孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ノルドストリームガス漏れ、ザポリージャ原発攻撃 誰が何のために?

2022-09-28 22:37:37 | 欧州情勢
(【9月28日 NHK】)

【ノルドストリームガス漏れ 「破壊工作」が強く疑われるが、誰が?】
よくわからない話。

ロシアから欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」の計3か所で発生。2カ所がデンマーク海域、もう1カ所はスウェーデン海域内。

同時に3か所が破損・・・自然現象や消耗はかなか考えにくい事態で、「破壊工作」が強く疑われています。

****ノルドストリームガス漏れ、破壊工作か 欧州が原因究明急ぐ****
ロシアから欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム1」と「ノルドストリーム2」で発見されたガス漏れについて、ドイツ、デンマーク、スウェーデンは27日、破壊された可能性に言及した。ただ、不明な点が多く、欧州は原因究明を急いでいる。

ドイツのハーベック経済相は、ガス漏れはガス管を狙った攻撃によるもので自然現象や消耗が原因ではないことは確かだと述べた。

デンマークのフレデリクセン首相とスウェーデンのアンデション首相は意図的な行為によるもので、恐らく破壊工作との認識を示した。ポーランドのモラウィエツキ首相は、証拠を示さずに破壊工作と断言した。

ロシアはウクライナ侵攻を巡る西側諸国の制裁に反発し、ノルドストリーム経由のガス輸出を削減してきた。両パイプラインは現在稼働していないが、冬が到来する前にノルドストリーム1が欧州へのガス供給を再開するとの期待は失われるとみられる。

ロシアも破壊工作の可能性があるとの見方を表明し、ガス漏れで欧州のエネルギー安全保障が損なわれたと指摘した。

ウクライナ政府の高官は欧州の不安定化を狙ったロシアの攻撃と主張したが、根拠は示さなかった。

モラウィエツキ首相はポーランド・ノルウェー間の新たなパイプライン開通のイベントで「われわれにはこれが破壊工作であることは明確で、ウクライナ情勢緊迫化の次のステップに関係している」と語った。

アンデション首相はガス漏れに絡み2回の衝撃が観測されており、スウェーデンへの攻撃ではないが、NATO(北大西洋条約機構)やデンマーク、ドイツなどの近隣諸国と緊密に連絡を取り合っていると述べた。

デンマークとスウェーデンの地震学者らは、ガス漏れの現場近くで26日に2件の強い爆発音を観測したと発表。

デンマーク・グリーンランド地質調査所(GEUS)は地震とは異なる活動が検知され、爆発で通常記録される活動に類似していると分析した。

スウェーデンのウプサラ大学国立地震学センター(SNSN)は、2回目の大きな爆発が「100キログラム以上のダイナマイトに相当する」とし、爆発は海底下ではなく水中で起きたと説明した。

デンマーク軍によると、最も大きな漏えいがある場所では、直径1キロメートル以上の泡が海面が発生したという。

<ガス漏れが爆発引き起こすリスク>
スウェーデン海事局(SMA)によると、ノルドストリーム 1の漏えいはスウェーデンの経済水域とデンマークの経済水域でそれぞれ1カ所見つかり、どちらもバルト海のデンマーク領ボーンホルム島の北東に位置する。船舶が現場に接近しないよう監視しているとした。

運営会社ノルドストリームは、パイプラインが「前例のない」損傷を受けたと発表した。

デンマーク・エネルギー庁のベッツァウ長官は、パイプラインの穴は非常に大きく、ノルドストリーム2からのガス漏れが止まるまでおそらく1週間かかると述べた。「海面にはメタンが充満しており、この海域では爆発の危険性が高まっている」と警告した。【9月28日 ロイター】
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EUは「深い懸念」を表明。NATOも「破壊工作」との見方。

****バルト海のガス漏れ NATO「破壊工作」の見方****
ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインでガス漏れが起きた事件で、欧州連合(EU)は28日、声明で「深い懸念」を表明し、EUが真相解明のための捜査に協力すると明記した。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は28日、「破壊工作」との見方を示した。(中略)

EUの声明は「すべての状況は、人為的な行為の結果だと示している。欧州のエネルギー施設を故意に損傷するのは許せない」として、EUが結束して強い対応をとると明記した。

ストルテンベルグ氏は28日、ブリュッセルのNATO本部でデンマークのボドスコフ国防相と会談。声明で「パイプラインの破壊工作について話し合った。われわれは、NATO加盟国の重要なインフラの保護に取り組む」と表明した。北海油田を抱えるノルウェー政府は事件発覚後、近海施設の監視を強化する構えを示している。(後略)【9月28日 産経】
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アメリカはまだ「破壊工作」とは断言していません。

****米国務長官「破壊工作ならば誰の利益にもならず」 ノルドストリームガス漏れで****
ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプラインでガス漏れが発生したことについて、アメリカのブリンケン国務長官は「仮に攻撃や破壊工作だったとして、誰の利益にもならないのは明らかだ」と指摘しました。

アメリカ ブリンケン国務長官
「ガス漏れについては現在、調査中だ。最初の報道では、攻撃か破壊工作の結果かもしれないとのことだが、我々はまだ確認していない」(後略)【9月28日 TBS NEWS DIG】
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「ノルドストリーム1」は、ロシア側が欧州から受けている制裁により部品交換ができないなどと主張し、8月末から供給が止まっています。「ノルドストリーム2」は事業開始前にドイツが承認を停止しています。

ということで、いずれも欧州側への供給がなされていない状態ですので、現時点でのガス供給への影響はないと思われます。

しかし、「破壊工作」としたら誰が?
目下の状況ではロシアか、あるいは反ロシアのウクライナがすぐに思い浮かびますが、一体何のために?

ロシア、ウクライナ双方とも「破壊工作」に言及しながらも、当然ながら自分ではないとしています。

もし「破壊工作」だとしたら、「誰の利益にもならないのは明らかだ」とは言いつつも、大きな利益があるからわざわざリスクを犯して「破壊工作」を行うのでしょう。

もし、ロシアによるものとしたら、冬に向けての欧州へのエネルギー供給を不安定化させ、揺さぶりをかけるため?
しかし、ロシアにとっても「ノルドストリーム」は貴重な資産です。

ウクライナはもともと、自国をスルーしてロシアから直接にガス輸送する「ノルドストリーム」については反対していましたが、今この時期に「破壊工作」といったリスクを犯すのか? もし、判明したら欧米の支持を一気に失う死活問題です。 また、(失礼ながら)ウクライナに海中での破壊工作を行うような技術力があるのか?

よくわからない話です。

【執拗に続くザポリージャ原発攻撃 ウクライナ軍の「火遊び」?】
似たような「よくわからない話」は欧州最大級のザポリージャ原発も同じ。
同原発付近への危険な攻撃は執拗に続いています。

****ザポリージャ原発付近で砲撃と爆発 タービン建屋の窓ガラス割れる****
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、26日と27日にウクライナ南部ザポリージャ原発付近で砲撃や爆発があり、タービン建屋の窓ガラスが割れたと明らかにしました。

IAEAのグロッシ事務局長の声明によりますと、現地時間の26日夕方に施設から数百メートル離れた場所で砲撃があり、さらに離れた場所でも爆発音が聞こえたということです。翌日の27日朝には冷却システムのために貯水池から水を運ぶ水路の近くで2回爆発が起き、タービン建屋の窓が割れたということです。爆発の原因はわかっておらず、調査中としています。

グロッシ事務局長は以前から原発の安全区域の設置を求めていて、「重大事故のリスクを軽減するために、即時の行動が必要だ」と訴えました。【9月28日 TBS NEWS DIG】
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ロシアは同原発を軍事要塞化し、原発を盾にした攻撃を行っています。併せて。「電力確保」も狙っているとも。

****世界が注視するザポリージャ原発とは?何が起きている?****
(中略)
これまで何が起きた?
ロシア軍がザポリージャ原発を掌握したのは3月4日。当時、攻撃を受けた原発の敷地では火災が発生し、さらには戦車などがバリケードを破って侵入しました。

それ以降もロシア軍による掌握が続いていましたが、特に8月に入ってからは攻撃が相次いでいて、ウクライナとロシア側が互いに、相手による攻撃だと主張しています。

こうした中、8月25日には原子炉の冷却などに必要な外部電源が一時的に失われる事態になりました。
エネルゴアトムは、ロシア側の行動で生じた火災によって、4系統ある送電線のうち無事に残っていた1系統が切断されたことが原因だとしています。

ゼレンスキー大統領は、この際は非常用ディーゼル発電機が直ちに稼働したため、原子炉の冷却機能がかろうじて維持できたとしています。

ただ、「再び送電網が切断されるなどの事態になれば危険にさらされる」と述べ、ロシア軍が原発から撤退しない限りは、危険が去る訳ではないと訴えました。

なぜ原発を占拠?
ロシア軍はなぜ、原発を占拠してるのか。ウクライナや欧米側は、主に2つの理由を挙げています。

①「原発を盾に攻撃か」
エネルゴアトムのコティン総裁は、NHKの取材に対し、ロシア軍が原発の敷地にミサイル発射装置などを持ち込み、原発を盾にして、ウクライナの町を攻撃していると訴えました。
これに先だってエネルゴアトムは、原発の敷地内には500人以上のロシア軍兵士や軍用車両が配置されているとも指摘。

ロイター通信が配信した、ザポリージャ原発の建物で撮影されたとする映像でも、ロシアの軍事侵攻のシンボルとなっている「Z」の文字が書かれた、ロシア側のものとみられる車両が確認できます。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、「ロシア軍は『核の盾』として原発を利用している。原子力事故に対する欧米の恐怖心をあおり、ウクライナへの軍事支援を行う意欲を低下させようとしている」とも指摘しています。

原発を盾として利用することで、ロシア軍は軍事侵攻を優位に進めようとしているのではないかと批判されています。

②「送電網の掌握狙う?」
もう1つ指摘されている理由が「電力の確保」です。
IAEAなどによりますと、ザポリージャ原発は、それだけでウクライナの総電力の2割をまかなうことができる大規模な原発です。

エネルゴアトムのコティン総裁は、ロシア軍が現在のウクライナの送電網を遮断し、ロシアが一方的に併合した南部クリミアへの電力の供給を計画しているという見方を示しました。

また、アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは8月14日付けの電子版の記事で、ザポリージャ原発の職員の話として「ロシア国営の原子力企業ロスアトムの技術者が、電力を占領した地域に回すことについて議論していた」という証言を伝えています。(後略)【9月2日 NHK】
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こちらもウクライナとロシア側が互いに、相手による攻撃だと主張していますが、1回、2回の攻撃なら何らかのアピールを狙ったものとも思えますが、これだけ執拗に続くと「一体誰が、何のために?」とよくわかりません。

特に、ロシアの場合、自軍が占拠している原発を危険にさらして何の得があるのか?
ウクライナについては、もしウクライナが欧米支援の兵器による精密な攻撃に自信を持てば・・・という疑念も。下記はそうした考えからのもの。

****ウクライナで繰り広げられる醜悪な「欺瞞の戦争」****
ザポリージャ原発をロシアとウクライナが戦争の宣伝扇動に利用している。国際社会までもがそのような宣伝扇動によって陣営論理で分裂すれば、核災害や第3次世界大戦に飛び火しないなどと誰が断言できるのだろうか。

戦争が広がれば、真実は消え、ただ勝とうとする宣伝扇動ばかりが幅を利かせる。ウクライナ戦争におけるザポリージャ原発への砲撃などの交戦状況が典型的だ。

核災害への懸念が国際社会に広がっているが、ロシアとウクライナの双方が互いに砲撃の責任転嫁をしているという程度しか伝えられていない。ロシアが、自国軍が占領し駐留しているザポリージャ原発に対して砲撃を加えているということなのか。ウクライナが、自国の住民が最も被害を受けることになるザポリージャ原発への攻撃を敢行しているのか。

先月29日、米国国防総省の記者会見で匿名を要求した「軍高官」は、この状況について「ウクライナが、その近隣に砲撃を加えなかったとは言いたくない」とし、「彼らが行った可能性は十分にあると思われる。ほとんどの場合は、そこから砲撃するロシアに対する応戦の砲撃だ」と述べた。

彼の話は、ロシアがザポリージャ原発施設を人質にし、そこからウクライナを攻撃しているというこれまでの西側の主張の延長ではあるが、ウクライナも原発に砲撃を加えたことを初めて認めたのだ。

7月22日、ウクライナ国防省の国防情報局はツイッターに、ザポリージャ原発に駐留していたロシア軍のテントがドローンで攻撃される動画を投稿した。テントの横で爆発が起きて燃え、ロシア軍兵士たちが驚いて逃げる場面だった。当時ウクライナ国防省は、自殺ドローン攻撃でロシア軍兵士3人が死亡し、12人が負傷したと明らかにした。

核問題を監視する「憂慮する科学者同盟」原発安全局長のエドウィン・ライマン氏は、米国公営放送「NPR」で、ウクライナが自身の攻撃の精密性に自信を持っているようだと述べ、「火遊びが明らかに始まった」と懸念した。

ウクライナ戦争の戦況をメディアに毎日提供する米国の「戦争研究所」は、ザポリージャ原発をめぐる核災害への緊張は、米国がこの夏、ウクライナに高機動ロケット砲システム(HIMARS)や攻撃用ドローンなどの精密で強力な兵器を提供した時期に一致すると分析した。

これらの兵器を用いてヘルソンなど南部地域の奪還を試みる反撃を進めているウクライナがザポリージャ原発に手を出したことは、ウクライナ戦争が抱える矛盾と欺瞞を示している。

欧州最大のザポリージャ原発は、ウクライナの電力の20%を担うだけでなく、ロシアの同盟国であるベラルーシなど旧ソ連の共和国の国々に電力を供給している。ロイター通信の報道によれば、ウクライナは戦争が始まると、ベラルーシなどに送られる原発の電力を切り、今後は欧州連合(EU)加盟国に回すと明らかにした。侵攻したロシアが3月にザポリージャ原発を占領したが、その運営は今もなおウクライナの企業と技術スタッフが行っている。電力の配分もそのまま維持された。

しかし、ウクライナは7月、原発の電力をルーマニア経由でEUに輸出し始めた。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれについて、欧州の同盟国がロシアの石油とガスに対する依存を減らすことへの助けになる過程の始まりだと述べたと、同通信は報じた。

ロシア軍が電力網の変更を防ごうとして職員と衝突したためか、職員がロシア軍に殴打などにより虐げられているという報道も出てきた。ロシアはザポリージャ原発をウクライナの電力網から完全に切り離して自国の電力網につなぐ計画を推進し始めた。

この時期にザポリージャ原発をめぐる砲撃戦が始まった。ウクライナは戦争中にも電力を近隣諸国に売ろうとし、ロシアは危険を冒して原発の電力網の交替を試みたことで起こったのが、ザポリージャ原発事態だといえる。
 
ウクライナは消費するガスの約30%を欧州から輸入している。ところがそのガスは、実はロシアがウクライナを通過するパイプラインを通じて欧州に輸出したものだ。正確に表現すると、欧州に輸出するロシアのガスを途中で供給されるものだ。

ウクライナはパイプラインの通行料を今もなお徴集している。そうしておきながら、ウクライナは、欧州各国にロシアからのガスなどのエネルギー輸入を中断するよう求めている。

ロシアも、ドイツに向かうノルドストリームのパイプラインは閉鎖しながらも、本来の交戦国であるウクライナを通過するパイプラインは閉じずにいる。

戦争をしていても生きていかなければならないので、ロシアとウクライナが相互に絡みあう電気やガスの問題について、欺瞞や偽善を使うことは理解する。彼らが戦争を行うためにその問題を用いて宣伝扇動に利用することも仕方ない。

しかし、そのような戦争の宣伝扇動によって、国際社会全体が陣営論理で分裂している。核災害を引き起こす事態や第3次世界大戦には飛び火しないなどと、誰が自信を持って言えるだろうか。【9月6日 ハンギョレ】
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上記はザポリージャ原発への攻撃をウクライナ軍によるものとしていますが、(ロシアによる攻撃と考えるよりわかりやすい話ですが)実際そうなのかは知りません。
ただ、戦争の宣伝扇動がとんでもない事態に・・・というのは、あり得る指摘でしょう。
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