(【2022年8月22日 時事】)
【プーチン大統領 「年次教書演説」で侵略作戦を継続する姿勢を強調】
ウクライナ侵攻1年を前に、ロシアではプーチン大統領が侵攻後初めての「年次教書演説」を行い、改めて戦争遂行への意思を明らかにしています。
****プーチン氏、ウクライナ侵略「注意深く一歩一歩続ける」…モスクワで年次教書演説****
ロシアのプーチン大統領は21日正午(日本時間午後6時)頃、モスクワ中心部で外交と内政の施政方針を表明する「年次教書演説」を開始した。プーチン氏は「特殊軍事作戦」と称するロシアのウクライナ侵略に関し「任務を注意深く一歩一歩、続ける」と述べ、侵略作戦を継続する姿勢を強調した。
露軍が全域制圧を目指しているウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)などを「歴史的なロシア」と主張し、侵略の正当化も改めて図った。
ロイター通信によると、プーチン氏はロシアが「特殊軍事作戦」と称するウクライナ侵略について、「我々は平和的な解決に向けて取り組んだが、西側諸国は異なるシナリオを用意していた」などと述べ、ウクライナ支援を展開する欧米を非難した。
プーチン氏が年次教書演説を行うのは、ウクライナ侵略以降初めて。【2月21日 読売】
********************
“西側諸国は異なるシナリオを用意していた”ということに関しては、以下のようにも。
*****************
「われわれはこの問題を平和的に解決するため可能なあらゆることをして、この困難な紛争から抜け出す平和的方法を交渉していたが、背後では非常に異なるシナリオが準備されていた」と述べた。
ウクライナ紛争を始めたのは西側だと非難し、米国を筆頭に西側諸国は世界において「無限の力」を求めていると述べた。西側諸国が紛争をロシアとの世界的な対立に発展させようとしており、ロシアの存立が危ぶまれているとの認識も示した。
「彼らは地域の紛争を世界的な対立に変えるつもりだ。われわれはこのように理解しており、それに基づいて対応するだろう」と語った。【2月21日 ロイター】
ウクライナ紛争を始めたのは西側だと非難し、米国を筆頭に西側諸国は世界において「無限の力」を求めていると述べた。西側諸国が紛争をロシアとの世界的な対立に発展させようとしており、ロシアの存立が危ぶまれているとの認識も示した。
「彼らは地域の紛争を世界的な対立に変えるつもりだ。われわれはこのように理解しており、それに基づいて対応するだろう」と語った。【2月21日 ロイター】
******************
紛争を始めたのがどっちかという点はともかく、アメリカなどはこの戦争でロシアが国力を消耗し、衰退するのを期待しているでしょうから、上記のようなプーチン大統領の懸念は必ずしも的外れではないかも。
【予想されたより「堅調」なロシア経済 今後については悪化の懸念も】
ロシアがウクライナ侵攻をあきらめる筋書としては、軍事的敗北、経済悪化による遂行能力喪失、ロシア国内の政治的事情などがかんがえられますが、軍事的状況は一進一退の状況で、ロシア側の攻勢が報じられれる一方で、ロシア側の犠牲者の多さも。また、春にはウクライナ側の欧米支援兵器も動員した攻勢も予想されており、今後は不透明です。
戦争遂行能力を左右する経済状況については、西側の制裁を跳ね返したと自信を示しています。
****経済的危機は克服されたとプーチン氏****
プーチン大統領は21日、ロシアのウクライナ侵攻後の日米欧の制裁による経済的危機は克服されたと述べ、今後の安定化に自信を示した。(共同)【2月21日 共同】
*******************
“前例のない制裁によってロシア経済を破滅させようとする西側の試みにロシアが対抗しているとし、西側にとっては数兆ドルもの金がかかっているが、ロシアの所得フローは枯渇していないと述べた。”【2月21日 ロイター】とも。
確かに、ここまでのロシア経済はマイナスに落ち込んだものの、当初予想されたものに比べると遥かに軽度です。
****ロシアGDP、22年は2.1%減 侵攻直後の予想より改善****
ロシア連邦統計局が20日発表した2022年国内総生産(GDP)は前年比2.1%減少した。ウクライナ侵攻の影響で21年の5.6%増からマイナスに転じた。
侵攻開始直後の予想よりは小幅なマイナスにとどまった。経済省は12%を超える落ち込みを予測していた時期もあった。侵攻前の政府見通しは3%のプラス成長だった。
統計によると、GDPは製造業、卸売・小売業などで減少した一方、農業、接客業、建設業、鉱業では増加。また、行政および「軍事安全保障」が4.1%増となった。
アナリストらは、軍事支出の増加が工業生産の落ち込みを一部相殺していると指摘した。(後略)【2月21日 ロイター】
侵攻開始直後の予想よりは小幅なマイナスにとどまった。経済省は12%を超える落ち込みを予測していた時期もあった。侵攻前の政府見通しは3%のプラス成長だった。
統計によると、GDPは製造業、卸売・小売業などで減少した一方、農業、接客業、建設業、鉱業では増加。また、行政および「軍事安全保障」が4.1%増となった。
アナリストらは、軍事支出の増加が工業生産の落ち込みを一部相殺していると指摘した。(後略)【2月21日 ロイター】
**********************
今後については“去年前半に資源価格が高く推移したエネルギー輸出が支えとなり、当初予想されたほどの大幅な悪化はみられなかったものの、制裁などでエネルギー輸出の収益減が見込まれ、先行きは不透明です。”【2月21日 TBS NEWS DIG】との見方も。
中国やインドによる資源購入など、欧米の制裁が有効に機能していないことはしばしば指摘されているところですが、今後のエネルギー価格や需要に関してはロシアにとって厳しいものになるとの予測も。
****ロシア経済、一見「堅調」も悪化の兆候じわり****
ロシア経済はウクライナ侵略開始後、米欧の大規模な制裁の下に置かれたが、予想ほどの大幅な悪化はみられなかった。ただ、露経済の「屋台骨」である石油や天然ガスなどエネルギー輸出の収益は減少が続くと見込まれ、制裁は中長期的に露経済をむしばんでいく公算が大きい。
侵略開始後、露通貨ルーブルは対ドルで70ルーブル台から一時140ルーブル近くに急落したが、その後回復し、最近は60ルーブル台後半〜70ルーブル台前半で推移している。
欧米は金融制裁でロシアの貿易代金決済の困難化を図ったが、露側は天然ガス代金のルーブル払いを求めるなどの防衛措置をとったことが効果を上げたとされる。
欧米は露産石油の禁輸措置をとったが、中国やインドが買い支えた。米欧企業は露市場から撤退したが、露側は資産を引き継がせるなどして国内企業にその穴も埋めさせた。
国際通貨基金(IMF)は侵略当初、2022年のロシアの国内総生産(GDP)が8・5%減少すると予測したが、順次、上方修正。今年1月、最終的に2・2%減にとどまったとの試算を公表した。失業率は3・7%に収まっている。
ただ、先行きは明るくない。エネルギー高は一段落し、欧米は露産原油価格に上限を設定。欧州はエネルギーの脱露依存からの脱却も進める。このため、ロシアの国家歳入の3〜4割を占めてきたエネルギー輸出の収益は悪化するとみられている。国際エネルギー機関(IEA)は原油の輸出量が30年までに22年比で30%程度、天然ガスも40%程度減ると予測する。
露経済発展省によると、昨年12月の工業生産指数は前年同期比4・3%減で、昨年最大の減少幅を記録した。米欧に依存してきた部品不足の加速などが背景にあるとの見方が出ている。【2月20日 産経】
*********************
“米欧に依存してきた部品不足”ということでは、影響が大きいと思われているのが半導体。
今のところは何とかやりくりしているようです。
また、ロシア経済には強いインフレ圧力がかかっています。
****ロシアのインフレ圧力依然強い、ルーブル下落で=中銀****
ロシア中央銀行は17日、2月前半の経済全般に対するインフレ圧力は引き続き強かったと明らかにし、ルーブル相場下落を要因に挙げた。
1月のインフレ率は前年同月比11.8%と、中銀目標である4%の約3倍に達した。中銀は先週、インフレ抑制のため利上げを準備していると示唆した。
中銀は「2月前半2週のデータは、インフレ圧力が強まる傾向が続いていることを示した」と説明した。
ウクライナ侵攻開始以降、ロシアの物価は西側からの制裁で極めて不安定となっている。また、今年は原油とガスからの収入減少で通貨安が新たに加速した。
ルーブル相場は、欧州連合(EU)によるロシア産原油の禁輸措置と主要7カ国(G7)による価格上限設定が導入された昨年12月初めから16%下落している。
中銀のアナリストは「1月の為替レートは、最も輸入に依存している製品の価格に既に影響している。ルーブルが現水準にとどまった場合、今後数カ月間はインフレ押し上げが続くだろう」と述べた。【2月20日 ロイター】
1月のインフレ率は前年同月比11.8%と、中銀目標である4%の約3倍に達した。中銀は先週、インフレ抑制のため利上げを準備していると示唆した。
中銀は「2月前半2週のデータは、インフレ圧力が強まる傾向が続いていることを示した」と説明した。
ウクライナ侵攻開始以降、ロシアの物価は西側からの制裁で極めて不安定となっている。また、今年は原油とガスからの収入減少で通貨安が新たに加速した。
ルーブル相場は、欧州連合(EU)によるロシア産原油の禁輸措置と主要7カ国(G7)による価格上限設定が導入された昨年12月初めから16%下落している。
中銀のアナリストは「1月の為替レートは、最も輸入に依存している製品の価格に既に影響している。ルーブルが現水準にとどまった場合、今後数カ月間はインフレ押し上げが続くだろう」と述べた。【2月20日 ロイター】
*****************
ロシア国内の“街の様子”は、あまり変化が見られないようで、ロシアの市民生活は、侵攻前とほとんど変わらないとも報じられています。
国外の仲介業者を経由し、欧州などから輸入した「並行輸入」品の活用も行われている様子。
【以前から疑われるプーチン氏の健康状態 政権内部の確執が露わに】
次に、ロシア国内の政治状況。
もしプーチン大統領の健康状態が悪化すれば、状況は劇的に変化する可能性もあります。その“健康状態”に関しては以前からいろんな情報が乱れ飛んでおり、その真偽はよくわかりません。
確かに、一見すると、足の絶え間ない動きを自分で制御できないパーキンソン病を思わせるような“尋常ではない”ような動画なども。
****やはり重病?外交の舞台でプーチンが見せた酷い「症状」****
<ウクライナ侵攻以降、繰り返しプーチン重病説が流れているが、最近のベラルーシ大統領との会談の映像では、外交の舞台とは思えないほどの異常な震えが見て取れる>
もう何カ月も重病説が飛び交っているウラジーミル・プーチンの健康状態について、また疑わしい映像が公開されて波紋が広がっている。
映像はベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領と会談したときのもの。椅子に座ったプーチンが絶えず足を動かしている。その様子に対して、ジョークから健康不安説までさまざまな反応が寄せられた。(中略)
不治の病で死が間近?
もう一人のユーザーは、「映像が加工されているのではないかと疑う人のためにオリジナルの動画をアップする」と申し出た上、父親をパーキンソン病で失った、と言う。
「父を介護した経験から、プーチンは重症の初期のように見えるが、皆さんの判断にお任せしたい。落ち着きがないのか、病気なのかはわからないが、世界の舞台では普通とはいえない行動だ」
パーキンソン病は、ジストニア、すなわち筋肉のねじれや痙攣などを引き起こす疾患で、プーチンが罹患しているのではないかという疑いがしばらく前から取り沙汰されている。つい最近も、イギリスのMI-6(英国情報部国外部門)リチャード・ディアラブ元長官がタブロイド紙ザ・サンのインタビューでこの病名を口にしていた。
ウクライナへの本格的な侵攻が始まって以来、プーチンが癌かパーキンソン病、あるいはその両方ではないかという報道が相次いだが、ロシア政府は本誌の問い合わせに対して、ロシアの指導者は健康だと繰り返し表明している。
欧米の情報機関は以前からプーチンの体調不良を疑っており、ここ数カ月、プーチンの健康不安に関する噂は絶えない。昨年7月、イランの首都テヘランを訪問した際も、プーチンは右腕に力が入らないようだと取り沙汰された。(後略)【2月20日 Newsweek】
******************
また、ウクライナの攻撃を恐れてクレムリンを離れることも少なくなく、国内にある邸宅や地下壕などを転々としているプーチン大統領の精神状態も懸念されています。
これらについては、西側の希望的観測も入り混じって、実際のところはよくわかりません。
一方、政権内部で軍主流派と最近注目されていた民間軍事会社「ワグネル」を率いるプリゴジン氏らとの確執は間違いなくあるようです。
****愛人と地下壕でパーティー 四面楚歌のプーチンは「身体的にも、精神的にもガタがきている」****
軍によるミニ・クーデターか
昨年2月24日にロシアがウクライナへ電撃的に戦闘を仕掛けてから1年が経とうとしている。戦況が膠着する中、政権内部で深刻な亀裂が生じているといわれるが、侵攻を仕掛けた張本人であるプーチン大統領は地下壕を転々とする日々。新年にはその地下壕で愛人とパーティーを開いたといわれており…。
現在、プーチン政権には、二つの火種があるといわれている。元読売新聞国際部長でモスクワ支局長も務めた、ジャーナリストの古本朗氏によると、
「一つ目は軍内部です。今年1月にウクライナ侵攻軍のセルゲイ・スロビキン将軍が総司令官を解任され、ワレリー・ゲラシモフ参謀総長が任命されました。これを巡っては、軍によるミニ・クーデターではないか、との見方も出ているのです」
今回のウクライナ侵攻におけるロシア軍には二つの勢力がある。一つは正規軍、もう一つは非公式に投入されてきた民間軍事会社「ワグネル」などの傭兵部隊だ。そして解任されたスロビキンは「ワグネル」創設者、エフゲニー・プリゴジンの盟友と目されている。
「戦況が悪化するに連れ、比較的高度な戦闘能力を持つ『ワグネル』の力が増してきた。プリゴジンはその功をアピールし、スロビキンを総司令官に推しましたが、それに不満と危機感を抱いたゲラシモフら軍部がプーチンに直訴し、交代を迫ったとの見方が出ているのです」(同)
二つ目の火種は、プーチン大統領の権力基盤であるシロヴィキにあるという。シロヴィキとは、ロシアの支配階級である軍、治安、情報機関系の勢力を指す言葉だ。
「現在、この筆頭といわれるのが、安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記です。KGB出身の彼はプーチンの最側近で盟友。しかし、最近、プーチンと彼の間に対立が生まれたとの情報が出ているのです」(同)
ここでも見られるのは内部での権力闘争だ。時事通信モスクワ支局長を務めた、拓殖大学の名越健郎・特任教授も言う。
「パトルシェフは従来、戦争終結後、プーチンの後継者に農相を務める自らの息子を据えることをもくろんでいたが、プーチンが応える気配が見えない。それに激怒し、安全保障会議のオンライン会議を欠席しているとの話があります」(後略)【2月21日 デイリー新潮)】
*******************
プリゴジン氏はショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長を「反逆に等しい」と激しく非難しています。それだけ追い詰められたということでしょう。
****ワグネル創設者、ロシア国防相と参謀総長を批判 「反逆に等しい」****
ロシアのウクライナ侵攻に部隊を派遣しているロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は21日、ロシアのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長がワグネルへの弾薬の供給を拒否し、ワグネルを崩壊させようとしていると批判した。
プリゴジン氏はメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した音声メッセージで「正反対のことが行われている。これは反逆に等しい」と主張。
ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長が意図的に武器が不足する状態を作り出し、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトで戦うワグネルの部隊に大きな損失を与えていると訴えた。
「ワグネルに対する弾薬の供給だけでなく、航空輸送の支援も行わないよう参謀総長と国防相が片っ端から指示を出している」としている。
プリゴジン氏は前日も、ロシア軍が自身への個人的な恨みからワグネルへの武器の供給を拒否していると主張。過去には、軍司令官の無能ぶりを批判し、ワグネルがバフムトで上げた戦果を国防省が自らの手柄にしようとしていると批判していた。国防省のコメントは取れていない。【2月21日 ロイター】
ロシアのウクライナ侵攻に部隊を派遣しているロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は21日、ロシアのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長がワグネルへの弾薬の供給を拒否し、ワグネルを崩壊させようとしていると批判した。
プリゴジン氏はメッセージアプリ「テレグラム」に投稿した音声メッセージで「正反対のことが行われている。これは反逆に等しい」と主張。
ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長が意図的に武器が不足する状態を作り出し、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトで戦うワグネルの部隊に大きな損失を与えていると訴えた。
「ワグネルに対する弾薬の供給だけでなく、航空輸送の支援も行わないよう参謀総長と国防相が片っ端から指示を出している」としている。
プリゴジン氏は前日も、ロシア軍が自身への個人的な恨みからワグネルへの武器の供給を拒否していると主張。過去には、軍司令官の無能ぶりを批判し、ワグネルがバフムトで上げた戦果を国防省が自らの手柄にしようとしていると批判していた。国防省のコメントは取れていない。【2月21日 ロイター】
*****************
健康問題あるいは政権内の混乱でプーチン大統領が政権の座を降りることになれば、あるいは求心力を失えば・・・・という想像もできますが・・・・誰も明言はできません。