孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

上海協力機構首脳会議  習近平主席コロナ後初外遊 注目の中ロ首脳会談

2022-09-16 23:00:15 | 国際情勢
(上海協力機構の首脳会議に参加したロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席=16日、ウズベキスタン・サマルカンド【9月16日 産経】)

【中ロ主導の上海協力機構 参加国全体で世界の人口の半分近く 欧米への対抗軸として位置づけ】
ロシア・中国が主導し中央アジア諸国などが加盟する上海協力機構(SCO)首脳会議が15,16日の両日、ウズベキスタンで開催されています。

****上海協力機構****
中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8か国による多国間協力組織、もしくは国家連合。中華人民共和国の上海で設立されたために「上海」の名を冠するが、本部(事務局)は北京である。【ウィキペディア】
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参加国人口は32億人。オブザーバー国はアフガニスタン、モンゴル、イラン、ベラルーシ。(イランは加盟覚書に調印)

****プーチン大統領“欧米への対抗軸拡大を”上海協力機構首脳会議****
中央アジアのウズベキスタンで上海協力機構の首脳会議が開かれました。

中国の習近平国家主席などと出席したプーチン大統領は、上海協力機構について「国際的な問題解決への役割が大きくなっている」と述べ、欧米への対抗軸としてこの枠組みを一層拡大する必要性を強調しました。

ウズベキスタンのサマルカンドでは中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構の首脳会議が開かれていて16日、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相など首脳たちによる全体会合が行われました。

首脳会議は、新型コロナウイルスの感染が拡大して以来初めて対面形式で行われ、主催したウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は、加盟国が食料危機への対応で協力していくことなどを提案しました。

また、プーチン大統領は「上海協力機構は世界最大の地域の枠組みであり、国際的な問題解決への役割が大きくなっている」と述べ、欧米への対抗軸としてこの枠組みを一層拡大する必要性を強調しました。

上海協力機構には、新たにイランが正式に加盟することになったほか、ベラルーシが加盟の手続きを行っています。

ロシアや中国などは、上海協力機構は、参加国全体で世界の人口の半分近くにあたる30億を超える欧米とは異なる独自の枠組みだとして、その存在感を高めようとしています。【9月16日 NHK】
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上海協力機構(SCO)は“欧米への対抗軸拡”とはいいつつも、従来は国際的にさほど注目される存在ではありませんでした。

しかし、今回はウクライナ戦争のさなかにあること、しかもここのところ劣勢が色濃くなってきていることでロシア・プーチン大統領がどのように主張するか、また、中国・習近平国家主席がコロナ禍以来初めての外遊ということで注目されていました。

【コロナ後初外遊の習近平主席 3選を確実にした自信?】
その習近平主席が3選を目指す来月中旬の党大会直前のこの重要な時期に初外遊することについては、「3選に向けたシナリオを確実にした自信のあらわれ」と解釈するのが一般的なようです。今回首脳会議での成果を上乗せして3期目続投を更に確実なものにする狙いとも。

****習氏、コロナ後初外遊 党大会前に対外成果誇示****
中国の習近平国家主席は14日、中央アジアのカザフスタンを訪れた。習氏が外国を訪問するのは2020年の新型コロナウイルス流行後で初めてで、15日にはウズベキスタンでロシアのプーチン大統領と会談する。

第20回中国共産党大会の開幕を10月16日に控える中での外遊には、外交成果を誇示し、最高指導者として異例の3期目続投につなげる狙いがあるとみられる。

中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は13日の記者会見で「党大会開催前の最も重要な外交活動だ」と強調した。

中国の指導者を巡っては、外遊中の国内の動きが失脚につながった故趙紫陽・元共産党総書記らの例がある。中国メディア関係者は、習氏が外遊に出たのは「党大会での3期目に向けた権力掌握を確実にしたという感触を得たからではないか」とみる。

コロナ後初の訪問先にカザフを選んだのは、最高指導者就任から10年間の対外成果を示す狙いからだ。習氏は13年のカザフ訪問時、巨大経済圏構想「一帯一路」につながる「シルクロード経済ベルト」を提唱した。習氏は今回の訪問前にカザフメディアに送った文章で、一帯一路を「国際社会に歓迎されているグローバルな公共財だ」と自賛した。

習氏は、ウズベクで15、16の両日開催される上海協力機構(SCO)首脳会議に出席する。中露主導のSCOやプーチン氏との個別会談で結束を確認し、「対中包囲網」の構築を進める米国を牽制(けんせい)する思惑だ。

中国としては、インドネシア・バリ島で11月に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に向け、関係が比較的良好な国々との連携を確認する機会ともなる。

一方、香港メディア「香港01」は14日、ウクライナ問題を巡りロシアとカザフスタンの間に隙間風が吹いていると指摘。習氏には、プーチン氏との会談前にカザフでトカエフ大統領と会うことで「中国の地域内での影響力」を示す狙いがあると分析した。中露は対米では一致しているものの、両国の力関係を巡る水面下の駆け引きがうかがわれる。【9月14日 産経】
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ただ、習近平主席がこれまで外遊に出ていないのは、コロナの不安だけの話ではなく、国内権力闘争が激しく国を留守にする訳にいかなかったという事情もあってのことです。

その権力闘争は未だ決着しておらず、今回外遊は破綻した「一帯一路」の仕切り直し、敗色濃厚となったプーチン大統領との関係の整理のために、必要に迫られての外遊だとの見方もあるようです。

****プーチンにどう接する? コロナ後初外遊で習近平が臨む「厄介な会談」****
(中略)
習近平は8月の北戴河会議が終わったのちにサウジアラビアを訪問する予定が一部で報じられ、サウジアラビア側は「2017年5月のトランプ米大統領訪問以来、最も盛大な歓迎行事」を準備していたにもかかわらず、結局実現しなかった。これは党大会前に習近平が中国を離れるのが困難なほど、党内権力闘争が激しいからだろうとみられていた。

ならば、今回、習近平が外遊に踏み切ったということは、権力闘争が一段落つき、習近平が総書記の3期目連任が固まり、目下の政治情勢に自信を持っているということの裏付けなのだろうか。それとも党内の権力闘争よりも、中国共産党として習近平がわざわざ自分で行かねばならない重要な問題が、国外にあるということなのか。その辺について、考えてみたい。

ボロボロの「一帯一路」に党内でも批判の声
今回の外遊の見どころは2つある。1つは「一帯一路」だ。(中略)

実は「一帯一路」は、経済構想的にも政治戦略的にもボロボロで、党内でも批判的な声が上がっている。中国経済の減速、世界経済の減速による資金不足に加え、新型コロナや地域の政変、紛争などによって、プロジェクトそのものが「爛尾楼」(未完成で野ざらしにされた建築物の意味)化しているだけでなく、一帯一路が沿線国を債務の罠に落とし入れてきたやり方や、華僑マフィアによる人身売買や詐欺、マネーロンダリングの温床となっていたことなどが暴露され、そのイメージは地に落ちてしまった。

習近平としては、このまま「一帯一路失敗」の印象を放置しておくわけにはいかないので、中央アジアで改めてテコ入れする必要がある、というわけだ。(中略)

「プーチンを切る」という選択肢
外遊のもう1つの見どころは、習近平とプーチンの会談の行方だ。
 
この数日、ウクライナ軍が6000平方キロに及ぶ領土奪還とロシア軍撤退のニュースが大きく報じられた。ウクライナのゼレンスキー大統領はクリミア半島の奪還まで言い出している。これが成功するしないにかかわらず、プーチンの敗北は決定的に見える。そのようなプーチンと習近平が対面して何を話すのか。

2人は今年2月4日の北京五輪開幕日に会談して以来、初めて直接対面する。この2月の首脳会談の時に出した共同声明では、中ロ協力について「上限もタブーもない」と言い、一部でこれは準同盟関係宣言ではないか、という見方も出た。

だが、後から聞いた周辺情報を総合すると、プーチンにあまりに肩入れした習近平の対ロ外交姿勢について党内では強い反発があり、それがロシアのウクライナ侵攻後、さらに強くなり、結局、習近平の対ロ外交は失敗と言われ、その責任を取る形で習近平お気に入りのロシア通外交官で将来の外交部長(外相)と目されていた外務次官の楽玉成が更迭されることになった。

今、プーチンの敗北が誰の目にもはっきりしてきた段階で、習近平としてはロシアとの関係を改めて自らの責任で仕切り直さなければならない。

おそらく習近平としてはプーチンを見捨てたくない。もしプーチン政権が倒れれば、親欧米政権が代わりにできて、ロシアが西側陣営とともに中国包囲網に加わることになりかねない。それは中国としても避けたいだろう。

だが、すでに改革開放路線維持を掲げる李克強ら共産党の反習近平勢力は、米国との関係改善を望んでいるだろうし、少なくとも米国の対ロ制裁に中国が巻き込まれることは絶対に避けたいはずだ。ならば、かつて中国の著名国際学者、胡偉が主張したように「プーチンを切る」必要が出てくる。

この難しい判断を、結局、習近平が責任をもってやらざるを得なくなったのが、おそらくは今回の外遊の最大の見どころだろう。(後略)【9月15日 福島 香織氏 JBpress】
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【注目されたプーチン・習近平会談 中国はロシアへの深入り避ける ロシアへ「懸念」伝える】
上記記事はややうがち過ぎの感もあります。また、今更「プーチンを切る」ことなどできない相談です。
ただ、苦境のプーチン大統領と習近平主席の会談がどのようなものになるかは世界が注目していたところです。

中国・習近平主席としては、ロシアからの輸入拡大など、これまでもロシアを支援するような言動はみせてはいたものの、アメリカの制裁を招くような支援、とりわけ軍事支援は避けてきたというのが実態であり、今回のプーチン・習近平会談では、支援をより必要としているロシアへの深入りを避けることが習近平主席側の方針でしょう。

****ウクライナ侵攻下で中ロ連携=習氏「互いに力強く支持」―首脳会談で対米けん制****
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は15日、中央アジア・ウズベキスタンの古都サマルカンドで会談した。

タス通信によると、プーチン氏は冒頭、ウクライナ危機に対する「中国のバランスの取れた立場」を高く評価。台湾海峡をめぐる米国の「挑発」を非難するとともに「一つの中国」を支持すると習氏に伝えた。
 
中国国営中央テレビ(電子版)によると、習氏は「ロシアと双方の核心的利益に関する問題において互いに力強く支持することを願う」と応じた。

台湾問題に関し、ロシア側の姿勢を「称賛」した上で、「中国は『台湾独立』分裂勢力や外部の干渉に断固反対だ。いかなる国も台湾問題の裁判官になる権利はない」と強調した。

2月24日にロシアがウクライナ侵攻に踏み切ってから初の直接対話。日本を含む先進7カ国(G7)による対ロ制裁で孤立するプーチン氏には、戦略的パートナーである中国との連携を誇示し、ウクライナを支える米国などをけん制する狙いがありそうだ。【9月15日 時事】 
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上記記事を読む限りでは、これまでの協力関係を確認しあっているだけで、踏み込んだ具体的支援などは示されていません。

プーチン大統領が、(その気がないことが明らかな)中国の風下に立つリスクを犯してまで習近平主席に軍事支援などを依頼したかどうかはわかりませんが、習近平主席としては敗色濃厚なプーチン大統領へこれ以上深入りすることは自らの権力を危うくするものであり、依頼があろうがなかろうが、そういうリスクをとることはないでしょう。言葉の上でどのように協力関係を称賛したとしても。

****習氏、ウクライナ巡りプーチン氏に懸念伝える****
中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は15日、ロシアによるウクライナ侵攻開始後初めて対面で会談した。ウクライナを巡り習氏が伝えた懸念については、プーチン氏は対応する姿勢を示した。
 
ロシアの戦況が悪化する中、ウズベキスタンのサマルカンドで開かれている上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせて会談が行われた。
 
プーチン氏は習氏に対し、ウクライナ危機を巡る中国政府のバランスの取れた姿勢を高く評価すると述べた。また、中国がウクライナ危機への懸念を表明したことを受け、ロシアは自国の立場を明らかにしていく考えを示した。詳細には言及しなかった。
 
プーチン氏は中国側の「疑問や懸念は理解している」と述べた。ロシア国営テレビが発言を伝えた。
プーチン氏はまた、台湾を巡り挑発を行っているとして米国を非難した上で、中華人民共和国政府が中国唯一の合法的な政府であるとする「一つの中国」原則を支持すると述べた。
 
中国国営の新華社によると、習氏は会談で、中国とロシアが今年初めから「実効性のある戦略的対話」を維持してきたと発言。「世界が歴史的変化に直面する中、主要国として中国はロシアとともに主導的役割を果たし、動揺する世界に安定をもたらすよう取り組む用意がある」と述べた。
 
米首都ワシントンに拠点を置く保守系シンクタンク、民主主義防衛財団のクレイグ・シングルトン氏は、ウクライナでの戦争を巡り中国が懸念していることをプーチン氏が公に認めたことは極めて注目に値すると指摘。

中国政府の公式発表はウクライナについて触れていないとした上で、中国はロシアへの支援を強める意図がないことを示唆していると述べた。

シングルトン氏は、ロシアによる侵攻を支持し続けることで、欧州との関係だけではなく、侵攻への反対姿勢を明らかにしている国が多い中央アジア全体との関係も大幅に悪化することを中国は「当然ながら懸念している」と述べた。【9月16日 WSJ】
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習近平主席が伝えた“懸念”がどのようなものなのかは知りませんが、少なくともプーチン大統領が今まで以上の支援を期待できるような雰囲気ではなさそうです。

“習氏はウクライナに言及せず、ウクライナ情勢を念頭に置いたとみられる発言すらしなかった。”【9月16日 産経】というのも非情です。

ロシア・プーチン大統領のウクライナ侵攻と距離を置く姿勢は“ロシアの裏庭”と呼ばれてきた中央アジア諸国ではより顕著です。カザフスタンはロシアからの派兵要請を断ったとも報じられています。

プーチン大統領としては、中国にしても中央アジア諸国にしてもあまり期待できるものがない状況で、気の重い首脳会談だったのではないでしょうか。せいぜい、言葉の上での協力関係を再確認するぐらい。

【習近平主席とインド・モディ首相の会談は? 国境では軍を退く動きも】
習近平国家主席のコロナ後初外遊ということで、もうひとつ注目される会談がインド・モディ首相と習近平主席の会談。

国境問題を抱えて軍が対峙してきた両国ですが、首脳会談に向けて軍を退く動きが見られています。会談が実現すれば、2020年の国境紛争で両国関係がこじれて以降、両首脳が初めて顔を合わせることになります。

ただ、“インドのクワトラ外務次官は15日の記者会見で、モディ首相が16日のサミットの傍らで二国間会談を行うと語ったが、習氏との一対一の会談については確認を避けた。中国側も両首脳の会談を確認していない。”【9月15日 ロイター】とのことで、会談がおこなわれるのかどうかは不透明でした。

閉幕が報じられている現時点(16日22時)で報道がないということは、結局行われなかったということでしょうか。

****中国・インド両軍が国境地帯から一部撤兵、首脳会談直前のタイミング****
中国とインドは、未確定の国境線を巡り対峙(たいじ)していた軍部隊の一部を撤収させた。15日と16日には、ウズベキスタンのサマルカンドで上海協力機構(SOC)が開催され、出席する中国の習近平国家主席とインドのモディ首相の個別首脳会議も行われる見込みだ。

中国外交部の毛寧報道官は9日の定例記者会見で、インド紙の質問に対して「双方の軍最前線部隊は8日に、(対峙していた)ジアナン・ダバン地区からの撤退を開始した。これは一時期以来、両国が外交軍事の各階層で繰り返し行った話し合いの成果であり、中印国境地帯の平和と安寧を促進するために有利だ」と説明した。(中略)

中印両国の国境は、約3600キロに渡り双方の主張が異なっている。2020年6月にはラダック地方にまたがる地区で両軍が衝突した。双方とも火器の使用は控えたが、棒などを使った殴り合いになって少なくともインド兵20人、中国兵4人が死亡したとされる。中印両軍の衝突で死者が出たのは、1967年以来だった。

その後、双方は最前線に配備する兵力を増強した。双方はその後、話し合いを続けて、一部地域からの軍部隊の撤収を実現させたが、それでも国境地帯にそれぞれ5万人以上の兵力を配備し続けていたとされる。

中国国防部が7月28日に双方の合意事項を発表した後も、双方の緊張が再び高まる事態は発生している。

中国国防部の譚克非報道官は8月25日の定例記者危険で、米印両国の特殊部隊が10月にヒマラヤ南麓で合同演習を行うとの報道があったことについて、「国境問題は中印両国間の問題だ。双方はあらゆるレベルで効果的な意思疎通を維持しており、二国間対話を通じて事態を適切に処理することで一致した。われわれは、中印国境問題へのいかなる形の第三者の介入にも断固として反対する」と、強く反発した。【9月10日 レコードチャイナ】
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