孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

双方に不満がたまる中韓関係  違法操業漁船“体当たり” 済州島の“小監獄”

2016-10-10 23:01:43 | 東アジア

(韓国の人気観光地・済州島 空港で入国を拒否された中国人観光客の“小監獄” この状態で帰国日まですごすというのはつらい・・・ 【10月8日 Record china】)

朴大統領 “怒りをこらえて”中国との関係改善に?】
昨年9月に北京で行われた中国の対日戦争勝利70周年記念式典や軍事パレードに西側から唯一、最高首脳として朴槿恵・韓国大統領が参加し、「中韓蜜月」とも評されていた中韓関係ですが、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発を中国が抑止できなかった(あるいは、その意思がない)ことから、米軍のTHAAD(終末高高度防衛)ミサイルの韓国国内配備を決定したことで、中国が猛反発、その関係が急速に冷え込んでいることは周知のところです。

もっとも、内憂外患に苦しむ朴大統領は、最近は“怒りをこらえて”中国との関係改善に乗り出しているとも。

****怒りをこらえて、内憂外患に苦しむ朴槿恵大統領の対中外交****
2016年10月7日、多維網は記事「怒りを胸に秘めて、朴槿恵(パク・クネ)大統領の矛盾した対中心理」を掲載した。

韓国の朴大統領が窮地に追い込まれている。北朝鮮の核及び弾道ミサイルの開発が喫緊の課題となったほか、THAAD(終末高高度防衛)ミサイル配備を決定したことで中国との外交関係にひびが入った。国内はというと経済低迷が続き、大統領への批判が高まっている。

まさに内憂外患の状況で朴大統領が突破口に選んだのは中国だ。以前は北朝鮮への経済制裁が不十分だと抗議していたが、今は怒りを胸に秘めて批判を封印した。

もっともいくら韓国が関係改善を求めたところで、米国のTHAAD配備を中止させることができない以上、中国の怒りは収まらない。朴大統領の苦しい立場に変化はなさそうだ。【10月9日 Record china】
*****************

中国経済に大きく依存する韓国が対中関係を重視するのは当然のことですが、朴大統領の中国との関係改善を求める具体的な動きというのは、よく承知していません。

9月5日、中国の杭州でG20首脳会議の後に開かれた、習近平国家主席と韓国の朴槿恵大統領の会談はもの別れに終わったと報じられています。
あまり対中国批判めいたことを口にしないのが、関係改善を求める動きということでしょうか。

迷走するTHAADミサイル設置予定場所については、“中国が警戒しているミサイル追尾X-バンドレーダーも長距離を見通せない山間部に置き、透視距離600〜800キロ程度。中国の内陸部を対象にしておらず、中国に配慮している。”(倉田秀也・防衛大学校教授)【10月7日 Record china】という見方も。

閃光弾火災事件に続き、“体当たり”事件
一方、中韓関係悪化を更に刺激そうな出来事はいくつか報じられています。

****<中国漁船>韓国警備船を沈没させる 不法操業で体当たり****
不法操業していた中国漁船が、取り締まりのために接近した韓国の海洋警備安全本部の小型高速船に体当たりして高速船が沈没し、韓国政府は9日、中国大使館に対して抗議し、再発防止を求めた。聯合ニュースが伝えた。
 
聯合によると、韓国北西部・仁川(インチョン)沖約76キロの韓国側の排他的経済水域(EEZ)内で7日午後3時ごろ、約40隻の中国漁船が不法操業していたため、韓国海洋警備安全本部の高速船が取り締まりのため接近。
漁船1隻に隊員8人が乗り移ったところ、漁船乗組員が操舵(そうだ)室を施錠して閉じこもるなど抵抗する間に、別の中国漁船が高速船に体当たりして沈没させたという。海洋警備安全本部が9日に発表した。
 
中国漁船の不法操業をめぐっては先月29日にも、韓国側が抵抗する漁船に対して閃光(せんこう)弾を投げ込んだところ火災になり、中国人乗組員3人が死亡する事故が起きている。【10月9日 毎日】
*******************

当然ながら、韓国国内では取締り強化を求める声があがっています。

****韓国警備艇を沈没させた中国漁船に「武器使用強化すべき****
2016年10月10日、中国紙・環球時報によると、韓国・仁川沖の黄海上で7日、違法操業の取り締まり中だった韓国海洋警察の高速ボートが中国漁船の体当たりを受け沈没した問題で、韓国メディアは、こうした中国漁船に対する武器使用を強化すべきとの主張を展開している。(中略)

韓国外交部東北アジア局の審議官は同日、在韓中国大使館の総領事を呼び、遺憾と抗議の意を伝えるとともに、再発防止に向けた中国側の積極的な努力を求めた。

韓国各メディアの論調は、中国漁船非難で一色だ。韓国紙・国民日報は社説で「韓国海洋警察による中国漁船の取り締まりは『戦場』同様だ。これは韓国海洋警察の公権力に対するじゅうりんであり、中国漁船に対する武器使用を強化すべきだ」と主張。中央日報も「中国漁船に慈悲は無用だ」と伝えている。【10月10日 Record china】
*******************

9月29日に起きた韓国側が抵抗する漁船に対して閃光弾を投げ込んだところ火災になり、中国人乗組員3人が死亡した事故に続く今回の“体当たり”ですから、双方で険悪なムードが漂っても不思議ではないくらいですが、そこまでは至っていないようです。

日中間で同様の事件があれば、双方世論は相当にヒートアップしそうですが。

中韓両国は、違法中国漁船取締りで協議を行っていますが、これら漁船は中国当局も許可していない“海賊船”のようなものだとか。現代の“倭寇”みたいなものでしょうか。

****違法中国漁船への厳しい処罰 韓中政府が協議****
韓国と中国の両政府が違法操業を行う中国漁船への厳しい処罰について協議を進めている。韓国海洋水産部の崔完鉉(チェ・ワンヒョン)水産政策室漁業資源政策官が10日に開かれた記者懇談会で明らかにした。

同部によると、取り締まりの強化により黄海に出没する中国漁船は減少している。カニ漁の最盛期に入った9月の1カ月間、黄海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)に出没した中国漁船は3549隻で、前年同月の6369隻に比べ約半減した。

一方、1〜9月に違法操業で取り締まりを受けた中国漁船は42隻で、昨年通年の25隻に比べはるかに多い。

問題は、取り締まりに抵抗する中国漁船の暴力行為がますますエスカレートしている上、中国漁船の大半が韓国はもちろん中国でも許可を受けていないため、処罰に限界があることだ。今月7日には仁川市・小青島周辺の海上で、中国漁船が取り締まりに当たっていた韓国警備当局の高速警備艇に体当たりして沈没させる事件が発生した。

崔政策官は「違法漁船の取り締まりの必要性については中国政府も認識しているが、違法漁船は韓中どちらの許可も受けていないため海賊船に等しい」と指摘。警備艇沈没事件については、韓中漁業共同委員会の開催に向けた準備会談で中国側に強く抗議し、再発防止対策などを求める計画だと述べた。【10月10日 世宗聯合ニュース】
*****************

激昂しやすい韓国にしては冷静な対応ですが、それだけ中国に気をつかっているということでしょうか。

中国人による凶悪事件続く済州島 中国公安関係者常駐も検討】
一方、観光業にあっては、韓国にとって中国人観光客は今や最大のお客様となっています。
そのマナー違反に対する批判もあるのは各国同様ですが、人気の観光地・済州島では中国人による凶悪事件などが多発しており、韓国世論の批判を惹起しています。

ただ、それでも中国人観光客頼みの状況には変わりはないようです。

****中国人による凶悪事件続く済州島、それでも「歓迎します」の理由****
2016年9月24日、北京晨報によると、韓国済州特別自治道の観光局は、済州島で中国人による犯罪が相次いでいることについて、「済州の全体的な雰囲気としては中国人観光客を非常に歓迎している」とした。

同島では、今月17日に中国人の男が韓国人女性を刺殺したほか、その前の週には数人の中国人観光客がレストランの店長(中国人)に暴行を加えるなど、凶悪な事件が立て続けに起きており、中国人へのビザ免除廃止も含めて対策強化を求める声が上がっていた。

同局関係者は、「ビザ免除政策を廃止するかどうかは中央政府が決めること」としながらも、入国審査の強化などで再発防止を図るべきだとし、ビザ免除の廃止には反対する姿勢を示した。

韓国・聯合ニュースによると、2002年以来、ビザ免除で済州島を訪れる外国人の9割以上が中国人で、15年も外国人観光客全体の8割以上にあたる223万人に達した。

現地の旅行会社で働く金(キム)さんは、中国人の観光業への貢献が大きいとし、「最近、事件が頻発しているけど、ほとんどの中国人観光客は法律を守っている。もしビザ免除を廃止すれば、済州島の経済への影響は大きい」と話している。

中国では10月1日から国慶節の大型連休に入るため、大勢の中国人が済州島を訪れるとみられる。中国の駐済州総領事館は観光客に対して、再度、現地の法律法規を順守するよう呼びかけている。【9月25日 Record china】
**********************

「済州警察には中国語対応の警察官が10人、通訳担当が16人いるが、中国人観光客の激増につれて増加する事件に対応しきれていない」とのことで、済州警察庁に早ければ年内にも外事課が新設される見通しだとの報道も。【9月30日 Record china】

更に、済州島への中国公安関係者を常駐させることも検討しているとのことです。

****済州島に中国公安関係者の常駐を」、韓国外相発言に国内猛反発****
09月30日 23:20
2016年9月29日、韓国・中央日報によると、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は26日にあった国会外交統一委員会で、「済州島への中国公安関係者常駐に向け、中国側と協議する」と述べ、ネット上で強い反発を招いている。国際在線が伝えた。

尹外相は、済州島で中国人観光客による犯罪が増加していることを指摘。特に17日に島内の教会で起きた中国人観光客による地元女性の殺害事件を挙げ、事件の発生後「市民の不満が拡大している」とした。韓国政府の各部門が積極的な対策を打ち出し、済州島での外国人犯罪に対応しなければならないと主張した。

その上で、尹外相は済州島への中国公安関係者を常駐させ、地元警察当局と連携して犯罪対策にあたらせるべきだとした。

これに対し、韓国のネット上では「荒唐無稽だ。自分たちの国の治安を中国当局に守ってもらおうというのか」など強い反発が起きている。【9月30日 Record china】
******************

韓国ネットの反応云々は、日本の2ちゃんねるのようなもので、何に対してもぼろくそに批判しますので、一般世論の参考にはなりません。

済州空港で“小監獄”事件
ただ、中韓双方の“強い不満”をうかがわせるニュースも。

****韓国済州空港で“監禁”される中国人観光客が続出、100人以上か****
8日、新京報によると、国慶節の連休で韓国済州島を訪れる中国人が入国を拒否され、狭い部屋に“監禁”されるケースが相次いでいるという。

2016年10月8日、新京報によると、国慶節の連休で韓国済州島を訪れる中国人が入国を拒否され、狭い部屋に“監禁”されるケースが相次いでいるという。済州島を訪れた中国人観光客から同様の訴えが相次いでおり、その数は100人以上にのぼるとみられる。

南京市在住の張(ジャン)さんは、妻と共に4泊5日の済州島ツアーを申し込んだ。海外旅行の経験がなかったため、距離的に近くビザも免除される済州島を選んだ。

しかし、6日午前に到着した現地の税関で、「宿泊予定のホテルの予約票を携帯していない」との理由でパスポートと帰国便の航空券を没収され、空港内の小部屋に押し込まれた。税関職員は張さんらに、帰国便を予約し直すか、帰国便の日まで空港で過ごすよう指示したという。

ハルビン市在住の馮(フォン)さんも、夫と共に6日に済州島に到着したが、税関を通過して預けた荷物が出てくるのを待っていた時に職員に呼び止められた。

馮さん夫婦は中国の空港でたまたま同じ便に乗る3人が同郷だと知り、道中は5人で会話を楽しんでいた。職員は馮さん夫婦を別室に連れて行き、その3人について「知り合いか」と尋ねた。これに対して、馮さんは「知り合いではない」と答え、馮さんの夫は「中国の空港で知り合った」と答えたが、これを聞いた職員が「2人の話が一致しない」と判断、入国許可を取り消したという。

瀋陽から済州島を訪れ、同じように拘束されたある観光客によると、部屋での食事は自腹で、職員に注文すると持ってきてくれる。布団はなく雑魚寝状態で、部屋の外の廊下には出られるものの、その先には扉があり、鍵が閉められている。

中国人観光客の出入りは激しいが、常に100人前後が拘束されている状態で、最も長い人は2日から6日まで5日間もそこにとどまり、帰国便を待っているという。

中国の総領事館の担当者は、「済州島は中国人に対してビザを免除しているが、入国事務に関しては韓国の内政。どのような人物に入国を許可するかは、韓国側が判断することになる。主に入国目的が重要で、旅行の証明が不十分だったり、移民が疑われたりする場合は入国を拒否されることがある」と説明。韓国側とこの問題について協議を行い、適切に処理するとしている。

済州島は中国人観光客が多く訪れる場所だが、旅行目的で入国して失踪する中国人が増加していることもあり、今年は中国人の入国を拒否する割合が14年比で約4倍になっているという。【10月8日 Record china】
*******************

個人で海外旅行する場合、現地での滞在先を決めていない旅行者も多く、そういうときは入国カードにはガイドブックに掲載されているホテルを適当に記入しておく・・・というのはごく普通のことです。

そうしたことからして、“「宿泊予定のホテルの予約票を携帯していない」との理由でパスポートと帰国便の航空券を没収され、空港内の小部屋に押し込まれ”帰国便を予約し直すか、帰国便の日まで空港で過ごすよう指示されるというのは・・・・厳しすぎるというか、何らかの悪意すら感じます。本当でしょうか?その時点でどこかホテルに連絡して予約をとるというのではダメなのでしょうか?

まあ、そんなに厳しいチェックがあるのに、どうして予約していかないのか・・・という話も。旅行社からの注意喚起はないのでしょうか?よくわからない話です。

経済大国を自任する中国ですが、韓国で失踪する中国人というのはどういう人たちでしょうか?

「新京報」というのは中国タブロイド紙ですが、韓国メディアは“過大報道”“韓国への不満をぶつける口実に使われている”と反発しています。

****中国人観光客を“監禁”?韓国メディアが反論―中国メディア****
9日、環球網は記事「“小監獄”事件は中国メディアの過大報道、韓国への不満のはけ口に―韓国メディア」を掲載した。高高度防衛ミサイル(THAAD)問題で高まった韓国への不満をぶつける口実に使われていると韓国メディアは分析した。(中略)

“小監獄”事件について当初、韓国メディアは一切報じていなかったが、過熱する中国側の報道を受けて反応を示している。

済州島は中国人観光客に対してビザを免除しているが、ホテルの予約記録などがそろっていない場合には入国拒否をするケースもある。特に近年、違法滞在者が増えつつある中で入国審査が厳格化されている。

入国拒否となった場合、送還待機室で帰国便を待つのは通常の手順であり、中国側は故意に事件を煽っていると批判。高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に伴い中韓関係が悪化する中、韓国への不満のはけ口として利用していると分析した。【10月10日 Record china】
*****************

宿泊予定のホテルの予約票を携帯していないと入国拒否され、“送還待機室で帰国便を待つ”ことになるのは事実のようです。

漁業問題にしても、観光問題にしても、中韓関係には双方に不満がたまっているように見えます。

もっとも、隣国関係において、このくらいのトラブルがあるのは通常の話であり、日本も隣国と何かあったからといって、いたずらに感情的になる必要もありません。冷静に適切な対応をすればいいことです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする