孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  「人権は存在しない」」「女性の存在は消されている」 鈍い国際社会の対応

2022-09-14 23:27:05 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタン東部ナンガルハル州で、水が入った容器を運ぶ少女(2022年9月11日撮影)【9月13日 AFP】)

【「監視と弾圧はかつての政権と同じで、本質は変わっていない」】
これまでも再三再四取り上げているアフガニスタン・タリバンによる弾圧、特に女性に関する問題。
「またか」と言われそうですが、最近でも連日のように報じられており、事態が一向に改善しない状況がうかがわれます。

9月8日で、タリバン暫定政権が始動してから1年となりましたが、タリバン統治が旧政権時代と本質的に変わっていないことが次第に明らかになっています。

****マーライオンの目 タリバン「穏健路線」の嘘****
「日本は米国の仲間だろう」。イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握して1年が過ぎたアフガニスタンを訪れた。首都カブールで取材中、タリバン戦闘員にこう詰め寄られ、カメラ内のデータの削除を求められた。目を離した隙にカメラからSDカードを抜いて隠し、その場は何とか切り抜けたが、厳しい監視の一端がうかがい知れた。

カブールなど各都市で目についたのは街中にあふれる戦闘員だ。「治安維持」を名目に監視を行い、米軍で勤務した人物らへの弾圧を展開している。

タリバンは昨年8月の首都制圧後、旧タリバン政権(1996〜2001年)が実施した公開処刑など恐怖政治を、表向きは行っていない。「穏健路線」をアピールしている形だが、実態は違う。取材に応じた音楽家や女性活動家は「監視と弾圧はかつての政権と同じで、本質は変わっていない」と異口同音に語った。

タリバン支配が固定化する一方、急速に拡大する貧困に対してタリバン上層部は有効な解決策を持たない。国内では国際社会の目がウクライナ情勢などに向き、アフガンの注目度が下がっていることに懸念の声が上がっている。「アフガン国民にとって地獄は、むしろこれからだ。世界はアフガンを見捨てないでほしい」。音楽家の男性の言葉が胸に響いた。【9月14日 産経】
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****タリバン、報道弾圧を強化 国外移転しネットで対抗****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が始動してから8日で1年となった。

暫定政権は記者の拘束や検閲を通じて報道への弾圧を強め、既存メディアの弱体化が指摘される。国際社会の制裁による経済危機の影響もあり、この1年で記者の人数は約6割減少。国外に拠点を移し、インターネットの自社サイトで政権批判を続けて対抗する地元紙も出ている。
 
タリバンは既存メディアに対し、報道の自由を認める一方、イスラム法の尊重と国益保護を要求。政権の動向や治安に関する報道は情報文化省からの事前許可が必要で、事実上の検閲が横行している。【9月8日 共同】
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【懸念される女性への暴力、教育打ち切り】
連日の女性問題に関する報道をいくつか。

****アフガン女性、タリバン幹部によるレイプ・強制結婚を告発****
アフガニスタンの女性が、イスラム主義組織タリバンの幹部から暴行やレイプを受け、強制的に結婚させられたと訴える動画をネットに投稿した。この幹部は女性の主張を否定している。
 
動画が投稿されたのは先月30日。エラハと名乗る女性が、内務省で報道官を務めたサイード・ホスティ氏から性的暴行を受けたと主張している。ヒジャブをかぶったエラハさんは20代半ばとみられ、カブール大学の医学生だと述べている。
 
ホスティ氏は、エラハさんとは「合意に基づき結婚」し、その後離婚したとしている。
これまでに、双方の主張がソーシャルメディアで数千回共有されている。アフガニスタンで、タリバン構成員による性的暴行の告発や、特定個人の詳細が流布するのはまれ。
 
エラハさんは動画で「2月に、内務省報道官だったサイード・ホスティに内務省の建物内で強制的に結婚させられた」「殴られ、レイプされた。どうしたらいいか分からなかった」と涙ながらに語った。2人が知り合った経緯には触れていない。
 
アフガニスタン軍幹部の娘だというエラハさんは逃亡を試みたが、パキスタンと国境を接するトルカムで拘束され、首都カブールの刑務所に入れられた。ホスティ氏から謝罪を求められ、拒否すると殴られたという。
 
エラハさんがこの動画をどこから投稿し、現在どこにいるのかは不明。
 
ホスティ氏はツイッターでエラハさんの訴えを否定。「彼女には信仰に関する問題がいくつかあった。話し合いや助言を通じて矯正を試みたが、駄目だった」と主張した。
 
また、エラハさんが望むなら自分を訴えることもできるとし、「イスラム首長国のムジャヒディン(イスラム戦士)と国民に謝罪する。神のお許しを」と続けた。
 
タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は昨年、「強制や圧力によって女性に結婚を無理強いした」場合、厳しい措置を取るよう命じている。 【9月2日 AFP】AFPBB News
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エラハさんによると、女性の権利を訴えるデモに関与したとして拘束された際に警察署を訪れていたタリバン高官に目をつけられ、強制的に結婚させられたとのこと。

人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、9月1日、声明で「タリバンの役人が強制結婚やレイプ、暴行、脅迫行為を行っていたとしても、驚くことではない」とした上で、エラハさんの所在と健康状態について緊急に調査する必要があると訴えています。【9月3日 日テレNEWS24より】

常に問題となる女子教育。

****再開の女子中等教育打ち切り タリバン、生徒が抗議****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は10日、東部パクティア州で部族長らが独自の判断で再開していた女子中等教育(日本の中学・高校に相当)を打ち切った。女子生徒らは抗議し再開を訴えた。地元メディアが報じた。
 
暫定政権は女子教育の尊重を主張する一方で、女子中等教育の全面再開を拒んでいる。国際社会からの批判は強く、今回の打ち切りはさらなる波紋を呼びそうだ。
 
女子生徒らは10日、学校に入ることが許されず、数十人がデモ行進。生徒の1人は地元メディアに「とてもショックだった」と語った。【9月11日 共同】
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カルザイ元大統領も11日、タリバンに対し女子高校を再開するよう求めるとともに、東部パクティア州で女子学生らが学校閉鎖に抗議行動を行っていると住民が伝えている件を称賛しています。

カルザイ元大統領の現在の政治的影響力についてはよく知りませんが、タリバンとは同じパシュトゥン人ということもあって比較的対話・協調も可能な立ち位置で、上から目線でアフガニスタンの権利・独自性を認めず武力掃討中心のアメリカとはそりが合わないところもありました。(アメリカにすれば、カルザイ氏こそは腐敗・汚職・非効率の中心にいるということになりますが)

昨年末もCNNインタビューで“、国際社会はますます緊要となっている援助をアフガニスタンの人々に届けることを優先し、今のところタリバンへの不信感は棚上げにする必要がある”と語っています。

****カルザイ元アフガン大統領、女子高校再開をタリバンに要請****
アフガニスタンのカルザイ元大統領は11日、実権を掌握しているイスラム主義組織タリバンに対し、女子高校を再開するよう求めるとともに、東部パクティア州で女子学生らが学校閉鎖に抗議行動を行っていると住民が伝えている件を称賛した。

カルザイ氏はツイッターで「パクティア州の女子学生たちの声はアフガニスタンの全女子の声であり、全アフガニスタン人の声だ。われわれは暫定政権に対し学校再開を要請する」と投稿した。

タリバンは3月、女子校再開の公約を突然撤回した。パクティア州当局は女子高校を再開したと発表したが、公式に承認されていない。【9月12日 ロイター】
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【アフガニスタンの女性は「家の中の囚人」へ 西側からの動きはないに等しい】
カルザイ元大統領、逃亡したガニ前大統領時代のアフガニスタン政府が十分に女性の権利を保護した訳でもありませんが、それでも少しずつ前進していた女性の地位・権利はタリバン復活で「無」に帰することにもなっています。

****20年間の進歩と希望は「無」に帰した──アフガン女性たちの地獄****
<タリバン復権から1年がたち世界の関心が薄まるアフガニスタンだが、この国に生きる女性たちには再び暗黒の時代が訪れている>
最後の駐留米軍がアフガニスタンを去り、イスラム主義勢力タリバンが政権を掌握してから丸1年。アフガニスタンの貧困、特に女性や少女に対する厳しい抑圧、そして国際的孤立は悪化の一途をたどっている。

アフガニスタンの政治家で人権活動家のアズラ・ジャファリは、2004年に採択された憲法の起草に参加した唯一の女性であり、同国で女性初の市長になった人物だ。今、亡命先のアメリカから祖国の現状を見つめつつ、絶望感を募らせている。

「私たちは20年間、民主主義を機能させていた。この20年間、私たちは希望に満ちていた」とジャファリは本誌に語った。「今や何も残っていない。私たちが20年間取り組んできたものは無に帰してしまった」

当初はあたかも穏健化したかのようなふりをしていたタリバンだが、政権を掌握してからというもの、女性や少女が学校や自宅外の多くの職場に行くことを禁じている。女性たちの着るものや発言、行動は厳しく制限されている。恣意的な逮捕や失踪、拷問や殺害といった人権侵害に遭う例は男女問わず多い。

アメリカとその同盟国が足並みをそろえて外圧をかけない限り、何も変わらないだろうとジャファリは言う。
「アフガニスタンに、タリバンを制御できる集団は存在しないと思う」と彼女は言う。「タリバンが自らイデオロギーを変えることはないだろうから、国際社会は(外圧のための)行動計画を立てる必要がある」。

だがこれまでのところ、女性の権利侵害に対する非難声明を除けば、西側からの動きはないに等しいと彼女は言う。(中略)

悲惨な拷問の末に殺害されたハザラ人女性
国連によれば4月、タリバンは助産師の女性を拷問し殺害した。彼女は両足を切断され、刃物で刺され、12発も弾丸を撃ち込まれた。女でハザラ人だからというのが理由だった。

タリバン政権崩壊後、学校に通う女性や少女の数、そして女性が経営する事業所の数は増加した。下院議員の定員のうち27%は女性に割り当てられた。

タリバン政権下では女性はなかなか医療を受けることができなかったが、新政府は女性が診察を受けられる医療施設を3000カ所以上、建設した。新生児の死亡率は減少し、ブルッキングス研究所によれば女性の平均寿命は01年の56歳から17年には66歳へと大幅に伸びた。
ただし、女性の地位に対する古い考え方は国中に深く根を張っていた。農村部の女性は都市部の女性ほど自由を手にできなかった。

それでも女性の生活はいいほうへと大きく変わった。この進歩はタリバンの復権がなければ続いていただろうとジャファリは考える。だが今は「女性が完全に社会から切り離されてしまう」という彼女の危惧が現実のものになりそうな状況だ。

うわべだけだったタリバンの融和姿勢
1年前、米軍が混乱のうちに撤退した直後、タリバン政権は表向きは融和的な姿勢を見せていた。ザビフラ・ムジャヒド報道官も、女性に対する差別のない、全ての人に平等な政権だとアピールしていた。「シャリーア(イスラム法)の枠内で」とか「われわれの文化の枠内で」というただし書きは忘れなかったが。

それはつまり、大半の女性が働くことを禁じられるという意味だ。これでは女性の稼ぎで生活している家族は貧困に突き落とされてしまう。

さらに、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、この国は財政危機に瀕しているため、働いている女性も適切な賃金が支払われない場合がある。なんとか働き続けていても、厳しい服装規定を守らなければ解雇される。

タリバンは公式声明で、女性は家の中にいればいいと忠告している。「ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭髪を覆うスカーフ)に従っているという最も分かりやすい印は、家から出ないこと」だからだ。

家の外では女性は顔を覆わなければならず、地域によっては親族の男性が同伴しなければならない。女性が服装規定に違反すると、親族の男性が罰金や懲役を科される。国連によると女性の10人に9人がドメスティックバイオレンス(DV)を経験している国では、こうした状況は暴力を助長しかねない。

今年3月、タリバンは制服がイスラム文化に従っていないとして、女子中高生(7年生以上)の通学再開を当日になって撤回した。

アフガニスタンの女性は「家の中の囚人」だと、HRWの女性の権利局暫定共同局長ヘザー・バーは言う。バーは今年1月に、女性と少女が直面している危機は「終わりが見えないままエスカレートしている」と警告し、タリバンの政策が、この国から「最も貴重な資源」の1つを奪っていると指摘した。

アフガニスタンは今、あらゆる資源を必要としている。この1年で経済は崩壊した。タリバンが再び権力を握った直後に、欧米諸国はアフガニスタン中央銀行の国外資産90億ドル以上を凍結した。タリバン幹部への制裁はインフレを加速させ、基本的な生活必需品の価格が高騰している。多くの家庭が生活のために財産の大部分を売り払い、若い娘を金と引き換えに見合い結婚させている。

「10代の少女の大半は今も学校に戻ることが許されず、児童婚のリスクがさらに高まっている」と、ヘンリエッタ・フォアはユニセフ(国連児童基金)の事務局長を務めていた21年11月に声明で述べている。「教育は、児童婚や児童労働のような負の対処方法から子供を守る最善の手段になることが多い」(中略)

「女性はあらゆる意味でタリバンの囚人だ」
タリバンは変わるつもりがないと分かって人々は「絶望」していると、(タリバン復権まで首都カブールでジャーナリストとして働いていた)レザエイは言う。アフガニスタンから発信される前向きなニュースはどれも、タリバンが国際社会の機嫌を取ろうとしているだけだと、彼女は警告する。「女性はあらゆる意味でタリバンの囚人だ」

市長を5年間務めたジャファリは、地元で「ミスター市長」と呼ばれることを誇りに思っている。彼女もレザエイと同じように、国際社会の関心がウクライナに移りつつあることを痛感している。「悲惨な状況だ、変わるといいねと、みんなが言う。みんなが黙っているのに、どうすれば変わるというのか」

経済制裁が続くことはアフガニスタンの人々にとって破壊的だが、世界がタリバンに対抗する最も強力な武器になっていると、ジャファリはみる。アメリカと同盟国がその経済力を使って、タリバンに国際的な人権基準を遵守するように圧力を強めてほしいと、彼女は働き掛けている。ただし、楽観してはいない。

「国際社会は、アフガニスタンで起きていることを黙ってやり過ごしたいと思っている。この国には多くの活動家やジャーナリスト、少数民族、女性がいて、今も恐怖の中で暮らしている。助けを必要としている。彼らのことを忘れないでほしい」【9月10日 Newsweek】
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国内にタリバンに対抗できる勢力が無い以上、国際社会に訴えるしか道はありません。

****「私たちは消されている」 アフガン女性、国連に行動訴え****
スイス・ジュネーブの国連人権理事会で12日、アフガニスタンの女性・少女の人権をめぐる特別会合が開かれた。出席者は、同国で昨年8月にイスラム主義組織タリバンが実権を握って以降、「性別によるアパルトヘイト(分離)」が広がっているなどとして、国際社会に一致した対応を訴えた。
 
ジャーナリストで人権活動家のマブバ・サラジャ氏は「今日、アフガニスタンでは人権は存在しない」と述べ、女性の人権が奪われていることに警鐘を鳴らしても何も起きないことに「うんざり」していると語った。(中略)

サラジャ氏は「アフガニスタンでは女性の存在は消されている」と指摘。同氏ら出席者は理事会に対し、あらゆる人権侵害を監視する独立した専門家グループを設置し、当事者の責任を問うことができる態勢を構築することを提言した。
 
アフガンの人権状況に関する国連の特別報告者リチャード・ベネット氏も、同国では「性別によるアパルトヘイト」とも言うべき事態が起きているとして、責任追及態勢の強化が急務だと強調した。
 
ベネット氏は、アフガンでは女性の人権が「がくぜんとするほどの後退」を余儀なくされているだけでなく、ハザラ人などイスラム教シーア派系の少数民族も迫害を受けていると報告した。 【9月13日 AFP】
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アフガニスタン国内の活動もまったくない訳ではありませんが、常にタリバンの脅威にさらされています。

****アフガンに「女性図書館」 タリバン標的の可能性も「学び続けられる場所を」****
イスラム原理主義勢力タリバンが実権を握ったアフガニスタンの首都カブールで、このほど「女性図書館」がオープンした。女性活動家らが設置したもので、タリバンが女性の教育を制限する中、教育の助けにしたい考えがある。タリバンの標的となる可能性もあるが、設立者は「それでも教育の火を消してはならない」と話している。

図書館は8月24日にオープンし、小説や学術書など約千冊を所蔵する。本のほとんどは寄贈されたものだ。海外からの寄付で運営するという。

共同設立者の1人である女性活動家、ライラ・バシムさんは、設立の目的について「女性が学び続けられる場所を作りたかった。教育を受ける機会を少しでも確保することが大切だ」と話す。(中略)

現在のところ、図書館をめぐってタリバン側から警告や嫌がらせはない。「ただ、将来的にタリバンがどう出てくるかは分からない。国際的にこの図書館の知名度が高まれば妨害しづらくなるだろう」とバシムさんは話した。【9月1日 産経】(
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国内の対抗勢力という点では、IS以外に、北東部パンジシール州でタリバンに抵抗を続ける故アフマド・シャー・マスード司令官の息子がトップを務める武装勢力「民族抵抗戦線」もありますが、どれほどの影響力を有しているかは知りません。

“タリバン、抵抗勢力40人殺害と主張 パンジシール渓谷で”【9月14日 AFP】
「民族抵抗戦線」は、北部を中心とした12州で戦いを続けるとしています。
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