孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ紛争  可視化された戦争 SNSでの“情報戦” 偽情報も ドローンの成果はロシアの慢心?

2022-03-03 22:17:12 | 欧州情勢
(ロシアのタス通信は2月21日、ロシア領内に侵入したウクライナ軍車両をロシア軍が破壊し、5人のウクライナ兵を殺害したと報道した。その後、この事件に関わったウクライナ兵がヘルメットに付けていたとされるカメラ映像がSNSで拡散した。

映像には、兵士と車両が移動している様子が映っている。ベリングキャットは、この映像で出てくる車両を「BTR70M」装甲兵員輸送車とみている。ウクライナ軍はBTR70Mを運用しておらず、ベリングキャットは「偽旗作戦」の可能性があると指摘する。【2月23日 日経】)

【可視化された戦争 一般市民によるSNS動画分析に注力する各国諜報機関】
戦争の在り様も時代とともに変化しますが、今回のロシア軍のウクライナ侵攻はSNSにアップされた一般市民による動画が戦闘の状況を世界中に知らしめる“可視化された戦争”という特徴があるようです。

ウクライナ政府もそうした動画アップを市民に要請し、各国情報機関もそうした一般市民のSNS動画を分析することに注力しているとか。

****ウクライナ侵攻で世界各国の諜報機関がSNSに齧り付いている…「こたつCIA」の驚くべき実情****
在日ウクライナ大使館の公式Twitterは2月24日、ロシア軍のミサイルがウクライナ国内の国際空港施設に命中し爆発する映像をリツイートした。
 
Twitterに動画を投稿した人物のアカウントには、博士課程の学生という経歴や、ロシアの外交や軍事学が専門、などと書かれている。動画については以下のような説明が付記されていた。
《伝えられるところによると、イヴァーノ=フランキーウシク国際空港を攻撃するクラブ巡航ミサイル》
 
担当記者が言う。「(中略)動画は縦長の画面で収録されており、スマホを使って撮影したと見られます」
戦況を示す動画や写真をSNSに投稿してほしいと、他ならぬウクライナ政府が市民に呼びかけている。(中略)
 
この戦争は「ウクライナ侵攻」や「ウクライナ紛争」などと呼ばれているが、「インターネットの実力を見せつけた戦争」として専門家は注目しているという。自衛隊の関係者が匿名を条件に取材に応じた。

「各国の軍関係者だけでなく諜報機関も、ウクライナ市民がTwitterやTikTokに投稿する動画や画像をチェックし、ロシア軍の動向を把握しています。誤解を恐れずに言えば、専門家の誰もが興奮しています。かつての戦争ならスパイが必死になって集めた情報が、今や自宅でスマートフォンを使って入手できるのです。諜報の専門家は『インターネットの発達により戦争の実相が変わる』と考えています」(中略)

今回のウクライナ侵攻では、インターネットが戦史に新たな1ページを書き加えたと言えるだろう。
「例えば2月17日、ロシア軍の戦車が貨物列車で輸送される動画がYouTubeに投稿されました。(中略)昔であれば目撃されたとしても、それを遠方へ伝える手段は電話や電報といったものに限られていました」(前出の自衛隊関係者)まして戦乱下では貴重な情報が他国どころか自国の中枢にすら届かないことも普通だった。

「ところが、今やスマートフォンとインターネットがあれば、一般市民がウクライナ国内どころか、全世界にロシア軍の動きを伝えることができるのです」(同・自衛隊関係者)
 
インターネットは戦乱に強いメディアであり、「核戦争にも耐えられる通信ネットワークとして誕生した」と解説されることがある。

可視化された戦争
しかし実際には、「核戦争うんぬん」は俗説だとされているようだ。
「核戦争を想定して開発されたという言説は嘘でも、インターネットが戦争や災害に強いことは間違いありません。ネットは一部が寸断されても、残りの部分で通信が続けられます。アメリカ3大ネットワークのCBSはインターネットを使って、キエフの自宅シェルターに隠れている女性にインタビューを行いました。まさにウクライナの現状が、ネットの強さを証明しているのです」(前出の記者)

1991年に起きた湾岸戦争では、CNNがイラクの首都バグダットの空襲を生中継し、世界に衝撃を与えた。しかし今は、スマートフォンさえあれば、誰もがCNN並みの情報配信能力を持っている。

「今回はウクライナ市民の多くがスマホを活用し、戦闘の様子やロシア軍の動きを投稿しているのです。これほど戦争が可視化される時代が来たのかと専門家は衝撃を受けています。ただ、陸戦だからという点は注意が必要でしょう。戦闘機や潜水艦での戦闘は依然として可視化は難しいものがあります。今回の戦争は主に陸上で起きているからこそ、ネットによって丸裸にされているのです」(前出の自衛隊関係者)(中略)

「こたつCIA」の実力
ロシア軍の状態についても、インターネット上の情報から推測することができる。
 
例えば、ウクライナ人がガス欠で止まったロシア軍の戦車の周囲にいる兵士に話しかけた動画が、今世界中に拡散。やはり3大ネットワークのABCがニュース番組で動画を放送した。

「道路で立ち往生している戦車を前に、ウクライナ人がロシア兵士に『自分たちの車で戦車をロシアまで牽引してあげようか』と冗談を言うと、兵士たちは笑っていました。専門家はロシア軍の士気がそれほど高くないことと、補給がうまくいっていない可能性を読み取るわけです」(同・自衛隊関係者)
 
インターネットで検索した情報を元に、極めて安易に書かれたネット記事を「こたつ記事」と呼ぶことがある。
現場での取材や調査もせず「コタツに入ったままでも書ける」記事という意味だが、今回のウクライナ侵攻では「こたつCIA」、「こたつ参謀本部」という様相を呈しているという。(中略)
 
フェイクニュース問題
(中略)実際の戦争だけでなく情報戦も熾烈を極めている。当然ながら、SNSに投稿されている動画や画像には虚偽のものも少なくない。

「各国の諜報機関も、SNSの投稿を『これは事実なのか、フェイクなのか』という調査は徹底して行っているようです。まずは専門家がアカウントを追跡します。すると、ロシア側と思われる人物が偽装して作ったアカウントだと判明することがあるそうです」(同・自衛隊関係者)

更に今回、アメリカは衛星写真など、本来であれば国家機密級の情報を積極的に公開している。
「ロシアに『こちらは全てを知っているぞ』と牽制するためですが、衛星写真はその他の諜報機関にとって、Twitterの投稿が事実かフェイクかを判別するのに最高の判断材料だと言えます。投稿された動画に映り込んだランドマークや地形と衛星写真を整合することで、本当に撮影された場所にいる可能性が高いか低いか、判別することができるからです。軍関係者だけでなく、一般市民ですら、そうした整合作業を行いフェイクを拡散しないように気をつけています」(同・自衛隊関係者)

こたつ「OSINT」の威力
ネット上で検索をすると、結果を検索エンジンなどが記憶し、次の検索に活用しようとする。例えばAmazonで太宰治の小説を検索すると、それ以降、太宰の多作品が収録された文庫などが「お勧め」として表示された経験は誰にもあるだろう。

「同じことが諜報機関でも起きているのです。専門的な知識を持つプロがウクライナ国民によって投稿された動画や画像をSNSで検索すると、それを人工知能(AI)が覚えてくれるのです。後は勝手に『こんな動画もあります、こんな画像もあります』とAIが教えてくれます。諜報に詳しい関係者は『検索の手間すらありません』と苦笑していました」(同・自衛隊関係者)

もともと諜報の分野では、「オープン・ソース・インテリジェンス(OSINT)」という手法が知られている。
「スパイや諜報機関と聞くと、007のように敵の心臓部に接近し、極秘情報を入手するというイメージが浮かびます。それは決して嘘ではありませんが、敵国が公にしている経済統計などを精査するだけでも、重要な情報は得られるのです。それがOSINTという手法です。

今回、ウクライナ侵攻によりSNSで起きていることは、OSINTに有益な情報がネット上にごろごろ転がっているという事実です。諜報の歴史が変わっている瞬間に、私たちは立ち会っていると言えます」【3月3日 デイリー新潮】
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【SNSが主戦場となる“情報戦” 意図的に流されるフェイクや情報統制も】
現代の戦争は、ロシア・プーチン大統領が得意とされる(正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせた)ハイブリッド戦争が主流になってきているように、“情報戦”が重要な要素となっており、動画に限らずSNSはその主戦場ともなっています。

ただ、上記記事にもあったように、攪乱のために意図的に流されるフェイクもありますので、真偽の見分けが必要になります。

また、そうした“情報戦”に対し情報統制を強化する・・・といった対応もとられます。

****ロシアとウクライナの“情報戦” 戦闘の特徴はSNSを多用した情報発信****
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、長期化の様相も見せ始めていますが、SNSを多用した市民らの情報発信が、今回の戦闘の1つの特徴となっています。

一方、ロシア側からはこれを制限する動きも出ていて、SNSを舞台にした新たな戦争という一面もみえてきました。(中略)

■SNSなどを使った情報発信が多用
今回の戦闘の特徴の1つには、SNSなどを使った情報発信が多用されているという点が挙げられます。例えば、ウクライナのゼレンスキー大統領も自らのSNSに声明の動画を何度もアップして、国民への団結や国際社会への支援を呼びかけています。(中略)

ゼレンスキー大統領は、ロシア軍が士気を喪失していて、食料や安心感も得られていないと主張しています。1週間で約9000人のロシア兵が亡くなったことを動画で明かしました。

一方で、ロシア国防省が発表しているこれまでのロシア軍の死者は498人です。双方の出している数字が全く食い違っていて、これも情報戦の1つとみられています。

特にウクライナ側にとって、こうしたSNSの発信は、1つの武器となっているとみられています。実際、軍事侵攻の直後にロシア側が「ゼレンスキー大統領は、すでに首都・キエフから逃げて別の場所にいる」などの情報を流すと、すかさずゼレンスキー大統領は、自らがキエフにいることを示す動画を掲載し、ロシア側の言い分をきっぱりと否定しました。SNSを有効に活用することで、国民の信頼を維持し、団結力を高めることにつながっています。

また、一般のウクライナ市民もSNSで次々と動画や情報を世界に向けて発信しています。
ウクライナの市民らがロシア軍の車列に対し、「ロシアに帰れ!」などと叫びながら、身を挺して押し戻そうしている動画や、大勢の市民が高速道路を埋め尽くし、ロシア軍の行く手を阻もうとしている動画も掲載されています。

こうした動画が発信されることで、欧米メディアだけでは伝えきれない現地の様子を知る手がかりにはなっています。

■自国に有利な情報だけが、一方的に流される恐れも
一方で、(軍事ジャーナリストの)黒井さんによると、ウクライナ軍側は自分たちの軍に被害が出ている映像は、兵士や市民の士気に関わるので、情報統制して出さないようにしているということです。

ロシア側にとっては、このような動画は好ましくないので、サイバー攻撃や通信を遮断するのではないかと思われていましたが、これまでのところ、そのようなことは行っていないということです。SNSを一部制限するくらいにとどめています。

これについて黒井さんによると「ロシア側は短期決戦でウクライナを制圧できるとタカを括っていたので、準備していなかったのではないか」ということです。それだけウクライナを甘くみていた可能性があると話しています。

ただ、ロイター通信によりますと「ロシアが独立系報道機関を遮断し、ロシア人がウクライナ侵攻のニュースを知ることができないようにした」ということです。

そして、ロシアが「言論の自由と真実に対する全面戦争」を開始したとアメリカが非難したとしています。さらにロシア政府は、ツイッター、フェイスブックなどのSNSも遮断したとアメリカ国務省が発表したことも明かしました。ウクライナの状況は、ロシア国民にますます伝わりにくくなっているようです。

SNSを通じた様々な発信は、メディアが伝えきれない現地の実情を知ることができるという意味では、有用な面もありますが、一方で、政府や軍が情報を統制している場合も多く、自国に有利な情報だけが、一方的に流される恐れもあります。

情報を受け取る側は、そうしたことも十分に理解した上で、情報と向き合うことが重要です。
(3月3日午後4時30分ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)【3月3日 日テレNEWS24】
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【戦術的に注目されるドローン・・・って、ロシアは対策をとっていなかったのか?】
「ロシア側は短期決戦でウクライナを制圧できるとタカを括っていたので、準備していなかったのではないか」・・・・もうひとつの今回戦闘の特徴と指摘されるドローンについても言えるようです。

戦術的にこれからの戦闘においてドローンが重要な役割を果たす・・・ということは、時に先のアゼルバイジャンとアルメニアの紛争で、トルコ及びイスラエル製のドローンを多用したアゼルバイジャンがロシア製兵器に勝るアルメニア軍を大破していらい再三指摘されており、実際にリビアでも、イエメンでもドローンが使用されています。

****ウクライナでロシア軍の進軍を止めたのは模型飛行機を思わせるようなドローンだった**** 
「ドローン攻撃の成功が、ロシアの誤算を暴露」
ウクライナに侵攻したロシア軍が想定外の抵抗にあって作戦変更も余儀なくされているようだが、その抵抗で活躍しているのが模型飛行機を思わせるようなドローンだった。

「ウクライナのドローン攻撃の成功が、ロシアの誤算を暴露したと専門家は言う」
米国の軍事専門情報サイト「ミリタリー・タイムズ」に2日、こういう見出しの分析記事が掲載された。

それによると、ウクライナ側はロシア軍の侵攻に対してドローン攻撃を積極的に行なっており、戦闘開始当初だけでも32両の戦闘車両を破壊したという。

また、ドローンはロシア軍の地対空ミサイル基地を爆撃したり兵站の車列を攻撃し、その映像はSNSで拡散されて、ロシア軍に対するウクライナの抵抗を世界にPRするのに活用されている。

27日にウクライナ軍が公表した映像は、ミサイルであろう電信柱のような筒状の物体4本を積んだトラックの車列をドローンのカメラが捉え、縦横の照準線が交差するとそのトラックが爆発し炎上する。映像は同時に歓声が上がるのも収録しており、おそらくはドローンの管制画面をスマホで撮影したもののようだった。

トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」
そのウクライナのドローンはトルコ製の「バイラクタルTB2」で、全幅12メートル、全長6.5メートル、機尾のプロペラを100馬力のガソリンエンジンで回して飛行する。

米国のドローンのように衛星を使って制御する贅沢を避けて、GPSを活用した自律的なシステムで飛行させるが、それでも300キロ前後の範囲で運用できるという。

言ってみれば、ラジコンの模型飛行機を思わせるような機体なのだが、4発のレーザー誘導ミサイルなどを搭載することができる。

2014年に初飛行し、トルコ軍を始めカタールやアゼルバイジャンにも輸出されたが、ウクライナは2019年と20年に計18機を輸入し、その後48機を追加発注したと伝えられていた。

ロシア軍は今回の侵攻にあたってまず制空権を支配するために、空軍基地をミサイル攻撃したがドローンの基地までを破壊しつくせなかったようだ。おそらくは「バイラクタルTB2」が比較的小型なので空爆に耐える施設に移動し、トラックに搭載できる管制設備と共に隠蔽できたのではないかと考えられる。

そしてロシアの地上軍の侵攻が始まると空から攻撃を開始し、ロシア側が目論んだ「制空権」を渡さないでいるようだ。

ロシア側にとっての“最大の教訓”
米国防総省は、首都キエフへ向かって長さ40マイル(約64キロ)のロシア軍の車列が立ち往生しているようだと明らかにしていたが、こうした車列はドローンにとって格好の標的だろう。

ロシアとて、ウクライナ軍がドローンを装備していることを知らなかったわけがない。しかし、その飛行を妨害するような電子装置などを活用した様子はない。

「ロシア側にとっての最大の教訓」は、「バイラクタルTB2」のように低空、低速で侵入してくるドローンに対しては「旧式の対空兵器」が有効なのに、今回は高速で高高度から攻撃してくるジェット戦闘機を捕捉する「最新鋭の対空兵器」で対応できると考えたことだろう」

「ミリタリー・タイムズ」の記事はこう結論づけており、今回のウクライナ危機は各国の兵器運用にも示唆を与えることになったようだ。【3月3日 木村太郎氏 FNNプライムオンライン】
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しかし、先述のように“これからの戦闘はドローンが・・・”というのは、私のようなド素人の門外漢すらこれまで再三ブログで取り上げたきた“一般人的な常識”だと思っていましたので、そのドローンが反政府勢力とか装備の貧困な軍隊ではなくロシア正規軍相手にまた活躍・・・というのは信じがたいところも。

ドローンは速度が遅いとか電子攪乱でコントロールできなくなくなるなどの大きな弱点もある兵器で、上記記事にもあるように対応策をとることもできます。ましてや、アルメニア軍がドローンに大破されたのはロシア製兵器です。

当然に世界最強レベルのロシア軍は対策をとってくるであろうから、ウクライナが数十機レベルのドローンを持っていたところで「そうそう柳の下にドジョウは何匹もいないだろう・・・」と思っていました。

上記記事が本当だとしたらドジョウは何匹もいたようで。というか、ロシアの“慢心”“驕り”でしょうか。それとも、ロシア正規軍をもってしてもドローン攻撃は防ぎきれない?

もっとも、日本・自衛隊のドローン対応は世界から“周回遅れ”状態とも聞きますので、ロシア軍の対応を云々できる立場にないかも。

コメント
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