、風力発電の比率が40%という同州の再生可能エネルギーへの過度な依存が、事態を悪化させたのではないかとの疑問が生じている。
気候変動に懐疑的なジョイス副首相は29日、「再生可能エネルギーへの過度の依存が問題を悪化させたのではないか、再生可能エネルギーに安定した電力供給能力があるのか、疑問を呈する必要がある」と、オーストラリア放送協会(ABC)ラジオで述べた。
石炭火力発電所が主力のオーストラリアは、一人当たりの二酸化炭素排出量が世界で最も多い国の一つ。再生可能エネルギーの比率増加に取り組んでいる。【9月29日 ロイター】
******************
ただ、漠然とした素人考えですが、これだけ技術進歩が著しい現代ですので、効率的な蓄電技術なども本腰をいれれば可能なのでは・・・・。
また、経済的コストにおける原子力発電の優位性という話は、どこまで廃炉や廃棄物処理、事故時の対応などをシビアに見込んでいるのか・・・いささか怪しい感もあります。
何よりも、事故時の被害の大きさ、廃棄物処理をどうするのかという点で技術的に完成していないといった問題があることは言うまでもありません。
個人的に言えば、原発が立地する場所で“共存”しており、あまり原発を目の敵にするつもりもありませんし、地域経済が原発に大きく依存している面も無視できません。
ただ、再生可能エネルギー利用が進むなかで、厄介な面がぬぐえない原子力発電というのは、いつのまにか、安全性とか将来的負担などはあまり重視しない“途上国タイプ”の“過去の技術”になりつつあるような気もします。(「不要だ」とか「今すぐやめろ」とは言いませんが)
地上を「完全自動運転車」が走り、空を見上げると、全自動ドローンを使った「空飛ぶタクシー」がビュンビュン飛び回る・・・という日には、自然エネルギーが現在抱えている問題は技術的対応が可能になるように思えますが、原発の問題が解消されるとは思えませんので。