孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  メンツ文化を改善できるか、習近平主席指導の「光盤(皿を空にする)運動」

2020-08-16 21:58:18 | 中国

(中国北部・河北省で、レストランのテーブルに置かれた、食べ残しをしないよう呼びかける注意書き(2020年8月13日撮影)【8月16日 AFP】)

 

最近の中国社会の話題から。

 

****食事の注文少なめに、中国の食堂で呼びかけ 習国家主席が食べ残しに憤慨****

中国の習近平国家主席が、食品廃棄の問題に取り組んで倹約の考えを取り入れる方針を打ち出したことで、同国のレストランでは、料理を少なめに注文するよう呼び掛けられている。

 

「光盤(皿を空にする)運動」と呼ばれるこのキャンペーンは、中国で深く根付く、宴会で多めに食事を注文する文化的習慣を覆すことを目指したもの。

 

国営メディアは今週、食べ残しが「ショッキングで痛ましい」との習氏の発言を報道。「食料の安全保障に関する危機意識を維持する必要がある」とした上で、「今年は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)による影響で、われわれにとってはさらなる警鐘が鳴らされている」と述べたという。

 

地域のケータリング業界は、習氏の呼び掛けに応える形で、通称「N-1方針」を取り入れると表明。団体客に対しはこの方針の下、人数分より1品少なく注文するよう求めるという。

 

またレストランに対し、一人客に少なめか、半分の量を提供するよう提案している。

 

2018年に中国科学院が発表した報告書によると、レストランにおける食べ残しの量は平均で、1人当たり毎食93グラム。大都市で毎年1800万トンもの残飯が廃棄されることにつながっている。

 

パンデミックを受け、当初は封鎖された都市で買いだめや食料不足がみられ、食料の安全保障をめぐる国民の懸念が高まった。

 

さらに深刻な洪水被害によって、長江のデルタ地帯にある広大な農地が壊滅したことで懸念が膨らんだ。中国の農産物の半分近くが生産されるこの地帯での収穫は台なしとなり、食品価格が高騰している。

 

国営メディアやネット上でもまた、食品廃棄に対する闘いが開始された。

 

人気の動画共有アプリ「抖音」や「快手」は、「喫播」と呼ばれる、時には嘔吐(おうと)するまで過剰な量の食事を暴食して動画を投稿する行為に対して、アカウントの閉鎖措置を取ると発表した。 【8月15日 AFP】

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中国では来客をもてなす際は、食べきれない量を出すのがマナーともされており、「食べきりサイズ」というのは“ケチくさい”というイメージもあるのでしょう。

 

飲食店で注文する際も、料理を多めに注文するという「メンツ文化」があるということもよく言われるところ。

(ただ、食べきれないときにはタッパーに入れて持ち帰るといったことも、普通に行われています。日本では食中毒などの観点から、店によっては歓迎されないことも多いようですが)

 

食べ残し・廃棄を減らそうという「光盤(皿を空にする)運動」自体は以前からあるものだと思います。

数年前、西安を旅行した際にも、その手の表示が飲食店の店内に貼られていました。

 

今回、改めて習近平主席の指導で、取り組みが強化されるということでしょう。

 

中国を旅行して困ることのひとつが、向こうは何人かで食べることが基本となっているせいで、注文料理の一品一品の量が多く、一人旅では持て余してしまうこと。一人で何種類か注文すると大変な量になってしまいます。

 

ですから、「一人客に少なめか、半分の量を提供するよう提案」というのは大歓迎です。

 

記事最後に触れられている「大食い配信」規制については、以下のようにも。

 

****中国で「大食い配信」がやり玉に、国営テレビが批判、背景には…*****

11日に放送された中国国営の中央テレビ(CCTV)のニュース番組内で大食いする様子を配信する動画配信者が批判されたことが注目を集めている。

 

中国版ツイッター・微博(ウェイボー)の検索キーワードランキングでは、「中央テレビが大食い配信者の(食べ物の)浪費が深刻と批判」が一時2位まで浮上した。

中央テレビの番組では、国連食糧農業機関(FAO)の統計を基に「世界では毎年3分の1の食糧が無駄にされており、その量は13億トンに上る。世界人口76.33億人のうち、8.2億人が飢餓に瀕している」と説明。

 

客の食べ残しに頭を悩ませる飲食店や、「食べる分だけ注文すべきだ」といった市民の声を紹介すると同時に、いわゆる「大食い配信者」について「(飲食物の)浪費が深刻。中には食べたものを吐き出す者もいる」と指摘した。

番組に出演した中国科学院地理科学・資源研究所の成昇魁(チョン・ションクイ)研究員は、自メディア(個人などが発信するメディア)などで大食い動画が流されていることについて「非常によろしくない兆候だ」とし、「社会の節約意識の構築、食品の無駄をなくすということにまったくもって背くものだ」と強く批判した。

 

中央テレビが同内容を放送した背景には、習近平(シー・ジンピン)国家主席が先日、食糧の浪費を控えるようにとの「重要指示」を出したことがあるとみられる。

ネットユーザーからは、「こういう配信は取り締まるべきだ。衆目を集めたいだけでやっている」「大食い配信はいいが、吐き出すのは良くない」「大食いは無駄だし、体にも良くない」「他人が大食いするのを見て喜び、投げ銭をする人までいる。理解できない」「食品の無駄だし、見ていてつまらない」など批判に同調する声が多く寄せられている。【8月13日 レコードチャイナ】

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政府がこうした規制を行うことの是非は別として、日本でも頻繁にみられる「大食い番組」に関しては、私個人も「世界には飢餓で苦しむ人が多いのに、こんなことやっていいのか?」という印象を持っていました。

 

最高権力者・習近平主席の指導ということですから、関係機関はその方向で動き出しているとも。

 

****中国の小麦買付量が1000万トン減、習近平氏は食糧を浪費しないよう呼びかけ―仏メディア****

2020年8月13日、仏RFIの中国語版サイトは、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が国民の食習慣における食糧の浪費に注目すると同時に食糧関係機関の責任者らが頻繁に打ち合わせをし、政府メディアも食糧の安全を重視するよう求め、国民に食糧を節約し、危機意識を持ち続けるよう呼びかけたと報じた。

中国農業科学院の統計によると、2015年の統計では毎年3500トンの食べ物が浪費されているという。

記事によると、中国国営新華社通信は次のように中国の人々に理解を求めた。

 

食糧資源が豊富な国で産業チェーンが断絶する可能性がなくはない。サプライチェーンが断絶すると、恐慌のような購買が発生する。

 

また、昨年末からこれまでの世界各地のバッタの大量発生や山火事、さらに新型コロナウイルス感染拡大により、物流が滞ったり輸出制限を受けたりして、世界の農産物供給の不確実性が増し、食糧市場が不安定になっている。

また、フランス通信社は「中国人は盛大な食文化から節約へと移行し、習近平の呼びかけに応えている」と報じ、北京市や武漢市、西安市など多くの都市の職業飲食協会が提唱し推進している「N−1」の飲食モデルに注目した。(中略)


記事によると、中国政府はこれまで、年間在庫は消費量に対し十分で、食糧供給に問題はないと度々強調してきた。

 

国家食糧・物資備蓄局が今週発表したデータでは、河北省から江蘇省、山東省から河南省の多くの小麦主産地の買付量が前年同期比減となり、全体で938万トン以上減少した。だが、現在の小麦と米の在庫量は国民の1年間の総消費量に相当するという。

 

また、米、小麦、トウモロコシの「中国三大食糧」の中国国内自給率は平均97%以上、2019年の中国の1人当たりの平均食糧占有量は470キロを超え、国際食糧安全基準より1人当たり400キロ多いという。データは、食糧の余裕への「十分な自信」を示したと記事は伝えた。【8月16日 レコードチャイナ】

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一方で、過剰反応・悪乗りではないかと批判を浴びるようなことも報じられています。

 

****客に体重測定求めた食堂に批判殺到、食べ残し削減運動に過剰反応 中国****

中国で食品廃棄の問題に対する全国規模のキャンペーンが展開される中、同国のレストランが過剰に反応し、入店前の客に対して体重測定を求める方針を打ち出した。だが、これが物議を醸して謝罪に追い込まれた。

 

中国中部・長沙にある牛肉料理のレストランが14日にこの方針を明らかにすると、たちまちソーシャルメディア上で厳しい批判を浴びた。

 

国営中国新聞社の報道によると、客は店の前に置かれた体重計に乗るよう求められ、自身のデータをスキャンしてアプリに取り込むと、アプリが体重と料理のカロリー量に基づき、選ぶ料理を勧めてくれるという。

 

習近平国家主席は先週、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)や先月発生した深刻な洪水の影響で、食品価格が高騰している現状を踏まえ、国民に対して食べ残しをやめるよう強く求めた。

 

地域のケータリング業界はこれに応えようと、中国で深く根付いている、宴会で多めに食事を注文する文化的習慣を覆すべく、人数分より1品少なく注文するよう客に求めている。

 

批判を浴びた長沙のレストランは15日朝、ネット上で謝罪。「食べ残しをやめ、健康的なやり方で料理を注文することを呼び掛けるのが本来の意図だった。体重測定を客に強制したことは一切ない」と述べた。

 

中国の国営メディアは暴食している動画を投稿する「喫播」と呼ばれる行為についても批判を展開しており、ライブ配信サイトは暴食や食べ残しを助長するアカウントを閉鎖する意向を明言している。 【8月16日 AFP】************************

 

どうでもいいことでしょうが、“アプリが体重と料理のカロリー量に基づき、選ぶ料理を勧めてくれる”というのが、どういう考え方で“勧めてくれる”のか、それがどのように食べ残しを減らすことと関連するのかよくわかりません。(別記事で、ネット上の具体的な批判を読みましたが、イマイチよくわかりません)

 

体重が軽い者には、少なめの量を勧めるのか、逆に、体重の重い者に肥満防止の観点から低カロリー料理を勧めるのか・・・後者であれば、発想としては悪くないようにも。「何を食べるかまで、いちいち口出しされたくない」という批判でしょうか。

 

「女性の体重はプライバシーです」といった批判もあるようで、「中国でもそういう感情があるのか・・」って変なところが面白かったり。

 

まあ、いずれにしても、冒頭にも書いたように個人的に大歓迎だということを別にしても、(経済はそういう浪費の上に成り立っているとは言いつつも)世界の食糧事情を考えれば食べ残しを減らそうということ自体は結構なことでしょう。

 

市民生活への公権力の介入の在り方については、そのやり方・考え方は、中国のような社会と日本では異なる点もあるでしょうが。

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