孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  中間選挙に向け、バイデン大統領はトランプ派による民主主義への脅威を訴える戦略

2022-09-12 22:25:58 | アメリカ
(9月5日ウィスコンシン州ミルウォーキーで、支持者からの熱烈な歓迎を受けるバイデン大統領【9月9日 WEDGE ONLINE】)

【中間選挙まで2か月 バイデン大統領のトランプ批判もエスカレート 「分断の解消」からトランプ派を除く「新たな融和」へ トランプ前大統領も激しいバイデン批判】
アメリカでは11月8日の中間選挙まであと2か月を切り、共和党を主導するトランプ前大統領へのバイデン大統領の言動もヒートアップしてきています。

トランプ支持者をファシスト呼ばわりするような発言については、翌日にアメリカの民主主義を脅かしているのはトランプ前大統領の支持者全員ではなく一部の過激な支持者だと記者団に述べ軌道修正する一幕も。

バイデン大統領としては、中間選挙の位置づけを「バイデン政権の審判」から「民主党とトランプ氏の共和党との対決」に変える狙いがあり、それがうまくいけば敗北必至と見られていた民主党にも勝利の目が出てきます。

****「半ばファシズム」 バイデン氏のトランプ派批判がエスカレート****
バイデン米大統領(民主)が11月の中間選挙に向けて、トランプ前大統領(共和)や共和党のトランプ派への非難を強めている。「半ばファシズムのようだ」「国の土台を脅かす過激主義の象徴」と言葉がエスカレートしており、共和党からは「分断をあおっている」と反発を受けている。

バイデン氏は1日の演説で、2020年大統領選の「不正」を根拠なく訴えるトランプ派を「選挙否定論者」と断じ、「憲法を尊重せず、法の支配を信じず、自由な選挙の結果の受け入れを拒んでいる」と批判した。

中間選挙や24年の次期大統領選を巡っても「彼らは勝てなければ、『不正な選挙だった』と訴える。そんな状況では民主主義は存続できない」と危機感を表した。8月25日には民主党の集会で「トランプ氏だけでなく、MAGA(マガ=トランプ派)の考え方は、半ばファシズムのようだ」と述べた。

しかし、「分断の解消」を掲げて大統領に就任しただけに、トランプ氏のスローガンを指して「MAGA(『米国を再び偉大に』の意味)」とトランプ氏の支持者全体をこき下ろす論法には批判も出ている。クルーズ上院議員(共和)は1日の演説を受けて「(トランプ氏を支持する)何百万人もの米国民を中傷した」と指摘した。

バイデン氏は2日、自身の発言について「トランプ氏の支持者が国にとっての脅威なのではない。暴力を呼びかけたり、暴力を非難しなかったり、選挙結果を認めるのを拒んだりすることが脅威なのだ」と記者団に説明した。

トランプ氏の支持者の大半は、20年大統領選が「盗まれた」との根拠のない主張に同調しており、バイデン氏からみると「過激主義者」となっている。

一方、トランプ氏は1日の保守系ラジオの電話インタビューで、21年1月の連邦議会襲撃事件で起訴された被告らを擁護し、「2日前にも会った。すばらしい人たちだ。金銭的にも援助している」などと発言。大統領に返り咲いた場合には「全面的な恩赦を非常に真剣に検討するだろう。(起訴などについて)謝罪もするだろう」などと語った。金銭的支援の具体的内容などは明らかではない。

中間選挙に合わせて行われる連邦上院選や州知事選では、東部ペンシルベニア州や西部アリゾナ州などの接戦州で、民主党候補と共和党のトランプ派の候補が対決する。バイデン氏とトランプ氏の「代理対決」の構図になっており、双方の言動が過激化する一因になっている。【9月3日 毎日】
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“バイデン大統領は同演説で、民主党支持者、無党派層と共和党保守本流による「新たな融和」を示唆した。政治的な暴力を肯定するMAGA共和党は、融和の中に含まれていない”【9月9日 WEDGE ONLINE】と、敢えて“MAGA共和党”批判を前面に押し出す戦略です。

トランプ前大統領も“打ち合い”“殴り合い”の展開ならお手のもの。

****バイデン氏は「国家の敵」 トランプ氏反撃****
ドナルド・トランプ前米大統領は3日、ジョー・バイデン大統領を「国家の敵」と呼び、連邦捜査局による、自身を標的とした家宅捜索を「茶番」と非難した。

バイデン氏が先に、トランプ氏と同氏を支持する共和党員を「米国の根幹を脅かす過激思想の象徴」と激しく批判したことを受け、反論した形。トランプ氏が公の場に姿を現したのは、先月8日にフロリダ州の邸宅がFBIの家宅捜索を受けて以降、初めて。

トランプ氏はペンシルベニア州ウィルクスバリで開いた集会で、バイデン氏の発言について、「歴代米大統領による演説の中で最も悪質で、憎しみに満ち、分裂を生むものだ」「彼(バイデン氏)は国家の敵だ」と非難。「われわれこそが民主主義を守ろうとしている。非常に単純だ。民主主義の脅威は右派ではなく、急進左派からやって来る」と述べた。

また、FBIによる捜査を「正義の茶番」と一蹴し、「誰も見たことのないような反動」をもたらすことになると警告。「米国史上最も衝撃的な、どの政権も行わなかった権力の乱用の一事例をわれわれは目撃した。米国の自由がこれほど生々しく、真に脅かされた例は他にない」と主張した。

ペンシルベニア州は11月の中間選挙における激戦州の一つで、バイデン氏とトランプ氏が相次いで訪れ、演説を行った。 【9月4日 AFP】
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トランプ前大統領は「MAGA運動の共和党員は民主主義を弱体化させようとしているのではない。私たちは民主主義を救おうとしている」
「バイデン政権は最大の政敵の家にFBIを送り込んでいる。正義の茶番劇で恥ずべきことだ。このひどい法律の乱用は、誰も見たことのない反発を生むだろう」
「司法省は、左翼過激派の悪党、弁護士、メディアに支配された悪質な怪物と化している」とも。

“トランプ氏は演説のかなり部分を、FBIによる捜査への批判に費やした。それだけ、トランプ氏にとっては琴線に触れる事態となっているのだろう。”【9月11日 FNNプライムオンライン】

また、バイデン大統領の政策を痛烈に批判
「バイデンが進める電気自動車は運転に費やせる時間より、充電する時間の方が長いんだ。人々はそれを買う余裕はないし、バッテリーは全て中国製だ。レアアースも全て中国製だ」
「トランプ政権のもとでは、インフレもなく、世界史上最高の経済があった。バイデンと民主党の議会は過去50年で最悪のインフレを引き起こした」
「大卒者の数千億ドルの負債を帳消しにする不道徳な計画で経済を悪化させている。考えてみてくれ。なんて不公平なんだ」
「アフガニスタンの撤退に失敗した結果、世界で2番目に大きな武器商人はアフガニスタンだ」「最も屈辱的だったのは、プーチンが侵攻したことだ。私があなたの大統領だったら、そんなことは決して起きなかっただろう」。

“事実関係は別にして、この指摘に会場は沸いた”【同上】

なお、トランプ前米大統領の標語「米国を再び偉大に」の頭文字から呼び名が付けられ、支持者やその運動を指す「MAGA(マガ)」について、世論調査ではアメリカの民主主義の根幹を脅かしているとの回答が全体の58%を占めており、共和党支持者でも「MAGA」と距離を置く傾向が見られるようです。

****トランプ氏の政治運動、「米民主主義脅かす」が58%=世論調査****
6─7日実施のロイター/イプソス調査では、トランプ前米大統領の標語「米国を再び偉大に」の頭文字から呼び名が付けられ、支持者やその運動を指す「MAGA(マガ)」について、米国の民主主義の根幹を脅かしているとの回答が全体の58%を占めた。

共和党支持の回答者のうちでも、MAGAが共和党の大多数を代表しているとは思わないとの回答は60%になった。

バイデン米大統領は1日の国民向け演説で、トランプ前米大統領や同氏に傾倒する野党共和党議員らが「米国の根幹を脅かす過激思想の象徴だ」と批判していた。

もっとも今回の調査では、1日のバイデン氏の演説が米国をさらに分断させるとの回答も全体の59%に上った。(中略)

バイデン氏の大統領としての仕事ぶりを評価するとしたのは全体の39%にとどまった。トランプ氏の大統領時代の同様の調査の最低時を大きく上回る数字にはなっていない。

調査対象は全米の成人1003人で、民主党支持者が411人、共和党支持者が397人。【9月8日 ロイター】
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【バイデン大統領支持率は持ち直しの動きもあるものの、以前低空飛行は変わらず】
バイデン大統領の支持率は、大型法案の成立やガソリン価格が落ち着く動きをみせていることもあって、このところ若干持ち直したとの調査結果も。バイデン大統領の攻勢もこうしたながれを受けてのものでしょう。

***バイデン氏支持率41%、6月上旬以来の高水準=調査****
23日公表のロイター/イプソス調査によると、バイデン米大統領の支持率は41%と、6月上旬以来の水準に上昇した。民主党が議会で一連の法案を通過させたことが追い風となった。

バイデン氏の支持率が40%を超えるのは、6月初め以来。

民主党が多数派を占める米議会が、気候変動対策や薬価引き下げを盛り込んだ法案のほか、中国に対する競争力向上を目指す国内半導体産業支援法案などを可決したことを受け、同氏の支持率は過去5週のうち4週で上昇した。

今週の調査では、民主党員の78%がバイデン氏を支持し、7月上旬の69%から上昇。共和党員による支持率は12%で、ここ数週間ほぼ変わっていない。

国民が新型コロナウイルス禍による経済への影響や物価高に対処する中、全体の支持率は昨年8月以降、50%を下回る状況が続いている。

ただ、ガソリン価格が記録的高水準から下落する中、インフレ鈍化の兆しも幾分見られつつある。【8月24日 ロイター】
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しかし、翌週調査では・・・・低空飛行は変わらないようです。

****バイデン氏支持率が38%に低下、過去最低近辺=調査****
30日公表のロイター/イプソス調査によると、バイデン米大統領の支持率は38%と、先週の41%から小幅低下した。(中略)

国民が新型コロナウイルス禍による経済への影響や物価高に対処する中、支持率はここ1年、50%を下回る状況が続いている。5─7月の週間調査では過去最低の36%を4回記録した。トランプ前大統領の最低支持率は2017年12月に記録した33%だった。(後略)。【3月31日 ロイター】
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【与党・民主党 敗北必至からやや勢力挽回へ】
以前から“民主党は11月の中間選挙で上下両院で過半数議席を失う”と大方が見ていましたが、ここにきてやや民主党が持ち直す動きも出ています。

****分断解消どこへ?トランプ派を「ファシスト」と呼び…米民主党、中間選挙まで2カ月****
米政治の行方を左右する11月8日の中間選挙まで2カ月に迫った。急速なインフレへの不満の高まりを受けて一時は野党・共和党の圧勝もささやかれたが、ガソリン価格が落ち着く中で現在は与党・民主党が勢力を挽回。

バイデン大統領は、2020年大統領選での敗北を認めない共和党のトランプ前大統領とその支持層を「民主主義の敵」と位置付けることで、攻勢を強めている。

米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の集計(7日現在)によると、政権運営のカギを握る上院(定数100)では、民主、共和両党が非改選分を含めてそれぞれ46議席をほぼ固め、接戦となっている中西部オハイオ州や東部ペンシルベニア州などの8議席を争う状況。民主党は、現有50議席の維持が視界に入った。

全議席が改選となる下院(定数435)では、共和党が過半数となる218選挙区で優勢に選挙戦を進めている。ただ、6月時点よりも民主党との差は縮まっており、今後の2カ月でさらに接戦となる可能性が高いとも予測される。

民主党が勢力を盛り返している背景には、複層的な要因がある。経済面では今夏、高騰していたガソリン価格の下落が続き、インフレ圧力が緩和されつつあるとの見方が広がった。

保守派優位の連邦最高裁が6月、人工妊娠中絶は憲法で保障された女性の権利だとした判例を覆したことは、リベラルな民主党支持層のみならず、穏健な共和党支持層の危機感もかきたてている。

さらに指摘されるのは、共和党の候補者選びなどで大きな影響力を持つトランプ氏に対する同党支持層の微妙な変化だ。

20年大統領選の結果を覆すことを狙ったトランプ氏支持者による昨年1月の連邦議会議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会は今年6月以降、8回の公聴会を開き、事件におけるトランプ氏の責任を追及している。8月には連邦捜査局(FBI)がトランプ氏宅を捜索し、同氏の退任時にホワイトハウスから持ち去られた機密文書などを押収した。

各種世論調査によると、共和党支持層の多くは、大統領選で大規模な不正があったとするトランプ氏の主張をなお信じている。だが、共和党系の政治アナリスト、サラ・ロングウェル氏は、公聴会などを受けて同党支持層の一部には「トランプ氏(が党の主導権を握ったまま)では次の大統領選に勝てないとの不安が広がった」と指摘する。(後略)【9月8日 産経】
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ガソリン価格など物価の落ち着き、8月21日ブログ“アメリカ 中間選挙に向けて激しさを増す銃規制・中絶問題・同性婚などをめぐる「カルチャーウォー」”でも取り上げた中絶問題などをめぐる「カルチャーウォー」の状況、更に前述の共和党支持者一部のトランプ離れ的な動き・・・などが、民主党側に有利に作用しているようです。

****米中間選挙 民主党優位との分析も 人工妊娠中絶容認の影響****
11月8日の米中間選挙では、民主党のバイデン大統領の支持率が低迷する中で、共和党が上下両院選とも優勢とみられてきた。

だが7月以降は民主党が盛り返し、上院選では「民主党優位」との分析も出ている。最新の情勢について、選挙予測で定評のあるウェブサイト「ファイブサーティーエイト(538)」の上席選挙アナリスト、ナサニエル・ラキッチ氏に聞いた。

――民主党が盛り返している要因は。
◆連邦最高裁が6月24日に人工妊娠中絶を選ぶ権利を女性に認めた判例を覆し、州による中絶禁止を容認した影響が大きい。

世論調査の政党支持率は、今年に入ってからは共和党がずっと上回っていたが、最高裁の判決後は民主党が支持を伸ばして逆転し、直近では1・2ポイント差でリードしている。

同様の傾向は下院補選の結果にも表れている。判決直前の6月14日には南部テキサス州の民主党が優勢な選挙区で共和党候補が勝利したが、8月にあった北部アラスカ州や東部ニューヨーク州での下院補選では、逆に共和党が強い選挙区を民主党候補が制した。

――最高裁判決はどんな層に影響しているのか。
◆性別や党派に関係なく、満遍なく影響があった。特に、共和党穏健派や無党派層など「支持政党を変える可能性がある人たち」の考えを変えたとみられる。

民主党支持者でも、政権運営への不満や「高齢過ぎる」との懸念からバイデン氏を支持しない層は中間選挙での投票意欲が乏しかった。だが共和党が中絶禁止を進めることへの警戒感が高まり、積極的に民主党候補に投票する理由ができた。

――バイデン氏の支持率は最高裁判決後も下がっていたが、7月下旬から反転した。
◆最高裁判決はバイデン氏自身とは関係がなかった。むしろ、高騰したガソリン価格が下落傾向になり、気候変動・医療対策法(政権側の通称は「インフレ抑制法」)を成立させてアピール材料ができたことで、支持率が上向いたとみている。

ただし、「バイデン支持=民主党支持」ではない。大統領の支持率が高い方が中間選挙の結果が良くなる傾向はあるが、必ずそうだというわけでもない。

――連邦捜査局(FBI)によるトランプ前大統領への捜査は影響しているか。
◆FBIが8月8日にトランプ氏宅を捜索した時には、既に民主党への支持は上向いていた。どの程度の影響があるかはまだ分からない。

――バイデン氏は共和党内のトランプ派への批判を強めている。
◆中間選挙の位置づけを「バイデン政権の審判」から「民主党とトランプ氏の共和党との対決」に変える狙いがある。

トランプ氏は共和党内では絶大な人気があり、(党の候補者を絞り込む)予備選では彼の支持が各候補者の大きな武器になった。

しかし、無党派層や民主党支持者には不人気なため、本選ではトランプ氏の存在感が目立つほど、民主党には追い風になるとみている。トランプ派の共和党候補がウェブサイトから「トランプ氏の支持」という記載を削除する動きが一部で出ているのはそのためだ。

――投票日まで約2カ月あるが、今後の情勢は。
◆過去の中間選挙でも、世論調査の数字は直前まで揺れ動いた。大統領の所属政党に不利な動きをすることが多く、(民主党のオバマ政権時代の)10年や14年の中間選挙では、9〜10月に共和党有利に傾いた。

今回で言えば、インフレの行方や新型コロナウイルスの感染状況などが情勢に影響するかもしれないが、何が鍵になるのか現時点で予測するのは難しい。【9月12日 毎日】
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まだ2か月近くありますので“現時点で予測するのは難しい”・・・まあ、それはそうでしょう。
ただ、民主党の敗北が必至と見られていた状況はやや変わったようです。

これで、やっぱり民主党大敗、そして2年後のトランプ復活へ・・・ということになるなら、「民主主義とは一体何なのか?」という疑念にも。
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