(アメリカ東部の高級リゾート、ロードアイランド州ニューポートに停泊するクルーザー、何十億円でしょうか。今コロナ禍で飛ぶように売れているとか。【8月12日 NHKより】)
【コロナ禍で金持ちは、より金持ちに、貧乏人は・・・】
今更言うまでもないことですし、これまでもブログでしばしば取り上げてきたように、新型コロナは決してすべての人に等しく降りかかっているわけではありません。
富裕層は何十億円もするクルーザーを購入したり、地下シェルターに避難することも可能ですが、貧乏人はコロナ感染の危険を承知で働き続ける必要があります。
そこまでの富裕層ではないにしても、「自粛」「テレワーク」云々は、ある意味、それが可能な一定レベルの階層の価値観であり、貧困層のものではありません。
さらに、コロナ禍による経済不況は、そうした貧乏人の働く職種を直撃して失業に追い込むことにもなり、富裕層との格差はさらに拡大していきます。
****飛ぶように売れる豪華クルーザー ~コロナが映し出す格差****
今、何十億円もするクルーザーが売れているという。新型コロナウイルスの感染拡大によって過去最悪の景気悪化に苦しむアメリカの話しだ。
「新型コロナはすべての人に等しく降りかかっているわけではない。所得の低いサービス業で働く人たちにより重くのしかかっている」
FRB=連邦準備制度理事会のパウエル議長は、コロナ禍をきっかけにした経済格差の拡大に強い警鐘を鳴らす。感染者が世界で最も多い500万人に上るアメリカで、いま何が起きているのか、取材した。
売れ筋は60億円
夏の旅行シーズンを迎えるアメリカ。東部のロードアイランド州に、海に囲まれたニューポートという高級リゾート地がある。黒船で日本に来航したペリーの出身地としても知られる。
取材に訪れて真っ先に目に飛び込んできたのが、停泊中の100隻を超えるクルーザー。この地でクルーザーのディーラーをしているマーク・エリオットさんは上機嫌だ。
「飛ぶように売れていますよ」
新型コロナウイルスの影響で3月は売り上げが減少したが、6月の売り上げはそこから20%上昇したという。
売れ筋の価格帯は実に10億円から60億円。驚くばかりだが、顧客はヘッジファンドや不動産会社のオーナー、大企業の経営者など。売れている理由は「安全な場所だから」とのことだ。
旅客機や大型船と違って、家族など少ないグループで利用できる利点がある。
最近売れたというクルーザーを見せてもらった。6室のベットルーム付きで75億円。高性能の空気清浄機も複数完備されているという。中を見たいと頼んだが、清潔さを保つため他人を入れるのは無理だと断られた。
アメリカでは、コロナをきっかけにプライベートジェットのリースや販売も好調だという話も聞いた。そこには確実に“別世界”が存在した。
金持ちは、より金持ちに
エリオットさん「私のビジネスは株式市場に直結している」
超高額品が売れる背景にあるのは、株高だ。3月に1万8000ドル台まで暴落したダウ平均株価は、4月からみるみる上昇。過去最悪の経済打撃(4~6月GDP ー32%)や感染の再拡大に苦しむ実体経済をよそに、コロナ前の9割の水準となる2万7000ドル台まで値を戻している(8月11日の終値)。
300兆円にのぼる緊急の経済対策とFRBの大規模な金融緩和策が要因だ。異例の政策は失業者や中小企業を支えた。ただそれ以上に、より多くの株や信用力を持つ者が得をする。そんな世界をつくったのかもしれない。
パウエル議長が警鐘を鳴らす理由も、そこにあるだろう。
ブルームバーグ通信が発表するビリオネア指数という指標では、世界の総資産の上位10人中、8人がアメリカ人だ。アマゾンのベゾスCEOやフェイスブックのザッカーバーグCEOらが名を連ねる。
このうち7人の8月時点の総資産はことし初めよりも増加している。増加額は合わせて18兆円。金持ちは、より金持ちになっている。
失業が格差を助長する
コウリープリンスさん 「突然、メールで解雇を通知されました」
東部メリーランド州のボルティモアに暮らすモーガン・コウリープリンスさん(26)は、3月中旬、勤め先のレストランから解雇を言い渡された。
大学卒業から3年半。現場マネージャーも任され、愛着のある職場だった。その後、店は持ち帰りのみで営業を再開したが、職場復帰の声はかかっていない。
アメリカでは、感染拡大の直後、年収4万ドル(420万円)を下回る人の39%が仕事を失った(FRB調査)。全体の失業率は10%台なので、所得の低い人ほど職を失っていることがわかる。
とりわけ懸念されているのが、こうした人たちの雇用の受け皿となってきたレストラン、ホテル、映画館などの接客サービスだ。ニューヨークでは、非常事態宣言が出てから5か月がたった今も店内飲食が禁止され、従業員を雇う動きは鈍い。
コウリープリンスさんは失業保険で生活費や家賃をまかなっているが、学生ローンの返済も残る。驚くのはその額が1100万円にものぼることだ。私立大学で心理学を専攻していた。
コウリープリンスさん 「失業保険がなくなったあとが不安です。今後数年のうちに、正常な生活に戻るとも思えません」
出来ないリモートワーク
“コロナと格差”をめぐっては、もう1つ気になるデータがある。シンクタンクのピューリサーチセンターの調査で、テレワークで仕事を続けることができた人は大学卒業以上で全体の62%だった一方、高卒では22%にとどまった。
これは、感染を避けて仕事を続けられるのは学歴が高い一部の人たちで、工場や小売店など不特定多数の人が集まる場所で働かなければいけない労働者が多くいることを示している。
ワシントンで出会ったライドシェアの運転手、デビッド・ハーブさんは、ほぼ毎日、早朝までの10時間、車を走らせる。65歳で高血圧の兆候もあると言う。
1回の勤務で20組ほどの客を乗せるため、感染のリスクが伴うが、高卒のハーブさんはこう話す。
ハーブさん 「私にはアパートの中でコンピューターを操作するような仕事の選択肢はない。貯金もなく投資もしていないので、お金が必要なんだよ」
本人は仕事に誇りを持っていたが、豪華クルーザーで三密を避ける富裕層がいる一方で、厳しい環境で働き続けている人がいることを痛感した。
アメリカはどこに向かうのか
アメリカの経済格差は長年の課題であり、4年前の大統領選挙でも争点となった。中間層からの脱落を恐れた白人労働者がトランプ大統領の当選を後押しした。
ことしの大統領選挙に関連した取材では、中西部のある大学で民主党左派のサンダース氏の演説を聞いた際、学生ローンの免除や国民皆保険といった格差是正に同調していた大勢の学生たちがいたことが印象に残る。
今回、取材した失業者のコウリープリンスさんに11月の選挙でどちらの候補者に投票するかを尋ねたところ、「今の政権に不満がある」と話し始めたが「どちらの候補者も好きになれない」という結論だった。
経済格差はコロナを機にさらに拡大を続けるのか。それとも是正のきっかけにできるのか。大統領選挙を控えるアメリカに、大きな課題が突きつけられている。【8月12日 NHK】
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金持ちは、より金持ちになるなかで、貧乏人は新型コロナのリスクに最もさらされながら、今まで以上に失業等の貧困に落ちていく・・・というのが現実世界です。
下記は現在のコロナ感染の中心地のとひとつ中南米に関する記事ですが、世界共通の話でしょう。
****中南米、コロナ危機後に貧困率上昇の公算=IADB総裁****
米州開発銀行(IADB)のモレノ総裁はインタビューで、中南米では新型コロナウイルス対策が失業者や債務の急増につながっているため、パンデミック(世界的大流行)から抜け出すころには貧困率が上昇しているだろうと述べた。
中南米経済は新型コロナを巡る影響により、2020年に8─10%縮小が見込まれると指摘。パンデミックは「中南米だけではなく世界的な貧困化をもたらすだろうが、中南米は新興国史上地域であるため、はるかに大きな打撃を受けることは明らかだ」と語った。(後略)【7月26日 ロイター】
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【富裕国によるワクチン争奪戦 はじき出される途上国】
国内的な経済格差だけでなく、今後はワクチン利用をめぐって、国際的な経済格差も露呈してきます。
ワクチンをめぐっては、経済力のある欧米・日本などが、先を争って囲い込みに走っているのは周知のところで、ここでも経済力のない途上国は利用機会が著しく劣後することになります。
****ワクチン争奪 世界が巨費 米1兆円、取り残される途上国****
世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、各国がワクチン必要量を確保する動きが活発化している。
大国が巨費を投じて供給量を押さえる一方で、途上国はワクチン調達で出遅れが目立つ。早期の経済活動の正常化にワクチンは欠かせないだけに、先進国と途上国の間で調達格差が広がれば、今後深刻な対立につながる可能性もある。
米ファイザーと独ビオンテックは7月31日、日本で来年6月末までに1億2000万回分(2回投与で6000万人分)を供給する計画を発表した。早ければ10月にも米国で緊急使用許可を取得するための手続きに入る。日本政府は英アストラゼネカと英オックスフォード大学からも約1億回分調達で協議している。
日本国内では大阪大学発バイオ企業のアンジェスが100万人分(実用化時期は21年春目標)、塩野義製薬が3000万人分(同21年秋目標)の供給を目指すが、国産メーカー分だけでは全国民分には到底届かない。しかも投入時期も欧米メーカーに比べ遅れる。必要分は海外調達しかない。
政府は6月に成立した2020年度第2次補正予算でコロナ対策関連名目で予備費として10兆円を上積みした。うち約2兆円がワクチン調達費を含む医療対策強化に充当されるとみられる。「コロナワクチンなら国民の理解を得やすい」(政府関係者)。財政難だがワクチンは例外だ。
米欧はワクチン確保で日本の先を行く。
英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)は7月31日、仏サノフィと共同開発する新型コロナウイルスのワクチンを、米国に1億回分供給すると発表した。同時に米政府は21億ドル(約2200億円)を拠出することも明らかにした。
米政府がワクチン調達や開発・生産支援などに投じた費用は累計100億ドル(約1兆円)超。ワクチン確保量も15億回分を超え日本の約7倍だ。
英国も同様にワクチンに投資する一方で、全人口の4倍近い約2億5000万回分のワクチン供給を確保したもようだ。
シャーマ英民間企業・エネルギー・産業戦略相は「多様な候補を早期確保することで、有効ワクチンを見つける機会が増える」と述べる。
米英が人口を大きく上回るワクチン確保に動くのはどのワクチンが有効か分からないからだ。しかもワクチン接種は一人に複数回必要なケースが多い。
こうした多方面戦略と一線を画すのが中国とロシアだ。中国は国を挙げてカンシノ・バイオロジクスなど自国の開発会社を支援して、ワクチン確保を目指している。(中略)
ワクチン争奪戦で出遅れているのが途上国だ。
大国が争奪戦を繰り広げる中では途上国が求める「安価」は実現しにくい。先進国が買い取るワクチン価格は1回20~50ドル程度になる可能性が高いが、アフリカ各国は高額の支払いを危惧する。状況を放置すれば途上国の感染拡大に歯止めがかからず、先進国への不満が高まるのは必至だ。
こうした状況を改善しようとする動きもある。 途上国のワクチン開発支援では官民組織の感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)が「平等なアクセス」を理念とする。
CEPIは米バイオベンチャーのモデルナやGSK・サノフィなどが開発するワクチンに投資。CEPIの支援を受けたワクチンは貧困国も富裕国も手に入りやすい価格で平等に供給することを条件としている。
世界保健機関(WHO)などは途上国向けと先進国向けでワクチン価格を変える可能性を示唆している。ただ、製造原価割れした価格で途上国に販売する場合の負担を巡る議論が進まず、実現の見通しは立っていない。
途上国がワクチンを安定確保するには自国に製造設備が必要だ。しかし、アフリカではワクチン製造設備や企業・研究所がほとんどない。特許を使いやすくして生産を促す「強制実施権」も効果が見込めない。
アフリカの現状はインドから安価なワクチン供給を受ける。アフリカ向けワクチンについては中国勢が意欲を示す。
ウイルス拡大に国境はないだけに、世界に公平にワクチンを分配する知恵が求められている。【8月3日 日経】
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各国がどのくらいのワクチンを確保したのか、その数字については、発表時点によっても、いろいろあるようです。
****新型コロナワクチンの確保、世界で57億回分****
新型コロナウイルス感染症のワクチン開発が進んでいるが、臨床試験(治験)により効果が立証されたものはいまだない。だが世界各国は、少なくとも計57億回分のワクチンを事前に確保している。
現在5種類のワクチン(欧州3、中国2)で、数千人の被験者が参加する第3相試験が行われている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11日、新型コロナウイルスに対する「持続可能な免疫」を作る世界初のワクチンを開発したと発表し、世間を驚かせた。このワクチンは旧ソ連が打ち上げた人工衛星にちなみ、「スプートニクV」と名付けられた。
世界中の研究機関がワクチン開発を競っており、製造業者らは2021年または今年末までに数百万回分のワクチンを用意するための資金援助を受けている。 【8月12日 AFP】
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上記記事では、日本も欧米並みの数字になっていますが、上記数字には中国が入っていません。
おそらく、中国は途上国がワクチン確保に苦慮する状況で、「ワクチン外交」を展開するのでしょう。