孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  ロシア産石油を格安購入? 本当に「重要な価値観を共有する」のか?

2022-03-15 23:22:45 | 南アジア(インド)
(インド・ニューデリーで握手するモディ首相(右)とロシアのプーチン大統領=2021年12月6日【2月24日 産経】 もちろん、にこやかに握手しているからどうこうという話ではありませんが・・・)

【「対ロシア関係を損なわないよう十分気を遣っている」インド外交の“したたかさ”】
従来非同盟主義を外交の基本姿勢としてきたインドは、近年日本やオーストラリアとともにクアッドに参加し、アメリカ主導の対中国戦略の一翼を担う形になっています。

しかし、国連安全保障理事会が2月25日、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、即時撤退を求めるアメリカ主導の決議案を採決した際(ロシアが拒否権を行使し否決)、理事国15カ国中、米欧など11カ国が賛成する一方で、インドは中国、アラブ首長国連邦(UAE)とともに棄権しました。

ロシア批判を避けたインドが、ロシア製武器に大きく頼るなど、ロシアと強い関係があることは2月27日ブログ“ウクライナ危機  安保理でロシア非難決議を棄権したインド・UAEの事情”でも取り上げました。

その後の3月2日、国連総会の緊急特別会合においてウクライナ情勢に関しロシアの侵攻を糾弾し、ロシア軍部隊の即時撤退を求める決議案が圧倒的賛成多数で採択された際も、インドは中国同様に棄権しています。

アメリカ・バイデン大統領はこうしたインドを中国と並べて名指しして牽制しています。

****ロシア非難決議棄権の中国とインド 米大統領が名指しでけん制****
バイデン米大統領は2日、中西部ウィスコンシン州で演説し、ロシアのウクライナ侵攻を非難する決議が国連総会で採択されたことに関して「プーチン(ロシア大統領)を非難する決議に141カ国が賛成した。中国は棄権した。インドも棄権した。彼らは孤立している」と中印両国を名指しでけん制した。

ウクライナ情勢を巡って、中国やインドは関係が深いロシアへの非難を避けている。バイデン氏は侵攻開始直後の2月24日に「インドとは対応を協議している。完全には解決していない」と記者団に語っていた。
 
米印両国は今年前半に日本、オーストラリアとの4カ国(クアッド)首脳会議を日本で開く予定になっているが、ウクライナ情勢を巡るインドと他の3カ国との温度差が課題になりそうだ。【3月3日 毎日】
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こうした「対ロシア関係を損なわないよう十分気を遣っている」インド外交の“したたかさ”について、以下のようにも。

****ウクライナ危機で垣間見えるインドの「したたか外交」=「非同盟」から積極的な全方位外交へ****
ウクライナ危機をめぐりインドはロシアとの友好関係維持に努める一方、対露非難で共同歩調を迫る米国にも巧みに対応するなど、独自のバランス外交を展開している。

◆「対露関係に十分な気遣い」
周知の通り3月2日、国連総会の緊急特別会合はウクライナ情勢に関しロシアの侵攻を糾弾し、軍部隊の即時撤退を求める決議案を圧倒的賛成多数で採択した。これより先、2月末の安保理では同様の対露非難決議案がロシアの拒否権行使で否決された。いずれの場合もインドは中国同様、採決に際し棄権した。

ロシアの侵攻にインドが表立って反対を表明しない理由について、同国にとってロシアが最大の武器供給国であるためとの多くの指摘があるが、その通りだろう。

実はもう一つの理由もある。インドとパキスタンの根本的対立点であるカシミール地方の領有権問題でロシアがインドを支持していることも見逃せない。

プーチン露大統領は昨年12月、ニューデリーでモディ印首相と首脳会談を行い、軍事技術支援を柱とする幅広い分野での協力強化で合意しており、国連外交の舞台でも双方の協力が裏付けられた形だ。

インドの対外貿易を研究するジャワハルラール・ネルー大のビスワジット・ダール教授が現地メディアに語ったところによれば、モディ政権は欧米の制裁によるロシアへの影響を軽減するため、印露間の貿易決済をインドのルピーとロシアのルーブルで行うことを検討しているという。

「非同盟」外交を唱えながらも、しばしばロシア寄りの姿勢を見せてきたインドは「対露関係を損なわないよう十分気を遣っている」(日本のインド問題専門家)との見方は的を射たものと言えよう。

◆「インドの重要性」を盾に米の圧力かわす
その一方、インドが米中対立が続く国際環境を利用して自国の国益確保を図ろうとする意図も見え隠れする。

国連を舞台とする対ロシア包囲網の形成に向けバイデン米政権がインドに圧力を加えたのは確か。「ヒンドゥスタン・タイムズ」などインド有力メディアの報道によれば、米国務省は国連総会と安保理のロシア非難決議採決に際し、米国と足並みを揃えるようインド外務省に強く迫ったという。

これに関し駐ニューデリー外交筋は「モディ政権はインド太平洋地域での中国の台頭に対抗する上でインドの重要性を力説し、米国の理解を得たようだ」と語っている。

インドが「日米豪印戦略対話」(クワッド)のメンバーである点を考えれば、バイデン政権がインドの言い分を無視できなかったことは納得がいく。

米国務省のプライス報道官は国連総会決議後の記者会見で「インドとは重要な価値観を共有する」と強調するとともに「インドとロシアの関係が米露関係とは異なることは承知している」と述べ、インドの投票行動への批判を避けている。

米国のインド重視は他にもうかがえる。中国との国境紛争を抱えるインドは対中防衛を強化するため、ロシアから地対空ミサイルシステム「S400」の導入を進めているが、米国は同じシステムを配備したトルコには制裁を科したものの、インドに対しては制裁を控えている。

欧米の軍事情報メディアによれば、インドは米国との間で最新鋭の無人機の導入について交渉を行っており、この無人機がインドに供給されれば、北大西洋条約機構(NATO)加盟国以外では初めてのケースになるという。

◆中東や中央アジア諸国との外交促進
最近のインド外交について多くのインド専門家の間では「歴史的な非同盟主義から、より積極的な全方位外交へと変わりつつある」(米有力シンクタンクの南西アジア専門家)との見方が有力だ。
事実、インドはこれまで比較的関係が疎遠だった中東や中央アジア諸国との外交促進に乗り出している。

対露関係に関しても、前述の駐ニューデリー外交筋は「将来的には見直しの可能性がある」とみる。同筋によれば、インドの宿敵パキスタンとロシアとの関係が今後強まるなら、インドの“ロシア離れ”が始まることが考えられるという。

この点で注目されるのは、パキスタンのカーン首相が2月末モスクワを訪問し、プーチン大統領と会談したこと。パキスタン首相の訪ロは23年ぶりで、両首脳はエネルギー分野を中心に二国間協力について話し合ったと伝えられる。ロシアのウクライナ侵攻直後、パキスタンはロシアから小麦と天然ガスを購入すると発表した。

◆親露路線見直しも
インドの“ロシア離れ”を促すもう一つの要因として、最近の中露関係の緊密化を挙げる向きもある。中国はパキスタンにとって最大の武器供与国であるうえ、印パ間のカシミール紛争ではパキスタン支持を表明している。

その中国が対印戦略の一環としてロシアと一緒になってパキスタンを軍事・外交面で後押しするようになれば、インドがロシアとの関係を見直すのは当然だろう。

日本にとってインド外交の行方は「クアッド」の絡みからも極めて重要。今月にも予定されるという岸田首相のインド訪問は同国がどこに向かうのかを見極める大切な機会なりそうだ。【3月8日 山崎真二氏「アジアの窓」編集委員 レコードチャイナ】
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【インドを“特別扱い”するアメリカ】
アメリカが対中国戦略の重要パートナーとしてインドを優遇、見方によっては“特別扱い”していることはわかります。

ロシアから地対空ミサイルシステム「S400」の導入を進めてもインドは制裁を受けていないこともありますが、インドへのアメリカの二重基準は以前からのものでもあります。

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原子力関連技術の輸出管理にあたる原子力供給国グループ(NSG)は08年9月6日に、核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドを例外として扱い、原子炉や核燃料の対印輸出を解禁することを、日本など加盟45か国の全会一致で承認しました。

台頭する中国を牽制すべく、インドとの関係を重視し、インドの経済成長を支援するアメリカ・ブッシュ政権がインドと締結した民生用原子力協定を実現するため、インドのみを例外とする「二重基準」に反対する国々を押し切っての承認でした。【2010年6月28日ブログ“
空洞化が進む核拡散防止条約(NPT)体制”】
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【インドと本当に「重要な価値観を共有する」のか?】
そうしたアメリカのインド優遇には、単に力のバランスや経済的メリットだけでなく、「インドとは重要な価値観を共有する」という前提があると思いますが、今回のインドのウクライナ紛争への対応を見ると、「本当に重要な価値観を共有しているのだろうか?」という疑問も。

***インド、ロシア産原油輸出の受け皿に?=関係深い「戦略パートナー」―報道****
ロイター通信は14日、複数のインド政府当局者の話として、ロシアがインドに対し自国産原油を割安な価格で売却することを持ち掛け、インド側が購入を検討していると報じた。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う対ロ経済制裁への抵触を恐れ、国際的にロシア産原油の買い控えが進む中、ロシアと友好関係にあるインドが原油輸出の受け皿となる可能性がある。
 
ロイターによると、インド政府当局者は「ロシアが大幅な割引価格で原油などの取引を提示している」と述べた。米ドルでの決済に制限がかかる恐れが出る中、インド・ルピーとルーブルでの決済も検討しているとされる。
 
インドは冷戦下で「非同盟」の外交方針を取ったため、西側諸国から武器を購入できず、旧ソ連との関係を深めた経緯がある。現在もインド軍兵器の約6割はロシア製とされる。
 
インドは現在、ロシアを「特別で特権的な戦略パートナー」と位置付けており、両国首脳はほぼ毎年、相互に相手国を訪問、友好を深めている。昨年12月にはプーチン氏が訪印、軍事協力強化などで一致した。【3月15日 時事】 
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“インドは原油の8割を輸入に頼っており、ロシアは2〜3%を占める。”【3月15日 読売】とのこと。
“欧米の制裁を受け、ロシア産原油の輸入に慎重な姿勢を示す国や企業が相次ぐ中、インドが実際に購入すれば、制裁の抜け穴になる恐れがある。”【同上】

国連でのロシア非難決議に棄権するだけならまだしも、ロシア制裁の抜け穴ともなるロシア産石油を格安で購入するという話になると、「本当に重要な価値観を共有しているのだろうか?」という疑問がわく次第です。

特に、しばしばこのグログでも取り上げるようにヒンズー至上主義を進めるモディ政権の国内統治の在り様を見ると、そういう感も強まります。

まあ、アメリカ・トランプ前政権と日本が「重要な価値観を共有している」とみなせるなら、インドも・・・ということでしょうか。

【勘弁してほしいインド軍の杜撰さ】
ついでに言えば、インドという国、とても杜撰。
インドの宿敵はパキスタンで、両国とも核保有国ですが、そのパキスタンに「誤って」ミサイルを撃ち込むという信じがたいミスが。

****パキスタンにミサイル誤射 インドが発表****
インド国防省は11日、同国軍が誤って隣国パキスタンに向けミサイルを発射したと発表し、「深い遺憾の意」を示した。
 
同省は、10日の定期点検の際、「技術的な誤作動」によりミサイルが誤って発射されたと説明。ミサイルの種類は明かさなかったが、パキスタン領内に着弾したとした。

誤射について「深い遺憾の意」を示し、「人命が奪われなかったことに安堵(あんど)」していると述べたが、AFPの問い合わせに対しそれ以上の情報は明らかにしなかった。
 
パキスタン外務省はこれに先立ち、「インド発の『超音速飛翔(ひしょう)体』による一方的な領空侵犯」があったと非難。駐パキスタン・インド臨時代理大使を同省に呼び出し、「強く抗議」したと説明していた。
 
ヒンズー教徒が人口の多数を占めるインドとイスラム教国のパキスタンは、1947年に英国の植民地支配から独立して以来、3回の戦争を行い、うち2回は両国が領有を主張するカシミール地方をめぐって争った。 【3月12日 AFP】********************

“爆発物を積んでいなかったとみられ”【3月11日 共同】負傷者も出なかったからよかったものの、そうでなかったら・・・「技術的な誤作動」ではすまない核保有国間の大問題にもなります。


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