孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

張学良と蒋介石  “懐中時計”と“釣り竿”

2008-10-25 16:58:08 | 国際情勢

(張学良の写真が見つからなかったので、代わりに蒋介石と宋美齢 随分くつろいだ写真です。
宋美齢は西安事件とき蒋介石解放のために張学良と交渉したようですが、本文引用記事によると,その後も張学良をかばっていたとか。張学良も宋美齢に傾倒していたとも言われます。
“flickr”より By ComerZhao
http://www.flickr.com/photos/comer/151802752/ )

台湾では今年3月の総統選挙で勝利した国民党・馬英九政権が、台湾経済活性化を目指して中台融和を進めているところですが、昨年末の陳水扁政権による「台湾民主記念館」(中正記念堂)正門に掲げられた故蒋介石元総統の座右の銘「大中至正」の看板の撤去のニュースとか、今年5月訪中した呉伯雄・国民党主席と胡錦濤・共産党総書記による、1949年の中台分断後初めての国共トップ会談のニュース・・・などを見聞きするにつけ、教科書の中で止まっていたセピア色の歴史がぜんまいを巻かれて再び動き出したような不思議な感じがします。

今日目にした下記の記事もそんなひとつです。

【「釣りをしながら、ゆっくり待つべし」】
****張学良軟禁の地 台湾・清泉温泉を行く 隔絶、寡黙なる13年****
台湾北部に清泉温泉という所がある。中国現代史に謎を残す西安事件(1936年)の中心人物、故張学良氏が13年にわたり軟禁された場所だ。四方を山に囲まれた旧日本軍の要塞(ようさい)で、張氏はその一角にある日本家屋に“隔離”されていた。旧居は地元当局が復元し、事件から72周年となる今年12月に一般公開される。関係者はベールに包まれた張氏の幽閉生活の一端を語り始めた。(新竹県五峰郷清泉 長谷川周人)
 (中略)
「70歳の誕生日を迎えた蒋介石に張学良は懐中時計を贈った」。1958年から清泉で軟禁された張氏はこのころ、年2回、近くの湖などに行くことが許されたが、普段は外出できず、時計は新竹市内で食料を調達する使いの者に買わせた。幽閉生活も10年を超え、暗に解放を求める蒋氏に対するメッセージだった。
しかし、その返礼として蒋氏から届いたのは1本の釣り竿だった。「釣りをしながら、ゆっくり待つべし」。自由を懇願する思いは軽くあしらわれた。これらのエピソードは、馮寄台駐日代表(日本大使に相当)が仲介役となり、地元の新竹県当局が張氏の遺族から確認したもので、警察療養所だった日本家屋に住む張氏はその後も、ラジオでニュースを聞くことも蒋氏から禁じられた。訪問者もないまま孤独な日々が続いたという。(以下略)【10月25日 産経】
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“懐中時計”に対して“釣り竿”・・・できすぎの感もある話ですが、あまりにも面白いので引用しました。
記事によると、張学良は李登輝政権下の90年代に名誉が回復されましたが、蒋介石解放を決める交渉の細部は語らぬまま、移り住んだハワイで2001年10月、100歳で死去したそうです。

ところで、中台融和と言いつつも、中台関係の改善で経済的な実利を期待する馬政権と、「祖国統一」への第一歩とみる中国側との間には、思惑に大きな隔たりがあるようです。
また、つい先日の21日にも、台湾を訪れている中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会(海協会)の張銘清副会長が、中国を批判する群衆に囲まれ、地面に突き倒される騒ぎがあったように、台湾の人々の間でも中国との関係については様々な思いがあります。

ただ台湾にとって、世界の新たな極になりつつある大陸・中国はあまりに大きな存在であり、中国ペースの展開は避けられないようにも思えます。

【香港の将来は?】
9月に行われた“一国ニ制度”の香港立法会選挙では、親中派が辛勝する一方で、中央政府に批判的な民主派も大敗を免れるという結果でした。
中国との一体化が進み、北京五輪に絡んだ“愛国宣伝”が繰り広げられる中で行われた選挙は、民主派の苦戦が予想されていましたが、3議席減らしながらも、親中派に有利な選挙制度改革案を否決できる3分の1超の21議席を上回る23議席を死守し、なんとか踏みとどまった・・・というところです。

ただ、“世論調査によれば、選挙で政治的問題に関心を示す市民は9・6%にとどまっていた。 ”【9月9日 産経】というように、民主化要求などの政治的問題は影が薄れています。
民主派が大敗を免れたのは、貧富の格差是正やインフレ対策の遅れなどで親中派の曽蔭権行政長官に対する批判が高まったことによるものだそうです。

民主派のカリスマ的存在だった陳方安生(アンソン・チャン)元政務官と、民主党初代主席だった李柱銘(マーチン・リー)氏がともに今回選挙には出馬せず、今後の求心力の低下が懸念されています。
もっとも、親中派に有利な職能代表枠30議席を除く、直接選挙枠30議席では民主派が改選前の19議席を守ったということですので、いまだ民意は離れてはいないようですが。


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