孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ボリビア 昨年の政変・モラレス前大統領亡命から続く混乱 大統領選挙再延期で混乱拡大

2020-08-13 23:15:11 | ラテンアメリカ

(ボリビア・エルアルトで、総選挙延期に抗議するデモに参加するエボ・モラレス前大統領の支持者(2020年8月10日撮影)【8月13日 AFP】 ずいぶん物騒なものを手にしていますが、顔が赤く見えるのはマスクのせいです。)

 

【昨年10月の大統領選挙の不正疑惑・混乱で国を追われたモラレス前大統領 海外から支持者を鼓舞】

気にかける人も少ないとは思いますが、南米・ボリビアの話。

 

ボリビアでは昨年10月に行われた大統領選挙で、現職モラレス氏側に不正があったとして国内外で批判が高まり、モラレス氏はメキシコに亡命することになりました。

 

****ボリビア  クーデターか民意の反映か****

南米ボリビア大統領選挙では、事実上、憲法の再選規定を破って4選を目指して出馬を強行した左派モラレス大統領と野党候補の争いとなり、開票率約83%段階の選管当局の集計速報によると、得票率はモラレス氏が約45%、メサ氏が約38%と、その差が10ポイント未満で決選投票が行われると見られていました。

 

しかし、その後その後集計速報が止まり、21日夜に再開するとモラレス氏がリードを10ポイント超に広げており、決戦投票なしでモラレス氏が当選した・・・との結果発表が。

 

さすがにこれでは野党候補側が納得するはずもなく、国際社会も集計発表が中断した24時間に何が起きたのか説明を求めていました。

 

その後は、国内外の批判に加え、軍・警察からも辞任を迫られる形で、結局、モラレス氏は辞任を発表、更に「生命の危機にさらされている」としてメキシコに亡命することに。【2019年11月12日ブログより再掲】

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モラレス前大統領はいわゆる左派系で、2006年に初当選。コカ栽培農家出身で、ボリビア初の先住民出身の大統領。

貧困問題に向き合い、ボリビア経済を改善したと、支持者からは高い評価を得ていました。

 

モラレス前大統領が亡命したのちは、副大統領・上院議長・下院議長も全員辞任したため、憲法が定める規定に従って、反モラレス派女性議員のアニェス上院副議長が暫定大統領に就任したと表明しています。(モラレス派が多数を占める議会は承認していません)

 

その後も、モラレス前大統領支持者と治安部隊の衝突が続き、国内情勢は不安定です。

モラレス前大統領も昨年12月、アルゼンチンに移ったのち、ツイッターで「貧しい人々のため、そして祖国を団結させるため戦い続ける。私は強く、活気にあふれている」と、復活を目指す構えです。

 

【前大統領と近い中国、暫定大統領を支持するアメリカ】

国際的にみると、前大統領を支持してきた中国と、“裏庭”南米での左翼政権を嫌うアメリカの確執もあります。

また、ボリビアの地下には大量のリチウムが存在し、中国・アメリカともにこの資源に関心があるとも。

(ボリビアのリチウムについては、1月1日ブログ“南米ボリビア 膨大な将来的需要が見込まれるリチウム 先のクーデター・モラレス追放にも影響?”)

 

モラレス前大統領は、自身が追われた昨年の政変を「米国の政治・経済的圧力によって引き起こされたクーデター」とし、トランプ政権の陰謀説を主張しています。

 

昨年10月の選挙で、実際に不正があったのかどうかについては、よくわからないところも。

 

やり直し選挙がコロナ禍で延期になったことにも、前大統領派は抗議行動を強めています。

 

****南米ボリビアでも米中覇権争い激化へ****

(中略)

■ 前政権下で中国の影響力増大

こうしたボリビア国情の変化が、同国を舞台とする米中の“覇権争い”に反映される。

 

モラレス前政権は反米左翼路線を進め、駐ボリビア米国大使を国外追放、米国との関係が悪化。中国はそこに乗じる形でボリビアとの関係を強化。モラレス前政権との間で経済技術協力協定を結び、積極的に経済支援を行い、ボリビアのインフラ開発・整備には大量の資金を提供した。

 

2018年には両国の戦略的パートナーシップ確立と「一帯一路」へのボリビアの協力をうたった共同声明が発表された。

 

中国の支援の背景にはボリビアの豊富な鉱物資源獲得という狙いがあったというのが、多くの中南米専門家の一致した見方だ。特にリチウムはボリビアが世界有数の埋蔵量を保有しており、中国にとって同国支援の大きな要因になったことは想像に難くない。

 

■ トランプ政権は“反転攻勢”へ

一方、米国は「裏庭」ともいえる南米の一角に中国の影響力が増大することに神経をとがらせる。トランプ政権は昨秋のボリビア政変を“反転攻勢”への好機と捉えたようだ。

 

トランプ大統領は、モラレス氏失脚後にボリビアで発足した保守系右派のアニェス暫定政権を「平和的かつ民主的な政権移行を目指している」とし、支持する方針を表明した。

 

ボリビアの外交政策は暫定政権の発足後に急転回。対米関係が大幅改善に向かう一方、キューバとの外交関係停止、在イランおよびニカラグアのボリビア大使館の閉鎖が相次いで発表された。

 

在ボリビア外交筋は「トランプ政権がボリビア暫定政権に対し支援の約束と引き換えに、対キューバ関係断絶などを求めた可能性が十分」と語る。

 

現在、アルゼンチンに亡命中のモラレス前大統領は昨年の母国の政変に関し、「米国の政治・経済的圧力によって引き起こされたクーデター」とし、トランプ政権の陰謀説を主張している。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は先ごろ、モラレス前大統領失脚の引き金となった米州機構(OAS)監視団の「選挙不正」発表では、欠陥データが使われたとの専門家の見解を紹介した。

 

この報道を受け中南米の専門家の間では「OASが米国主導の国際機関であることを考えれば、昨年のボリビア大統領選でモラレス氏が不正を行ったというOASの見解は信頼性に疑いがあり、同氏失脚の背後で米国が動いた可能性は否定できない」(ペルー・カトリカ大政治学者)との声も聞かれる。

 

■ やり直し選挙に向け緊張増す

ボリビアでは、昨秋の大統領選のやり直し選挙が当初、5月に予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で延期となった。

 

やり直し大統領選の実施時期に関しアニェス暫定大統領とモラレス前大統領派の政党「社会主義運動」(MAS)などとの間で対立が先鋭化。

 

同暫定大統領は「新型コロナ禍で選挙を実施することは国民の生命と健康を危険にさらす」と、早期実施に反対。これに対しMASは「アニェス氏は新型コロナを口実に権力維持を画策している」とし、各地で反政府抗議行動を展開、政情不安がさらに増した。

 

最近ようやく9月6日の実施が決まった。次期大統領選にはアニェス暫定大統領やMASのアルセ前経済相らが出馬する予定。

 

現地メディアの情報によれば、アニェス氏が米国の強い後押しを受ける一方、対抗馬となるアルセ氏には中国がさまざまな支援を与えるのは確実だという。米中対立激化も絡んでボリビア政局の行方は一段と注目されそうだ。【7月2日 山崎真二氏 Japan In-deoth】

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【コロナ禍で大統領選挙は再延期 反発を強める前大統領支持者】

いったんは9月6日の実施が決まった次期大統領選ですが、コロナ禍もあってさらに10月に延期されています。

 

****大統領選挙期日を10月18日に変更、モラレス前大統領は反発****

ボリビアの最高選挙裁判所(TSE)は7月23日のプレスリリースで、9月6日に開催を予定していた大統領選挙を10月18日に変更すると発表した。

 

また、同日にいずれの候補者も当選を確定(51%の得票率の確保。または、同40%以上で2位と10ポイント以上の差の確保)しなかった場合は、11月29日に決選投票を行い、就任は12月に行われるとした。

 

TSEは、2つの理由から今回の変更を決定した。1つは新型コロナウイルスの感染状況の分析だ。国内外の専門家の見解を考慮した結果、感染ピークが7月末から9月初旬になるとの見通しだったため、ピーク後の感染下降時の開催が望ましいとしている。

 

2つ目は2020年以内に新政権の樹立を達成しなければならないという憲法上の義務だ。(中略)

 

新型コロナウイルス感染を7月9日に発表して以降、自宅隔離状態にあるジャニネ・アニェス暫定大統領は、自身のツイッターでTSEの決断に従うことを表明。

 

一方、エボ・モラレス前大統領は、選挙の延期は現暫定政権によってもたらされた感染拡大と経済危機を助長するだけだと批難声明をツイッターで発表した。【7月27日 JETRO】

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新型コロナウイルス感染で自宅隔離状態にあったアニェス暫定大統領は仕事へ復帰しています。

 

支持率では優位にあるとされているモラレス前大統領支持者は、この大統領選挙再延期に強く反発し、実力行使を強めています。

 

****モラレス前大統領支持者ら、総選挙再延期に抗議 ボリビア****

ボリビアで、武装した抗議デモ参加者による道路封鎖が10日目に入った。当局は、これにより新型コロナウイルスの感染拡大対策に必要な医療物資が病院に届けられなくなっているとして、デモ隊を非難している。

 

ハビエル・イッサ内務副大臣は12日、国外に逃亡したエボ・モラレス前大統領の支持者らが、ボリビアの政府機関9機関の至るところにバリケード142個を設置したと述べた。

 

デモ参加者の大部分は先住民族と農家で、総選挙が再び延期されたことに怒りの声を挙げている。選挙は当初5月に行われる予定だったが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を受け、9月6日に延期されていた。

 

最高選挙裁判所は今回、総選挙をさらに10月18日に延期。アルゼンチンに亡命中のモラレス氏によりあおられたデモ隊は、これを9月に戻すよう要求している。

 

モラレス氏の支持者らは、総選挙の延期はモラレス氏が党首を務めた政党「社会主義運動」から立候補したルイス・アルセ氏が、大統領になることを妨げるのが目的だと主張している。

 

アルセ氏は、今年1月にMASの候補に指名されて以降、世論調査で常に支持率トップを維持している。 【8月13日 AFP】

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【路上や民家に多くの遺体?】

ボリビアを含めた南米は、現在コロナ感染の中心地となっていますが、ボリビアについては、昨日の新規感染者が1743人と高止まり状態で、累計では95071人。死者は昨日66人増加して3827人となっています。

(人口が1135万人と日本の十分の一以下であることを勘案すれば、かなり高い水準にあります)

 

****遺体400体超、路上などから収容 85%がコロナ感染 ボリビア****

南米ボリビアの警察当局は21日、路上や民家から5日間で400人超の遺体を収容したと発表した。遺体の85%は新型コロナウイルスに感染していたとみられる。

 

国家警察のコロネル・イバン・ロハス長官は報道陣に対し、今月15〜20日にコチャバンバ都市圏だけで、計191人の遺体が収容されたと説明。政府所在地ラパスでも、141人の遺体が収容されたという。

 

さらに同国最大の都市サンタクルスでは、当局が68人の遺体を収容。サンタクルスの都市圏は同国で最も新型ウイルスの被害が大きく、国内で確認された6万人を超える感染者のうち、半数近くを占めている。

 

ロハス長官は、遺体の約85%が「新型コロナウイルス感染症の検査で陽性、または症状を示していたため、感染疑い例として記録される」と説明。残りの遺体については「病気や暴力沙汰など、他の原因」で死亡したという。

 

同国の防疫当局によると、コチャバンバとラパス西部では新型ウイルスの感染者数が「著しく急増している」という。

 

法医学検査所のアンドレス・フロレス所長によると、4月1日〜7月19日に病院施設外で収容された遺体3000体超で、新型コロナウイルス感染が確認された、あるいはその疑いがあった。

 

人口1100万人を有するボリビアでは、同感染症によりこれまでに2200人超の死亡が確認されている。 【7月25日 AFP】

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コロナにせよ、コロナ以外にせよ、“路上や民家から5日間で400人超の遺体を収容”というのは・・・・なかなか日本では想像しがたい状況です。

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