(チュニジアの首都チュニスの国会議事堂前で、裁判所が13歳の少女とその少女を妊娠させた親類の結婚を認める判断を示したことに抗議する女性たち(2016年12月14日撮影)【7月27日 AFP】)
【アフリカ レイプ、拉致して自爆犯に、難民キャンプでの性的搾取、子供兵の4割が少女】
多くの武装勢力が跋扈するアフリカ・コンゴ、イスラム過激派ボコ・ハラムによる拉致・テロが絶えないナイジェリアなど一部アフリカでは、最低限の人権である人名すらほとんど顧みられない状況ですから、弱者である女性の暴力にいたっては、ごく日常的なものともなっています。
*****アフリカで女性への暴力まん延 国連などが働きかけ強化****
国連の安全保障理事会で、アフリカの平和と安全をテーマにした公開討論が開かれ、避難民キャンプで配給の食糧とひき換えに女性が性的な搾取を受けるなど、女性への暴力の実態が報告され、国連と安保理メンバー国は当事国の政府などへの働きかけを強めることで一致しました。
10日、国連の安全保障理事会で開かれた公開討論には、国連のアミナ・モハメド副事務総長が出席し、先月、視察したアフリカのコンゴ民主共和国とナイジェリアの状況を報告しました。
この中で、アミナ副事務総長は「コンゴでは女性に対する性的暴力が広がり、ナイジェリア北部では誘拐や強制結婚、それに自爆テロが驚くべきほど多い。また、避難民キャンプで配給の食糧とひき換えに女性が性的な搾取を受ける新たな現象が起きている」などと述べ、女性への暴力がまん延している実態を指摘しました。
これに対して、各国からは治安対策の強化や加害者に法的責任をとらせる仕組みの構築など、早急な対策を求める意見が出され、国連と安保理メンバー国は当事国の政府やAU=アフリカ連合への働きかけを強めることで一致しました。
また、日本の川村国連次席大使は今月下旬にモザンビークで日本が主導するTICAD=アフリカ開発会議を開催することを紹介し、日本として女性の権利向上を含め、アフリカの開発を支援する考えを示しました。【8月11日 NHK】
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レイプなどの性的暴力だけでなく、ナイジェリアのボコ・ハラムは誘拐した子どもや女性に爆弾を巻き付け、市場など人通りの多い場所で爆発させる手口でテロを続けています。
また、コンゴでは「少年兵」がしばしば話題になりますが、被害は少女にも及んでいます。
****<コンゴ民主>元子供兵 少女も4割…麻薬、洗脳、実情語る****
政府軍と乱立する武装勢力などとの紛争が長年続くアフリカのコンゴ民主共和国では、多くの子供兵が武装勢力に動員されてきた。大半は少年だが、最近の調査では少女も4割を占める。
強制的に戦場へ駆り出されるだけでなく、貧困から抜け出そうと自ら武装勢力に加わる子供も後を絶たない。(中略)
東部ゴマで元子供兵の支援にあたるNGO「PAMI」のアモス・ネグラ氏(35)は「武装勢力は誘拐した子供たちを麻薬を使って洗脳し、家族や隣人を殺させることもある」と語る。洗脳により、組織から逃げられなくしていくのだという。
ある少女(18)は13歳から2年間、民兵組織マイマイの構成員として森の中で過ごした。父は他の武装勢力に殺され、母もレイプされた。「民兵と一緒にいれば守ってもらえると思った」。民兵の食事を作ったり、食料を調達したりするのが役目だった。
当時の生活について、少女は「何も良いことはなかった」と振り返る。上官の命令に背くことは許されず、何か失敗をすれば容赦なく殴られた。
英NGOの調査によると、子供兵の約4割が少女とみられる。今年1〜6月にコンゴ東部の北キブ州で国連児童基金(ユニセフ)に保護された子供兵184人のうち50人が少女だった。
子供兵は戦闘以外に、食事の準備などの雑用や敵対勢力の偵察に使われる。少女の場合、民兵と強制結婚をさせられたり、性的虐待を受けたりすることも珍しくない。
別の少女(17)がマイマイに加わったのは「お金がなくて学校を追い出されたから」。紛争下で暮らす住民にとって武装勢力は身近な存在であり、貧しさから抜け出すことを期待してその一員となる子供は多いという。
悲劇は武装勢力を抜けてからも続く。「残虐行為に関わった」「民兵と関係を持った」と烙印(らくいん)を押され、親や地域から拒絶されるのだ。家族の元に戻れず仕事もなければ、行き場を失ってしまう。
冒頭の17歳の少年は「整備士になりたいけど、だめなら森に戻るしかない」とつぶやいた。
PAMIディレクターのジョアキム・フィキリ氏(54)は「貧しい生活が続くなら、武装勢力にいた方が良かったとなる」と述べ、職業訓練などを通じた社会復帰の支援が欠かせないと指摘した。【8月10日 毎日】
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【中東 レイプ犯の結婚による抜け穴をふさぐ動き】
中東では、女性の権利が大きく制約される社会風潮があり、多くの国でレイプの加害者が被害者と「結婚」すれば罪を免れることができるといったことが結果的にレイプ犯に被害者女性を差し出すことにもなっています。
そうした中東社会でも、少しずつではありますが改善の動きがあるようです。
****<中東>レイプ加害者の「被害者と結婚で刑事免責」にノー****
レイプの加害者が被害者と「結婚」すれば罪を免れることができるという法律の条項を廃止する動きが中東で加速している。
ヨルダン下院は1日、刑法のこうした条項を廃止すると議決した。人権団体は「結婚による抜け穴は許されない」と評価している。チュニジアでは7月28日に同様の条項が廃止され、レバノンでも廃止を求める運動が起きている。
ヨルダン下院が廃止したのは刑法308条。レイプ加害者が被害者と結婚し、5年間離婚しなければ、不起訴になると定めていた。条項の廃止については、上院に加え、国王による承認も得られる見通しだ。
ヨルダン下院の決定を受けて、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)はロイター通信に「女性への暴力に終止符を打つためのとても前向きな一歩だ」と語った。
中東や北アフリカではレバノンやイラク、シリア、クウェート、バーレーン、パレスチナ自治区、アルジェリアなどで、レイプ加害者の刑事免責を法律に定めており、不本意な結婚をせざるを得ない被害者も少なくない。
英オブザーバー紙によると、ヨルダンで条項廃止を求めて運動してきたワファ・ムスタファ議員は、被害者の親族が「一族の名誉」を守るために、加害者との結婚に応じることがしばしばあると指摘したうえで「どんな女性もレイプ加害者に贈り物としてささげられるべきではない」と強調している。
モロッコでは、両親や裁判官の勧めでレイプ加害者と結婚した16歳の少女が結婚から数カ月後の2012年に服毒自殺する事件が起きた。これを受けて抗議運動が激化し、14年に加害者の刑事免責を定めた条項が撤廃された。エジプトは1999年に同様の条項を廃止している。【8月11日 毎日】
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上記記事あるように、チュニジアでも7月26日、「女性に対する全ての暴力を根絶する」ことを目指し、レイプに関する結婚による抜け穴を防ぐだけでなく、被害を受けた女性に対する法的支援や精神面での援助を強化する法案が可決されました。
“アラブ地域の中では、チュニジアは女性の人権に対して前向きな国とみられているが、人権団体によると今でも女性差別があり、女性の約半数は人生で少なくとも一度は何らかの暴力を受けているという。”【7月27日 AFP】
チュニジアがアラブ地域で女性の人権に対して前向きな国であるのに対し、女性権利に後ろ向きな国の代表がサウジアラビアです。
そのサウジアラビアでも、“公立学校で女子の体育授業解禁へ”【7月13日 毎日】といった改善の兆しはありますが、一方で、“ミニスカで散歩の女性拘束=釈放後も論争続く―サウジ”【7月20日 時事】といった現状もあります。
【ネパール 生理中女性の隔離を犯罪化】
アジアに目を向けると、暴力ではありませんが、ネパールでは生理中の女性が隔離される風習があり、この隔離中に女性が命を落とす事故が相次いでいました。
この風習を明確に“犯罪”として処罰することになったようで、これも一歩前進でしょう。
****ネパール、生理中の女性を隔離する慣習「チャウパディ」を犯罪化****
ネパール議会は9日、生理中の女性を不浄な存在とみなして屋外の小屋に隔離するヒンズー教の慣習「チャウパディ」を犯罪として規制し、違反者に刑罰を科す法案を全会一致で可決した。
ネパールでは今も生理中の女性を汚れているとみなす人々が多く、一部地域では生理の始まった女性は家を追い出され、生理が終わるまで「チャウ・ゴット」と呼ばれる粗末な小屋で寝起きしなければならない。
出産した直後の女性も対象で、女性たちは食べ物や宗教的象徴、牛、男性に触れることを禁じられ、追放生活を強いられる。
ネパール最高裁は10年以上前にチャウパディを禁じているが、国内西部の地方部を中心に根強く残っている。
今回可決された新法は、チャウパディを女性に強要した者への罰則として、禁錮3か月か罰金3000ルピー(約3200円)、またはその両方を科すと定め、「生理中や出産後の女性を、チャウパディやこれと同様のあらゆる差別、禁忌、非人道的行為に従わせてはならない」と明記している。新法は1年以内に施行される。
チャウパディをめぐっては先月、チャウ・ゴットで眠っていた10代少女がヘビにかまれて死亡する事件が発生。2016年にも、寒さのため小屋の中で火をたいて暖をとろうとした女性が煙で窒息死するなど、2人がチャウパディの間に死亡している。【8月10日 AFP】
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【アメリカ “トランプ現象”で女性蔑視拡大の懸念】
女性の権利では世界の先頭を行くはずのアメリカでは、女性蔑視の言動が目立つトランプ大統領の出現で、逆向きの風潮も懸念されています。
****トランプの罪、米国を汚染し始めた女性蔑視の空気****
・・・・トランプ氏は選挙期間中から女性蔑視の発言を繰り返しながらも、男性のみならず女性有権者からも大きな支持を集めて大統領になった。性的な差別を公然と口にしてもよいという雰囲気がアメリカに広まってしまったと嘆く声は多い。
ますます安全を脅かされる女性たち
トランプ大統領の登場で、アメリカ社会が長年取り組んできた「男女平等」は後退しつつあるのだろうか。そのことを示す数字は見つからないが、筆者の身の回りでは最近「女性蔑視事件」が話題になることが多い。
ある女性はスーパーでレジ待ちをしていたところ、背後にいた白人男性からいきなり罵声を浴びせられたという。
「おい、そこをどけ。おまえら女どもが偉そうに道を塞いでいても許される時代じゃないんだ、もう今は」
男性はニヤニヤしていたが、口調に冗談じみた響きはなかったという。
もちろんアメリカ男性のすべてが女性蔑視に傾いているわけではない。ごく一部がトランプ大統領から免罪符を与えられたと思い込んでいるにすぎないだろう。
だが、男性からの険悪なまなざしや言動にさらされる女性たちは気分を悪くしたり、身の危険を感じたりしていると訴えている。(中略)
このところ深刻なスキャンダルが取りざたされているトランプ大統領だが、仮にトランプ氏が政権の座から下りることがあったとしても、アメリカに拡散した「トランプ的価値観」が容易に薄れることはないだろう。(後略)【6月8日 老田 章彦氏 JB Press】
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【ニュージーランド 出産意向を問われる女性党首】
女性の場合、出産という男性とは決定的に異なる状況に直面します。その後の育児に関しても、女性に負担がかかることが多いのが現実です。
日本でも、女性国会議員の産休がバッシングを受けたことがありますが、同様のことがニュージーランドでも話題になっています。
****NZ女性新党首、メディアに出産の意向問われ反論 性差別と議論に****
ニュージーランドの最大野党・労働党の前党首の辞任に伴い、1日に新党首に就任したジャシンダ・アーダーン氏(37)が2日、メディアから繰り返し子どもを持つ意向を問われ、性差別との議論が湧き起こっている。
アーダーン氏はテレビ局TV3のインタビューで、母になるつもりがあるかとの質問を2度にわたって受けた。同氏は最初の質問に対しては、多くの働く女性にとってのジレンマだなどと、明言を避けながら快く回答した。
しかし同局の別のインタビューで、首相にふさわしいかどうか判断するためにも国民はアーダーン氏の家族計画を知る権利があると言われると、同氏は反論。
「2017年にもなって職場で女性がそんな質問に答えなければならないなんて全く容認できない」と述べ、女性は子づくりの予定ではなく、能力によって雇用されるべきだと主張した。
これを受けてソーシャルメディアでは議論が噴出。多くの評論家が男性はそのような質問を受けることはないと批判した。
同国人権委員会メンバーのジャッキー・ブルー氏は、女性にそのような質問をすることは同国の人権法違反に当たると指摘した上で、「率直に言って女性が出産するつもりかどうかなんて、まったく余計なお世話だ」と糾弾した。【8月2日 AFP】
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