(【12月26日 CNN】 雪のないモスクワ)
【「天然雪、売ります」】
ロシア・モスクワでは記録的な暖冬になっているそうです。
****記録的暖冬のモスクワ、ホリデーシーズンに降雪なし****
モスクワ(CNN) ロシアの首都モスクワの気温が、12月としては過去最高の水準に達している。クリスマスや新年を祝う装飾に彩られた街路に雪はなく、今後も月末まで降雪はないと予測されている。
24日のモスクワの気温は6.2度を記録した。この日付の気温としては史上最も高い数字となった。
12月といえば例年なら雪が降り積もっている時期。季節外れの暖かさに見舞われ、人々の間では気候危機に関する議論が巻き起こっている。
ロシアは石油・天然ガスをはじめとする炭化水素エネルギーの輸出への依存度が非常に高く、これまで気候変動などの環境問題が積極的に論じられることは少なかった。
先週には記者会見に臨んだプーチン大統領に対し、気候変動がロシアにもたらすリスクについて質問が飛んだ。プーチン氏は世界中で気温が上昇していると認めつつも、こうした気候の変化が人間の活動に由来するものなのかどうかに関しては疑念を示した。
ロシアは地球温暖化の国際的なルール「パリ協定」の批准国だが、これまでのところ気候変動への対策をスムーズに進めているとは言い難い。今夏は北極圏で大規模な森林火災が発生し、そこから流れ込んだ煙がロシアの10以上の都市を覆う出来事もあった。
一方でモスクワ市民には、まだホワイトクリスマスを楽しむチャンスが残されている。ロシア正教会がクリスマスと定める1月7日には、東欧からくる強い低気圧の影響で気温が下がるとみられるからだ。ロシアの気象当局は、同国中央部に「冬」が戻ってくる期待が持てるとの見解を示している。【12月26日 CNN】
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ロシアのクリスマスが1月7日だというのは知りませんでした。
“気候変動がロシアにもたらすリスク”・・・・シベリアの永久凍土の融解、極北地域の利用可能性の拡大等々、メリット、デメリット双方とも極めて大きなものがあるでしょう。
“「冬」が戻ってくる期待”・・・暖冬を喜んでいるというのではなく、ロシアの人々にとっては冬はやはり寒い方がいいのでしょうか?
****133年ぶり暖冬、雪の降らないモスクワ ネットに「雪売ります」の広告も****
ロシアの首都モスクワは18日、12月としては133年ぶりに暖かい一日となった。12月に降雪がないのは珍しく、冬のレジャーが中止されたり季節外れの花が咲いたりしている。
気象センター「フォボス」は、モスクワ北部の観測所1か所で18日に気温5.4度を観測したと発表。1886年に記録した5.3度を上回る「12月18日の最高気温を更新した」と述べた。
例年モスクワでは12月半ばには雪が積もるが、今年はまだ降雪がなく、曇り空が続いている。ロシア気象当局は18日、今後さらに気温が上がる可能性もあると警鐘を鳴らした。
市内の植物園は今週、春の訪れを知らせる花として知られるスノードロップが「春と勘違いして」開花したとウェブサイトで発表。「もうすぐ桜も咲くかもしれないと植木職人らが心配している」とのコメントを添えた。
冬はスキーやスケートを楽しむ人々でにぎわうソコルニキ公園では、暖冬の影響で人工降雪機を使って営業していたスキー場が一時閉鎖に追い込まれた。
インターネット上では、シベリア・オムスクの住民が「天然雪、売ります」と人気通販サイトに冗談交じりの広告を出す例も。1立方メートルあたり1000ルーブル(約1750円)で、「モスクワ市民なら15立方メートル以上の注文で7%値引き」のサービスが受けられるという。 【12月19日 AFP】AFPBB News
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気温5.4度が“133年ぶりに暖かい一日”・・・・鹿児島に住む私にとっては信じがたい寒さです。
暖かさを伝えるはずのニュースですが、ロシアの寒さがむしろ際立ちます。
【秘密警察に支えられた「ハイブリッド政権」 反体制派のプーチン批判】
ロシアでプーチン批判の最前線にたつのが反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏ですが、同氏が率いる汚職追及団体「反汚職基金」関係者は以下のようにプーチン支配の実情を告発しています。
****プーチン支配の落日を告げる国民の怒り****
ロシア 秘密警察に支えられた「ハイブリッド政権」の危うさ リュボフ・ソボル(「反腐敗財団」弁護士)
ウラジーミル・プーチン大統領はロシアの顔ではない。ロシアは1億4600万人の名もなき人々の総体。その大半は、市民の自由と人権が尊重され法の支配がまともに機能する社会で暮らしたいと願っている。
ロシアの本当の声は国内でも国外でも往々にして無視される。外部の人の目にはプーチンは国民の圧倒的な支持を得ているように見えるかもしれない。
だが現実は違う。2019年夏に首都モスクワをはじめ各地で行われた大規模な抗議行動が明らかにしたように、ロシアの人々は民主化を求めて声を上げ始めた。
プーチンは国際舞台で私たちの名をかたって、いわゆる「ハイブリッド戦争」、つまり正規軍と共に秘密警察やサイバー部隊が暗躍する戦争を仕掛けてきた。
だが正式な宣戦布告はしておらず、ロシア政府はウクライナ東部で軍事作戦を展開していることを一貫して否定してきた。国際法違反だと知っているからだ。
プーチン政権そのものが秘密警察に支えられた「ハイブリッド政権」とも言える。ロシアの憲法は法の支配と三権分立、国民主権を保障しているが、現実には国民の声は政治に全く反映されず、政府機関はプーチンとその取り巻きの言いなりになっている。
プーチン政権は手段を選ばず公正な選挙を妨害してきた。
例えば、野党候補の立候補届けを却下する、野党の主張を伝えないようメディアに圧力をかける、あからさまな選挙違反を行うなどだ。
18年3月の大統領選では、最有力候補とみられていた反政府派の実質的指導者で弁護士のアレクセイ・ナワリヌイは立候補届けを受理されず、プーチンは出来レースで圧勝し、政権の座を維持した。
抗議の高まりに戦々恐々
ただし同年9月の統一地方選挙では野党が大躍進し、現政権に対する有権者の不満が明らかになった。西部のウラジーミル州の知事選では、現職の与党候補スペトラーナ・オルロワが極右の体制内野党・自由民主党のウラジーミル・シピャーギン候補に敗れる大番狂わせがあった。
19年の統一地方選では、ロシア政府は前年の「失敗」に懲りて、与党の苦戦が予想される地域では民主派ばかりか体制内野党の候補者の出馬まで妨害しようとした。
私もモスクワ市議選に出馬するつもりだったが、私を含む無所属の候補者は立候補に必要な有権者の署名を「偽造した」などという事実無根の理由で届け出を却下された。
投票日を6週間後に控えた7月下旬、民主派の候補者を支持する多数のモスクワ市民が当局の立候補妨害に抗議して大規模なデモを繰り広げた。
警察はデモ参加者を拘束。無許可のデモを呼び掛けたとして民主派の捜査に乗り出した。ナワリヌイが設立した調査機関「反腐敗財団」は外国の支援を受けた組織に指定され、銀行口座を凍結された。
プーチンはモスクワ市議選での敗北を異常なまでに恐れていた。なぜか。首都で野党が勝利すれば、国民は現政権を支持しており野党支持者はごく少数にすぎない、という神話が崩れるからだ。
だが9月8日に行われたモスクワ市議選ではリベラル系も含め野党勢力が支持を伸ばし、与党は大敗を喫した。
なりふり構わぬ民主派排除とデモ弾圧、そしてこの選挙結果がプーチン政権の終わりの始まりを暗示している【12月31日号 Newsweek】
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【拉致して“北極送り” 政権側の厳しい弾圧】
これだけの明快なプーチン批判が許されているなら、ロシアの政治状況にもまだ救いの余地があるのかも・・・とも感じてしまいますが、実際のところは批判が野放しに許されているわけでもなく、体制側の圧力も半端ないもののようです。
****露反体制団体幹部が“北極送り” 政権側の報復か*****
ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏は25日までに、自身が主宰する「汚職との戦い基金」幹部の男性が、「徴兵」を理由に露連邦保安局(FSB)に身柄を拘束され、北極海の島「ノーバヤ・ゼムリャ(新しい大地)」に送られて実質的な拘束下にあると明らかにした。
露政権側は、9月のモスクワ市議会選で与党側の議席減を導いたナワリヌイ氏や周辺への圧力を強めており、ナワリヌイ氏は「政治的な報復だ」と政権側を批判している。
男性は、同基金マネジャーのルスラン・シャベデディノフ氏。
ナワリヌイ氏やインタファクス通信によると、シャベデディノフ氏は健康上の理由で徴兵に行けないことを示す診断書に基づいて10月、徴兵免除を求める訴訟を裁判所に起こした。しかし訴えは12月23日に棄却。同日にFSBはシャベデディノフ氏の自宅を捜索し、同氏を拘束。同氏はそのままノーバヤ・ゼムリャの軍事施設に送られたという。
ノーバヤ・ゼムリャは極寒の地として知られるほか、旧ソ連時代から核実験場として使用されてきた。
ナワリヌイ氏は、同地ではシャベデディノフ氏は電話の使用を禁じられるなど実質的な拘束下に置かれているとしている。ナワリヌイ氏は「正規の手続きを経ていない違法な徴兵で、実質的な政治犯の投獄だ」と政権側を批判。25日にはモスクワで、シャベデディノフ氏の解放を求めるデモが行われた。
ナワリヌイ氏は9月のモスクワ市議会選で、有力な非与党系候補に票を集める「賢い投票」戦術を呼びかけるなどし、与党側候補の議席を減少させた。政権側は今秋以降、資金洗浄容疑で同基金の関係先の捜索や資産凍結を行うなど、締め付けを強化していた。【12月26日 産経】
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ナワリヌイ氏本人に関しては、当局側は拘束・解放を繰り返しているものの、決定的な弾圧にまでは至っていないのは、影響の大きさを考慮してのことでしょうか。
****ロシア当局、反体制派指導者の団体本部を強制捜査****
ロシア当局は26日、反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が率いる汚職追及団体「反汚職基金」のモスクワ本部を強制捜査し、パソコンなどの機材を押収した。
ナワリヌイ氏や同氏の関係者は強制捜査について、連邦執行機関が行ったもので、メドベージェフ首相と富豪のアリシェル・ウスマノフ氏の汚職を指摘した動画を削除しなかったことに関連していると説明した。
連邦執行機関はロイターに対し、刑事捜査の一環としてナワリヌイ氏の団体を調べていると明らかにした。今回の捜査で拘束された人はいないとした。
ウスマノフ氏は2017年にナワリヌイ氏を名誉棄損で訴え、勝訴した。裁判所はナワリヌイ氏に対し、自身の動画の中でメドベージェフ氏とウスマノフ氏の汚職疑惑に言及した部分を10日以内にすべて削除するよう命じていた。メドベージェフ、ウスマノフ両氏は疑惑を否定している。
26日の捜査の様子をとらえた防犯カメラの映像には、覆面姿などの当局者らが電動工具を使って反汚職基金の正面扉を切断する様子が写っている。ナワリヌイ氏は建物の中から強制的に引きずり出された。【12月27日 ロイター】
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ロシア政治の“冬”は未だ厳しいようです。
締め付けは反体制派活動家だけでなく、一般国民にも。
****ロ政府、ネットの「主権」確保へ試験実施 活動家は検閲・隔離を懸念****
ロシアは23日、国外からのサイバー攻撃に備えてネットワークインフラの「安全性」を確保し、インターネットの「主権」を守るための試験を実施した。
人権活動家らは今回の試験を含む一連の施策について、検閲強化や国内ネットワークの隔離につながりかねないと懸念している。
ロシアのウラジミール・プーチン大統領は今年5月、国外サーバーから送信されるデータを遮断できるようにする法案に署名。同法は先月施行された。
新法には批判もあるが、デジタル発展・通信・マスコミ省は、政府がロシア国内のインターネットを世界のネットワークから隔離する準備をしているとの見方を否定。一般のネット利用者が試験に気付くことはないと説明している。
同省は今回の訓練について、インターネットの「完全性」を確保することが目的だと説明。アレクセイ・ソコロフ次官は記者団に対し、試験の結果はプーチン大統領に報告される予定で、訓練は今後も続けられると述べた。
国営ニュース専門チャンネル「ロシア24」が伝えた事実関係によれば、試験は2週間前から実施されていた。
ソコロフ次官によると、試験はサイバー攻撃に対する国内ネットワークの安全性のほか、携帯電話利用者の安全確保や、送信中のデータやテキストメッセージの傍受の可否について行われた。
新法はロシアのインターネット接続業者(プロバイダー)に対し、通信制御の集約を可能にするため、当局が提供した機器を導入するよう義務付けている。この機器はまた、公開が禁止されたウェブサイトへのアクセスを防ぐフィルタリング機能も備えている。
プーチン大統領は先週、年末恒例の記者会見で自国のインターネット政策を擁護し、ロシアは「インターネット鎖国に向かっている」わけではないと主張。「自由なインターネットと主権あるインターネットのどちらも、互いを排除する概念ではない」と述べた。
ロシアでは政治的議論や反体制的主張、抗議行動の組織化がインターネットを中心に行われている。人権活動家らは新法について、ビジネス向け交流サイト「リンクトイン」やメッセージアプリ「テレグラム」のサービス遮断といった過去の措置に続く新たな検閲だと主張している。 【12月26日 AFP】AFPBB News
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ロシア・プーチン大統領は、かつて中・東欧や中央アジアの旧共産圏諸国で起こった一連の政権交代「カラー革命」(アメリカ(CIA)が関与していたとも言われています)を極度に警戒しているようです。
ただ、外からの関与を警戒して統制・管理を強めるほどに、内なる不満が膨らんでいくようにも。やがてその不満は抑えきれないものになるのではないでしょうか。