(ローマ教皇フランシスコが投稿した画像=インスタグラムから。聖母マリアが眠る脇で、夫ヨセフがイエスをあやしている【12月28日 読売】)
【破滅への道「少子化」を競う日中韓】
なにかと問題が多い日中韓の三か国ですが、共通の課題は「少子化」
先ずは韓国。合計特殊出生率が今年7〜9月期で0.88(少子化の日本でも2018年で1.42)とのことですから、事態は深刻です。
****世界の出生率最低記録、韓国が今年、再び更新か―中国メディア****
2019年11月28日、中国メディアの澎湃新聞は、「世界の出生率最低記録は今年、韓国によって再び書き換えられるかもしれない」と報じた。
記事はまず、米ブルームバーグの27日付報道を引用し、韓国統計庁が27日発表した「人口動向」によると、今年7〜9月期の韓国の出生数は前年同期比8.3%減の7万3793人で、7〜9月期としては最も少なかったこと、また女性1人が生涯に産む子どもの推定人数である合計特殊出生率も前年同期比0.08ポイント下がった0.88で、7〜9月期として最低となったことを取り上げた。
その上で、「韓国統計局が以前発表した統計によると、2018年の韓国の合計特殊出生率は0.98で、韓国は同年に世界で唯一の出生率1人未満の国になった」と紹介。
「韓国KBSテレビによると、この背景には晩婚化と高齢出産化が進んでいることがある。ブルームバーグによると、韓国政府は、助成金付きの育児休暇、無料の保育所、政府の訓練を受けたベビーシッター、現金給付などの出産奨励政策に年間数十億ドルを費やしている。だが、これまでのところ、出生率の下落傾向を逆転させることにほとんど成功してない」と伝えた。【11月29日 レコードチャイナ】
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文在寅大統領が南北統一にこだわるのも、民族的悲願という話の他に、不足する労働力を北から・・・という現実的必要性があってのことでしょうか。ただの戯言です。
一人っ子政策の廃止で出生数が急増するはずだった中国でも、女性の出産意欲は著しく低いようです。
公式の合計特殊出生率は1995年頃から1.6強で横ばいとなっていますが、“米ウィスコンシン大学マディソン校の教授イー・フーシエンは、中国政府は「一人っ子」政策の破滅的な結果を覆い隠すために実際の出生率をぼやかしてきた、と指摘している。同教授の計算によると、2010から18年の合計特殊出生率は平均1.18だ。”【2月20日 GLOBE+】ということで、“ぼんやりと見えてきた中国の人口動態における危機は、この国が過去40年間に成し遂げた驚異的な経済変容のアキレス腱(けん)となる可能性がある。”【同上】とも。
****日中韓が共に直面する「少子化」、中国は韓国よりも危機的状況だ!=中国メディア****
(中略)中国の場合は一人っ子政策が2016年に撤廃されたが、それでも出生率は日本より低い1.1%程度にとどまっており、韓国より少し高い程度だと指摘し、日中韓ともに人口減少の問題を抱えていると主張した。
続けて、日中韓のなかで中国がもっとも危惧すべき状況に置かれているとし、それは「国民の出産意欲がもっとも低いからだ」と強調。
それぞれの国でほぼ同時期に行われた調査を比較すると、「韓国人女性の理想とする子供の数は2.45ー2.55人、日本人女性の理想は2.41ー2.6人だったが、中国人女性は1.75人だった」と指摘し、中国人女性の出産意欲は著しく低かったことを強調した。
さらに記事は、中国人女性が第2子の出産が「解禁」されても2人目の子を望まない理由として、家の購入や教育費など「養育にかかる費用の高騰」があると指摘し、女性は出産後も仕事を続けるのが一般的な中国では「出産と昇進」という難しい選択を迫られると指摘。
総合すると「中国は子どもを育てることが世界でもっとも苦痛となる国だ」と主張。結論として、どのような政策を推進しても、女性が子を望まないのであれば出生率はなかなか向上しないとし、その点で言えば「中国の人口危機が一番深刻である」と訴えた。【12月26日 レコードチャイナ】
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もちろん日本も“負けていません” 今年の出生数は明治32年に統計を取り始めて以降、最も少なくなる見通しで、少子化のペースは想定を上回っています。
****ことしの出生数 90万人下回る見通し 少子化想定上回るペース ****
ことし1年間に生まれた子どもの数を示す「出生数」は全国で86万人余りと、はじめて90万人を下回る見通しとなったことが、厚生労働省のまとめでわかりました。
出生数が86万人まで減少するのは国の予測よりも2年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいる実態が明らかになりました。(中略)
「令和婚」が出生数に影響か 厚労省
出生数が国の予測よりも早いペースで減少する見通しとなった理由について、厚生労働省は「若い女性の人口が減っていることなど、いくつかの要因が考えられるが、ことしは『令和』という新しい時代になってから結婚しようと、婚姻の機会を先延ばしにしていた人が多くいたことも、出生数の減少に影響を与えたのではないか」としています。(中略)
進む人口減少
(中略)平成17年(2005年)に初めて出生数が亡くなった人の数を下回り、自然減となりました。
ことしは自然減の数が51万2000人と、初めて50万人を超える見通しとなり、人口減少も加速している実態が浮き彫りとなっています。
出生数減少の要因は
なぜ出生数が減り続けるのか。そこにはいくつかの要因が指摘されています。1つは「未婚率」の上昇です。
50歳の時点で結婚を経験していない人の割合は、平成27年の時点で男性が23.37%で全体のおよそ4人に1人、女性は14.06%で、7人に1人と、男女とも、これまでで最も高くなっています。
また、結婚する年齢が高くなる「晩婚化」も要因の1つとされています。
平成30年の初めて結婚した人の平均年齢は男性が31.1歳、女性が29.4歳で、いずれももっとも高くなっています。
さらに収入が少なく生活が厳しいと感じる人が多くいることや、子どもを産む年齢が上がっていることなども少子化の要因になっているという指摘もあります。
平成27年に国の研究所が行った調査では希望する人数の子どもを持てていない夫婦に理由を聞いたところ、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と答えた人が最も多く56%、「高年齢で産むのはいやだから」と答えた人は40%にのぼっています。
専門家「今までと同じ発想では経済成長難しい時代に」
出生数の将来推計を行う国立社会保障・人口問題研究所の前所長で津田塾大学総合政策学部の森田朗教授は(中略)出生数の減少が医療や介護、それに年金といった社会保障制度に大きな影響を与えると考えています。
具体的には「少子化が進むと15歳から65歳程度と言われている生産年齢人口が減る。国の富を作り出して社会保障制度を支える世代が減り、高齢者の数が増えてくるので、社会保障を取り巻く環境は将来的にかなり厳しくなってくる」と指摘しています。
また経済に与える影響も大きいと指摘し、「少子化が進めば労働力も不足し、1人当たりの生産性を維持できても国内総生産が減少するおそれがある。今までと同じ発想では経済成長を遂げることが難しい時代になってくる」としています。
そのうえで、「ことし人口の自然減がはじめて50万人を超えたが、鳥取県の人口が55万人なので、1つの県とほぼ同じくらいの人口が毎年減っていくことになる。少子化対策に力を入れることはもちろん必要だが、これまで経験したことの無い少子化や人口減少が起きることを前提に、国の在り方を考えなければならない時期に来ている」と指摘しています。【12月24日 NHK】
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【必要な意識改革 先鞭をつける形となるか、公務員の育休取得促進策】
日本政府も何も対応していない訳でもありません(当然のことですが)。
****未婚ひとり親、税軽減検討 寡婦控除と同程度に 政府・与党****
政府・与党は、未婚のひとり親の税負担を軽くする新制度を来年度から設ける方向で調整に入った。
配偶者と死別・離婚したひとり親には税額控除を受けられる「寡婦(夫)控除」があり、不公平だとの指摘があった。子どもの貧困に対応する狙いで、所得が低いひとり親に支給される児童扶養手当の受給者を対象に、寡婦控除と同じ税負担の軽減を受けられるようにすることを軸に検討している。(後略)【11月24日 朝日】
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伝統的な家族観を重視する自民党は「未婚を助長しかねない」などとして、これまで慎重な姿勢を示していましたが、さすがに危機感が勝ったのでしょうか。
日本の少子化を進めている背景は、伝統的な家族観云々といった議論にみられるように、家族・子育てに関する意識が現実の変化についていけてないところにあるように思われます。
したがって、少子化を根本的に改善するためには、税制などもさることながら意識の改革が最も重要でしょう。
その点で非常に今日的なメッセージとなっているのが、ローマ教皇の画像投稿でしょう。
****聖母マリアも育児で「休息」、ローマ教皇が画像投稿****
ローマ教皇フランシスコの画像共有サービス「インスタグラム」への投稿が話題になっている。
聖母マリアが横になってぐっすり眠っている脇で、夫ヨセフが生まれたばかりのイエス・キリストを抱きかかえ、あやしている画像で、男性が育児に積極的に関わるよう呼びかけるメッセージとなっている。
画像は25日に投稿されたとみられ、「母親に休息させましょう」とのコメントが添えられている。世界各地の約39万人のフォロワーが共感し、「教皇が推奨してくれれば現実になる」などのコメントが寄せられている。(後略)【12月28日 読売】
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この線に沿った日本の対応としては、以下のような措置も。
****育休支援、管理職の人事評価に 男性国家公務員、来年度から―政府****
政府が男性国家公務員の育児休業取得を促そうと、子どもが生まれた部下に管理職がどのような支援をしたかを人事評価に反映させる方向で検討していることが25日、分かった。
育休取得計画を作り、休んでいる間の業務分担を適切に行えるようにすることも検討している。職場全体で子育てしやすい環境づくりを進めるのが狙い。
2018年度の男性国家公務員の育休取得率は12.4%。過去最高を更新したが、女性の98.5%には遠く及ばない。育休期間も1カ月以下が68.7%と大半で、短期の取得が目立つ。
こうした状況を踏まえ、政府は20年度から、子どもが生まれた全ての男性職員に1カ月以上、育児に伴う休暇や休業を取得するよう促す方針だ。【12月25日 時事】
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よろしいんじゃないでしょうか。
部下が育休を取得しない管理職、育休を取得しない職員は、社会人としての責務を果たしていない、責務を果たせる環境をつくれていないとして人事評価を厳しく下げる環境にもっていければ。
仕事は組織でやっていますので、誰かが何とか穴は埋めます。そういう体制をつくるのが組織・管理職の役目です。
公務員だからできる・・・といった議論もあるでしょうが、まずはできるところから始めないと。
もっとも、こうした対応にはあまり期待できないとの指摘も。
****男性国家公務員の育休促進策が「絵に描いた餅」になりそうな理由****
政府は、男性の国家公務員について、原則として1ヵ月以上の育児休業取得を促すための具体策をまとめ、2020年度からの実施を目指すとした。
これは公務員が率先して取り組むことで、男性全体の育児休業取得率を向上させる目的がある。この背景には、核家族の比率の高まりで、両親の支援が得られ難い子育て世帯が増える一方で、子育てが夫婦の共同責任という意識も高まっていることがある。
他方で、平均的な男性の育児休業取得率は、2018年度で女性の82%に比べて6%と著しく低い。かつ、その内でも5日未満が36%、2週間以内が71%と、ごく短期間にとどまっているのが大きな特徴である。
これは子育てが基本的に女性の責任であり、男性はその補助的な役割にとどまるという考え方が、経営者や職場の管理職等では普遍的なためと考えられる。
こうした中で導入されるのが今回の促進策だが、国家公務員なら、その育休取得率を無理にでも引き上げられるのだろうか。また、仮に公務員で目標が達成できれば、民間企業でも同じことが実現可能なのか。
2018年には10%の大台に乗った国家公務員男性の育休取得率
男性の国家公務員の育休取得率は、2015年には3.1%と民間企業の社員と大差ない水準であったが、その後急速に高まり、2018年には10%の大台に乗った。(中略)
育休取得に必要な業務の効率化残業を強いる「国会待機」問題も背景に
それにもかかわらず、国家公務員についても長期の育休取得へのハードルは高い。これは「同僚に迷惑をかけること」が、公務員の育休の取得を妨げている大きな理由である点で民間と変わりはないためである。
この点については、1ヵ月以上の育休取得計画を事前に作り、業務体制を見直す案を作成することや、管理職の取り組み姿勢を人事評価に反映させるとあるが、そうした小手先の対策だけで十分だろうか。
国家公務員には、2020年度から5年間で3万人強(約10%)の人員削減計画という大きなリストラが控えている。こうした制約の下で、民間企業のように人員増加や派遣労働者等、外部人材を活用することもでき難い。
結局、業務の大幅な合理化を通じた長時間労働の是正なしには、長期の育児休業者の増加に対応することは困難といえる。
公務員の慢性的な長時間労働をもたらしている主因のひとつに、使用者にとって残業コストの低さがある。民間企業での残業代不払いは明確な労働基準法違反であるが、それが適用されていない国家公務員では、サービス残業をさせても罰則はない。
残業時間に応じた割増賃金を支払い、予算で定められた総額人件費の範囲内で働くという制約条件が効かなければ、慢性的な長時間労働の状況はいつまでも改善されない。
この典型例が、多くの公務員が深夜までの残業を強いられる国会待機である。野党の質問の提出時間の遅さが問題になっているが、本来、答弁者を困らせることが目的の野党に対して、事前に明確な質問内容を求めることは容易ではない。
大臣は、政策の基本的な内容や考え方についての質問のみに対して答え、細部は翌日までに文書で回答する等のルールに改革することで、より建設的な国会論争となろう。また、そうなれば、各省で大臣答弁を作成するコアの人員だけが待機することで、多くの労力が節約できる。
こうした改革を促す、最も単純な手段は、警察や消防、自衛隊等のストライキ権を除き、国家公務員にも労働基準法を原則適用することである。
現行の働き方を所与したままで、単に運用上の改善で長期の育児休業を奨励するという安易な方法では限界がある。残業手当を節約することが至上命令となり、そのために公務員の業務効率化を勧めざるを得ないような、強力なメカニズムが働くための効果的な手段を講じなければならない。
また、育休の取り方にも、部分就業の選択肢を設ける必要がある。男女に関わらず、たとえ限られた育休期間でも、完全に仕事から切り離されると、自分でしか対応できない案件が生じた場合に同僚に大きな迷惑がかかることへの危惧が、育休の長期化を妨げる大きな要因となる。
これを防ぐためには、育児休業期間中に、一定の範囲内で短時間勤務をしても、育休取得者に不利にならないような仕組みも必要となる(参照:「男性の育休取得、義務化の前にやるべき規制緩和の中身」)。
(中略)
日本の育児休業は先進国のなかでも画期的な制度であるが、それが制定された1992年当時と比べて、男性の育休取得の促進が新しい課題となっている。
これを促進させるために、民間よりも先行している国家公務員について、育休期間を1ヵ月以上に長期化させることで、民間企業についてもその底上げを図るという政策の意図は正しい。
しかし、その実現のためには、単なる管理職の意識改革等、運用上の対応だけではなく、男性の育休取得を妨げている長時間労働等の是正も、まず公務員側から始める必要がある。
そのためのひとつの手段が、民間企業の労働者と同様に、労働基準法を原則として公務員にも適用することである。男性の育休取得への制約という長年の課題を、働き方の制度改革なしに実現できるという甘い考え方では、その実現は絵に描いた餅となろう。【11月6日 昭和女子大学グローバルビジネス学部長・現代ビジネス研究所長 八代尚宏氏 DIAMOND online】
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“人事評価に反映させる”ということの実態如何でしょう。“管理職の意識改革”を促すレベルにとどめれば、上記のような結果にあるでしょう。
もっとシビアに、部下が育休を取得しない管理職、育休を取得しない職員は昇進できないという環境にすれば、目の色も変わるのでは。そのくらいやらないと意識なんて変わりません。