孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  インフレ、相次ぐストライキ  EU離脱から3年、「西欧最貧国」へ転落?

2023-02-03 23:34:27 | 欧州情勢

(記録的なインフレが続くイギリスで、教師ら公務員が、過去10年で最大規模とされる50万人規模のストライキを実施した。【2月2日 FNNプライムオンライン】)

【記録的インフレに相次ぐストライキ】
記録的なインフレが進むイギリスで、賃上げを求めるストライキが頻発し、国民保健サービス(NHS)の下で働く看護師らでつくる労組の「王立看護協会(RCN)」も12月15日、待遇改善を求めて全国規模のストライキに突入した件は以前ブログで取り上げました。


背景にあるのは人員不足からの医療体制の崩壊状態。「王立看護協会(RCN)」の組合書記長は「イギリスの医療は、落ちるところまで落ちた」とも。

救急車を呼んでも、特に1分1秒を争う生命の危機がある場合以外は長く待たされる。

一般の診療待ち患者に至っては、700万人が数か月待ちといった状態で、政府が「年内にせめて、18か月以上診療待ちの人を診て欲しい」とNHSに懇願するような状況。

体調が悪いから「今」受診を希望している訳で、それが18か月以上待たされたら・・・・。当然ながら、体調が更に悪化する者が増大し、そのような者は働けなくなり、更に社会全体の人出不足を加速させることにもなります。

こうした人出不足状態の原因については、コロナ後遺症やEU離脱の影響も指摘されています。

****英経済に人手不足の暗雲、コロナ後遺症やEU離脱で****
(中略)
<原因はコロナ後遺症か>
長期間病気を患う人の増加が、どれほど直接的に新型コロナに起因するかを正確に示すのは難しい。
新型コロナの症状が1カ月以上続いている英国人の数は4月初めの時点で約180万人と報告されており、このうち34万6000人前後は日々の活動を「大きく制限」せざるを得ないほど症状が酷いと述べている。これは労働参加率低下の原因かもしれない。

BOE(イングランド銀行)の金融政策委員会(MPC)のマイケル・ソンダース委員は最近の講演で、パンデミックによって緊急治療以外の医療を受けるための待ち時間が大幅に長期化したことで、病気が重症化して働けなくなる人が増えた可能性も指摘した。(中略)

<ブレグジットが追い打ち>
英国は今、求人が増えており、今年第1・四半期には賃金が前年比7%上昇した。英国のEU離脱(ブレグジット)前であれば職に就く人が増え、必要に応じてEU諸国から労働者を呼び込んでいたところだろう。

しかし過去2年間で、英国で働くEU加盟国籍の人は21万1000人減った一方、非EUの労働者は18万2000人増えた。そして今ではほぼすべての外国人労働者がビザを取得する必要があるため、海外からの雇用は困難さを増し、適切な職能を備えた人材を素早く採用して穴を埋めるのはハードルが高くなっている。(後略)【2022年5月31日 ロイター】
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上記のような状況は今も続いており、2月1日には「過去約10年で最大規模」の学校教員や公共交通機関職員らによる同時ストが行われました。

****教師や鉄道職員ら同時スト=50万人参加、学校閉鎖も―英****
英国で1日、学校教員や公共交通機関職員らによる同時ストが行われた。参加者は全体で50万人とされ、英メディアによると「過去約10年で最大規模」。物価高騰などを受けた「生活費危機」に対応する一連の賃上げ要求の一環で、多くの学校で授業が中止されるなど市民生活に大きな混乱が生じた。

BBC放送のまとめによれば、イングランドとウェールズで中等教育までの教員10万人以上が参加。列車やバスの運転手、公務員、大学の教職員らもそれぞれストを行った。

これにより2万3000校以上の学校が閉鎖などの対応を余儀なくされ、通勤客の多くも交通手段を奪われた。【2月1日 時事】
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【経済・市民生活を悪化させたEU離脱 「西欧最貧国」へ転落との指摘も】
「光熱費や生活費は上がるのに、給料はまったく変わらない!」という状況、あるいはコロナの影響などは日本や他の欧米諸国も同様でしょうが、イギリスの場合、EU離脱という経済全体に悪影響を及ぼす特殊要因も影響しています。

そのため世論調査において「離脱は間違いだった」との声が増加しているようです。

****EU離脱「悪い方向」45%=3年経過で大幅増―英世論調査****
英国の欧州連合(EU)離脱から31日で3年が経過するが、「予想より悪い方向に進んでいる」と考えている人が45%と、2021年6月調査の28%から大きく増えていることが明らかになった。世論調査会社イプソスが30日、成人1000人を対象に実施した調査結果を発表した。

離脱によって日常生活がどう影響を受けたかについても、45%が「悪化した」と答え、「良くなった」と回答した11%を大きく上回った。

離脱によるマイナスの結果としては、「EUとの貿易障壁」を挙げた人が40%と最も多く、「移動の自由の終了」が30%で続いた。逆に、良い結果については「何もない」が24%で最も多かった。
 
イプソスは調査結果について「3年間で市民は国の方向性に悲観的だ。離脱派と残留派の根本的な意見の相違も依然として存在する」と分析している。【1月31日 時事】 
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****「私たちを一気に崩壊させた」イギリスのEU離脱から3年も厳しい声 約16兆円の損失との試算も****
EU=ヨーロッパ連合離脱から3年を迎えたイギリス。最新の世論調査では、半数以上が「離脱は間違いだった」と回答。離脱に否定的な考えの人が増えていることが分かりました。

ロンドンの金融街シティを中心に、ヨーロッパの金融センターとして発展してきたイギリス。しかし…

記者 「ヨーロッパ最大だった、ロンドン株式市場の時価総額がパリ市場に逆転されるなど、EU離脱の影響は金融街シティにも及んでいます」

3年前のEU離脱後、金融機関が人員や機能をイギリスから移す動きが進み、ブルームバーグ通信によりますと去年11月、ヨーロッパでトップだったロンドン株式市場の株式時価総額はパリ市場に抜かれました。

シティで働く人 「EU離脱の影響は絶対にあります。私はEU残留に投票しましたが、離脱の投票者は後悔していると思います」

また、イギリスで行われた最新の世論調査では「離脱は間違いだった」と答えた人が54%と、離脱の是非を問う国民投票が実施された7年前より10%以上増える結果となりました。

紅茶の販売会社社長、アガーウォルさん(50)も離脱に否定的な人のひとりです。
ニラージュ・アガーウォルさん 「EU離脱が私たちを一気に崩壊させました」

アガーウォルさんの会社は、離脱に伴う煩雑な通関手続きによる手数料の増加などで利益が大幅に減少。
ニラージュ・アガーウォルさん 「EU離脱の影響で、毎年およそ6万ポンド(約1000万円)近くの損失が出ています」

利益の半分を充て行っている、生まれ育ったインドでの学校の運営も厳しくなりました。事業継続のため、アガーウォルさんはEUへの輸出を止め、北米、さらに日本などに販路を拡大しています。
ニラージュ・アガーウォルさん 「フランスやドイツの顧客に販売するよりも、アメリカに売る方がはるかに簡単です」

EU離脱について、イギリスのスナク首相は「すでに多大な利益とチャンスをもたらしている」と主張。
一方で、ブルームバーグエコノミクスはこれに反する分析として、イギリス経済に年間およそ16兆円の損失が生じているとの試算を出しています。【2月1日 TBS NEWS DIG】
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EU離脱がイギリス経済に悪影響をもたらすということは、当初からわかっていた話で、個人的には「何を今更・・・」という感も。

イギリス経済の凋落は単なる生活実感ではなく、数字にあらわれています。

IMFの二一年のまとめでは、英国の一人当たりGDPは約四万六千ドルで、オランダ(約六万二千ドル)やドイツ(約五万四千ドル)に比べると、かなり低い数字になっています。

更に大ロンドンを除くと、二万ドル台になり、旧東欧諸国とほぼ同水準になるとも。

セックス産業の従事者も急増しているとか。

【生活苦の国民から遊離した資産家スナク首相】
国民がセックス産業に入ってでも何とか生活を支えよう・・・としている時期の首相として、国王をも凌ぐと言われる資産家のスナク首相は何とも場違いな感じも。

****英スナク新首相は資産1200億円の超リッチマン! スーツ59万円、靴に7万6000円、コーヒーカップは3万円!****
10月25日、チャールズ国王の任命を受けて英国の首相に就任するスナク元財務相。スナク氏は、インド系ヒンズー教徒で、英国初のアジア系首相が誕生する。  

スナク氏は、1960年代に英国に移住したインド系アフリカ移民の両親を持つ。父は医師、母は薬剤師。本人は名門全寮制校ウィンチェスター・カレッジ、オックスフォード大学で学んだ英才だ。  

卒業後、渡米してスタンフォード大学大学院でMBAを取得し、米金融大手ゴールドマン・サックスに就職。その後、ヘッジファンドで働いた後、政界入り。エリート街道を歩んできた。  

妻はインドのIT企業インフォシス創業者の娘。スナク夫妻は2022年、英紙「サンデー・タイムズ」の長者番付で、英国のもっとも裕福な250人にランク入りした。

推定資産は、夫妻合わせて7億3000万ポンド(約1227億円)だ。 「英紙『ガーディアン』によると、夫妻が2人の娘と過ごす自宅は現在、 200万ポンド(約3億3600万円)以上の価値があり、寝室が5室。40万ポンド(約6700万円)の、12m×5mの屋内スイミングプールや、ジム、ヨガスタジオ、テニスコートまで備えています。  

選挙運動中に建築現場を視察する際にも、3500ポンド(約59万円)もする特注のオーダースーツを着用。靴は450ポンド(約7万6000円)の、プラダのローファー。妻からの贈り物とされるマグカップは、オンラインで最大180ポンド(約3万円)で販売されているもので、充電コースターもついているため、温かい温度を最大3時間、保持できるとのこと。 

『ガーディアン』紙は、スナク夫妻はチャールズ国王以上の資産家と伝えています」(英国事情に詳しいジャーナリスト)  

スナク氏の妻は、父親のソフトウェア会社・インフォシスの株の0.93%(約1160億円相当)を所有しており、配当は年間1160万ポンド(約19億5000万円)。妻が「非定住者」として、海外での所得について税金を英国で納めていなかったことが、批判されたこともある。  

エネルギー価格高騰に苦しむ英国民。経済の安定を求める国民の声に、「超リッチマン」であるスナク氏は答えられるだろうか。【2022年10月25日 FLASH】
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こうした国民の目をスナク首相も意識しており、首相は1月、国民の生活苦を「自分の目で見る」という触れ込みで、ホームレスのための給食センターで、配食係を買って出たそうです。

しかし、首相周辺が案じた通り、ホームレスたちとは会話が成立しなかったとか。首相のスーツ一着で、ホームレスは何か月も遊んで暮らせるのですから・・・・。

“人々の不満を反映して、スナク政権の支持率は12%と低迷。不支持は70%になっています。”【2月2日 TBS NEWS DIG】とも。

金融界にとって、首相は「使い捨て」でいくらでも首をすげ替えられますが、このままでは保守党政権の存続は難しいようにも見えます。
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