(仏リヨンで開催された米国とイランのサッカーの試合で掲げられた米国旗とイランの国旗(1998年6月21日撮影)【12月7日 AFP】)
【アメリカ、イランの容赦ない鎮圧行動を批判】
アメリカの制裁で財政的に苦しいイランがガソリン価格引き上げ(補助金削減)を行ったところ、悪化する経済状況の中で生活に苦しむ市民の激しい反政府デモが発生し、乏しい資源をシリア・イラク・レバノン・イエメンなどの親イラン勢力につぎ込んでいる現状にも批判が噴出、これに対し政権側は容赦ない鎮圧でこの抗議行動を封じ込めた・・・という件は、11月29日ブログ“イラン 容赦ない鎮圧行動で国民不満を抑え込む”でも取り上げました。
この鎮圧でどれほどの犠牲者がでたのかは、当時インターネットが遮断されたこともあってよくわかりませんが、百数十人、二百人超、千人超といった様々な推測がなされています。
“イラン、窮地の政権 不満募らす市民/勢いづく反米勢力 デモ隊、死者140人超か”【11月30日 朝日】
“イラン反政府デモ死者2百人超か 人権団体、当局は「誇張」”【12月3日 共同】
****米代表、イラン死者は「千人超」 反政府デモ弾圧、各国に制裁促す****
米国務省のフック・イラン担当特別代表は5日、記者会見を開き、敵対するイランでの当局による反政府デモ弾圧で「死者が千人を超えた可能性がある」と主張した。約7千人に上る逮捕者の多くが劣悪な環境下で拘束されているとして即時解放を求め、各国に弾圧に関与したイラン当局者への制裁を呼び掛けた。
トランプ大統領は5日、ホワイトハウスで記者団に「(当局は)大勢の人を殺し、自国民を拘束している」と述べ、イラン政府を批判した。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは2日、少なくとも208人が死亡したと発表した。【12月6日 共同】
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上記については、イランと対立するアメリカの発表ですから、そこを考慮する必要がありますが、体制への危機感から容赦ない鎮圧行動がとられてことは間違いないようです。
【アメリカ イランの脅威に直面する中東に最大1万4000人の増派を検討中?】
アメリカが、こうしたイランを批判しているのは当然のところですが、数日前には、イランの脅威を念頭に置いて中東に米軍1万4000人を増派するとの報道がありました。
****中東への米軍1万4000人増派報道、米国防総省は否定****
米国防総省は4日、米国がイランの脅威に直面する中東に最大1万4000人の増派を検討中だとする米紙ウォールストリート・ジャーナルの報道内容を否定した。
WSJは匿名の米当局者の話として、中東に駐留する米兵を今年初めの規模から倍増し、艦艇「数十隻」を追加派遣する計画が検討されていると報道。早ければ今月中にも、ドナルド・トランプ大統領が増派を決断するとの見方を伝えていた。
しかし、米国防総省のアリッサ・ファラー報道官はツイッターへの投稿で、「はっきりさせておくと、この報道は間違っている。米国は中東への1万4000人追加派兵を検討してはいない」と否定した。
中東では艦船への攻撃が相次いでおり、9月にはイランの無人機とミサイルによるとされる石油関連施設への攻撃も発生。米政府は既に湾岸地域の駐留部隊を増強し対イラン経済制裁を拡大するなど、緊張が高まっている。 【12月5日 AFP】
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しかし、国防総省も否定していますし、シリアから撤退し、アフガニスタンからも抜けたがっているトランプ大統領がなぜ中東に増派?という疑問があります。
火のないところに煙はたたないのでしょうが・・・・
“国防次官(政策担当)のルード氏は「脅威の事情に関してわれわれが懸念を持って目にしている現状に基づけば、軍の態勢を修正する必要が出てきてもおかしくない」と答え、エスパー国防長官からは必要になれば態勢変更をするつもりだと伝えられていると付け加えた。”【12月6日 ロイター】
何か動きがアメリカ側にあるのでしょうか・・・よくわかりません。首尾一貫しないのはトランプ政権ではよくあることですので。
【イランのスポーツ外交不発】
軍を動かすことも検討されるほどの敵対関係・・・とも思われているアメリカとイランですが、そうしたなかで(成功はしなかったものの)関係改善を模索する動きだろうかと感じさせる報道も。
****イラン「レスリング外交」不発 米チームを大会招待→断られる****
イランが近く開催する男子レスリングの国際大会に米国の選手を招いた。対立する米国の経済制裁に苦しむイランが、「雪解け」の材料にしようとしたとみられるが、「準備期間が短すぎる」と断られた。イラン学生通信が報じた。
同通信によると、大会は今月中旬にイラン北東部で開かれる。
同国レスリング連盟は1日、米国のクラブチームを正式に招待したことを発表し、滞在費や渡航費はイラン側が負担すると明らかにした。
これに対して米側は2日、「選手の最大の目標は来年の東京五輪だ。(イランでの大会には)参加しない」と、代理人を通じて断ってきたという。
イランは米国やサウジアラビアと対立し、イラン産原油の全面禁輸といった米制裁で経済が困窮している。外交交渉は行き詰まり、燃料費の値上げに反発したデモまで起きている。
そうしたなか、イラン政府関係者は「スポーツ外交は雪解けを演出する」と期待する。
2017年には、米国代表がイランであったレスリング大会に参加し、イラン人の観客が米国選手に声援を送って話題になった。今回は不発だった模様だ。【12月4日 朝日】
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【トランプ大統領 拘束者交換が無事に成功したとして、イランに謝意を表明】
上記“スポーツ外交”は不発に終わりましたが、互いの拘束者を交換・解放することが発表され驚きました。
****イランと米国、相手国市民をそれぞれ解放 拘束者を交換か****
米国とイランは7日、双方が拘束していた相手国の市民1人をそれぞれ解放した。両国の緊張関係が高まる中、拘束者を交換したとみられる。
米国政府は同国人研究者のシーユエ・ワン氏が帰国途上にあることを発表。その直前、イラン政府は同国人科学者のマスード・ソレイマーニー氏が米国から解放されたことを明らかにした。
モハンマドジャバド・ザリフ外相はツイッターに、「マスード・ソレイマーニー氏とシーユエ・ワン氏が間もなく、それぞれの家族と一緒になることをうれしく思う」と投稿。「全ての関係者ら、特にスイス政府に対して厚くお礼申し上げる」とツイートした。スイスはイランにおいて、米国の利益代表部を担っている。
国営イラン通信は、ソレイマーニー氏が「違法な拘束から1年を経て、先ほど解放」され、スイスでイラン当局者に引き渡されたと報じた。
その一方、ドナルド・トランプ米大統領は、「イランで3年超も捕らわれの身だったシーユエ・ワンさんが米国に戻るところ」であることを明らかにした。
中国系米国人であるワン氏は、スパイ罪で禁錮10年の刑が言い渡されていた。
米プリンストン大学で歴史学を研究していたワン氏は2016年8月、イランのカジャール朝について調査していたところに拘束された。 【9月7日 AFP】AFPBB News
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ザリフ外相が「マスード・ソレイマーニー氏とシーユエ・ワン氏が間もなく、それぞれの家族と一緒になることをうれしく思う」と、自国民のソレイマーニー氏だけでなく、イランが拘束していたアメリカ人シーユエ・ワン氏も同列に触れているところが「おやおや・・・」という感じも。
更に驚きは、“あの”トランプ大統領がイランに「謝意」を示したとか。
****トランプ米大統領、拘束者交換でイランに異例の感謝示す****
米国とイランの間で緊張が高まる中、ドナルド・トランプ米大統領は7日、「極めて公正な」交渉によりイランで拘束されていた中国系米国人が釈放されるなど、両国の拘束者交換が無事に成功したとして、イランに謝意を表明した。同大統領が敵対関係にあるイランに肯定的な発言をするのは異例。(後略)【12月8日 AFP】AFPBB News
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国内で激しい抗議行動が起きたイランは尻に火が付いた状況で、なんとかアメリカとの関係を改善して、経済状況を改善させたいとの本音があるであろうことは推測されます。
アメリカは・・・やはり、トランプ再選に向けた目に見える「成果」が欲しいということですかね。
何はともあれ、両国関係が改善するのは世界の緊張緩和に大きく役立つものであり歓迎すべきものです。
ただ、上記のような緊張緩和の方向に向かうのか、あるいは、前出のような米軍の中東増派といった緊張拡大の方向にむかうのか、よくわかりません。