(【3月1日 FNNプライムオンライン】 初協議の様子 左:ロシア 右:ウクライナ)
【停戦の合意に向けての本気度は感じられないロシア】
ウクライナとロシアの協議は予想されたように特段の結果を出すには至らず終わりました。今後継続して協議することが合意されたことが唯一最大の成果でした。
双方とも、すぐに何らかの成果が得られるとは考えていなかったでしょう。
ただ、攻撃を受けているウクライナ側には、ロシアの腹のうちを探り、今後へつなげたいという思いもあるでしょう。
ロシアの方は・・・ウクライナ側が要求を全面的にのむなら別ですが、そうでなければ攻撃を続けるだけ、ただ、協議に応じないと国際的に更に非難されるので協議を行うかっこうは示さないと・・・といったところでは。
****両国の“本気度”に温度差? ロシア・ウクライナ初協議****
ロシアの軍事侵攻が続く中、ウクライナとロシアの代表団が初めて停戦に向けた協議を行ったが、結論は出なかった。(中略)
侵攻している側のロシアと、侵攻されている側のウクライナ。両国の協議に臨む姿勢は温度差を感じさせた。
ロシア側のトップ・メジンスキー大統領補佐官は、前文化相で作家でもある文化系の人物で、外交経験が豊富とはいえない。重要な協議の場としては、首をかしげてしまう人選で、協議に臨む本気度が高いとはいえない印象だった。
一方、ウクライナ側は野党議員も含まれていて、一致団結してロシアに立ち向かう姿勢をうかがわせた。
この野党議員は、ロシアに実効支配されているクリミア半島の関係者で、「クリミア問題も忘れない」とウクライナのやる気を示したともいえる。
また、両国の洋服にも温度差を感じた。
ウクライナ側は非常事態の現場から「着の身着のまま」来たような服である一方で、ロシア側は全員がスーツ姿で余裕を感じさせた。
ロシア側の対応からは、停戦の合意に向けての本気度は感じられず、今後も事態の打開にはつながらない可能性がある。【3月1日 FNNプライムオンライン】
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【ウクライナをはじめとした旧ソ連の国々は「半人前」の国家で、その保護者はロシア・・・という世界観】
ロシアが求めているのはウクライナの非武装化(全面降伏)、中立化(NATOへ加盟しないこと)、そしてクリミアのロシア主権承認とのこと。
****クリミアの主権承認などが条件とプーチン氏****
ロシア大統領府によると、同国のプーチン大統領は28日、フランスのマクロン大統領との電話会談で、ウクライナ問題の解決はクリミア半島でのロシアの主権の承認やウクライナの非武装化、中立化が条件だと述べた。【3月1日 共同】
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以前からプーチン大統領が繰り返し主張しているように、ロシアは約束を反故にされる形で、NATOが東方拡大を続けており、ロシア国境に西側が迫っている、この動きを止めることを明確に認めることをウクライナ、NATOに要求しています。
そうしたプーチン大統領の思いの背後には、かなり偏った国家観・世界観が横たわっているようにも見えます。
****《ウクライナ軍事侵攻》「頭の中が100年単位で古い」プーチンの“あまりに特殊な国家観”****
(中略)ロシアは一体なぜ、このような振る舞いを起こしたのか。軍事評論家で、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏のインタビューの中から、その理由を読み解くヒントとなる、プーチン大統領のあまりに特殊な世界観についてここに再公開する(初出:2019年11月24日 以下、年齢・肩書き等は公開時のまま)。
(中略)ロシアは一体なぜ、このような振る舞いを起こしたのか。軍事評論家で、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏のインタビューの中から、その理由を読み解くヒントとなる、プーチン大統領のあまりに特殊な世界観についてここに再公開する(初出:2019年11月24日 以下、年齢・肩書き等は公開時のまま)。
ロシアのあまりに特殊な国家観
〈ロシアの行動原理を理解するためには「彼らの独自のルールブック」を知る必要がある――そう著書に記した小泉氏。まずは、その「あまりに特殊な」国家観について聞いた。〉
――まずプーチン、そしてロシアという国は、いまの世界、そして国際政治の現場をどのように捉えているのでしょうか。
ソ連が崩壊して、スーパーパワーでなくなってしまったということが、ロシアにとってはわれわれが想像する以上に面白くないことでもあったし、もっと言うと脅威でもあったと思います。
ロシアの世界観は、パワーに大きく依存しています。世の中や国際政治を動かすパワーと一口に言っても様々ですが、ロシアは剥き出しの「軍事力」を極端に強調するんです。「強制的に相手の行動を変えるようなパワー」こそが、国際政治の主要因だと考えているのです。
ロシアがこの価値観で自国をみると、実体以上に自分たちのパワーがものすごく弱くなってしまったようにみえる。「外国にいいようにされてしまう」と理解していると思います。
――そのような「特殊な世界観」でみると、他国はどう見えているのでしょうか。
力が弱い国、特に自前で安全保障が全うできないような国は、一人前の国家ではないと見なします。「半主権国家に過ぎない」みたいな言い方をするわけです。
「主権」はどの国も確かに持っているんだけど、その主権をフルスペックで発揮できるかどうかは軍事力による、という世界観です。たとえば、プーチンに言わせれば、アメリカに守られているドイツは主権国家ではないとなる。
だからロシアにとって、国連常任理事国プラス数カ国ぐらいしか主権国家と呼べる国はないという世界観なんですよね。(中略)
クリミア侵略はなぜ起こったのか
――どうしてそんなタイミングでクリミアを侵略したのでしょうか。経済制裁の可能性は検討されなかったのでしょうか。
ロシアからしてみれば侵略じゃないんですよね。あくまで「防衛的行動」を取っただけだと思っている。
さきほどから説明しているロシアの世界観で言うと、ウクライナをはじめとした旧ソ連の国々は「半人前」の国家です。「その保護者は誰?」というと、ロシアであるという気持ちでいる。
要するに、「君たちは一応独り立ちしてお家をもらったけど、まだ僕の保護下だよね」と思っていて、半人前なのだから、「親の知らないところで勝手なことしちゃ駄目だよ」と。クリミア侵攻の時は、ウクライナちゃんがフラフラとNATOのほうに付いていこうとしたので、ロシアは「駄目だぞ」といって、ゲンコツでポカッとやった。その程度のつもりでいるんですよ。
――旧ソ連諸国には、いまだ「保護者」として振る舞うわけですね。
ロシアの世界観では、まだ危なっかしい独り立ちできない旧ソ連の子たちをアメリカがたぶらかそうとしていると思っている。
ウクライナのオレンジ革命、グルジアのバラ革命、キルギスのチューリップ革命……。2000年代に一連の民主化革命が旧ソ連の国々で起こりました。普通なら、「それらの国の政府が汚職にまみれていてパフォーマンスが低かったから、国民に見放されたんだ」と理解するわけですが、ロシアの見方は違います。「これはアメリカの陰謀なんだ」と理解するわけです。全部アメリカが裏から糸を引いていると。(中略)
そんななか、2014年にキエフで政変が起き、クリミア侵攻につながっていく。ロシアからすれば、「保護下にあるまだ無力で未熟な国々を、アメリカは裏から操って、そこでこういう政権崩壊を引き起こした。われわれが素早く入っていって守らなければ」という認識で介入したわけです。
でも、当然これはわれわれ西側の人間から見たら、「なんていうことをしてくれるんだ!」という話になりますよね。挙句の果てに、クリミア半島を併合までしてしまう。(中略)
実際、ドイツのメルケル首相は「19世紀とか20世紀前半みたいな振る舞いだ」という言い方をして批難しました。われわれからすると受け入れがたいし、やはり危険だと見えるわけです。
プーチンは「頭の中が100年単位で古い。数世紀遅れている」
――歴史の教科書で見るような事件に思えました。
まさに時代錯誤なんですよ。要するに、「古臭い」んですよね。
ロシアの「パワーこそすべて」みたいな世界観とか、「君らは僕らの勢力圏内にいるんだから、お前らには完全な主権はない」という考え方は、18世紀、19世紀なら普通の考え方だった。プーチンが18世紀のロシア帝国の皇帝だったら名君です。でも、それを21世紀にやってしまったことが大問題なんです。
ですから、僕のプーチンのイメージは、「天才戦略家」だとか、「悪のリーダー」だとかいうよりも、「古い男」。頭の中が100年単位で古い。数世紀遅れているというイメージなんです。
――プーチンには、なぜそのような時代遅れの価値観が染みついてしまったのでしょうか?
プーチンを支えるロシアの外交や安全保障、諜報機関、エリートたちの世界観がもともと古いんですよね。
なんでロシアだけが?と思うかもしれませんが、例えば中国も近いんじゃないかと思います。彼らの場合は、経済も成長しているし、イノベーションも起きているから、ロシアよりもう少し頭が柔らかいかもしれませんが。でも、僕は中国の行動にはロシアとかなり近いものを感じます。
――たしかにロシアは、中国と繋がりを深めていますね。
中露が気が合っているのは、互いに「権威主義体制(編集部注:一部のエリートによる非民主的な体制)」が必要だと思っている国だからかなと思っています。権威主義はいずれ倒されて民主化されていく――という認識が西側の国にはあるじゃないですか。だから、中国やロシアについても「まだ民主化していない」という言い方をする。
ところが中国やロシアからしてみると、「いつか民主化する」なんて思ってもらったら困るんですよ。巨大な国家を統治するためにはこういう政体しかないのであって、いずれ民主化するというビジョンを持たれたら困る――と思っているんです。
ロシアなんて、「民主化をしろ」とか、「ジャーナリストを殺害してけしからん」とか言われると、「またそうやって西側は情報戦を仕掛けてきている。民主化の名の下にわれわれの国体を覆す気だな」って認識する。たぶん、これは中国共産党も同じでしょう。(後略)【2月26日 文春オンライン】
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【中立的な国々も反ロシアに追いやる不合理】
プーチン大統領の頭の中が100年“古臭い”だけでなく、彼が行っている“力の行使”はどうもつじつまが合わないように思えます。
NATOがロシアに迫るのやめさせるために・・・といいつつ、ウクライナに軍事侵攻したことで、これまで表向きは「中立的」立場にあった国々が、次々と“反ロシア”の姿勢を明確にしています。
昨日ブログで取り上げたドイツなども、ロシアとはパイプラインで結ばれるほどに近しい関係にありましたが、ショルツ首相が方針を転換してロシアの脅威への抵抗姿勢を明確にしていることは昨日ブログのとおり。それ以外にも・・・
****北欧2カ国もウクライナ武器支援 伝統的中立のNATO非加盟国****
フィンランド政府は2月28日、ロシアが侵攻したウクライナにライフル銃などの武器を供与すると表明した。ロイター通信が報じた。スウェーデンも既に対戦車砲などの供与を決定。イタリアとノルウェー、カナダも28日、武器供与の方針を表明した。
北大西洋条約機構(NATO)非加盟で伝統的に中立を守ってきたフィンランドとスウェーデンも、NATO加盟の欧米諸国と同様にウクライナ支援を鮮明にした。
ロイターによると、ノルウェーは紛争が起きているNATO非加盟国に武器を供与しないという従来の原則を転換した。【3月1日 共同】
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(ソ連・ロシアの軍事的脅威を真正面から受ける)フィンランドなどは、NATO非加盟で中立路線ということで、紺のウクライナの“モデル”ともされる国ですが、そのフィンランドも反ロシアを明確にしています。更にNATO加盟に向けた世論も高まっています。
****フィンランド、「NATO加盟希望」が初めて過半数に=世論調査****
フィンランド国民のうち、北大西洋条約機構(NATO)加盟を望むとの回答が初めて過半数となったことが、フィンランド国営放送YLEの委託で実施された調査で分かった。
調査は年齢、居住、性別を考慮して代表となる1382人の成人を対象に実施。誤差は2.5%ポイント。
その結果、回答者の53%がフィンランドはNATOに加盟すべきと回答。加盟すべきでないとの回答は28%、「未決定」が19%だった。
YLEによると、調査はロシアによるウクライナ侵攻前日に当たる2月23日に始めたという。
最大日刊紙ヘルシンギン・サノマットの委託で2年前に実施された調査では、加盟を望む回答は20%にとどまっていたが、約2週間前には43%と大幅に上昇していた。こうした調査結果は、国民の態度が急速に変化したことを示しているとみられている。【3月1日 ロイター】
調査は年齢、居住、性別を考慮して代表となる1382人の成人を対象に実施。誤差は2.5%ポイント。
その結果、回答者の53%がフィンランドはNATOに加盟すべきと回答。加盟すべきでないとの回答は28%、「未決定」が19%だった。
YLEによると、調査はロシアによるウクライナ侵攻前日に当たる2月23日に始めたという。
最大日刊紙ヘルシンギン・サノマットの委託で2年前に実施された調査では、加盟を望む回答は20%にとどまっていたが、約2週間前には43%と大幅に上昇していた。こうした調査結果は、国民の態度が急速に変化したことを示しているとみられている。【3月1日 ロイター】
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ほかにも・・・
“永世中立国スイスがEUの対ロ制裁導入、過去の方針転換”【3月1日】
“EU「タブーに踏み込む」覚悟でウクライナ支援 初の武器調達援助”【2月28日 毎日】
ロシアを敵視する勢力が迫るのを食い止めるため・・・と言いつつ、実際にやっていることはロシアの脅威を明らかにすることで、これまで中立的立場を維持していた国々を反ロシア、NATOへ追いやっているだけのように見えます。
こうした事態は侵攻以前から予想されたことで、だから(アメリカは盛んに煽っているけど)まともに考えたらロシア・プーチン大統領は何の特にもならない軍事侵攻はしないだろう・・・と私は思っていましたし、多くの者・国(パートナーの中国も)もそのように考えていました。
更には核兵器使用を示唆するような発言も。
そんなことで、「プーチン大統領、頭おかしいんじゃない?」といった話も。
****プーチン氏の精神状態を疑問視 米議員ら「何かおかしい」****
ウクライナに侵攻した上、核兵器運用部隊に高い警戒態勢への移行を命じたロシアのプーチン大統領の精神状態を疑問視する声が、米国内の有力議員らから出ている。権力者の健康問題はどの国にとっても最高機密で、米情報機関がどの程度正確に把握しているかは不明。
米上院情報特別委員会のルビオ上院議員はツイッターで「本当はもっとお話ししたいが、今言えるのは誰もが分かる通り、プーチン氏は何かがおかしいということだ」と指摘した。米メディアによれば、ルビオ氏はプーチン氏の精神状態について政府報告を受けている。【2月28日 共同】
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まあ、「おかしい」ことはないのでしょうが・・・ただ、前出のように決定的に思考が古臭く、その思考では現実がどうにも容認できないということなんでしょう。