(米国防総省のDARPAが今年8月に公開した将来の対自爆ドローン戦闘図 【10月19日 部谷 直亮氏 JB Press】
ほとんどゲームの世界のようです。)
(こちらは、オランダ・オッセンドレグトで公開された訓練で、ドローンを捕獲するワシ オランダ警察が実際に採用した方法だとか【9月13日 AFP】)
【ISの「空飛ぶIED(即席爆発装置)」】
イラク政府軍“等”によるモスル奪還作戦の開始については、“等”に様々な勢力・周辺国が含まれており、その思惑でモスル解放後も問題が尽きない・・・という話は、昨日ブログ“イラク モスル奪還作戦開始 ISの軍事的排除よりも難しい問題が山積 解放後は平和か混乱か”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20161018で取り上げました。
今日は、その戦場で使用されることも懸念されている「兵器」に関する話題。
ISが化学兵器を使用していることはかねてより指摘されているところで、今回のモスルの攻防にあっても、その使用が懸念されています。
*****「イスラム国」、モスルでの反撃に化学兵器使用も=米当局者*****
過激派組織「イスラム国」(IS)が支配するイラク北部モスルの奪還作戦がイラク軍主導で開始されたことを受け、米当局者らは18日、ISが反撃に化学兵器を使用する可能性があるとの見方を示した。ただ、ISの化学兵器開発能力は非常に限定的とみている。
米軍は、ISが過去数カ月にマスタードガスを使用したとみて、砲弾の破片を定期的に収集し、化学物質の有無を調べている。当局者の1人が明らかにした。
米軍は10月5日、ISが使用した武器の破片からマスタード物質の存在を確認したと、別の当局者が匿名を条件に語った。ISは米軍や有志国連合の部隊ではなく、地元部隊を標的にしていたという。この当局者はロイターに「ISIL(イスラム国)の非難されるべき行動や国際規範を全く無視していることを踏まえれば、これは驚くべきことではない」と述べた。
米当局は、ISが致死性の高い化学兵器の開発にすでに成功したとはみておらず、通常兵器が依然としてイラク軍やクルド人部隊にとって最も危険な脅威と想定している。【10月19日 ロイター】
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今回のモスル奪還作戦の直前には、ISのドローンを使った自爆攻撃も話題になりました。
****ISのドローンが爆発、クルド人戦闘員と仏兵計4人死傷 イラク****
イラク北部モスル(Mosul)近郊で、爆発物が仕掛けられたイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の小型無人機(ドローン)が爆発し、クルド人戦闘員2人が死亡、フランスの特殊部隊員2人が負傷していたことが12日、分かった。
米国防総省はかねてISが偵察や小型爆発物の運搬のために市販の簡易なドローンを使用していると指摘していたが、ISのドローンによる死者が確認されたのは初めて。
米国防当局者によると、このドローンは今月2日、イラク北部にあるクルド人自治区の都市アルビルで撃ち落とされたか墜落した。
発泡スチロール製だったというこのドローンを自治政府の治安部隊の戦闘員2人が拾ってキャンプに持ち帰り、調査や写真撮影をしていたところ、爆発したという。
同当局者は匿名を条件に「時限装置の一種に取り付けられた電池のようなものの内部に、爆薬が隠されていたようだ」と述べた。
フランスの関係筋は先に、爆弾が仕掛けられたドローンがイラクで使用されたことを確認しており、別の仏関係筋がこのほど仏兵士2人の負傷を確認した。うち1人は命に関わる重傷という。両兵士は治療のため空路フランスに帰還した。【10月13日 AFP】
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ドローンの軍事利用は各国が手を染めていることであり、実際にもシリア・イラクでもアメリカ等の有志連合国側が使用していますので、IS側がドローンを使用するというのも当然と言えば当然の流れです。
また、アメリカはアフガニスタンなどでさんざん過激派対策に無人機を使ってきましたので、相手側が使うことに文句を言える筋合いでもありません。(アメリカにとっては、衝撃だったようですが)
*****<IS>ドローン使用 イラクで空爆も****
米国を中心とする在バグダッド有志連合のドリアン報道官は12日の電話会見で、過激派組織「イスラム国」(IS)が民生用の無人機(ドローン)を改良した無人攻撃機を使い始めたことを明らかにした。
主に偵察に当たっているが爆弾も投下している。有志連合は「改良が続けられれば脅威になる」と見て、無人機用の防御設備を現地に持ち込むなど対応に追われている。
ドリアン氏によると、ISは「アマゾンでも購入できる」一般の人にも容易に入手可能な商用タイプを使用し、改良を続けている。
無人機は、イラク内にある有志連合の基地上空や戦闘地域などを偵察飛行したほか、爆弾などを投下した。使用場所など具体的な状況についてドリアン氏は説明を避けたが、AP通信は、イラク北部に展開するフランス軍部隊やクルド人部隊などが無人機の攻撃を受け、クルド人兵士2人が死亡したと伝えた。またフランス特殊部隊員2人も重傷を負ったという。
米国を中心とする有志連合は、シリアやイラクなどで無人機を使い偵察、空爆を実施している。シリアでは有志連合以外の武装勢力が偵察用に無人機を使用しているとの報道が相次いでいるが、ISの無人機使用が確認されたのはこれが初めて。【10月13日 毎日】
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【100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日】
“当然と言えば当然”の話なので、このときはさして関心を引かれることもなく、“新たな攻撃のひとつ”ぐらいにしか感じなかったのですが、今日この話題を取り上げたのは、インパクトのあるタイトルの下記記事「100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日」(部谷 直亮氏)を読んだからです。
“100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日”と言っても、別にF-35とドローンが空中戦をやれば・・・という話ではありません。
もちろん、そういう有人戦闘機と無人機の空中戦という話は別途あって、このブログでも以前とりあげたことがあるような気もします。そのときの話では、以前あった実際の空中戦では有人戦闘機が上回っていた・・・という話だったような。
ただ、アメリカを始めとして各国は急速に無人機に傾斜しており、アメリカ空軍の主たる関心事はもはや戦闘機ではなく、無人機に移っています。
そうした「最も価値ある兵器」(米軍司令官)に関する話題は2010年5月3日ブログ“戦争を変える無人航空機の実像と問題”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100503などで、その問題点も含めて取り上げてきました。
下記記事に話を戻すと、“100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日”というのは、別に空中戦をやらなくても、広い飛行場に数万円のドローンを侵入させて滑走路にパチンコ玉をまき散らせば、100億円のF-35も飛べなくなる・・・という話のようです。
****ISの自爆ドローン戦術に自衛隊が学ぶべきこと 100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日****
爆弾を積載した「自爆ドローン兵器」を使った戦術が、夏頃からIS(イスラム国)によって開始された。武装組織がついにドローン兵器を使い始め、有志連合軍に死傷者が出たことに米軍は大きな衝撃を受けている。
10月12日、米海兵隊向け軍事誌「Marine Corps Times」は「イスラム国の『空飛ぶIED』により米軍は新たな脅威に直面」と題する記事を掲載した。まずは、その内容を要約して紹介しよう。
ISも、アルカイダの一派も
(中略)
米空軍のスポークスマンは、米国率いる有志連合がイラクで敵のドローン戦に対処することに活発に取り組んでいることを強調し、「我々は、わが軍と同盟国およびパートナーの軍隊を脅かす能力を放置することはない」と豪語した。
その根拠としては、ドローン撃破のための「先進システム」(詳細は明らかではない)に加えて、ドローンを電波ジャックして撃墜するライフル「ドローンディフェンダー」の配備を挙げている。
この問題に関してIRIS独立研究所代表のレベッカ・グラント氏は、「米軍でのこれまでの議論、ウォーゲーム、演習から導かれた多数派の結論は、おそらくレーダー監視に基づくレーザー兵器による撃墜だろう」と述べている――。
米国が衝撃を受けた理由
以上が「Marine Corps Times」の報道である。イスラム国の自爆ドローンはワシントンポストやニューヨークタイムズ等の主要紙でも取り上げられており、米国社会が衝撃を持って受け止めている様子が伝わってくる。
この背景には、たかだか数万円で簡単に手に入る市販品のドローンで、先進国の兵士が一方的に殺害されかねない(それも西側発の技術による製品で)ことへの衝撃がある。
しかも、これまで米兵の多くを殺傷し、もしくは重度の障害者にさせた「IED(路肩仕掛け爆弾)」の記憶が生々しいことも衝撃を倍加させことは間違いない(上記の記事のタイトルは「空飛ぶIED」という表現であった)。
加えて、上記の空軍スポークスマンの豪語とは裏腹に、米軍の体制が整っていないことも大きい。国防総省の技術研究プロジェクト「NextTec」の責任者であり、ロボット兵器問題の権威であるピーター・シンガーは「我々は自爆ドローン攻撃への準備ができていなければならなかった。しかし、そうではなかった」と指摘している。
実際に、国防総省の対応はこれからという段階である。国防総省は、国防高等研究計画局(DARPA)による「革新的な対小型ドローン防御方法」についての公募を今年8月に開始したばかりである。また、ファニング陸軍長官がドローン防衛のための特別室を設置したのもつい最近だ。
日々進化しているテロ組織のドローン兵器
米軍が遅まきながら対応を強化している一方で、ISによるドローン活用は質量ともに強化されている。
例えば、先の死傷事件では、爆弾は外付けバッテリーに偽装されており、人間を殺傷するのに十分な量があったという。先週も、ISはイラクで検問を攻撃するために自爆ドローン攻撃を敢行し、検問所を破壊した。
また、ISは自爆攻撃以外にもドローンを有効活用している。プロパガンダ動画の素材集めのために自爆テロを撮影させたり、ロケットなどによる砲撃時の照準・観測にも活用しているのである。
今年3月のロケット攻撃に際しては、ドローンを利用して照準を定め、100人以上の米海兵隊部隊の前哨基地に命中させて海兵隊員を死亡させた。その砲撃は米軍から「ゴールデンショット」と称されるほど正確であったという。
今後、製品の進化・改造により、テロ組織によるドローン兵器の攻撃が深刻さを増すことは間違いない。米陸軍士官学校のシンクタンク、対テロセンター(CTC)のドン・ラスラー氏も、「今後、使用されるであろうドローンの数と能力と洗練度は、脅威の範囲と深刻さを増していくだろう」と指摘している。
自爆ドローン兵器に対して無防備な自衛隊
自爆ドローン兵器の脅威は日本にも及びかねない。具体的には、もしも日中戦争が起きた場合、1機100億円のF-35戦闘機が、中国軍の特殊部隊が操る数万円のドローンで無力化されてしまうおそれがある。
航空自衛隊基地は広大な滑走路等の敷地を持つ一方で、警備用の機材も人員も極度に不足しており、無防備に等しい。対ドローン用装備も、ほとんど自衛隊に導入されていない。しかも基地の多くが住宅地の近隣にある。
こうした状況で、中国軍の特殊部隊が小型ドローンを滑走路に侵入させて積載したパチンコ玉をばら撒かせるなり、自爆させることは極めて容易である。
その場合、空自は滑走路が使用不可能になり、航空機を飛ばせなくなる。というのは、そのままの状態で戦闘機を発進させれば機体前方の空気吸入口からパチンコ玉なり破片が入り、エンジンが爆発・故障する恐れがあるからだ。もし発進直前、それも感知されずに突入すれば、滑走路上で戦闘機が炎上し、より悲惨なことになるだろう。
さらには、自爆ドローンを管制塔やパイロットの待機所、整備員、格納庫、レーダー施設に突入させても、空自の戦力を減少・無力化させることができる。
海自の基地(例えば横須賀や呉)も無防備である。自爆ドローンで、イージス艦等のフェイズドアレイレーダーやイルミネーターを破壊し、動く鉄屑にすることはきわめて容易だろう。
陸自も同様の危険が特にPKO活動で予想される。民生ドローンの軍事転用は今や武装勢力でブームになりつつあるが、治安悪化著しい南スーダンでもこうした戦術を現地勢力が採用し、自衛隊に攻撃を仕掛けてくる可能性はある。
空自はX-2「心神」のような実験航空機の開発を進めているが、防衛省・自衛隊内部ですら「無意味な玩具遊び」との批判がある。
仮に、いつか強力な戦闘機が誕生する日が来るとしても、今日や明日に小型ドローン兵器の攻撃を受けて、滑走路を無力化され、パイロットや整備員が死傷し、管制塔もレーダーも使えなくされるのでは何の意味もない。
それよりも、空・海自の基地警備の改善や「ドローンディフェンダー」のような対ドローン銃の大量配備が急務だろう。
一方で、自衛隊はISの戦法に学ぶべき点もある。安価な民生品の活用である。特に陸自のような近距離の偵察を前提とする組織にとっては、高額な何千万円もの―内部で役立たずという批判のある―陸自専用のドローンをほんの少し購入するよりも、民生品の10~100万円単位の安価なドローンを大量に購入する方がよほど効果的なはずだ。【10月19日 部谷 直亮氏 JB Press】
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パチンコ玉云々の話の意味合い・現実性は、軍事的知識が全くありませんので、評価できません。
ただ、軍事技術は日々進歩していますので、巨額の費用をかけた戦闘機が、無数の格安兵器で無力化されるというのは、ありそうな話です。
旧日本海軍が心血を注いでつくりあげた戦艦大和が、群がる攻撃機の餌食となったようなものでしょうか・・・・。
中国が躍起になっている航空母艦も、軍事的に見れば、すでに“過去の兵器”となっているという話も聞きました。
【防御態勢は・・・まだ整っていない オランダ警察はワシによる捕獲も】
自衛隊はもちろん、米軍も防御態勢が整っていないというドローン対策ですが、“レーダー監視に基づくレーザー兵器による撃墜”という最先端技術を駆使した方法以外にも、こんな話も。
****原始的でもこれが一番!?オランダ警察がワシを使ってドローン捕獲****
オランダ・オッセンドレグトで12日、ワシを使ってドローン(小型無人機)を捕獲するもようが公開された。
これは飛行禁止区域などを飛ぶドローンに対応するため、オランダの警察が取り入れた捕獲方法だ。飛行するドローンの数が増える中、現代の問題解決に何世紀も前からある技を採用した。【9月13日 AFP】
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F-35がドローンに負けて、ドローンはワシに捕まる・・・がなかなか笑える話です。
【防御態勢構築を上回るドローンの技術進歩・・・・かも】
それはともかく、“レーダー監視に基づくレーザー兵器による撃墜”といった防御システムを開発しても、敵もどんどん技術進歩します。
別に軍事利用の話ではありませんが、NTTドコモが携帯電話のLTEネットワークを使用したドローンの実験に乗り出しており、長距離への目視外運航が可能になることで将来的な活用が期待されています。
****ドコモが「ドローン」に参入。LTEで遠隔地に飛行、11月に実証実験****
NTTドコモがドローンを使ったソリューションに参入します。携帯電話のLTEネットワークを使ってドローンの長距離運航を可能とする「セルラードローン」を開発。防災や離島における買い物難民の解消など、さまざまな社会的課題の解消に活かせるとしています。
ドコモが開発したのは、携帯電話のLTEネットワークを使ってドローンを遠隔操作する「セルラードローン」技術です。
従来のドローンはラジコン電波を使う場合が多く、飛行距離に制限がありました。一方のセルラードローンでは、全国をカバーする携帯電話のLTEネットワークを使います。
このため、従来の一般的なドローンでは届かなかった距離でも、カメラ映像や機体データのリアルタイム送受信が可能。これにより、長距離への目視外運航が可能になるとしています。
なお空中で携帯電話のネットワークを利用するには、実用化試験局の許可が必要です。NTTドコモは神奈川県と千葉県、福岡県の一部で、この免許を取得。
2016年11月よりMIKATA21、エンルート社と提携し、セルラードローンを使った買い物代行サービスの実証実験を開始します。なおセルラードローンの商用化は2018年を目指すとしています。【10月19日 小口貴宏氏 Engadget Japanese 日本版】
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監視カメラを搭載したAI搭載のドローンが街の上空を飛び回り、顔認識で容疑者を識別して攻撃する・・・・以前は映画の中だけの話でしたが、そんな時代がすぐそこまで来ているようです。
軍事利用でも、その利用方法は今後格段に進化するでしょう。
現在、米軍や自衛隊が誇る最新兵器も「過去の兵器」となる日も来るのかも。