孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イタリア総選挙  「極右」とも評されるメローニ氏が予想どおり勝利 EUにとって新たな火種

2022-09-26 23:02:06 | 欧州情勢
(26日、ローマで勝利宣言するメローニ氏【9月26日 読売】)

【EUに新たな不安の種】
予想されていたように、イタリア総選挙で旧ファシスト党の流れをくむ極右野党「イタリアの同胞」が上下両院で第1党となることが確実となり、同党の党首メローニ氏がサルヴィーニ氏の右派「同盟」とベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党などとの右派連立で首相に就任すると思われます。

****イタリア極右野党「同胞」の第1党確実、ベルルスコーニ氏らとの右派連立政権誕生へ****
イタリア総選挙が25日、投開票された。旧ファシスト党の流れをくむ極右野党「イタリアの同胞」が上下両院で第1党となることが確実となった。右派の主要3党を中心とする連立政権が誕生する見通しで、「同胞」の女性党首が初の女性首相に就任する公算が大きい。

内務省の発表(開票率99%)によると、同胞の得票率は約26%。右派「同盟」とシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党などと合わせて、上下両院で過半数の議席を獲得することが確実な情勢となった。

「同胞」と両党の連立交渉が順調に進めば、セルジオ・マッタレッラ大統領がジョルジャ・メローニ党首(45)を首相候補に指名し、10月15日までに招集される新議会で首相に選出される見通しだ。

選挙は、前欧州中央銀行(ECB)総裁のマリオ・ドラギ首相の辞任に伴い行われた。「同胞」は、ムソリーニの支持者らが戦後に結党したネオファシズム政党「イタリア社会運動(MSI)」の流れをくみ、国益最優先を掲げる。

連立を組む見通しの2党はプーチン露大統領との関係が指摘され、対露を巡る欧州連合(EU)の結束が乱れかねないと懸念されている。【9月26日 読売】
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かつての弱小政党「同胞」メローニ氏が一躍トップに躍り出てきた理由は、大連立の前政権に参加しなかったことで不満を募らせた有権者の受け皿になったこと。

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21年に発足したドラギ政権は、同盟、フォルツァ・イタリア、民主党、五つ星などを糾合した大連立政権だが、「イタリアの同胞」の人気は、大連立に参加しない「唯一の野党」という立場を維持する戦略が奏功した。

左右の政策の違いを超えて団結した与党に対し、保守政党の「一貫性」を強調。18年総選挙で得票率は4%程度だったが、トップだった五つ星や、同3位だった同盟などポピュリズム(大衆迎合主義)色の強い政党の支持層を取り込んでいるとみられる。【8月1日 毎日】
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右派連合には、コンテ政権で副首相兼内務大臣として国政を左右した移民排斥の右派ポピュリストと評される「同盟」サルヴィーニ氏、かつて数々の女性スキャンダルを垂れ流し、一時は「過去の人」になったような感もあったプーチン大統領とも親しいベルルスコーニ元首相など“ユニーク”な面子が揃っていますが、「同胞」メローニ氏は旧ファシスト党の流れをくむ極右政党で、過去にはムッソリーニを称賛する発言もしているということで、欧州内にとどまらず世界的にも注目されています。

単に、党の出自や本人の経歴だけでなく、移民政策などでEUに対し批判的で「イタリア優先」を掲げるメローニ氏、ロシア・プーチン大統領とも親しい政治家が多い右派連合の登場で、対ロシア・ウクライナや移民対策などでEUの結束が維持できるのかが危ぶまれています。

****“親プーチン政権”誕生か イタリアで鍵握る女性****
EU(ヨーロッパ連合)の主要国でG7(先進7カ国)の一角でもあるイタリアが今、分岐点に立っている。その理由は、次の日曜日に行われる総選挙で、右派連合が勝利すると予想されている。

その中心にいるのが、ジョルジャ・メローニ氏。イタリア第一主義を掲げている。

イタリアの同胞 ジョルジャ・メローニ党首
「『メローニが首相になったらどうなるか』と、ヨーロッパでは心配しているようです。どうなるか? お楽しみは終わりです。イタリアはこれから国益を優先します」

イタリア初の女性の首相が有力視される時の人だが、考え方は極右。過去には、第2次世界大戦の独裁者・ムッソリーニを称賛する発言もしている。

さらに、選挙のあとに心配されているのが、ロシアとの関係。
2008年に史上最年少で閣僚に起用された、メローニ氏。この時の首相・ベルルスコーニ氏は、今回もメローニ氏と連合を組んでいて、ロシアのプーチン大統領とも親しい間柄。

右派連合には親ロシア派も少なくないため、国の政策がロシア寄りに傾くことが心配されている。EUに対しても、批判的な立場をとってきたメローニ氏。

結束してウクライナへの侵攻に反対していたEUに、新たな不安の種となるのだろうか。【9月22日 FNNプライムオンライン】
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ロシア・プーチン大統領との関係では、ベルルスコーニ元首相が“お友達”であるだけでなく、「同盟」サルビーニ氏も、過去にEU議会でプーチン大統領の顔をプリントしたTシャツを着てプーチン大統領を称賛したことも。

【「ファシズムとは決別した」と穏健発言で安全運転のメローニ氏 問題は「それは本心か?」】
なお、メローニ氏本人は「ファシズムとは決別した」と公言しています。

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(一党独裁を敷いたムソリーニの墓の炎を表現し、解党したネオファシスト政党と同じデザインのロゴマーク使用について)「イタリア右派の歴史的シンボルであって、ファシズムとはもはや何の関係もない」として、取り合っていない。

公約では子育て支援やインフレ対策のための減税などを打ち出している。本人はファシズムとは決別したと公言しているが、過去には欧州連合(EU)に懐疑的な姿勢を示したり、ロシアのプーチン大統領を称賛したりした。LGBTなど性的少数者や移民に対する排他的な主張から、EU内ではメローニ氏を「極右」とする見方が強い。【9月24日 日系メディア】
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メローニ氏は選挙中はEUとの協調、ウクライナ支持などで“穏健”な発言を行っていますが、多くが懸念するのは“これが本心ではないかもしれないという点”

****イタリア「新首相」メローニと右派三党連立政権の行方****
(中略)フィナンシャル・タイムズ紙のベン・ホールは、8月18日付け同紙掲載の論説‘The new face of Europe’s radical right is on display in Italy’で、メローニは欧州連合(EU)、大西洋同盟、ロシアと戦うウクライナへの支持を誓っているが、彼女の右派三党連立政権は欧州の懸念を招かざるを得ない、と指摘している。要旨は次の通りである。

・FdI(「イタリアの同胞」)に対する支持は2018年の選挙では4%に過ぎなかったが、以来、ドラギの政権に参加した他の右派政党の犠牲において6倍になった。

メローニの選挙戦の目的は、彼女は過激主義者ではなく、彼女はイタリアの安定と欧州におけるイタリアの地位を保護するだろうと、有権者とイタリアのエスタブリッシュメントを安心させることにある。

メローニは、FdIは英国の保守党、米国の共和党、あるいはイスラエルのリクードに近いと断言する英語、仏語、西語のビデオを公開した。右派連合の共通政策は大雑把であるが、EU、大西洋同盟、ロシアの侵略に対するウクライナの抵抗への支持を誓っている。

・FdIがファシスト政党であるというのは言い過ぎだが、同党にはファシストがいる。若き日のメローニがムッソリーニは優れた政治家だと称賛している映像もSNSに流れている。

・イタリアには大統領、中央銀行、財務省のような強力な独立した機関があり、ポピュリストの政治家に対するテクノクラートのガードレールとして機能している。

しかし、行政権に対する最も重要なチェック機能を果たす大統領は脅威に晒されている。右派連合は憲法を改正し、フランスに類似の大統領の直接選挙制とすることを欲している。

・ムッソリーニを称賛する人物がイタリアの首相に選ばれることはEU各国に深い懸念を生むであろう。大規模な財源の裏付けのない減税、EUの復興基金によるイタリアの2000億ユーロの復興計画の「修正」は更なる懸念の材料である。

メローニは規律があり分別があると自身を売り込んでいる。イタリアと欧州にとっては、三人のポピュリストの指導者から成る政府はそのようには思えないであろう。

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メローニのFdIは傍流の政党だった。選挙に勝って首相に就任する見通しとなるに及んで、彼女は自らの政党を伝統的な保守の政党に衣替えし、その政治的立場に対する国際的な懸念を払拭することに努力している様子である。

8月11日に公開されたビデオ(彼女は仏語、英語、西語を流暢に話している)で、彼女は次の諸点を述べている。

*ファシズムについて:「イタリアの右派は既に数十年の間ファシズムは歴史に手渡してしまっており、民主主義の抑圧と恥ずべき反ユダヤ法を紛れもなく糾弾している」。われわれは確固たる言葉をもって反民主主義的な如何なる漂流にも強烈に反対している。

*EUについて:右派の勝利は惨事であり権威主義への転向、ユーロからの離脱に至る、あるいはその他のナンセンスが言われている。どれも真実ではない。ドラギ政権によって敷かれたEU復興基金へのアクセスのロードマップを危険に晒すことはしない。

*ウクライナについて:「西側陣営におけるわれわれの立場には一点の曇りもない。われわれはウクライナに対するロシアの残忍な侵略を、何の躊躇もなく、糾弾し、欧州および国際場裏におけるイタリアの立場の強化を野党の立場から助けて来た」。

*政治的立場について:「私は欧州議会の欧州保守改革党を率いて来たが、この党は英国の保守党、米国の共和党、イスラエルのリクードと価値観を共有している」。

これらは、いずれも結構である。しかし、問題は、これが本心ではないかもしれないという点だ。

8月11日に公表された右派三党の共通政策も欧州統合の支持、北大西洋条約機構(NATO)のコミットメントの尊重、ウクライナ支持を謳っているが、同盟のサルヴィーニがユーロからの離脱を主張し、プーチンを称賛し、ウクライナへの武器支援に反対したばかりだ。【9月9日 WEDGE】
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対中国に関しては、メローニ氏は従来政権の親中国姿勢からの脱却を掲げています。

****伊・メローニ党首、台湾支持 「親中」脱却の構え****
イタリア総選挙で強硬右派「イタリアの同胞」を勝利に導いた女性のメローニ党首(45)は、「ファシストの末裔(まつえい)」と異端視された党のイメージを和らげ、支持拡大に成功した。外交では、北大西洋条約機構(NATO)を軸とした西側の結束を主張し、親中国姿勢からの脱却を掲げている。

中国の威嚇非難
メローニ氏は総選挙の直前、台湾の中央通信社のインタビューで、右派政権が実現すれば「台湾に強い関心を向けることになる」と述べ、台湾支持を明言した。中国による台湾への軍事威嚇を非難し、欧州連合(EU)が対中圧力を強化すべきだと訴えた。

イタリアは2019年、当時のコンテ政権が先進7カ国(G7)で唯一、中国と巨大経済圏構想「一帯一路」の覚書を結んだが、メローニ氏は、覚書の更新について「明日署名が必要だとすれば、そんな政治的状況ではない」と否定的な立場を示した。

同党のクロセット元党首は本紙に、「わが党は英国の保守党、安倍晋三首相時代の自民党に近い立場だ」と述べている。(後略)【9月26日 産経】
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【対ロシア制裁で苦境の欧州経済】
メローニ氏が掲げる“従来とは異なる政治”が有権者受けするのは、イタリアの厳しい経済事情、それに対し既存政治が有効に対応できなかったことがあります。

****ガス代が前年の8倍の1億円超に…  ウクライナ侵攻でイタリアでエネルギー価格が高騰****
長期化するロシアによるウクライナ侵攻。その影響でヨーロッパはエネルギー価格の高騰に直面しています。間もなく行われるイタリア総選挙にも影響を与えそうです。(中略)

対ロシア制裁の影響でヨーロッパではガスの使用制限などによりエネルギー価格が高騰。市民生活を直撃しています。

イタリアのナポリ。窯から取り出された熱々のピザにはトマトソースがふんだんに使われていますが…
レストランオーナー 「原材料が値上がりしています。特にたくさん使用するトマトですね、ピザに必要ですから」

イタリア料理に欠かせないトマト。日本など45か国に製品を輸出しているこちらの加工工場では、夏の太陽をたっぷり浴びた大量のトマトを7月中旬から2か月ほどかけて、一気に瓶詰や缶詰にしていきます。トマトを茹でる際に必要なのがガスですが…

トマト加工・販売会社社長 「ガス代が去年7月の12万ユーロ(約1670万円)から今年7月は97万8000ユーロ(約1億3600万円)になりました。8倍以上ですよ、とても失望しました」

消費量が去年より10%増えたのに対し、ガス代はなんと8倍!日本円で月額1億円を超えたのです。その影響もあり、こちらのトマトピューレは60%以上、値上げされました。

また、一般家庭でもこの秋・冬はガス代がおよそ30%、電気代が40%上昇の見込みです。街中では…

記者 「こちらのたばこ店のレジの前には、こんな表示が置かれています。去年7月の電気代が600ユーロ(約8万6000円)。今年は1500ユーロ(約21万5000円)と、2.5倍になったと窮状を訴えています」

そんななか、イタリアでは25日、注目の総選挙が実施されます。最新の世論調査では、「イタリア優先」を掲げ、本人はタカ派とされるメローニ氏ら、中道右派連合が優勢で、ドラギ現首相を支持してきた中道左派などを引き離しています。

国民が政府に最も求めることは、「インフレ対策」と「エネルギー危機」への対応で、その背景にあるロシアへの経済制裁については、世論が分かれています。

また、ウクライナへの「支援疲れ」が、国民の選択により影響を与える可能性も指摘されていて、右派政権誕生後のイタリアの立ち位置が注目されています。(後略)【9月23日 TBS NEWS DIG】
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このあたりの経済苦境は他の欧州諸国も同様です。

****ドイツを襲うロシアの天然ガス供給中止 広がる企業倒産の波****
ドイツのデュッセルドルフを拠点にトイレットペーパーを製造するハクレは1928年創業の老舗企業だ。それが今年夏のガス料金高騰で、あっさり倒産してしまった。

ロシアが欧州への天然ガス供給を中止したことで、ハクレのようなエネルギー集約型産業は特に大打撃を被っている。

「あっという間の出来事だった。電気とガスの料金が爆発的に上昇し、とてもではないが顧客に転嫁するのが追い付かなかった」とハクレのマーケティング責任者、カレン・ユング氏はロイターに語った。

8月以降、同社のように債務超過に陥る企業が急増し、欧州一の経済大国ドイツを倒産の大波が襲うのではないかとの恐れが広がっている。

ガス料金の高騰、数十年ぶりのインフレ、リセッション(景気後退)の恐れ、冬の燃料不足といったリスクから国民を守ろうと尽力するショルツ政権に、企業倒産という重圧が加わった格好だ。

ドイツの8月のエネルギー価格は前年同月比139%上昇した。
ハーベック副首相兼経済・気候保護相は今月のテレビインタビューで、生活に苦しむ顧客が商品を買わなくなったからといって企業が必ずしも倒産するわけではない、と発言して炎上した。

政府は企業支援策に数百億ユーロを投じており、国内最大のロシア産ガス輸入企業であるウニパーについては救済に乗り出した。

しかしハクレは、自社のような「ミッテルシュタント」への保護拡大を訴える。ミッテルシュタントは多くが家族経営の中小企業で、ドイツ経済のエンジン役を果たしてきた。

「システム全体に影響を与える巨大企業を見守り、解決策を探すことはもちろん重要だ」とハクレのユング氏。「しかしドイツの雇用の大部分をミッテルシュタントが担っているのも事実であり、そのわれわれが真に解決策を必要としている。ミッテルシュタントが未来もこのドイツで生き残れるように」と語った。

こうした懸念に応え、ハーベック経済相は中小企業への支援拡大を約束。ブッシュマン法相はエネルギー高に苦しむ企業を支えるため、債務超過基準の緩和を計画している。(後略)【9月26日 Newsweek】
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【民主主義は正しく機能しているのか?】
なお、既存政党が極右政党に敗れるというのは、北欧スウェーデンでも見られた現象です。

****スウェーデンで右派過半数に 総選挙で敗北の首相辞意****
北欧スウェーデンのアンデション首相は14日、辞意を表明した。11日に実施された議会(一院制、定数349)総選挙で反移民を掲げる極右の野党、民主党を含む右派勢力の過半数獲得が確実となり、自身が率いる与党、社会民主労働党を中心とする中道左派勢力の敗北を認めた。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、5月に申請した北大西洋条約機構(NATO)加盟は大半の政党が支持しており、政権が変わっても方針転換はないとみられる。(後略)【9月15日 共同】
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現代民主主義においては、既存政治を激しく攻撃し、明快・過激な政策を掲げる政党が有権者の注目を集めやすいという流れがあるようにも。それは民主主義の本来の姿なのか、「失敗」なのか?
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